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『蜩ノ記』(ひぐらしのき)は、葉室麟による日本の時代小説。『小説NON』(祥伝社)にて2010年11月号から2011年8月号まで、「秋蜩」のタイトルで連載された。第146回直木三十五賞受賞作。2012年6月にNHK-FMラジオ「青春アドベンチャー」にてラジオドラマ化され、2014年に映画が公開された。
蜩ノ記 | ||
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著者 | 葉室麟 | |
発行日 |
2011年10月26日(単行本) 2013年11月8日(文庫本) | |
発行元 | 祥伝社 | |
ジャンル | 時代小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 単行本・文庫本 | |
ページ数 | 327(単行本)・416(文庫本) | |
コード |
ISBN 978-4396633738 ISBN 978-4396338909 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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葉室麟の作品は、2009年から4年連続で候補になり、5度目での受賞となった。
選考委員らは「受賞に値する作品」(渡辺淳一)、「深い素養がなくてはかけない作品」(宮部みゆき)、「定められた命を感情表現に頼らずに写し取った技は秀逸」(浅田次郎)、「若い作家ではこうはいかない」(伊集院静)と総じて好意的な評価をしているが、「主人公らが清廉すぎる」(林真理子)、「既視感に満ちた話」(桐野夏生)、「おどろきがない」(宮城谷昌光)など批判的な意見もあった[1]。
豊後、羽根(うね)藩。
城内で刃傷騒ぎを起こした檀野庄三郎(だんの しょうざぶろう)は、家老・中根兵右衛門の温情で切腹を免れたものの、僻村にいる元の側用人・戸田秋谷(とだ しゅうこく)の監視を命じられた。
秋谷は、家譜の編纂を任される程の逸材だったが、7年前に藩主の側室との不義密通の罪で失脚した。直ちに切腹のところを、家譜の完成の為に藩主から10年の猶予を与えられ、幽閉されているのだ。秋谷の家で寝食を共にし、家譜の編纂を手伝う内に、秋谷とその家族の誠実な人柄に触れ、敬愛の念を抱いて行く庄三郎。
秋谷の無実を確信し、7年前の事件を調べる庄三郎。藩主の側室“お由の方”は男子を産んだが、7年前に、その幼子は世継ぎ争いで斬殺された。秋谷は、お家騒動を理由に藩がお取り潰しになるのを防ぐ為に、幼子を病死とし、切り合いを自身の不義密通の騒ぎに見せかけて藩を守ったのだった。世継ぎ争いに勝った現在の藩主の生母は“お美代の方”で、武家の出として正室の座にあったが、実は藩内の裕福な商人・播磨屋の先代の娘だった。播磨屋は家老の中根と結託して、年貢に苦しむ農民に金を貸しては田畑を取り上げていた。お美代の方の“御由来書”(履歴書)を調べ上げ、その事実を掴む秋谷。
御由来書を引き渡せと、秋谷に迫る家老の一派。秋谷がしらを切ると、周囲に強訴の動きがあるとして村人が捕縛された。友人を取り調べ中に殺され、納得できない秋谷の息子・郁太郎。家老の屋敷に抗議に行くと言う郁太郎に、黙って付き添う庄三郎。純真な少年に非道な行いを責められ、恥じ入る家老の中根。
拘束された息子と庄三郎を取り戻す為に、家老の屋敷に向かう秋谷。降参すれば切腹を免じるという家老の中根。その言葉を無視した秋谷は予定通りの切腹を約束して、郁太郎と庄三郎を救った。10年後の切腹は、元より覚悟の秋谷。お家騒動を隠蔽し罪を被ることは、亡き先代君主からの密命だったのだ。藩の家譜を完成させ、家督を息子に譲った秋谷は淡々と身支度を整え、切腹の場へと向かうのだった。
秋谷が郡奉行だった時分に、生産を奨励した〈豊後の青筵〉と呼ばれる七島筵が庶民の畳表として用いられるようになり、特産品として藩の財政と農民の暮らしを潤した。藩では、藺草(い草)の栽培には課税せず百姓に通常の年貢だけを課し、藺草を加工して作った筵を買い取り大坂に売る商人から運上銀を納めさせていた。しかし、秋谷が郡奉行を退き江戸詰めになってから、筵の運上銀を村方からも取り立てるようになった。藺草を植えた田は稲田としても年貢を課されるため、二重に納税しなければならない農民は重税にあえぐようになる。
さらに、博多の商人である播磨屋が、その年の筵の生産量に拘わらず藩に一定額の運上銀を納めることで、七島筵を一手に買い付けることを認められた。これによって藩の収入は安定したが、播磨屋から筵を安く買い叩かれることになった百姓が他の商人に筵を売り、抜け売りをしたとして咎められ牢に入れられるなどし、播磨屋だけが儲かる仕組みに百姓の不満は蓄積していった。
NHK-FM放送「青春アドベンチャー」にて、2012年6月18日から6月22日、6月25日から6月29日まで放送された。全10回。
2014年10月4日より全国東宝系にて公開。テレビ東京開局50周年記念作品[3]。
監督を務めるのは、黒澤明に師事しその遺作シナリオを引き継いだ初監督作品『雨あがる』でヴェネツィア国際映画祭・緑の獅子賞など多くの賞を受賞した小泉堯史[4]。撮影は岩手県遠野市などを中心にオールロケで行われた。映画用フィルムの製造減少に伴い、本作は国内最後のフィルム映画になるとみられる[5]。主演の役所広司と岡田准一は本作が初共演となり、武術に精通する岡田は撮影に備え2012年冬から居合の道場に弟子入りし、初めて時代劇で本格的な殺陣に挑戦した[6]。
全国330スクリーンで公開され、4日・5日の2日間で観客動員12万8647人、興行収入1億5362万4900円を記録し、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第2位となった[7]。
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