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『吸血姫美夕』(ヴァンパイア ミユ)は、1988年から1989年にかけて発売されたOVA。および、それを原作としてメディアミックス展開していった作品。
闇の世界から人間世界へはみ出したはぐれ神魔と、それを狩ることを宿命とする主人公・美夕との戦いを描いた作品である。制作当時、アダルトアニメ『くりいむレモン』シリーズで知られていた創映新社が一般向けにも販路を広げた作品の1つでもあり、1988年から1989年にかけてOVA全4巻が発売され、並行して垣野内成美による漫画版が連載された。
本作に登場する「吸血姫」(「ヴァンパイア」とルビが打たれる)のイメージは、ゴシックホラー作品に登場するような欧米の吸血鬼をモチーフにしているが、そこに和テイストを組み込むことで、従来の吸血鬼ものとは大きく異なる独特の美観を作り上げている。この独自の世界が美しい作画と幻想的なストーリーによって支えられ、女子中高生に人気を呼んだ。1997年にはテレビアニメ化されている。
OVA版・漫画版・テレビアニメ版では、それぞれ設定が微妙に異なる。OVA版は平野俊弘(現・平野俊貴)、垣野内成美、森木靖泰、会川昇(現・會川昇)らの主要メンバーによる合作であったが、コミック版やテレビアニメ版は平野と垣野内の夫妻によるほぼ単独作品であるため、耽美な世界観を追求したOVA版とエンターテインメント性を追求したテレビアニメ版ではまったく世界設定が異なり、どちらの世界を好むかでファンによって好き嫌いが分かれる形となった。
OVA版では美夕はより小悪魔的に描かれ、美少年を誘惑しようとする場面もあり、少女の外見と相反する妖女的な魅力を持った存在として演出されている。なお、ラヴァはOVA版では話すことができないという設定になっている。
第1話から第3話までは京都を舞台に、次々と起こる奇怪な事件に遭遇した霊媒師・瀬一三子の目を通して、事件を引き起こす神魔たちとそれを狩るために出現する不思議な少女・美夕の戦いを描き、第4話では鎌倉を舞台に、美夕が吸血姫として目覚めるまでが描かれている。
ナレーションは納谷悟朗が務める。
漫画版は垣野内成美作のホラー漫画。『サスペリア』(秋田書店)1988年4月号より断続的に連載された。
OVA版と同時期に連載された6話分が1989年に全1巻のコミックスとしてまとめられた後、スピンオフ作品の『吸血姫夕維』の連載をはさみ、1992年に『新・吸血姫美夕』のタイトルで連載再開。美夕がラヴァを奪回するために西洋神魔と戦う、「西洋神魔編」の物語が展開された。『新・吸血姫美夕』は1994年まで連載が続き、単行本は全5巻が発売された。
テレビアニメ化が行われた1998年には、『吸血姫美夕』のタイトルに戻した形で三度目の連載が行われる。連載はアニメ終了後も続き、2002年まで継続した。単行本は1989年のコミック『吸血姫美夕』を第1巻として再刊行し、第2巻以降に1998年連載分をまとめる形で、全10巻が発売された。
さらに2002年には秋田文庫にて文庫版の刊行が開始され、『美夕』全10巻と『新・美夕』全5巻の内容をすべて収録する形で、全10巻が発売された。
1989年版コミックスとコミックノベル版は平野夫妻の単独作品ではなくOVA版の漫画化作品のため、一時期は入手困難であった。
2017年から2020年まで、秋田書店が運営するウェブコミック配信サイト「チャンピオンクロス(2018年7月10日にマンガクロスへ移行)」にて『吸血姫美夕 朔』を連載。全7巻。
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OVA版と共通する登場人物は美夕、ラヴァ、レムレス、美夕の両親、神魔の長であるが、どれも設定が異なっている。美夕は両親が封印されているという設定がなく、ラヴァは自分の意思で仮面をはずすことができ、言葉も話せるといった部分が代表的な変更点である。
冷羽、松風、リリス、死無はテレビアニメ版から取り入れられたキャラクター。こちらも設定がテレビアニメ版とは異なっている。
垣野内成美が執筆を、平野俊弘が監修を担当した小説版。1990年5月25日に秋田書店より出版された。24ページのコミック作品『童の里』を併録。
『新・吸血姫美夕・西洋神魔編』のタイトルで、1993年にポニーキャニオンよりリリース。ドラマCD全6枚。漫画版の『新・吸血姫美夕』の内容を原作としている。3の限定盤は、サウンドトラックとセットになっており、1と2も収納可能なLPサイズのボックス使用。声優陣はおおむねOVA版に準ずる。
OVA版と比べると、美夕は生真面目な性格に設定されている。中学生・井上千里と美夕との友情や、監視者としての美夕の悲しい運命を主題にしている。また、ラヴァは自由に話せる設定になっている。
2004年6月20日、秋田書店より出版された。
テレビアニメ版の脚本を務めた小説家・早見裕司が執筆。原作の平野、垣野内夫妻が監修。垣野内は挿絵も担当。サスペリアミステリー誌掲載作品。
本作の世界観やキャラクターを流用したスピンオフ作品が、いくつか存在している。その多くは垣野内成美による漫画作品である。
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