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食用とされる肝臓 ウィキペディアから
レバー(ドイツ語: Leber、英語: liver)とは、肝臓のことである。肝(きも)と呼ばれることもある。日本語でレバーというと、食用の、家畜や家禽の肝臓を指すことが多い。日本で主に食用にされているレバーは、哺乳類、鳥類、魚貝類のものである。ビタミンA、ビタミンB群、鉄分、葉酸を多く含むとされる。
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 564 kJ (135 kcal) |
3.89 g | |
糖類 | 0 g |
食物繊維 | 0 g |
3.63 g | |
飽和脂肪酸 | 1.233 g |
トランス脂肪酸 | 0.17 g |
一価不飽和 | 0.479 g |
多価不飽和 |
0.465 g 0.007 g 0.318 g |
20.36 g | |
トリプトファン | 0.263 g |
トレオニン | 0.869 g |
イソロイシン | 0.967 g |
ロイシン | 1.91 g |
リシン | 1.607 g |
メチオニン | 0.543 g |
シスチン | 0.376 g |
フェニルアラニン | 1.084 g |
チロシン | 0.807 g |
バリン | 1.26 g |
アルギニン | 1.241 g |
ヒスチジン | 0.629 g |
アラニン | 1.164 g |
アスパラギン酸 | 1.927 g |
グルタミン酸 | 2.612 g |
グリシン | 1.164 g |
プロリン | 0.961 g |
セリン | 0.905 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(621%) 4968 µg(2%) 232 µg0 µg |
チアミン (B1) |
(16%) 0.189 mg |
リボフラビン (B2) |
(230%) 2.755 mg |
ナイアシン (B3) |
(88%) 13.175 mg |
パントテン酸 (B5) |
(143%) 7.173 mg |
ビタミンB6 |
(83%) 1.083 mg |
葉酸 (B9) |
(73%) 290 µg |
ビタミンB12 |
(2471%) 59.3 µg |
コリン |
(68%) 333.3 mg |
ビタミンC |
(2%) 1.3 mg |
ビタミンD |
(8%) 49 IU |
ビタミンE |
(3%) 0.38 mg |
ビタミンK |
(3%) 3.1 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(5%) 69 mg |
カリウム |
(7%) 313 mg |
カルシウム |
(1%) 5 mg |
マグネシウム |
(5%) 18 mg |
リン |
(55%) 387 mg |
鉄分 |
(38%) 4.9 mg |
亜鉛 |
(42%) 4 mg |
マンガン |
(15%) 0.31 mg |
セレン |
(57%) 39.7 µg |
他の成分 | |
水分 | 70.81 g |
コレステロール | 275 mg |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース |
レバーはビタミンA、ビタミンB群、鉄分、葉酸等を多く含む。葉酸、鉄分は造血を助ける働きがあり、貧血防止や妊婦など、多量の鉄分摂取が必要な人には理想的な食べ物であるといわれている。しかし、ビタミンAが豊富に含まれているが故に過剰摂取は頭痛やめまいを引き起こし、妊婦場合はビタミンAの過剰摂取による催奇形性がある為、レバーの1日の摂取量は100g程度を目安にし、食べすぎないように心がけるべきである。また、レバーには、ビタミンB6の一種であるピリドキサミンが、他の部位や他の食品に比べて多く含まれている[1][2]。牛や豚のレバーは消化酵素を加えて加水分解され、肝臓水解物として二日酔いや慢性肝疾患治療の医薬品原料となる。
栄養価は高いが、血の味がするなど、癖が強く、また、火を通しすぎるとボソボソした食感となるので、好き嫌いがはっきりしやすい。加熱調理の場合には、水に晒すなど、血抜きをしなければならない。この下処理を怠ると、血の味が強く残ってしまい、美味しく仕上がらない。レバーの臭みは、肝臓に含まれるアラキドン酸が、血液の鉄分と反応して起きる[3]ためである。血抜き以外では、牛乳などに浸して、マスキングで臭みを消す方法もある。また酢を使って臭みを取るという方法もある。揚げて、スパイスを利かせると、臭みもあまり気にならない。
主な調理法は、焼肉の焼きレバー、焼き鳥の串レバーなどが挙げられる。牛レバーの料理の定番としては、ニラと合わせて炒める中華風のレバニラ炒めがある。茨城県のスタミナラーメンなど、中華風の麺料理に使われることもある。鶏のレバーはショウガで臭みを消して、甘辛い煮物にされることが多い。また、レバーを生のまま刺身状にスライスし、塩と胡麻油などにつけて食べるレバ刺しがある(ただし、後述の通り2012年7月から飲食店での提供は禁止となった)。
日本の郷土料理では、沖縄料理に豚のレバーやニンジンを使った「チムシンジ(肝煎じ)」という汁物があり、奄美料理では茹でた豚レバーの粒味噌漬けがある[4]。また、山梨県のレバーを含む鶏の内臓を煮た甲府鳥もつ煮も有名となった。
他の部位と同様にと殺・精肉加工される以前に動物が感染していた病原体および、と殺以降の流通過程で付着した病原体がレバー中にも存在するものがあり、非加熱のレバーを食用にすることにより感染症を発症する恐れがある。鶏、牛、豚の生レバーの一部は中に病原性大腸菌、カンピロバクター、E型肝炎などの食中毒の原因となる病原体を含んでいる[7]。特に、豚の生レバーにおいては豚自体が保有しているE型肝炎ウイルス、無鉤条虫などの病原微生物により豚肉の生食と同等の危険性がある[8]。また鶏においては、犬回虫[9]、猫回虫[9]などの寄生虫に汚染されている場合がある[10]。
日本の厚生省(現在の厚生労働省)は1996年に病原性大腸菌感染症の多発を受けてレバーなどの食肉の生食を避けるよう通達し、1998年に生食用のレバー及び食肉の加工基準を策定した[11]。日本各地の自治体や保健所は、レバ刺しには生食用基準に沿って加工されたレバーを用いるよう指導した[12][13][14]。
2012年3月30日、厚労省は飲食店や販売業者が「牛」のレバーを生食用で提供することを禁止する方針を打ち出し[15]、内閣府の食品安全委員会においても「提供禁止は妥当」とする見解が出たことを受け、同年7月1日から食品衛生法に基づき提供禁止とすることとなった。違反すれば2年以下の懲役か200万円以下の罰金の刑事罰が科される[16]。また、厚労省は「豚」のレバーについても加熱して食べるよう注意を喚起した[17]。
一方、生レバーの提供禁止に反対する消費者も多かった[18]こともあり、一部の飲食店では「焼きレバー」用として生レバーの提供が行われていたが[19][20]、2013年8月に生レバーの提供が原因とみられる食中毒事件が発生[21]。同年10月15日、牛の生レバーを提供したとして食品衛生法違反の疑いで京都府の焼き肉店の経営者らが逮捕され[22]、同月26日に京都簡易裁判所は社長に罰金100万円、店長に罰金50万円の略式命令を出した[23]。また、2015年5月には、牛の生レバーを提供したとして、兵庫県警察が居酒屋チェーンの経営者を逮捕したが、焼肉店以外の摘発は初のことになった[24]。さらに2015年6月中旬より、豚についても、生レバーを含む生肉の提供が禁止されることになった[25]。
提供禁止後に摘発される事例が存在し、警察官が私服で一般客を装い注文し、加熱の指示がないことを確認して摘発に至っている[26]。「あかんやつ」や、「やみつきになるレバー」の意味という触れ込みでの「やみレバー」といった名称カモフラージュして提供していたことで摘発された事例もある[26][27]。
2018年12月、茨城県で牛のレバ刺しなどのコース料理を食べた2人が食中毒の症状を訴え、1人は麻痺や呼吸困難に陥る重体となった。便からはカンピロバクターが検出。料理を提供した店側は、肉を厚生労働省が定める低温殺菌処理(63度で30分加熱)をしたとしている[28]。
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