Loading AI tools
ウィキペディアから
竹筋コンクリート(ちっきんコンクリート[1]、ちくきんコンクリート)は、芯に鉄筋を配したコンクリート[1]。英語ではBamboo Reinforced Concrete(BRC)とも呼ばれる。
日中戦争から太平洋戦争へと向かっていた昭和初期の日本において、鉄は戦略物資として兵器生産など軍需に優先的に回された。このため、民間事業や公共事業において鉄筋の代替となる素材が求められ、竹筋によるコンクリートが注目された。木筋による構造物も考案されたがコストや強度等の点で劣っていたため普及しなかった。
竹は亜熱帯性の気候で良く生育し、日本においては土壁に網状に組んだ割竹材を埋め込んで強度を上げるなどポピュラーな建材の一つであった。竹筋コンクリートの科学的な研究は大正年間には始まっており、大正から昭和初期に掛けて幾つかの構造物が試験的に竹筋コンクリートで施工された。
本格的な技術体系としては、1941年に滋賀県水口土木出張所長であった土木技師の河村協による著書『竹筋コンクリート』が刊行されたことが挙げられる[2]。この段階で工法として確立し、多くの建造物で竹筋コンクリートが採用された。
竹筋コンクリートは当時の鉄不足によって普及した工法であり、最低限の耐久力しか持たない戦時設計の例として挙げられることがあるが、実際の竹筋コンクリート構造物は戦時設計ではなく永久使用を前提したものが多かった。そのため、構造物が作られると、竹とコンクリートとの接着性が悪く(特に皮の部分)骨組みが離脱する恐れがあったことと、コンクリートのアルカリにより竹材内の脂質が分解されることで長期的に強度が低下する恐れがあったこと、竹材そのものが吸水乾燥によって膨張収縮するためにコンクリートにひび割れを発生させる恐れがあったことなどが問題点として指摘された。
河村はこれらの竹の欠点を克服する為、竹筋コンクリートの施工に当たっては、以下の様な施工方法を推奨している。
しかし、このような施工指針を遵守したても、大きな曲げ強度の掛かる梁や桁橋においては施工可能なスパンは最大でも4m程度であった。そのため、多くは柱や底版、橋脚基部などの圧縮強度が掛かる構造物に用いられる程度であった。
終戦後間もなく鉄筋材の供給体制が回復すると、鉄筋コンクリートが復活し竹筋コンクリートは廃れた。
日本においては、一部の竹筋コンクリート構造物が現存し、中には現役の構造物も存在する。また竹筋の可能性が指摘される、未確認の現役構造物もある。
現代での竹筋コンクリートの使用例としては、独立行政法人国際協力機構(JICA)が東南アジア諸国において、経済的事情から鉄筋の購入が難しい貧困地域向けの小規模建造物建設技術指導に、戦前の河村・細田の工法を用いている例がある[5]。東南アジアでも竹材の産出量が多い地域では、均しコンクリートの補強材等として補助的に竹筋コンクリートが施工される例は元より多く見られる傾向ではある[6]が、日本の大学などがバイオマス研究の一環として現地の研究機関と共に技術開発を模索している例も見られる[7][8][9]。
また、東北地方の産学が「竹筋コンクリート協議会」を設立した(日本大学工学部と東北大学および福島県・山形県の企業5社が参加)[1]。竹の活用などを目的として、2023年6月に試作品が日本産業規格(JIS)の強度を満たすことを確認し、同年11月26日には福島県南会津町で竹筋コンクリート製U字溝を休耕田に約70メートル設置して実証実験を始めた[1][10]。
日本以外での本格的な竹筋コンクリートの研究例としては、1966年にアメリカ海軍土木研究所(現・NSFEC)の土木技師、Francis E. Brink及びPaul J. Rushによってレポート『BAMBOO REINFORCED CONCRETE CONSTRUCTION』が発表されている[11]。
1990年代以降の中華人民共和国では違法な手抜き工事(豆腐渣工程、「豆腐渣」はおからのこと)により、、本来鉄筋を使うべき箇所に竹筋が使用された構造物の存在が多数発覚して問題となった[12]。また、中国では公道上の鋳鉄製品がすぐに盗難に遭ってしまう事情などにより、本来なら鋳鉄製品を使用すべき高速道路のマンホールの蓋に竹筋コンクリートが使用された事例が発生した[13]。
使用説があるもの、着工しても完成しなかったものも含む。
※印は竹筋であると確認されたもの。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.