レーティッシュ鉄道ABe8/12 3501-3515形電車 (レーティッシュてつどうABe8/12 3501-3515がたでんしゃ)は、スイス のレーティッシュ鉄道 の本線系統およびベルニナ線で使用される山岳鉄道用電車 である。愛称は「アレグラ」。
概要 基本情報, 運用者 ...
レーティッシュ鉄道ABe8/12 3501-3515形電車
ABe8/12 3502号編成、ポントレジーナ駅
基本情報 運用者
レーティッシュ鉄道 製造所
シュタッドラー・レール 製造年
2009年 - 2010年 製造数
15編成 主要諸元 編成
3両編成 軌間
1,000 mm 電気方式
交流15 kV 16.7 Hz / 直流1000 V 架空線式 最高運転速度
100 km/h 設計最高速度
120 km/h 編成重量
106 t 編成長
49,500 mm 幅
2,650 mm 高さ
3,800 mm 編成出力
2,600 kW (交流区間) 2,400 kW (直流区間) 制御方式
VVVFインバータ制御 制動装置
回生、空気、真空、電磁吸着ブレーキ テンプレートを表示
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ベルニナ線のティラーノ行き普通列車を牽引するABe8/12 3503号機、オスピッピッツォ・ベルニナ駅付近
スイスの鉄道では、1990年代 以降、低床式の客車や電車の導入により、バリアフリー化が推進されており、レーティッシュ鉄道でも1999年 製のBDt 1751-1758形 部分低床式 制御客車の導入によって一部列車のバリアフリー 化および終端駅での機関車付替作業の省略による効率化を図ってきたが、引続き近い将来代替が必要となる旧型の機材による運行が主体となっていた。そのため、2007年 にはさらにバリアフリー化や冷房化などのサービス向上と運行の効率化を図り、旧型の機材を代替するための4ステップからなる長期計画が以下の通り策定されている。
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レーティッシュ鉄道2007年機材近代化計画
ステップ 機種 導入数 予定運行区間 予算額 備考
第1ステップ
交直流電車 3両15編成 ベルニナ線、クール・アローザ線、ラントクアルト - ダヴォス 間 約150百万スイス・フラン 2010年運行開始予定
第2ステップ
交流電車 4両5編成 クール 近郊区間約50百万スイス・フラン 2007年末までに最終決定[註 1]
第3ステップ
客車 5両7編成 クール - サンモリッツ 間 約80百万スイス・フラン 2008-09年に導入の最終意思決定[註 2]
第4ステップ
交流電車 5両10編成 ディセンティス/ミュスター - シュクオール・タラスプ 間 - 導入については後日決定[註 3]
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本形式はこの計画の第1ステップ用の機材として計画されたもので、スイスのシュタッドラー [1] とボンバルディア・トランスポーテーション による提案を受け、結果前者に発注がされた機体であり、1947 、53年 製で本線系統用のGe4/4I 形 電気機関車 および1964 - 72年 製でベルニナ線用のABe4/4 41-49形 電車を代替できる、電化方式 AC 11 kV ・16 2/3 Hz の本線系統とDC 1000 V のベルニナ線の双方で使用可能な交直流電車 である。なお、本形式は片運転台式の電車であるABe4/4 351形電車と中間客車のBi 356形部分低床式客車、同じく片運転台電車のABe4/4 350形電車[2] からなる3両固定編成を総称してABe 8/12 3501-3515形としたものである。
本形式の設計は、スイスのシュタッドラー [1] が1997年 から製造している、走行機器を集中搭載した4輪単車 の動力車に1車体片側1台車で片持ち式の部分低床式客車を組み合わせたGTW[3] シリーズや、2004年 から製造している都市近郊列車用で、両先頭車の先頭部に走行機器を集中搭載した連接式 部分低床式電車であるFLIRT [4] シリーズといったモジュラー式構造の電車をベースとしているが、本形式はこれらの機体とは異なり、固定編成の電車列車で客車列車を代替するものではなく、従来の機関車兼用電車と同様に長編成の客車列車を牽引する運用を想定した設計となっているのが特徴で、可変電圧可変周波数制御 により、本線用のGe4/4III 形 [5] 電気機関車に匹敵する2600 kW の定格出力、260 kN の牽引力と100 km/h の最高速度の性能を持ち、35 ‰ で245 t を牽引可能な性能を持つ強力機であるとともに、低床部の床面高さをレール面上480 mmとしたバリアフリー対応の機体でもある。車体と機械部分の製造および最終組立をシュタッドラーが、主要な電機品の製造をABB Schweiz [6] が担当している。
なお、本機は2007年長期計画の第2ステップで導入されるクールおよびラントクアルト近郊用の電車であるABe4/16 3101-3105形 とともにレーティッシュ鉄道沿線で使用されているロマンシュ語 で「こんにちは」「ようこそ」などを意味する「アレグラ」(Allegra)の名称がつけられており、レーティッシュ鉄道内では本形式をALLEGRA-Zweispannungstriebzüge (ZTZ)、ABe4/16形をALLEGRA-Stammnetztriebzüge (STZ)として区分している。姉妹鉄道である日本の小田急箱根 でも、2014年登場の3000形 に「アレグラ号」の愛称を付与している。
各機体の編成番号と各車の機番、発注年、製造(予定)年、機体名(グラウビュンデン州 に縁のある人名)は以下の通り
ABe8/12 3501 - ABe4/4 351 01 + Bi 356 01 + ABe4/4 350 01 - 2007年 - 2009年 10月14日 - Willem Jan Holsboer[7]
ABe8/12 3502 - ABe4/4 351 02 + Bi 356 02 + ABe4/4 350 02 - 2007年 - 2009年11月6日 - Friedrich Hennings[8]
ABe8/12 3503 - ABe4/4 351 03 + Bi 356 03 + ABe4/4 350 03 - 2007年 - 2010年 3月19日 - Carlo Janka [9]
ABe8/12 3504 - ABe4/4 351 04 + Bi 356 04 + ABe4/4 350 04 - 2007年 - 2010年4月1日 - Dario Cologna[10]
ABe8/12 3505 - ABe4/4 351 05 + Bi 356 05 + ABe4/4 350 05 - 2007年 - 2010年4月16日 - Giovanni Segantini [11]
ABe8/12 3506 - ABe4/4 351 06 + Bi 356 06 + ABe4/4 350 06 - 2007年 - 2010年7月1日 - Anna von Planta
ABe8/12 3507 - ABe4/4 351 07 + Bi 356 07 + ABe4/4 350 07 - 2007年 - 2010年8月1日 - Benedetg Fontana[12]
ABe8/12 3508 - ABe4/4 351 08 + Bi 356 08 + ABe4/4 350 08 - 2007年 - 2010年9月9日 - Richard Coray[13]
ABe8/12 3509 - ABe4/4 351 09 + Bi 356 09 + ABe4/4 350 09 - 2007年 - 2010年11月9日 - Placidus Spescha[14]
ABe8/12 3510 - ABe4/4 351 10 + Bi 356 10 + ABe4/4 350 10 - 2007年 - 2010年11月12日 - Alberto Giacometti [15]
ABe8/12 3511 - ABe4/4 351 11 + Bi 356 11 + ABe4/4 350 11 - 2007年 - 2010年12月9日 - Otto Barblan[16]
ABe8/12 3512 - ABe4/4 351 12 + Bi 356 12 + ABe4/4 350 12 - 2007年 - 2011年 1月6日 - Jörg Jenatschr[17]
ABe8/12 3513 - ABe4/4 351 13 + Bi 356 13 + ABe4/4 350 13 - 2007年 - 2011年1月27日 - Simeon Bavier[18]
ABe8/12 3514 - ABe4/4 351 14 + Bi 356 14 + ABe4/4 350 14 - 2007年 - 2011年3月3日 - Steivan Brunies[19]
ABe8/12 3515 - ABe4/4 351 15 + Bi 356 15 + ABe4/4 350 15 - 2007年 - 2011年3月31日 - Alois Carigiet[20]
車体
先頭部、25+4芯の重連総括制御用、ベルニナ線暖房用DC 1000 V、18+1芯のドア・電灯制御用、本線系統の暖房用AC 300 Vの各電気連結器と圧縮空気、空気ブレーキ、真空ブレーキ用の各連結ホースを装備する 本形式の屋根上、各車に空調装置、集電装置を搭載するほか、両先頭車に主変圧器、主電動機等の冷却ファン、ブレーキ用抵抗器等を搭載する
本機は車軸配置 Bo'Bo'+2'2'+Bo'Bo'で3両固定の固定編成で、個別形式は前位側からABe4/4 350形電車、Bi 356形客車、ABe4/4 351形電車となっているが、固定編成で使用されることを前提としており、機器類も分散配置されている。編成両端のABe4/4 350、351形は床面高さ1050 mm の高床式、Bi 356形は台車上部が993 mmの高床式で車端部がスロープを経由して1050 mmまで床面が高くなっており、その他の部分がレーティッシュ鉄道のホーム高さに対応した床面高さ480 mmの低床式となっている。客室はABe4/4 350、351形が編成端側が1等室、編成中央側が2等室自転車 積載スペースが用意され、Bi 356形は全室2等室で車椅子 対応トイレ、車椅子スペース および自転車積載スペースが用意されている。
車体は急曲線のあるベルニナ線に対応した車体長16 m 級の短いもので、構体は基本的にアルミ 製で車端耐荷重800 kN に対応しており、運転台部分のみ縦方向に左右2本設置された太径の鋼管による骨組みにガラス繊維強化プラスチック 製外装を装備したもの、モジュール構造となっている車体は車体側面の上部を内側に絞り、台枠 は台車がはまり込む構造として屋根上機器および床下機器のカバーを装備したものとなっている。なお、車体の設計および製造の一部はdesign & technik[21] が担当している。
先頭部はGTWシリーズやFLIRTシリーズの流れを引くデザインで、縦方向に曲面で大きく絞り込み前面窓ガラス下部に段差を設け、左右側面も前面下部へ向かって内側へ絞った形状であり、大型の1枚曲面ガラスの全面窓ガラスの上部にLED の行先表示器 が設置されており、下部の左右および上部に前照灯とLEDの標識灯のユニットが設置されている。連結器は車体取付のねじ式連結器 で緩衝器(バッファ)が中央、フック・リングがその左右にあるタイプである。また、車体の前面下部に上部がステップを兼ねた大型のスノープラウ が、台車先頭部にも砂撒き装置 用の砂箱を兼ねた小型のスノープラウが設置されており、カーブの区間でも確実に除雪ができるようになっている。
側面は窓扉配置d2D3(ABe4/4 351形) - 3D2(Bi 356形) - 2D21(ABe4/4 350形)、もしくはd2D2(ABe4/4 350形) - 2D4(Bi 356形) - 3D21(ABe4/4 351形)で、側面窓は大型の固定式を基本として1両あたり2箇所程度が上段下降、下段固定式となっており、乗降扉脇の窓下部にはLED式の行先表示器が設置されている。なお、窓高さは低床部と高床部のもの上辺を揃えて設置されている。乗降扉はABe4/4 350、351形は有効幅850 mm片開式、Bi 356形は扉下部の床内に引込式のステップを設置した有効幅1300 mm両開式で、いずれも電気駆動のスライド式プラグドア となっている。
室内はABe4/4 350、351形は運転室の背面が1等室で、2+1列の3人掛けの固定式クロスシート が2ボックス設置され、その後部が出入口および自転車積載スペース、さらにその後部が2等室となっており、2+2列の4人掛けの固定クロスシートがABe4/4 351形では3ボックス、ABe4/4 350形では2ボックスが設置され、連結部は機器室となっている。Bi 356形は全室2等室で車体両端部の高床部に2+2列の4人掛けの固定クロスシートが2ボックスずつ、低床部は前位側から自転車積載スペースおよび手荷物積載スペース、出入口、車椅子対応の真空式トイレ、折畳式座席形付の車椅子スペースとなっている。座席は1等室、2等室いずれも1名分ずつの独立した形状のバケットシートで肘掛とヘッドレスト付で、1等室のものは黒系色のモケットと白の布製ヘッドレストカバー付、2等室のものは青系色のモケットとビニール製ヘッドレスト付のものとなっている。
室内には列車位置情報など各種案内用の液晶ディスプレイ が設置され、車内放送 装置、車外の行先表示器などと共にRuf-Gruppe[22] 製のVisiWebと呼ばれるシステムによって統合されている。
運転室は中央運転台のデスクタイプで、2ハンドル式のマスターコントローラー を設置しており、3面式の計器盤の各計器類は従来タイプの針式のもののほか、車両情報装置 用の液晶ディスプレイ が設置されており、乗降扉は左側のみの設置、側面窓には電動式のバックミラーが設置されている。
車体塗装は赤をベースに車体裾部が濃赤色で赤色との境界部分に銀帯が入り、窓周りを黒としたもので、ABe4/4 350、351形は2等室窓下に、Bi 356形は後位側の窓下にレーティッシュ鉄道のロゴが、側面乗降扉横の銀帯部にグラウビュンデン州 のロゴが入り、正面下部中央にはグラウビュンデン州 のエンブレムがつく。また、屋根および屋根上機器、乗降扉が銀色、床下機器と台車、床下機器カバーの下辺部はダークグレーである。
走行機器
制御方式は主変換装置 にIGBT を使用したものであり、交流区間ではコンバータ・インバータ式、直流区間ではインバータ式で主電動機を駆動しており、1台の主変換装置に2組のインバータと1組の補助電源装置を装備し、1組のインバータで1台の主電動機を制御することで、さまざまな天候下でも駆動力を確保できるように配慮したものとなっている。パンタグラフはシングルアーム式のものを各車に1基ずつを搭載しており、両端のABe4/4 350、351形のものが舟体を3本装備した大電流対応の直流用、中間のBi 356形のものが舟体2本の交流用のものであるが、3基は母線引通で接続されており電気的には差異はなく、直流用の電磁式遮断器 および交流用の真空遮断器 の双方が接続されている。
主変圧器はABe4/4 350、351形のそれぞれ床下中央にABB製で重量4800 kg のTyp LOT 1250が1基ずつ設置されており、入力は架線からAC 11 kV ・16.7 Hz 、出力は主変換装置用のAC 850 V・263 kVA を4組、暖房用としてAC 1000 V・200 kVAおよびAC 320 V・200 kVAを1組ずつ[23] となっており、冷却は油冷式で冷却油は屋根上に搭載された冷却ファンにより冷却される。
主変換装置はABB-Schweiz製のBordlineシリーズのうち、小型の交流/直流両用Typ Bordline CC700をABe4/4 350、351形床下に各2基搭載している。これらは補助電源用出力の違いでTyp CC700 SR1およびTyp CC700 SR2となっており、前者はコンバータ1基と主電動機制御用の出力各350 kW のインバータ2基、補機用三相AC 400 V・50 kVA (10 - 50 Hz)および蓄電池充電用DC 36 V・8 kW出力の補助電源装置1基を、後者は同じく主電動用インバータ2基と補機用三相AC 400 V・50 kVA (10 - 50 Hz)および三相AC 400 V・60 kVA (10 - 60 Hz)出力の補助電源装置をそれぞれ一体の筐体に収めたものとなっているほか、発電ブレーキ 用の125 kW用の抵抗器2基を屋根上に搭載している。
車両情報装置は力行、ブレーキ指令や空転制御やブレーキ力調整などの制御伝送や、乗降扉、空調装置、モニタ装置、各種表示装置の制御が可能であり、主な伝送にCANopen を使用しており、データレコーダーとしてはHASLER Rail[24] 製のTeloc1200を搭載する。
ブレーキ装置は電気ブレーキ として主変換装置による回生ブレーキ と屋根上に搭載したブレーキ用抵抗器を使用する発電ブレーキを装備するほか、列車用空気ブレーキ 、入替用直通空気ブレーキ 、列車用の真空ブレーキ および電磁吸着ブレーキ を装備する。
主電動機は連続定格出力250 kWのかご形三相誘導電動機 をABe4/4 350、351形に各4基ずつ搭載し、最大出力は交流区間で2600 kW、直流区間では2400 kW、牽引力260 kN、最高速度100 km/h の性能を発揮し、本線系統の35 ‰区間では245 t 、ベルニナ線の70 ‰区間では140 tを牽引することができる。
台車はStadler製の低床式台車で、ABe4/4 350、351形の動台車は車輪径810 mm、軸距2000 mm、Bi 356形の従台車は車輪径685 mmで軸距1800 mmのいずれもボルスタレス式台車 で枕ばね は空気ばね 、軸ばねはコイルばね で軸箱支持方式は軸梁式となっており、動台車には電磁吸着ブレーキを装備する。主電動機は台車枠に装荷され、動力は駆動装置出力軸と動軸に設置された中空軸間および、中空軸と動軸間に装備されたクイルと積層ゴムブロックを使用した継手で変位を吸収するクイル式駆動方式 の一種で動輪へ伝達される。
そのほか、電動空気圧縮機 、電動真空ポンプ 、空調装置 、蓄電池 などを搭載する。
主要諸元
軌間:1000 mm
電気方式:AC 15 kV 16.7 Hz およびDC 1000 V 架空線式
最大寸法:49500(ABe4/4 350、351形:16690、Bi 356形:16120)mm、全幅2650 mm、全高3800 mm
床面高さ:
ABe4/4 350、351形:1050 mm
Bi 356形:993 mm(高床部)、480 mm(低床部)
軸配置:Bo'Bo'+2'2'+Bo'Bo'
車輪径:
ABe4/4 350、351形:810 mm
Bi 356形:680 mm
自重:106 t
座席定員:24名(1等座席)、76名(2等座席)、14名(折畳座席)、2名(車椅子)
走行装置
主制御装置:IGBT使用のVVVFインバータ制御
主電動機:かご形三相誘導電動機、連続定格出力250 kW×4台×2両
最大出力:2600 kW (交流区間)、2400 kW(直流区間)
起動時牽引力:260 kN
最高速度:100 km/h (設計最高速度120 km/h)
ブレーキ装置:回生ブレーキ 、空気ブレーキ 、真空ブレーキ 、電磁吸着ブレーキ
本機はレーティッシュ鉄道への入線後各種の試運転を実施しており、2009年12月5日 には試運転においてフェライナトンネル 内で1000 mm軌間での世界最高速度である139 km/hを記録している[25] ほか、10月25日 にはアローザ線で188 t(7両の客車、貨車)の列車とアルブラ線で302 t(14両の客車、貨車)の列車、10月27日 にはベルニナ線で157 t(9両の客車)の列車の牽引試験を行っている。
本機はまず2010年5月のダイヤ改正 からまずベルニナ線での運用が開始され、その後増備のに従い、クール-アローザ線、ラントクアルト-ダヴォス 間での運用が開始される予定であったが、これに先立って2010年1月よりラントクアルト-ダヴォス間のレギオエクスプレス[26] の客車列車を牽引したり、アルブラ線の貨物列車を牽引するなど一部列車で運用が開始されているほか、2010年5月1日 にはラントクアルト工場にて3501-3504号機の命名式が執り行われている。
2010年5月13日 のダイヤ改正後は4運用が設定されて、例えば平日ではベルニナ線の旅客列車を主としてダヴォス・プラッツ-サンモリッツ-ティラーノ 間のベルニナ急行1往復、ラントクアルトとサンモリッツ もしくはポントレジーナ間のフェライナトンネル、エンガディン線経由の貨物列車1往復に使用される。なお、これに伴い、従来夏ダイヤ時のみ定期の2運用に使用されていたGem4/4形 ディーゼル/電気両用 機関車が通年で予備用兼工事/除雪用となるほか、同様に夏ダイヤでは9運用が設定されていたABe4/4 41-49形の運用が6運用に減少している。また、本線系統からサメーダン もしくはサンモリッツを経由してベルニナ線へ直通するベルニナ急行 の一部などの列車の牽引に使用され、到達時間の短縮が図られている。
本形式は通常は何両かの客車を牽引するほか、本形式への対応改造を実施したBDt 1751-1758形制御客車およびEW II系 [27] の制御客車であるBDt 1721-1723形の更新改造車からの遠隔制御や本形式3編成までの重連が可能となっている。また、貨車を併結した混合列車や貨物列車としても運行されており、貨物列車の場合は正面表示器にはドイツ語で貨物列車を表すGuterzugの表示がされる。
レーティッシュ鉄道のDC 1000 V区間であるベルニナ線はサンモリッツからイタリア のティラーノ間の全長60.69 km、最急勾配70 ‰、最急曲線半径45 m、最高高度2253 m、高度差1824 mの山岳路線である。
クール-アローザ線のスイス最古の都市クールから著名な避暑地 でありスキー リゾート であるアローザ間の全長25.7 km、最急勾配60 ‰、最急曲線半径60 m、最高高度1739 m、高度差1155 mの山岳路線である。
さらに見る 運用, 出庫 ...
ABe8/12形2015夏ダイヤ[註 1] 平日運用一覧
運用 出庫 運行概要 入庫
601
ラントクアルト
ラントクアルト - ポントレジーナ - サンモリッツ - ティラーノ - サンモリッツ - ティラーノ - ポスキアーヴォ
ポスキアーヴォ
602
ポスキアーヴォ
ポスキアーヴォ - サンモリッツ - ティラーノ - サンモリッツ - ティラーノ - サンモリッツ - ポントレジーナ
ポントレジーナ
603
ポントレジーナ
ポントレジーナ - ティラーノ - サンモリッツ - ティラーノ - サンモリッツ - ポスキアーヴォ
ポスキアーヴォ
604
ポスキアーヴォ
ポスキアーヴォ - サンモリッツ - ティラーノ - サンモリッツ - ティラーノ - ポスキアーヴォ - ポントレジーナ - ラントクアルト
ラントクアルト
605
ラントクアルト
ラントクアルト - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ
アローザ
606
アローザ
アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ
アローザ
607
アローザ
アローザ - クール - ラントクアルト - クール - ティラーノ - サンモリッツ - ティラーノ - ポスキアーヴォ
ポスキアーヴォ
608
ポスキアーヴォ
ポスキアーヴォ - ティラーノ - サンモリッツ - ティラーノ - ダヴォス・プラッツ
ダヴォス・プラッツ
609
ラントクアルト
ラントクアルト - ティラーノ - クール - ラントクアルト
ラントクアルト
610
アローザ(月-火曜) ラントクアルト(水-金曜)
(アローザ - )[註 2] /(アローザ - ラントクアルト - )[註 3] /(ラントクアルト - )[註 4] クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール - アローザ - クール( - ラントクアルト)[註 5] /( - アローザ)[註 6]
ラントクアルト(月-木曜) アローザ(金曜)
611
ラントクアルト
ラントクアルト - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - ラントクアルト - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ
ダヴォス・プラッツ
612
ダヴォス・プラッツ
ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - ラントクアルト - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - ラントクアルト - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - ラントクアルト - ダヴォス・プラッツ
ダヴォス・プラッツ
613
ダヴォス・プラッツ
ダヴォス・プラッツ - ラントクアルト - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - ラントクアルト - ダヴォス・プラッツ - フィリズール - ダヴォス・プラッツ - ラントクアルト - ダヴォス・プラッツ - ラントクアルト
ラントクアルト
614
(ラントクアルト)
運用予備
(ラントクアルト)
615
(ラントクアルト)
検査予備
(ラントクアルト)
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スイス国鉄の狭軌車両輸送車でシュタッドラー社のアルテンルハイン工場から輸送されるABe8/12 3515号機
ベルニナ急行を牽引するAbe8/12 3513号機、ティーフェンカステル駅、2013年
オープン車を含む客車8両を牽引するベルニナ線の列車、アルプ・グリュム駅、2011年
ABe8/12形が牽引する列車の先頭にXk 9141-9147形ラッセルヘッドを連結して運行される冬季のベルニナ線の列車、オスピッツォ・ベルニナ駅付近、2014年
スイス国鉄とレーティッシュ鉄道本線系統のクール駅前の路面に設けられたクール・アローザ線のクール駅に停車するABe8/12 3507号機が牽引する列車、2014年
ABe8/12形の前後端に制御客車および客車3両と、貨車5両を連結した11両編成のクール・アローザ線の列車、クール駅付近、2015年
クール・アローザ線で運行されるABe8/12 3501-3515形
ABe8/12形の電機品メーカーであるABBの広告塗装機となったABe8/12 3512号機、2015年
4両固定編成のABe4/16 3105号機、クール・シュタット駅
レーティッシュ鉄道では2007年の長期計画の第2段階で、本形式と同系のABe4/16 3101-3105号機 を2011年 から5編成導入して、Be4/4 511-516形 およびこれと編成を組む ABDt 1711-1716形制御客車、B 2411-2416形およびB 2417-2420形客車によるシャトルトレインを代替することとして、シュタッドラー社に総額50,000,000スイス・フランで発注し、2013年に運用を開始した。
ABe4/16形 はABe8/12 3501-3515形と異なり、基本的にはABt 316形制御客車、B 316形部分低床式客車、B 312形部分低床式客車、ABe4/4 310形電車で組成される4両固定編成単位で運用することを想定して定格出力も半分の1300 kWとなっており、電気方式もAC 11 kV・16 2/3 Hzのみの対応となっているほか、基本的には客車の牽引はせず、ABe4/16形単独もしくは重連での運行となっている。
なお、当初の計画と異なり、Be4/4 511-516形はローカル運用および季節列車用として転用され(事故廃車となった一部の客車を除き)引き続き運行されていたが、ABe4/16 形 「カプリコーン」の導入により廃車となった。
Stadler Rail AG, Bussnang
レーティッシュ鉄道では2007年11月1日 より新しい5桁からなる機番体系に移行しており、本機も当初計画時はABe4/4 861-875形、Bi 2811-2825形、ABe4/4 811-825形であった
Flinker Leichter Innovativer Regional-Triebzug、軽量高速で革新的な近郊用電車の意
1時間定格出力3200 kW、最大牽引力200 kN。35パーミルの坂・300 tを60 km/hで牽引可能
ABB Schweiz AG, Baden、ABBグループにおけるスイス国内会社の一つ
グラウビュンデン州出身の土木建設家、レーティッシュ鉄道の橋も手掛ける
グラウビュンデン州クール出身の政治家、連邦参事会 の一員
グラウビュンデン州出身で、スイス唯一の国立公園であるグラウビュンデン州のスイス国立公園 の設立提唱者
グラウビュンデン州トゥルン出身で絵本画家として知られる画家、グラッフィックデザイナー
design & technik AG, Altenrhein、FFA(Flug- und Fahrzeugwerke Altenrhein)やSWP (Schindler Waggonfablik)の流れを汲んでおり、鉄道車両の車体および内装のデザインおよび設計、製造を行う
Ruf Informatik AG, Ruf Telematik AG, Ruf Multimedia AG, Ruf Services AG, W&W Informatik AG, Ruf Diffusion SAで構成される鉄道情報システムメーカー
レーティッシュ鉄道では古くから暖房用電源はAC 300 Vを使用していたが、長編成化などによる使用電力増に対応するため、これを順次AC 1000 Vとするよう機材の改造を進めている
なお、それまでの最高記録はベルン-ソロトゥルン地域交通(RBS)のRABe4/12 21-26形(通称NExT)が2009年7月1日 に記録した134 km/hである
Hans-Bernhard Schönborn 「Die Rhätischen Bahn Geschichte und Gegenwart 」 (GeraMond) ISBN 978-3-7654-7162-9
『Neuen Triebzüge für die Rhätische Bahn』 「Schweizer Eisenbahn-Revue 7/2007」
『Mehr Nachfrage, neue Züge und unterbrochene Berninalinie bei der Rhätischen Bahn』 「Schweizer Eisenbahn-Revue 2/2009」
Daniel Ritter, Jürg Schoning, Günter Terragmolo, Niclas Wiesent 『”Allegra” - der neue Zweistromtriebzug für die Rhätischen Bahn』 「Schweizer Eisenbahn-Revue 5-6/2009」