ながれ

なかれ も参照。

日本語

動詞

ながれ【流れ】

1. 「ながれる」の未然形。
2. 「ながれる」の連用形。

名詞

ながれ

1. 流体が一方方向に動くこと。
   • ここの川（かわ）の流れは速（はや）い。
2. 時間の経過。
   • 引（ひ）っ越（こ）してから数日の時間の流れは速（はや）く感じられた。
   • 騒がしい時勢の中に、月日の流れは、殊に早く思われた。（吉川英治、『山浦清麿』、1938年）
3. 特定の時代や時期における精神的な背景。
4. その場のいきおい。はずみ。なりゆき。
5. 流れる水や川。
   • 前橋市から、越後街道を利根の流れにそふて、渋川へ向ふ。この辺一帯に桑畑である。（野口雨情、『大利根八十里を溯る』、1926年。
6. 時代を経て区分される特定の集団の仲間分け。
7. 特定の催し物の後の小集団の行動。^[1]二次会など。
8. ある決められた順序による配列。
9. さすらうこと。いつどうなるかわからない境遇におちいること。多くは遊女になることを言う。
10. さすらい人（びと）。通常は遊女を言う。
11. 目上の者から注いで貰う酒。^[1]おながれ。
12. 催しが実施されずに終わること。おながれ。
13. 屋根のうち、棟（むね）から軒（のき）にかけての傾いた部分。^[1]
14. 質屋へ預けた物を受け出す期限が切れて、所有権を失うこと。^[1]

発音

• (東京式) ながれ​ [nàgáréꜜ] (尾高型 – [3])
• IPA^(?): [na̠ɡa̠ɾe̞]
• (京阪式) な​がれ

類義語

語義3: ＜特定の時節における精神背景＞

• きらい、傾向、時流、潮流、風潮、向（む）き

語義5: ＜流れる水＞

• 流水

語義6: ＜時代を経た特定集団の仲間分け＞

• 系統、血統、派、流派

語義8: ＜決められた順列＞

• 過程、工程、手順（てじゅん）

語義9: ＜さすらう事＞

• さすらい、漂泊、浮浪、彷徨、放浪、流浪

語義12: ＜実施されずに終わる事＞

• 中止；　〔俗語〕 おじゃん、ぱあ

関連語

• ながい
• ながす
• ながし

語義13:

• 質流れ

派生語

語義8または9: ＜さすらう事＞；　＜さすらい人＞

• 流れの身（み）

1. 各地を放浪する境遇。^[1]

2. 遊女の境遇。

連語

語義1: ＜流体が一方向に動く事＞

• 川（かわ）の流れ
  • 川の流れの様に

語義2および3: ＜時間の経過＞；　＜特定の時節における精神的背景＞

• 時（とき）の流れ
  • 時の流れに逆（さか）らう
  • 時の流れに従（したが）う

語義3: ＜特定の時節における精神的背景＞

• 流れが変（か）わる
• 流れに逆（さか）らう
• 流れに従（したが）う
• 流れに呑（の）まれる
• 流れに乗（の）る
• 流れを変（か）える
• 流れを加速させる
• 流れを切（き）る
  • 〔俗語〕 流れをぶった切る^{（-ぎる）}
• 流れを無視する
• 流れを読（よ）む

語義6: ＜時代を経た特定集団の仲間分け＞

• 名門の流れ
  • 名門の流れを汲（く）む

語義7: ＜催事後の小集団の行動＞

• 祝勝会の流れ^[1]

語義8: ＜決められた順列＞

• 一連の流れ
• 作業の流れ

語義11: ＜目上の者からの酌＞

• お流れ頂戴^[1]

語義12: ＜実施されずに終わる事＞

• お流れになる^[1]
  • 運動会がお流れになる

語義13: ＜屋根の傾き部分＞

• 片（かた）流れの家（いえ）^[1]

複合語

語義7: ＜催事後の小集団の行動＞

• 流れ解散 - 特定のイベントや集会などが終わる際、用事を終えた者から順次帰っていくこと。

語義13: ＜屋根の傾き部分＞

• 片（かた）流（なが）れ
• 流（なが）れ造（づく）り

翻訳

語義1:

気体の流れ

• イタリア語: flusso 男性
• 英語: flow ^(en)
• スウェーデン語: ström 通性, flöde 中性
• スロヴァキア語: prúd 男性, tok 男性
• スロヴェニア語: tok 男性
• セルビア・クロアチア語:

  キリル文字: ток ^(sh) 男性, течење ^(sh) 中性

  ラテン文字: tok ^(sh) 男性, tečenje ^(sh) 中性

• チェコ語: tok 男性, proudění 中性
• デンマーク語: strøm 通性
• ドイツ語: Fluss 男性
• トルコ語: akış
• ノルウェー語: flom 男性, strøm 男性
• フィンランド語: virtaus
• フランス語: écoulement 男性
• ブルガリア語: течение 中性
• ブルトン語: beradur 男性
• ポーランド語: przepływ 男性
• ポルトガル語: fluxo 男性
• ルーマニア語: curgere 女性
• ロシア語: течение ^(ru) 中性 (tečenije), поток ^(ru) 男性 (potok)

潮の流れ

• イタリア語: riflusso 中性
• 英語: flow ^(en)
• スロヴァキア語: príliv 男性
• チェコ語: příliv 男性
• デンマーク語: flod
• ドイツ語: Flut 女性
• ノルウェー語: flo 女性 or 男性
• フィンランド語: vuoksi, nousuvesi
• フランス語: flux 男性
• ブルトン語: lanv 男性
• ポーランド語: przypływ 男性
• ポルトガル語: fluxo da maré
• ルーマニア語: flux 中性
• ロシア語: прилив ^(ru) 男性 (priliv)

語義1および2:

流体が一方向に動く事；　時間の経過

• 英語: flow ^(en), current ^(en), stream ^(en)
• ドイツ語: Strom ^(de) 男性
• ブークモール: strøm ^(no) 男性
• フランス語: courant ^(fr) 男性, cours ^(en) 男性
• ポーランド語: strumień ^(pl) 男性, nurt ^(pl) 男性, prąd ^(pl) 男性, bieg ^(pl) 男性
• リトアニア語: srautas ^(lt) 男性, srovė ^(lt) 女性, tėkmė ^(lt) 女性, čiurkšlė ^(lt) 女性, čiurlys ^(lt) 男性

語義3:

特定の時節における精神的背景

• 英語: stream ^(en), context ^(en), tendency ^(en)
• ドイツ語: Strom ^(de) 男性
• ポーランド語: kierunek ^(pl) 男性, nurt ^(pl) 男性, prąd ^(pl), tendencja ^(pl) 女性

語義5:

流れる水

• 英語: stream ^(en)
• ポーランド語: strumień ^(pl) 男性, prąd ^(pl) 男性
• リトアニア語: srovė ^(lt) 女性

語義6:

時代を経た特定集団の仲間分け

• 英語: school ^(en)
• ポーランド語: szkoła ^(pl) 女性, styl ^(pl) 男性
• リトアニア語: mokykla ^(lt), srovė ^(lt) 女性

語義7: ＜催事後の小集団の行動＞

語義8:

決められた順列

• 英語: process ^(en)
• ポーランド語: proces ^(pl) 男性, przebieg ^(pl) 男性
• リトアニア語: eiga ^(lt) 女性, procesas ^(lt) 男性

語義9:

さすらう事

• 英語: tramp ^(en), wandering ^(en)
• ポーランド語: wędrówka ^(pl) 女性, włóczęga ^(pl) 女性

語義10:

さすらい人

• 英語: tramp ^(en), vagabond ^(en), wanderer ^(en); （遊女） prostitute ^(en)
• ポーランド語: wędrowiec ^(pl) 男性, włóczęga ^(pl) 男性, wagabunda ^(pl) 男性; （遊女） prostytutka ^(pl) 女性, 〔婉曲的に〕 kobieta lekkich obyczajów ^(pl) 女性, profesjonalistka ^(pl) 女性

語義11:

目上の者からの酌

• ポーランド語: nalewanie alkoholu przez przełożonego/przełożoną/przełożonych/przełożone 中性

語義12:

実施されずに終わる事

• 英語: being called off
• ポーランド語: nieodbywanie się ^(pl)

語義13: ＜屋根の傾き部分＞

語義14:

預けた物を期限切れで質屋に没収される事

• 英語: forfeiture ^(en)

参照

語義3:

• 空気、状況、伝統、流行（はや）り、風俗、雰囲気、文脈、モード、流行

語義5:

• 渓流、清流

語義6:

• スタイル、様式

語義9:

• 旅（たび）回（まわ）り、徘徊

語義10:

• ジプシー、旅芸人^{（たびげいにん）}、旅人（たびびと）、売春婦、浪士、浪人

語義11:

• 酌、杯

接尾辞

ながれ【流れ】

1. 「旗」などの細長いものを数えるための助数詞。^[1]
   • 寺の境内が見渡されるのだが、何かの忌日で赤い流れ旗が一ながれ夕やみの中によどんで見えた。（室生犀星「三階の家」）〔1926年〕^[2]
   • と、左右の小山の蔭から、菊水の旗二流れあらわれ、三百余騎が殺到して来た。（国枝史郎「あさひの鎧」）〔1934年〕^[3]

参照

• 棹・竿（さお）
• 本
• 旒

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古典日本語

発音

三拍名詞四類^(?)

• (平安時代)ながれ
• (南北朝時代)なが​れ
• (室町時代)なが​れ
• (江戸時代)なが​れ

名詞

ながれ【流れ】

1. 流（なが）れること。流れるもの。
2. 杯（さかずき）に残（のこ）った酒（さけ）の滴（しずく）。
3. 血統。子孫。
4. 流派。流儀。

接尾辞

ながれ【流れ】

1. （現代語に同じ）

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脚注

1. 梅棹忠夫、金田一春彦・他監修『講談社 カラー版 日本語大辞典』1989年、1442頁。ISBN 4-06-121057-2
2. 青空文庫（2013年8月20日作成、2013年10月11日修正）（底本：「文豪怪談傑作選　室生犀星集　童子」ちくま文庫、筑摩書房、2008年9月10日第1刷）https://www.aozora.gr.jp/cards/001579/files/53173_51203.html 2019年1月20日参照。
3. 青空文庫（2018年11月24日作成）（底本：「あさひの鎧（上）」国枝史郎伝奇文庫、講談社、1976年9月20日第1刷発行。「あさひの鎧（下）」国枝史郎伝奇文庫、講談社、1976年9月20日第1刷発行）https://www.aozora.gr.jp/cards/000255/files/45546_66514.html 2019年1月20日参照。