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生物の生理作用の一種 ウィキペディアから
屁(へ、英語: Fart)は、肛門から排出される気体で、腸で発生するガスも含まれる。おなら、ガス、失気、転失気(てんしき)などともいう。
個人差はあるものの、平均的に大人は普通一日に合計8 - 10リットル (L) の量の屁を、5回から20回に渡り放出する。屁を放出することを放屁(ほうひ)という。
大腸でウェルシュ菌などによって分解される時に腐敗し、硫化水素 (H2S) 、二酸化硫黄 (SO2) 、二硫化炭素 (CS2) 、インドール (C8H7N) 、スカトール (C9H9N) 、亜鉛などのガスが大量に発生し、時には臭気の強いガスが発生する。
小腸上部で消化吸収されなかった食物の残渣(カス)は、小腸の下部や大腸で腸内細菌の作用によって分解される際に、腸内ガスを発生させる。このガスのほとんどは腸管から吸収されるが、吸収しきれない分が肛門から排出される。また、食事の際などに飲み込んだ空気は大部分がげっぷとして排出されるが、少量の空気が消化器に入る。そのうち血液中に吸収されなかった空気が屁として排出される[1]。
盲腸などの開腹手術を行った後は、腸管蠕動運動が一時停止するため、屁が出ないようになるのが一般的である。また、手術後に屁が出ることが、腸機能の回復した証とされている。
小腸には食物繊維を分解する酵素がないため、繊維分は小腸で消化吸収されず、大腸へ送られて分解される。その際に発酵してガスが発生する。従って、食べた物の種類や量、体調によりガスの発生量や臭いが異なる。また、悪玉菌の増殖に伴ってアンモニアやメルカプタンなどの有毒ガスが多く発生すると、いわゆる「目にしみる」屁となる。
屁は音や悪臭を伴うことが多いため、人前での放屁は一般にマナー違反とされ、本人も恥ずかしさを感じる(面白半分にわざと人前で屁をする者もいるが、これももちろんマナー違反である)。このため放屁を我慢したり、ゆっくり音がしないように出したりすることが多い。静かに出しても臭気がきつく周囲に不快感を与えることが続く場合には、食生活や体内環境の改善が必要となる。
屁が自分の意思と関係なく頻繁に出てしまう病気としては、過敏性腸症候群、セリアック病、乳糖不耐症などがある[2]。ジアルジア症も関連している可能性がある[3]。
腸内のガスの9割は体外から口と鼻を通って入ってくるもので、残りの1割は体内の微生物により生成される。主成分を以下に示す。
口臭が腸内ガスに近い臭いを発することがある。これは便秘している腸から腸内ガスが吸収されて血管内を運ばれ、肺から放出され口腔に至るためである。
屁には水素・メタン・硫化水素など可燃性ガスが含まれるため、ライターやマッチで火を近づけると燃えることがある。これは体質、食べた物などによる成分によって、よく燃える場合と燃えない場合がある。面白半分に行うと、二酸化硫黄(SO2)を発生したり、火炎による火傷を起こしたりするおそれがある。
「おなら」は「お鳴らし」が略されてできた女房言葉で、「屁」よりも上品(あるいは婉曲)な言い方とされており、およそ室町時代にできた言葉である[6]。元来は屁のうち音が鳴ったもののみが「お鳴らし」であるため、音のしない屁を「おなら」と表現するのは厳密には誤用であり、江戸時代にこれら音のしない屁を指す「すかしっ屁」という表現ができた。
屁をすることを「屁をこく」「屁を放(ひ)る」「放屁する」と言う。「放る」とは、古くは「くしゃみ」のことを「鼻ひる」といい、「鼻嚏る」とも書いたように、鼻水その他を体外へ放出することであった[7]。
また、屁に関する慣用句や俗語としては「イタチの最後っ屁」(追い詰められた時の必死の抵抗やあがき)、「屁の突っ張りにもならない」、「屁とも思わない」、へたれ(屁垂れ)などがある。
この記事には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
前述の通り、現代では公共の場において屁をすることはマナー違反とされる。日本では「屁=汚い・臭い」など悪いイメージを持つ者が大多数であるからである。車の中やエレベーター、バス、満員電車など人が密集する可能性の高い場所で屁をすることは、臭いや音などで他人に不快感を与えるおそれがある。人のいない場所やトイレでするのが一般のマナーとされている[8][誰によって?]。
1873年(明治6年)2月8日、東京・押上の土手において放屁した女を邏卒が連行し、罰金75銭を支払わせた。これに憤慨した女は罰金額が法外であるとして警視庁に抗議。1872年(明治5年)の東京違式詿違条例では立小便や落書きといった現在の軽犯罪に当たる行為などを規制していたが、放屁に関する規定はなく罰金刑は不当な物であった。このことは当時の新聞で議論を呼び、「放屁の規制も条例に加えるべき」とする意見と「生理現象であり規制すべきでない」とする意見とに分かれた。後に司法卿の江藤新平は通達を出し、放屁は規制の対象外として罰金も返還された[要出典]。
また、当時開業したばかりの鉄道では客車内での放屁に罰金を科す旨の掲示があった[要出典]。
俗説では、欧米諸国などでは放屁は比較的マナー違反とされず、げっぷの方がマナー違反とされる[誰によって?]が、文化圏、階層、個人などにもよる。
マラウイ共和国では、「公序良俗を遵守する」という目的で、2011年2月に公共の場所での放屁を禁止する法案が提出された[9]。
江戸時代では、良家の娘には屁負比丘尼(へおいびくに、屁負比丘、科負比丘尼)という娘の放屁を「今のは私がしました」と肩替わりする職業人がついていた[10][11]。
一般に「行儀が悪い」「無礼な行為」とされる放屁を自在に操って、一種の音楽を奏でるなどする曲芸がある。これを「曲屁」、行う人を「放屁師」と呼ぶ。
座ると放屁のような音が出るブーブークッションなどのジョークグッズも販売されている。また、脇などから屁の音を出す芸(en)などもある。
日本の絵巻物などには放屁合戦という画題がある。室町時代に制作された『福富草紙』という御伽草子は、放屁の芸を披露して立身する翁を描いている[12]。
出した屁を手の中に握り、他人に嗅がせるいたずらは「にぎりっぺ(握り屁)」といわれる。また、屁を瓶(小型の物が多い)に詰めた「屁瓶」と呼ばれる一種のジョークグッズも存在する。作り方は、瓶の口を直接尻に当てる、水上置換など様々である。
民話に『屁ひり嫁』『屁ひり女房』などと題する物があるほか、古典落語の演目にも『転失気(てんしき)』がある。
また、『8時だョ!全員集合』『ドリフ大爆笑』といったザ・ドリフターズのコントでは、屁そのものや屁の音を取り入れたギャグがしばしば用いられていた。
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