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イカを乾燥させた加工食品 ウィキペディアから
スルメ(鯣)は、イカの内臓を取り除いて素干しや機械乾燥などで乾燥させた加工食品。乾物の一種。古くから日本、朝鮮半島、中国南部および東南アジアにおいて用いられている食品で長期保存に向いている。日本では縁起物とされ結納品などにも用いられ寿留女と表記される。俗語としてアタリメとも言う。
ヤリイカ、ケンサキイカ、スルメイカなどのイカの身を切り開いて、内臓・眼球を取り除き、残しておいた足と共に、竹串を通すなどして広げる。これを天日干し等の日乾や、室内や庫内で火を焚くなどして温度を上げ乾燥させる火乾(機械乾燥)などの方法で乾燥させる[1]。このとき水分量は重量の約20%となる。
長期保存に向いており、水で戻して出汁をとる、煮物に用いる、昆布や数の子などと一緒に漬け込む松前漬けなどの料理方法がある。また、火であぶってそのまま食べるのも素朴な酒の肴の一つとして挙げられる[2]。非常に噛み切りづらく、よく咀嚼しなければ飲み込むことは出来ない。
100gあたりの栄養素は334キロカロリー、水分20.2g、タンパク質69.2g、脂質4.3g、ナトリウム890mg、銅9.90mg、カリウム1100mg、亜鉛5.4mg、リン1100mg[3]。この他、イカに多く含まれるタウリンがスルメにも多く含まれている。
江戸時代には日本から清への輸出品目であった。当時から用いられる等級・種類に以下のものがある。
明治以降も引き続き日本から中国や東南アジアの華僑に向けての輸出が行われていた。戦後に入ると国共内戦と中華人民共和国の成立により中国本土への輸出は途絶えたが、香港・台湾・東南アジア(特にシンガポール)への輸出は行われた。当時の日本では外貨使途が統制されており、自由に輸入できなかった貴重品のバナナの輸入枠と水産物等の輸出枠をリンクする形で1951年より行われた台湾との貿易で、スルメは日本から輸出された品目の一つであった。しかし朝鮮戦争停戦後に韓国・北朝鮮産品が台頭し、また1955年にバナナリンク制度が終了したため、日本からの輸出量は急速に低下した[4]。近年ではベトナムやタイが輸出国となっている。日本では国内水産業保護のための輸入割当の対象となっている[5]。
日本においては古くからイカを食用としており、保存ができる乾物加工品としてのスルメも古い歴史がある。古典的な儀式や儀礼の場では縁起物として扱われ、結納の際に相手方に納める品としても代表的なものである。結納品の場合には寿留女の当て字を用い、同じく結納品である昆布(子生婦)とともに、女性の健康や子だくさんを願う象徴となっている。また大相撲の土俵の中央には15センチメートル四方の穴があり、スルメや勝栗が神への鎮め物として埋められている[6]。
縁起物であるとする理由は諸説有るが、日持ちの良い食品であることから末永く幸せが続くという意味とする説、室町時代の頃からお金を「お足」[7]といい、足の多いスルメは縁起が良いとする説などがある。
戦場では食のタブーとされており、上泉信綱伝『訓閲集』(大江家兵法書を戦国風に改めた書)巻六「士鑑・軍役」の項目に、「怪我の際、血が止まらなくなるため、イカ・スルメ・カニ・トビウオは、軍中では禁食」と記されている。似た俗信として、群馬県では、スルメが不消化のためか、「スルメを食べると、血がさわぐため、妊婦に食べさせると流産する」として、食べさせない[8]。同様に、イカを食すと流産する・血がさわぐとした系統の俗信は、長野県や新潟県にも見られ、富山県や広島県では、「産後に食すな」とする[9]。一方で、愛知県では、「病気になった時は、スルメの目を焼いて食すと良い」とする(同前 59頁。)。
また、江戸時代中期頃から、スルメの「スル」という部分が「金をする(使い果たす)」という語感を持つため、縁起をかついで言い換えた「アタリメ」という言葉が用いられるようになった[10]。
新潟県で行われる左義長(塞の神)では炎であぶったスルメを食べるとその年は風邪をひかないという言い伝えがある[11][12]。
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