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オーストリア共和国連邦政府(内閣)の長 ウィキペディアから
連邦首相(れんぽうしゅしょう、ドイツ語: Bundeskanzler) はオーストリア共和国連邦政府(内閣)の長。同国の政府の長であり、最も強大な行政権を有する。
オーストリア共和国 連邦首相 Bundeskanzler der Republik Österreich | |
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連邦政府旗 | |
呼称 | Herr Bundeskanzler bzw. Frau Bundeskanzler(in) /首相(通常時) Exzellenz/閣下(外交時) |
所属機関 | 内閣 国家安全保障会議 |
担当機関 | 連邦首相府 |
庁舎 | 連邦首相府 |
任命 | 連邦大統領 (アレクサンダー・ファン・デア・ベレン) |
任期 | なし |
初代就任 | カール・レンナー |
創設 | 1918年 |
職務代行者 | 副首相 (ラインホルト・ミッターレーナー) |
ウェブサイト | 連邦首相府公式サイト (ドイツ語) |
ドイツの連邦首相と異なり、オーストリアの連邦首相には政策に関して連邦大臣を拘束するような指針を策定する権限が与えられていない。これは憲法の規定によるもので、連邦首相は連邦政府(内閣)における同輩中の首席 (primus inter pares) ではあるが、ほかの連邦大臣と同等に扱われる。しかしながら実際には、連邦大統領が各連邦大臣を任命するさいには連邦首相の推薦を要し、また連邦大臣の解任においても連邦首相が連邦大統領に対して同意することを要するため、オーストリアの政治制度において連邦首相の権限は突出したものとなっている。連邦首相はウィーン1区のバルハウスプラッツ2番にある連邦首相府で職務にあたる。
連邦首相が連邦大統領によって任命されるようになったのは修正連邦憲法が施行された1929年12月7日のことで、それまでは国民議会が連邦政府を選出していた。憲法の規定では、連邦大統領は自由に連邦首相を任命することができるが、実際には国民議会の多数派から選出しなければならない。
連邦首相は連邦大統領に対してほかの連邦大臣の人選について提議することができる。宣誓がなされたことをもって連邦政府および連邦首相はただちに権限が与えられることになり、連邦政府の任命のさいには国民議会の認証を必要としない。しかし国民議会は連邦政府または個別の連邦大臣に対する不信任を決議することができ、これにより連邦大統領は連邦政府または個別の連邦大臣を解任しなければならない。また連邦大統領は連邦首相の提議を受けて個別の連邦大臣を解任することができる。
連邦首相の任期は連邦大統領、あるいは国民議会とは異なり一定ではない。これは連邦首相が随時任命されうるためである。連邦首相およびほかの連邦大臣の任命については憲法上は、国民議会選挙や連邦大統領選挙、またその任期とは関係がない。しかしながら連邦政府は通常、国民議会総選挙後に連邦大統領に対して辞表を提出する。この総辞職は法令上の義務ではないが、民主的に行われた選挙と連邦大統領に対する敬意を表すものである。
また国民議会による不信任決議の可決には過半数の賛成を要する。さらに理論上は、連邦大統領は自らの裁量で連邦首相を任命することができるため、憲法の規定上はより厳然とした地位を与えられている連邦大統領が新たに選出されたときは連邦政府は、規定がないとはいえ、連邦政府が総辞職するということが起こりうる。このように連邦首相の任期について、法令の定めによる期限は定められていない。
なお仮に国民議会総選挙後に連邦首相が辞職しないということが起こった場合、連邦政府の任期と立法府の任期とを連動させるべきであると考えられていることから、国民議会が不信任決議を採択したり、連邦大統領が連邦首相を罷免したりすることになりえる。
連立政権でそれぞれの会派がほぼ同じ勢力を有していないという場合においても、連邦首相は、俗には単に "Kanzler" (首相)と呼ばれるが、一般的にはオーストリア国内の政治実務で最大の権限を持っていると考えられている。プロトコール上の順位は連邦大統領、国民議会・連邦議会両議長に次ぐ第4位の地位となる。
連邦首相は連邦政府の業務を調整する目的で連邦政府会議(閣議)を通常は週に1度招集し、議事を進行させる。連邦大臣から出される政府案は前もってすべての連邦省、すべての連邦州、多くの利害関係を有するものによる、いわゆる調査手続きを経たもので、連邦政府会議で決定を行い、また必要に応じて全連邦大臣の合意を得て修正を加えたのち、連邦首相がこれを決裁して国民議会議長に政府案を送る。議会で可決され、連邦大統領が認証した法律は、連邦首相も連邦憲法に従ってこれに連署する。法律は連邦大統領と連邦首相の2つの国家機関の署名がなされて初めて法的効力を有するようになる。このような法律は連邦首相によりただちに官報に掲載のうえ公布される。
オーストリアの連邦首相はドイツの連邦首相とは異なり、憲法上は原則的に連邦大臣に対して連邦政府の指針を定める権限を有していない。連邦首相が連邦大臣との相対で優位とされるのは、連邦憲法で定める、連邦大統領が「連邦首相の提議を受けて」連邦大臣の任免を行う手続きのときである(連邦大統領が連邦首相または連邦政府全体の解任を行うときは提議を要しない)。ところが実際には、連立政権における連邦首相は、議会における多数を維持できなくなるおそれがあることから、連立相手の会派に所属する連邦大臣の解任を提議するということはない。
連邦首相が実務において最大の権限を有しているというのは、個人的な権力の強さ、またはその人物が最大政党の党首であるということによるところがかかわっている。とくに連邦首相の権限が強いとされるのは、連邦財務相が連邦首相の信用を得ており、行動を同じくするというところによる。連邦首相は、ほかの連邦大臣と同様に、予算質疑において連邦財務相と一致していなければならないのである。
ところが連邦首相を取り巻く状況でこのような優位性が生じなかった例外がある。2000年に第3会派であった国民党 (ÖVP) 党首のヴォルフガング・シュッセルが連邦首相に就き、その第1次政権では連邦財務相が同党から選任されなかったということがある。このときの連邦首相の影響力は自党内に留まるものであった。
連邦首相の連邦政府会議における議決権は、その地位があくまでも連邦政府内の首席というものに留まるため、ほかの連邦大臣と同等のものである。連邦首相は連邦政府としての協議の結果をまとめるさいに、連邦首相府が担当する分野については率先することになるが、各連邦省が担当する分野では担当大臣が率先することになる。外務省が独立した組織として設置される以前は連邦首相が外交分野を担っていたが、のちに専任の大臣が独自に外交政策を担うようになった。最近の連邦首相はスポーツ担当相を兼ねている。
2007年以降の連邦政府において社会民主党の連邦首相アルフレート・グーゼンバウアーは、副首相・財務相を保守系の国民党に所属するヴィルヘルム・モルテラーが務めていることから、連邦首相としての権限が抑えられているような状況にある。これは2008年12月に発足したファイマン政権でも同様であり、国民党党首のヨゼフ・プレルが副首相・財務省についている。このような状況では政権が行き詰まるおそれがある。連立を組む政党がほぼ同じ勢力を持っているときは連邦大臣の役職を二分することになる(2000年には国民党から連邦首相が、自由党 (FPÖ) から財務相がそれぞれ選任され、また2007年以降は社会民主党から連邦首相が、国民党から財務相がそれぞれ選任されている)。また2007年以降は財務相が副首相職を兼務しているが、法律上は連邦首相と同じくとくにほかの連邦大臣に対する権力を持つことにはならないものの、議会においては両党がほぼ同じ勢力を持っており、実際の面では副首相職と財務相職とを兼ねるということは連邦首相の権限を政治的に抑えるということになる。
連立を構成する政党のなかでより勢力が大きく、また連邦大臣職を自党で独占することができた高い影響力を持っていたり、あるいは単独政権を樹立することができたりした連邦首相は、第二共和政においてはヨゼフ・クラウスとブルーノ・クライスキーだけで、両者は内政においてより強力な権限を有していた。
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