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大相撲の不祥事、犯罪行為 ウィキペディアから
時津風部屋力士暴行死事件(ときつかぜべやりきしぼうこうしじけん)は、2007年(平成19年)6月26日に大相撲時津風部屋に新弟子として在籍していた序ノ口力士・時太山(ときたいざん)が、愛知県犬山市の宿舎で暴行(私刑)を受け死亡した事件。新弟子リンチ死事件とも呼ばれている。力士を死亡させて刑事事件へ発展したのは協会が発足して以来、本事件が初めてのことである[1]。
2007年6月26日、同年春に時津風部屋に新弟子として入門した時太山[2](当時17歳)が稽古時間中に心肺停止状態となり、搬送先の犬山中央病院で約1時間後に死亡が確認された。救急車で時太山を搬送した犬山市消防本部は、巡業先を管轄する愛知県警犬山署に「労働災害の可能性あり。不審死の疑い」と連絡していたが、病院の医師は死因を急性心不全と診断、犬山署は虚血性心疾患に変更して発表した。
遺体に残された外傷や「死亡した新弟子はマリファナを使っていた」という不可解な証言、時太山に死因の責任を転嫁する当時の師匠・15代時津風(元小結双津竜、本名・山本順一)の発言や時太山の遺体を新潟の実家に渡そうとせず現地で火葬にしようとしたことから、時太山の両親が死因を不審に思い、地元の新潟市に遺体を搬送し、6月28日に新潟大学医学部で公費承諾解剖を実施したことから、暴行の事実が発覚した。
検察側の主張によると、時太山が稽古や人間関係の厳しさから部屋を脱走したことに15代時津風が憤慨して、6月25日にビール瓶で時太山の額を殴り、さらに数人の力士に対して「かわいがってやれ」と暴行を指示したとされている。翌26日も通常は5分程度のぶつかり稽古を30分ほど行い、時太山が倒れた後も蹴りを入れたり金属バットで殴打するなど集団暴行した。警察の任意取調べに対して、15代時津風や数人の兄弟子が容疑を認めた[3]。
こうした事態を受け、日本相撲協会は2007年10月5日に15代時津風を解雇したと発表した。日本相撲協会が年寄を解雇したのは1997年1月の16代山響(元小結・前乃臻)以来2例目、部屋持ち親方としては史上初のことであった。
2007年10月9日、解雇された15代時津風の後継として部屋を継承するために時津海正博が急遽現役を引退し、16代時津風を襲名した。
愛知県警は死因特定の遺体の組織検査の結果、長時間にわたる殴打や圧迫を受けて壊死した筋細胞から血液に漏出したミオグロビンやカリウムが通常よりも高い値で検出され、これにより挫滅症候群の症状を示したことが死亡の原因になったと判断した。火の点いた煙草を押しつけたと思われる火傷の痕などもあり、暴行と死亡との因果関係が立証されたため、2008年2月7日、元15代時津風と時太山の兄弟子3人を傷害および傷害致死容疑で逮捕した。また時太山の遺族に無断で遺体を火葬しようとしたことも発覚しており、暴行の事実を隠蔽しようとした疑いがもたれた[4]。同年2月29日、元十両豊乃國らこれとは別の兄弟子3人(うち1人はこの時点で引退済)が愛知県警に書類送検された(いずれも不起訴処分)。現役の2名は3月場所の出場停止処分を受けた。
兄弟子の1人は自身の公判において、「2007年6月20日に時太山の父親が、脱走した時太山が部屋にとどまることを懇願しに来たが、その際に時太山は部屋の屋上で喫煙し吸い殻を階段から投げ捨てており、日頃から近隣住民の苦情を受けていた15代時津風の妻がこれに憤慨し暴行を指示した」旨を証言している[5]。なお、この暴行の際に十両以上の力士は不在であったとされている[6]。
「角聖」と呼ばれる双葉山が興した部屋での事件とあって「よりにもよって…」「双葉山道場の看板を外せ!」と世間の見方は非常に厳しかった[7]。
2008年12月8日、暴行に関わった兄弟子3人は名古屋地方裁判所にて執行猶予付きの有罪判決(うち2人は懲役3年・執行猶予5年、1人は懲役2年6月・執行猶予5年)が確定し、これを理由として相撲協会を解雇されている。
2009年5月29日、名古屋地方裁判所は元15代時津風に対し懲役6年の実刑判決を言い渡した。15代時津風は即日控訴し保釈を申請した。この申請が認められ、同日、名古屋拘置所を出所した。保釈保証金は1,000万円。
2010年4月5日、名古屋高等裁判所にて控訴審の判決が言い渡された。名古屋高裁は一審終了後に元15代時津風が退職金を被害弁済に充当したことなどを情状として酌量し、一審判決を破棄し新たに懲役5年の実刑判決を下した。元15代時津風は即日上告したが、2011年8月29日付で最高裁判所は上告を棄却、二審の懲役5年の実刑判決が確定した[8]。元15代時津風は4年後の2014年8月12日、仮釈放中に東京都内の病院で肺癌のため64歳で死去した[9]。末期がんのため刑の執行が停止された状態であった。
2015年2月12日に警察庁が発表したところによると、全国の警察が2014年に取り扱った死体総数16万6353体(交通事故・東日本大震災関連を除く)のうち、事件性の有無を判断するために検視官が現場に立ち会った「臨場率」が、前年比9.6ポイント増の72.3%で過去最高であった。これは時津風部屋力士暴行死事件をきっかけに、死因究明上のポイントとされる検視官が増員された結果であるとされる[10]。
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