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哺乳類の亜種で日本産 ウィキペディアから
ニホンツキノワグマ(学名: Ursus thibetanus japonicus)は、ツキノワグマの日本産亜種で、日本列島の本州および四国に生息する。
ニホンツキノワグマ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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ニホンツキノワグマ(上野動物園の飼育個体) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Ursus thibetanus japonicus Schlegel, 1857 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ニホンツキノワグマ ニホングマ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Japanese black bear |
体長100-150センチメートル[1]。尾長6-11センチメートル。体重はオスで60-120キログラム、メスで40-80キログラムほど。ユーラシア大陸産に比べ小型である。世界各地に棲むクマ類でも小型な部類である[1]。
最大の記録は1967年に宮城県で捕獲された220キログラムの個体で、近年にも2001年に山形県で体長165センチメートル、体重200キログラムの記録が報告されている。肩が隆起せず、背の方が高い。全身の毛衣は黒いが、まれに赤褐色や濃褐色の個体もいる。胸部に三日月形やアルファベットの「V」字状の白い斑紋が入り(ない個体もいる)、旧属名 Selenarctos(「月のクマ」の意)や和名の由来になっている[2]。
本州および四国の森林に生息し、九州では絶滅したとされる[3]。夜行性で、昼間は樹洞や岩の割れ目、洞窟などで休むが、果実がある時期は昼間に活動することもある[4]。夏季には標高2,000メートル以上の場所でも生活するが、冬季になると標高の低い場所へ移動し冬眠する。食性は植物食傾向の強い雑食で、果実、芽、昆虫、魚、動物の死骸などを食べる[5][6][7][8]。
以前はヒグマと違い、大型動物を捕食することはほとんどないと考えられていたが、近年では猛禽類(イヌワシ)の雛や大型草食獣(ニホンカモシカやニホンジカ)などを捕獲して食べたりする映像が研究者や観光客により撮影されることから、環境により動物を捕獲して食料とする肉食の傾向も存在すると考えられる[9][10]。
繁殖形態は胎生で、主に2頭の幼獣を産む。授乳期間は3か月半。幼獣は生後1週間で開眼し、生後2-3年は母親と生活する。生後3-4年で性成熟する。寿命は24年で、飼育下の寿命は約33年である。
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日本に棲むツキノワグマは「猛獣」ではないという見解を示す地方自治体もある[11]が、野生動物だけでなくヒト(人間)を殺傷した事例も多発しており、農林業の害獣でもある。このため、その棲息域や熊害防止には大きな関心が払われている。日本では古来狩猟の獲物とされ、現代において人間に危害を及ぼした場合は駆除されることもあるが、一方で狩猟が禁止されている地方自治体もある[12][13][14]。
日本国内における個体数は、10,000頭前後と推定されていた。しかし、ドングリなど堅果類の凶作年であった2004年に約2,300頭、2006年に約4,600頭のクマが捕殺[15] された後も、頻繁に目撃されていることから実態数は不明である。2010年の大量出没年の際に『朝日新聞』が、各都道府県の担当者に聞き取り調査を行った数では16,000頭-26,000頭[16]と幅が大きいうえ、数十頭の個体数と考えられていた岡山県などで推測数の半分近くが捕獲される例が相次ぎ、誤差の大きさをうかがわせている。
クマの異常出没の原因、要因として、短期的(直接・至近)要因では、堅果類の大凶作、ナラ枯れなどによるナラ枯損面積の拡大が挙げられる。また、長期的背景として、生息数の回復・増加、奥山林の変化、拡大造林地の成熟と生息地シフト、里山地域の放棄と生息変化、誘引要因の増加(カキなど放置果樹、果樹の大量放棄、残飯、ごみ)、ハンター(猟師)の減少、新世代グマの登場などが挙げられる[17][18]。
日本国政府(環境省など)や各自治体は、森林が近い地域での日常生活や登山などでクマを警戒して接触をなるべく避け、遭遇した場合は刺激しないよう離れ、クマを人里へ誘引しない対策をとるよう呼びかけている[19][11]。具体的には、柿など実を収穫しなくなった果樹、食品ごみなどの撤去を強く指導しているほか、追い払い体制の整備(煙火弾、轟音弾)、警戒と捕獲体制の整備(罠、駆除隊)が今後の行政の課題となっている[20]。中期的対応課題としては、ハザードマップの作成と警戒地区の指定、ベアドッグの訓練と解禁(地区、期間限定の放し飼い)、里山の整備、回廊状構造の整備が挙げられる[20]。また、進入防止用の電気柵の設置や樹皮剥ぎ防止用資材の設置といった非致死的防除手法が導入されるケースもある。また、神奈川県では捕獲したツキノワグマを爆竹や花火、唐辛子スプレーを用いて人の怖さを植え付けたうえで山に放す「学習放獣」を実施しており、2019年度までに28頭がこの方法で放獣されたが、再捕獲されたのはそのうちの3頭に留まっている[21]。
人身への被害をみると、2004年には全国で109人(うち死亡者2名)、2006年には145人(うち死亡者3名)、2010年には147人(うち死亡者2名)の被害者が報告されている[22]。秋田県鹿角市において2016年に5月下旬から6月の短期間にかけて7人が被害に遭い、うち4人が死亡し遺体を食害された例もある[23](十和利山熊襲撃事件)。森林内はもとより、森林と人間の居住エリアとの境界付近であることが多い。また、クマは背中を見せて逃げるものを追う習性があるため、出遭ったときは、静かに後ずさりすべきである[19]。
農作物のほか、養蜂場や養魚場もクマによる被害が大きい。日本では主に6 - 7月にカラマツ、スギ、ヒノキなどの樹皮を剥いで形成層を食べるため、林業においても害獣とみなされ、クマハギ(熊剥ぎ)とも呼ばれる。全周剥皮では枯死、部分剥皮では剥皮が大規模なら衰弱し、腐食などにより材木の価値が下がるなどの被害が生じる。樹皮剥ぎの理由はよく分かっておらず、食物が乏しいため樹皮を食用とする説、繁殖行動のためのメスの誘引などの説がある。樹皮剥ぎの被害は西日本の太平洋側が中心と言われてきたが、近年では西日本の日本海側や東北地方でも深刻なことが確認されている[24]。1998 - 2000年に岐阜県で行われた糞の内容物・血中尿素濃度・血中ヘモグロビン濃度の調査ではウワミズザクラの果実の比率が下がる年は針葉樹の樹皮の比率が上昇したこと・樹皮の比率が上昇した年は血中尿素濃度が高く血中ヘモグロビン濃度が低いことから、凶作により栄養状態の悪い年には樹皮剥ぎを行われることを示唆する報告例もある[25]
日本では2021年の時点でくま科(クマ科)単位で特定動物に指定されており、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止された(2020年6月に施行)[26]。
日本では、足柄山で金太郎が熊と相撲を取ったという伝説がある[31]が、このクマの種類について河合雅雄 (1996) はツキノワグマと[32]、戸川幸夫 (1978) は「足柄山に居る熊だからヒグマではなく、ニッポンツキノワグマ(ツキノワグマの日本産亜種)に違いない。」と述べている[31]。また、戸川は「水戸黄門漫遊記の中にも雪の山中で黄門が熊に救われたという講談があるが、これもニッポンツキノワグマだ。」と述べている[31]。
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