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大長編ドラえもんシリーズ第4作、映画シリーズ第4作 ウィキペディアから
『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』(ドラえもん のびたのかいていきがんじょう)は、藤子不二雄の藤本弘によって執筆され、『月刊コロコロコミック』1982年(昭和57年)8月号から1983年(昭和58年)2月号に掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の作品。および、この作品を元に1983年3月12日に公開されたドラえもん映画作品。大長編、映画ともにシリーズ第4作。
夏休みに海底キャンプにやってきたドラえもんたちが2つの海底人国家の争いに端を発する世界の危機に巻き込まれ、世界を守るために戦う物語。
声の出演では、ゲストに喜多道枝・三ツ矢雄二・富田耕生などがキャスティングされている。
本作の特徴として、深海である舞台や設定、バギーの自爆など、従来の作風には見られなかった怖さや重さがある[1][2]。また、深海や海底の知識が内容に溶け込む形で散りばめられている[3][1]。
ムー大陸、アトランティス大陸の両者を、冷戦時の米ソ2大国に見立てた物語に、バミューダトライアングルの要素や日本海溝、マリアナ海溝など海底に関する情報が盛り込まれた作品である。話中盤で出てくるトリエステ号の記録、生物の進化論やクジラの話なども実際の自然科学に基づいたものとなっている。また、本作の直前に1982年を現在とした短編作品「竜宮城の八日間」が執筆されており、この作品でも竜宮はムー大陸にあった国という設定であった。
連載当初のタイトルは『のび太の海底城』だったが、連載4回目に現行のタイトルに変わる。本作は「大長編ドラえもん」シリーズで最初に単行本化された作品である(この作品は1983年6月に発行され、そのあとで第1作の『のび太の恐竜』が1983年12月に発行され、02、05、03、06、…と続く[4])。そのため、映画原作の単行本で恒例となっている「映画の主題歌が表記された見開きの加筆ページ」がてんとう虫コミックス(→てんとう虫コロコロコミックス)版にはない(藤子不二雄ランド版や映画大全集にはある)。
てんとう虫コミックス版の最初の3〜5ページ目は藤本以外の人物がトレースを行い描き直したものである(「ミーンミーン」から始まる3、4ページ目は連載時はカラーだったため。5ページ目は原稿紛失のため。いずれも藤本公認で行われた描き直し。藤子・F・不二雄大全集では3、4ページ目は連載時のカラー原稿を、5ページ目は連載時の印刷物から復元して掲載している)。
これまでのアニメ版において、しずかはのび太たちのことを「くん」付けで呼んでいたが、本作からは「さん」付けで呼ぶようになった。
序盤のドラえもんとのび太の「のび太達を連れて行って危険な目に遭わせたことがあるか?」(しょっちゅうじゃん)というやり取りの場面にて、のび太が過去の大長編3作を回想しティラノサウルス(恐竜)、チャミー(宇宙開拓史)、ペコ(大魔境)が描かれるワンカットがある[5]。これは大長編のみで映画版にはない。
映画化記念企画として『月刊コロコロコミック』では『チャレンジ・ザ・ドラえもん』というタイトルのコンテスト企画を行い、1982年7月号ではストーリー、9月号ではポスター画、10月号ではテーマソングの募集がされた[6]。ポスター画部門は後に藤本のチーフアシスタントとなる萩原伸一(むぎわらしんたろう)の応募作が入賞している。『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』(2025年)では『「ドラえもん、のび太たちが大活躍する物語」を自由に書こう!物語のコンクール』というタイトルで再びストーリー募集のコンテスト企画が行われ、募集形式も『チャレンジ・ザ・ドラえもん』同様に「400字詰め原稿用紙5枚」となっている。
映画版の監督は本作より西牧秀夫から芝山努に交代した[7]。これにより作風が大きく変わったことから興行成績は伸び悩み、芝山は降板の危機に陥ったが、次作の『ドラえもん のび太の魔界大冒険』が興行的に大成功を収めたことにより続投が決定。以後『のび太のワンニャン時空伝』までの22作品を監督した。また本作よりアバンタイトルが挿入されている。
映画はテレビアニメ第2作第1期のスタッフによって作られた。
1995年にはミュージカル化され、1997年には香港でも上演された。ビデオも発売されている。
夏休み、大西洋で金塊を積んでいた沈没船発見のニュースが流れる中、のび太たちはキャンプの行き先を巡って言い争っていた。結局海に行きながら山に登ろうじゃないかというドラえもんの提案で、太平洋の海底山脈へキャンプに出かけたドラえもんたちは、水中バギーで海底世界を駆け巡って様々な冒険をするが、そこで偶然、海底国家ムー連邦の軍人である海底人のエルに出会った。
地上世界に海底世界の事を知られたくないムー連邦の首相は、当初、のび太たちを拘束し監禁してしまうが、そこに急報が入る。かつてムー連邦と敵対し、数千年以上前の軍拡競争の末に滅亡した海底国家アトランティスに残された「鬼岩城」を支配する自動報復システム・ポセイドンが海底火山の活動の影響で再稼働したというのだ。この状況を知らされたドラえもんたちは、首相から協力を懇願される。ポセイドンの支配下にある鬼岩城はアトランティスが開発した「鬼角弾」という大量破壊兵器の発射基地であり、もしポセイドンによって鬼角弾が発射されれば、海底世界ばかりか全地球上に甚大な被害が及び、全ての生物が死に絶えてしまう。ドラえもんたちは鬼角弾の発射を阻止するため、アトランティスのあるバミューダ海域へと向かう。
アトランティスを囲むバリアーを突破するため、ドラえもんたちは地下に潜ってバリアーの向こう側へ抜けることを決心する。幸いにもバリアーは地中にまで到達していなかったため、ドラえもんたちは無事にアトランティスへの潜入に成功する。海底火山の噴火が迫る中、しずかが自分を囮にして拉致させることで敵に鬼岩城まで道案内させるという作戦を提案し、その妙案によって遂に一行は鬼岩城へとたどり着く。ポセイドンの前に引き出されたしずかは、アトランティスへの攻撃がただの自然現象によるものだと必死に訴えるものの、原始的なコンピュータであるポセイドンは一切聞く耳を持とうとしない。そして、無数の鉄騎兵相手に奮戦するも次第に追い詰められていく仲間たちの姿を映し出され、しずかは絶望に項垂れる。そして、火山噴火による巨大地震の発生を合図に、鬼角弾発射のための生贄としてしずかが処刑されようとした寸前、満身創痍の状態のドラえもんが爆弾を手に現れたものの、ポセイドン破壊を果たすことなく倒れてしまう。駆け寄ったしずかの流した涙がドラえもんの四次元ポケットに垂れた時、恐怖のあまりポケットの中に逃げ込んでいたバギーが飛び出してくる。バギーはしずかを泣かせたポセイドンを倒すために、ポセイドンや鉄騎兵からの攻撃を受けて傷つきながらも決して怯むことなく、捨て身の覚悟でポセイドンに自爆攻撃を敢行し、大爆発を起こしてポセイドンと共に散った。それと同時に鉄騎兵たちは完全に機能を停止し、やがて鬼岩城も崩壊。ムー連邦の人々は、ドラえもんたちとエル、そしてわが身を犠牲にしてポセイドンを破壊したバギーを、世界を救った勇者として永遠に語り継いでいくことを誓う。
全てが終わった後、ドラえもんたちとエルは地上人と海底人がいつか分かり合える日が来ることを願いながら別れるのだった。
漫画研究家の稲垣高広は、本作について「全体的に暗さや重さが漂った雰囲気」とし、また深海や海底に関しての知識を盛り込んだ技術が結果的に学習効果に繋がることを挙げ「硬派の空想科学・海洋冒険もの」と評している[1]。小説家の辻村深月もまたインタビューにて「深海に行くと体がペシャンコになるんだというのを、スネ夫のセリフで覚えていたりします」と述べ、本作での知識について押し付けでない点を評価している[3]。
ライターの稲田豊史によれば、35歳以上(2016年時点)は「初期の7作を絶対視する傾向にある」とし、これらを「神7(セブン)」と称している[9]。
批評家の杉田俊介は、本作を子どもの時に見た印象として「怖かった。その一言です。」と答え、バギーの冷淡さと自爆、海底の都市の設定などをその理由に挙げている[2]。
当時永谷園から出ていた「ドラえもんシリアル」に、ワンカット海底鬼岩城のドラえもんが出演していた。タイトルは「ドラえもん のび太の朝ごはん」だった。
2017年7月8日から2018年1月15日にかけて「藤子・F・不二雄ミュージアム」にて行われた、『ドラえもん』と漫画雑誌『コロコロコミック』の40年の歴史を振り返るイベント[11][12]。
3階の「ミュージアムカフェ」でポセイドンを再現した「海底鬼岩城ポセイドン冷やしまぜ翡翠めん」など限定メニューが販売された[11][12]。
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