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日本の連続テレビドラマ ウィキペディアから
『泣くな、はらちゃん』(なくな、はらちゃん)は、2013年1月19日から3月23日まで、日本テレビの『土曜ドラマ』枠(土曜日21:00 - 21:54、JST)で放送された日本のテレビドラマ、もしくは劇中に登場する架空の漫画。主演はTOKIOの長瀬智也で、岡田惠和の脚本によるオリジナル作品でもあった。
ヒロインが描く漫画の主人公が実体化して(ドラマ上の)現実の世界に現れ、創造主でもあるヒロインに恋をするというファンタジー作品である。
本作品の脚本は岡田が長瀬をイメージして書き下ろしたものであり[2]、「はらちゃん」のキャラクター作りには長瀬も積極的に意見を出し、スタッフもそれを取り入れて赤のスタジャンなど放送当時から見れば「時代錯誤」なファッションのキャラクター像を作り上げたという[2]。2011年8月に企画メモを作り企画書が完成したのは2012年4月である[3]。
また、本作のプロデューサーで『Q10』『妖怪人間ベム』など「人間でないものから人間を見て、人間って何だろうということを考えてきた」というコンセプトのドラマを手がけてきた河野英裕の談話によると、本作においてもそれらを踏襲しつつ、アプローチを変えてラブストーリーを軸に「人間を描く」ことを目的とし、そこから生まれたのが漫画から飛び出すヒーローであると語っている。[4]
ヒロイン役の麻生久美子については、漫画の世界から飛び出したはらちゃんが初めて恋をして追いかける女性にふさわしい「永遠の憧れを演じられる女優」として起用され、麻生にとっては約2年半ぶりの連ドラ出演となった[5]。
物語の舞台となる町は都会ではなく、懐かしさの残るノスタルジックな雰囲気の場所と設定され[6]、地域のフィルム・コミッション・みうら映画舎などの協力により、三崎下町商店街周辺を中心とする[7]神奈川県三浦市各所でロケが行われている[8]。ロケ地は昭和の雰囲気を残しており、河野は「この町なら、ドラマのようなファンタジーが起きてもおかしくないんじゃないかと思った」と当地を選んだ理由を語っている[7]。また、越前さんの家などのセットも落ち着いた雰囲気や長年の生活感をイメージして作られた[6]。
放送中、三崎の商店街内の交流スペースではロケ地の地図やキャラクターの衣装などが展示され、本作の影響でロケ地巡りをするファンが土日に数十組訪れたという影響をもたらしている[7]。
越前さんのノートに描かれた漫画の世界は以下のように設定されている。
絵柄は越前さんが矢東薫子の漫画を真似て描いたもの[9]。狭い居酒屋の中でストーリーは展開され、登場人物は後述の客6名のみ。越前さんが描く物事が現実の世界の情報すべてであったため、漫画の世界の住民は現実の世界においてのあらゆる物事や常識についてほぼ無知である。この世界の出来事は越前さんの描いた通りに起こるが、執筆中や閲覧中以外は登場人物は各々が意志を持ち自由に動いている。また、ノートの状況が漫画の世界に影響し、ノートに何かしらの衝撃が加わると漫画の世界で地震が起こり、ノートが雨に打たれると漫画の世界にも雨が降る。ただし、これらの事例は漫画自体には反映されない。
ノートに衝撃が加わり漫画の世界で地震が起こると、登場人物は狭間を通じて現実の世界へ行くことが出来るようになるが、ノートが開かれるとその人物は即座に漫画の世界へ戻される(現実の世界へ来た漫画の登場人物がノートを開いても同様である)。また、登場人物が現実の世界で所持していたものは所持者が漫画の世界へ戻る際に一緒に持って行くことが出来る。なお、漫画の世界を抜け出した登場人物はノートに描かれた漫画では中身が空白状態で輪郭だけが残り、その者が現実の世界から戻る際に元に戻る。
漫画の制作は、『シャンハイチャーリー』(IKKI COMIX・『月刊IKKI』連載)などの著作を持つ漫画家・ビブオが担当し、番組公式サイト内では放送に登場する漫画とオリジナル漫画が公開されている[10]。
この起用は前述の河野プロデューサーが以前手がけたドラマ『セクシーボイスアンドロボ』の原作漫画が『月刊IKKI』連載であった縁によるもので、同編集部の紹介による複数の漫画家の中から、ドラマの世界観に合う絵が描けるということで採用となった[4]。
制作にあたってビブオは、素人である越前さんが描く漫画については「下手ではない」「かっちり決まった絵より適度に抜けた感じのバランス」を意識し、その基となったプロの漫画家・矢東薫子の絵については、ラフでありながらプロの商品として成立する絵を描きわけている。こういった制作上の要求については、新人作家として漫画技術上の「足し算」を求められていたが今回は逆に「引き算」を要求されることになり、難題ではあるが自分にとっての財産になることを感じているという。各話の台本を基にネームを提出し、許可を受けて本番用を制作するという流れで、各話平均4ページほど描いている。また、撮影時に漫画を描く越前さんの手元は、漫画専用スタッフによるボディダブルとなっている。[4]
このほか、劇中に登場する荒田ヒトシの漫画『フライング・シュータ』は、同じく『月刊IKKI』連載歴を持つとんだばやしロンゲが担当している。
漫画の世界と現実の世界の間に当たる場所。白い凸凹の空間に黒く四角い枠が浮かぶ中に、1箇所だけ紙が破けたような裂け目があり、現実の世界への入口となっている。
漫画の世界における居酒屋の上部に存在し、居酒屋とは上下が逆さまになっている。漫画が描かれたノートに衝撃が加わると、漫画の世界で地震が起こるとともに上部から梁が落下。漫画の登場人物はこの梁をくぐることで狭間へ行くことができる。この梁は複数存在する。
劇中では、はらちゃんがたびたび、狭間に来ては裂け目をくぐって現実の世界へ足を踏み出す。はらちゃんがたびたび現実の世界に行くようになってからはマキヒロもこの狭間へ来るようになるが、行くことが出来なかったり、行ってもなぜか飛び込む直前で裂け目が閉じるために現実の世界へ行くことが出来ずにいたが、第5話で現実の世界へ行くことが出来た。また、第4話では偶然ながらあっくんが狭間を通じて現実の世界へ行ってしまったことがある。第7話では、漫画の世界の住民全員が梁をくぐって現実の世界へ行く。
かまぼこ工場ふなまる水産に勤務する独身女性・越前さんは、地味かつ薄幸で損してばかりの生活を送っている。そんな彼女は、自身の心の叫びを自作の漫画にぶつけることで日頃の鬱憤を紛らわしていた。主人公のはらちゃんを始め、漫画の世界の登場人物は彼女の恨み辛みを反映した暗い話をさせられることにうんざりするとともに、次第に暗く重くなりつつあるこの世界の行く末を危惧していた。
そんなある日、その漫画が描かれたノートに衝撃が加わったことで漫画の世界に影響が生じ、漫画の世界を抜け出したはらちゃんは実体化して現実の世界へ足を踏み出す。偶然に導かれるまま、自分たちを生み出した神様=作者である越前さんと出会ったはらちゃんは、越前さんが幸せになれば自分たちの世界が明るくなると考え、現実の世界で訴え働きかけるうちに彼女に片思いする。はらちゃんは漫画の世界と現実の世界を行き来しながら、越前さんにアタックしていく。
一方、現実の世界では田中くんが越前さんに想いを寄せ、同僚の紺野清美はそんな彼に片思いしている。越前さんの何事にも消極的な態度に苛立つ清美は、工場の企画などで何かとライバル心を露わにする。はらちゃんは越前さんを励まして清美との勝負に向かうよう働きかけ、越前さんもそれに応えてゆくとともに、はらちゃんに心を開いていく。
そんなある日、はらちゃんは自分たちのいる世界が越前さんの描いた漫画の中であることを知り愕然とする。作者である越前さん自身もそのことに気付いておらず当初は彼の言うことを信じていなかったが、風邪で倒れた越前さんがはらちゃんに看病されたあと、漫画に描いたバレンタインデーのチョコレートをはらちゃんが持って現れたことで、それが真実であると知って衝撃を受ける。また、自分の気持ちに気付かない田中くんの態度に落ち込んだ清美は、漫画の世界から飛び出したマキヒロに一目惚れされ、彼と恋を始める。ある日、はらちゃんと越前さんの仲を応援してくれていた玉田工場長が不慮の事故で亡くなる。はらちゃんは人間の世界の「死」というものを知り、「死」を悲しむ越前さんを慰め、二人は両思いになる。そしてはらちゃんのアイデアにより、越前さんは漫画の中にたまちゃんというキャラクターとして玉田の姿を描く。
生前の玉田に「結婚」について教えられたはらちゃんは、越前さんにプロポーズするが、彼女は互いの世界の違いに戸惑い、はらちゃんの申し出を断る。越前さんの言い訳を理解したはらちゃんは悲しみつつ、自ら漫画のノートを開き漫画の世界へ去って行く。その後、そのノートを越前さんの母が誤って資源回収に出してしまい、辿り着いた古紙再生工場で漫画の世界の住民全員が現実の世界へ飛び出してしまう。彼らは、越前さんのもとへ戻るために見知らぬ地を彷徨うなか、あっくんと親しくなった子犬・チビの縁で、車で旅をする一組の父子と出会う。父子の厚意でふなまる水産まで車で送ってもらう道すがら、お父さんが離婚したいきさつを聞き、越前さんとの仲についてアドバイスを受けたはらちゃんは、何があっても越前さんのそばから離れないと考えを改める。はらちゃんと再会し、気持ちを確かめ合った越前さんははらちゃんたちが漫画の世界へ戻らないよう、漫画のノートをビニールテープで封印し、二度と開かないと約束する。
漫画の世界の住民たちは越前さんの家に居候して現実の世界で暮らし始め、食事がおいしいことや働くこと、給料で買い物をする楽しみを知る。また越前さんも常識知らずな漫画の世界の住民たちに戸惑いつつも、いつも前向きな彼らを見て明るい気持ちになっていく。そんなある日、漫画の世界の住民の前に越前さんの同僚・矢口百合子が現れるとユキ姉が顔色を変える。百合子は自分が越前さんの憧れの漫画家・矢東薫子であり、現役時代に現実の世界へ来たユキ姉と出会うが、神様として慕われる重圧に耐えられなくなり、彼らの最期を漫画に描き、皆殺しにしたことを越前さんとはらちゃんに告白する。そのような経緯からユキ姉は百合子だけでなく越前さんも信じられないと話すが、越前さんは今まで心の支えになってくれた漫画の住民たちを幸せにしたい気持ちから決して殺さないと約束する。皆は越前さんの言葉に安堵するが、その日の夜、テレビに映る戦争・飢餓・災害などの現実の世界の悲しい出来事を目の当たりにして動揺する。
翌日、百合子は過去を気に病んで町を去ろうとするが、越前さんと漫画の世界の住民は彼女を引き止める。漫画の世界の住民たちは、神様として未熟な越前さんを支えて欲しいと説得し、ユキ姉も、既に許していることや百合子の描く世界が好きであったこと、嘗ての神様として自分たちの行く末を見届けるように訴え、百合子を思いとどめる。その後、遊んでいたはらちゃんたちは、柄の悪い男たちにボールをぶつけてしまい、彼らを怒らせて殴る蹴るの暴力を受ける。止めに入った越前さんまでもが殴られる姿を見たはらちゃんは、今までにない怒りを爆発させて男たちを激しく殴りつける。現実の世界の暗い面に傷つけられ、あっくんは怯え元の世界に帰りたがり、他の漫画の世界の住民も元の世界で生きることが最善と判断する。その結果、越前さんはノートの封を解いて彼らを元の世界に帰すが、その夜、越前さんは漫画のノートに自分が現れる漫画を描き、そのノートを開いて現実の世界から消え、漫画の世界へ行ってしまう。
百合子は漫画ノートを振って彼女を戻そうとするが、越前さんは現実の世界は自分がいなくても何も変わらないと言い、その呼びかけを拒絶する。しかし、はらちゃんはそんな越前さんを否定し、越前さんに自分自身を好きになり現実の世界と「両思い」になってもらいたいと願う。現実の世界では越前さんの弟・ひろしが漫画のノートを自転車に括り付けて引きずり、姉が帰って来ることを念じてひたすら自転車を走らせる。そして自転車が躓き転倒した衝撃で越前さんははらちゃんと一緒に戻ってくる。
はらちゃんの要望で、生前の玉田から聞いた人生で一番楽しい時期である「新婚生活」を越前さんとともに送る。同時に、現実の世界での生活を再開した越前さんは職場で自分の主張ができるように変わっていく。越前さんとの両思いを信じ、いずれ漫画の世界に戻るつもりでいたはらちゃんに、越前さんがいつか他の人を好きになったときのことを百合子は問うが、はらちゃんは、その結果で越前さんが幸せなら自分も幸せだと答える。百合子はそれを「愛」だと教える。越前さんとの別れ際に、自分の住む世界が好きで両思いになりたいと思っていること、越前さんにも現実の世界と両思いになってもらいたいと話し、現実の世界でどうしても困ったことがあったらいつでも駆けつけると約束し、はらちゃんは漫画の世界に去っていく。
その後、越前さんは正式に工場長になり、清美も田中くんに告白し、矢東薫子は漫画家として復帰する。越前さんは相変わらず漫画に愚痴を描くが、その内容は以前より前向きで明るく、背景や小道具などは皆の好きな物であふれていた。越前さんは、現実の世界とはまだまだ両思いにはなれず、美しい片思い中とノートに話しかけ、はらちゃんに会いたい気持ちを押さえていた。
ある大雨の日、越前さんは転倒し、同時にノートに衝撃が加わる。約束通りに現れたはらちゃんは越前さんに傘を差し出し、互いに笑顔を浮かべるのであった。
一部の人物を除き、本名は明らかにされていない。また、役名に敬称がついている場合それを略して呼ぶことはない。ただし、新聞の番組紹介で越前さんのことを「越前」と呼び捨てにして紹介している事例がある。[11]
元々は矢東薫子の漫画の世界で生きていたが、矢東が彼らが銃殺されるという結末を描き、一度は死を迎えた。しかし、越前さんが自身の漫画に彼らを描いたことで蘇生され、死亡以前の記憶を残したままこの世界で生を繰り返すことになる。
放送開始時点では全員がはらちゃんの正体に気づいておらず、パートリーダー・矢口も漫画の主人公に似た人だと気付いた程度である。そのため、越前さんさえも当初は現実の世界に来たはらちゃんを自分の漫画の世界から抜け出した主人公とは知らなかったが、第4話のバレンタインデーを境に真実を知ることとなる。
本作における音楽は重要なモチーフであり、作中の歌曲は音楽担当の井上鑑が作曲・編曲し、作詞は脚本の岡田惠和が手がけている(エンディングテーマのTOKIO「リリック」は長瀬作)。中でもオープニングテーマの「私の世界」は、越前さんの心を表現した内容で、挿入歌としても繰り返し重要な場面に登場する。なお、設定上この曲はもともと紺野清美が田中くんへの片思いを歌った挿入歌「初恋は片思い」のメロディをはらちゃんが拝借し、越前さんの漫画に書かれた歌詞を乗せたものである。
バージョンは主人公のはらちゃんたちにより劇中で歌われるものと、オープニングなどでかもめ児童合唱団が歌うものがある。この合唱団は本作の舞台である三浦市で活動しており、もともとはサントラ向けの収録だったものが本編でも使われることになった。放送開始後、着うたでも配信され、配信サイト「オリコンスタイルフル」では、配信開始後1週間のランキングで1位となった。児童合唱団の楽曲が着うたで首位を獲得するのは異例のことである。[14]3月11日発表のレコチョクデイリーランキングでも、スマートフォン・PC向けダウンロードおよび着うたフルのランキングで1位となっている[15]。
岡田惠和のラジオ番組で「私の世界」を“今世紀の名曲”と発言していた薬師丸ひろ子は[16]、2013年10月に開催された自らの35周年記念コンサートのアンコール1曲目に「私の世界」を選んだ[17]。
コラムニストの亀和田武は、『週刊文春』の連載コラムで「死と愛、家族と仲間、普遍的で重いテーマが、ポップな映像と物語で展開される奇跡に、私たちは立ち会っている」と評価している[18]。
第76回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では、劇中歌「私の世界」が「ザテレビジョン特別賞」を受賞したのを始め、作品賞2位、主演男優賞2位(長瀬)、助演女優賞2位(麻生)、脚本賞2位、監督賞2位に選ばれている。「単純だからこそ胸に響く各回のテーマが良かった」など、脚本とキャストの力が評価されており、審査員の漫画家・カトリーヌあやこは、キャラクターの現実世界での実体化というテーマに、「創作というものについていろいろと夢想してしまうドラマでした」という寸評を寄せている。[19]
東京ドラマアウォード2013では、作品賞優秀賞を受賞した[20]。
放送回 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 視聴率[21] |
---|---|---|---|---|
第1話 | 1月19日 | 恋するヒーロー!! | 菅原伸太郎 | 12.9%[22] |
第2話 | 1月26日 | 恋したけど片思い | 10.3% | |
第3話 | 2月 | 2日両思いになる方法 | 狩山俊輔 | 9.7% |
第4話 | 2月 | 9日涙のバレンタイン | 9.3% | |
第5話 | 2月16日 | もう会えないの? | 菅原伸太郎 | 9.7% |
第6話 | 2月23日 | 家族になりましょ | 松山雅則 | 11.0%[22] |
第7話 | 3月 | 2日ずっと一緒 | 狩山俊輔 | 9.3% |
第8話 | 3月 | 9日神様のナゾの真相 | 菅原伸太郎 | 9.9% |
第9話 | 3月16日 | 2人が選んだ結末 | 狩山俊輔 | 9.3% |
最終話 | 3月23日 | 私の世界 | 菅原伸太郎 | 10.3%[22] |
平均視聴率 10.2%[19][22](視聴率は関東地区・ビデオリサーチ社調べ) |
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