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自然災害による被害範囲の予測を表した地図 ウィキペディアから
ハザードマップ(英語: Hazard map)とは、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したもの。防災マップ、被害予測図、被害想定図、アボイド(回避)マップ、リスクマップなどの名称で作成されている場合もある[1]。ハザードマップは土地の成因あるいは地形や地盤の特徴をもとに、被害想定区域、避難経路や避難場所、防災関係施設の位置などの防災地理情報が地図上に図示されている[1]。
被害予想地図を利用することにより、災害発生時に住民などは迅速・的確に避難を行うことができ、また二次災害発生予想箇所を避けることができるため、災害による被害の低減にあたり非常に有効である。
しかしながら、既存のハザードマップの作成に用いられた地形や土地条件などの基礎情報のみでは災害に対する予想外の事態への対策が難しい。そのため、日本では、ハザードマップで指定された避難場所が自然災害に遭う事例が存在する。そんな想定外のことが起こらないように新たなハザードマップの作成や従来のハザードマップの大幅な見直しが必要となる[2]。
日本では、1990年代より防災面でのソフト対策として作成が進められているが、自然災害相手だけに発生地点や発生規模などの特定にまで及ばないものも多く、また予測を超える災害発生の際には必ずしも対応できない可能性もある。掲載情報の取捨選択、見やすさ、情報が硬直化する危険性などの問題も合わせて試行錯誤が続いている。
2000年の有珠山噴火の際に、ハザードマップに従い住民・観光客や行政が避難した結果、人的被害が防がれたことで注目された。
また、2011年3月11日に発生した東日本大震災の際、100年に一度の大災害に耐えられるとされていた構造物ですら災害を防ぐことができなかった結果を受け[3]、国や地方自治体は構造物で被害を防ぐよりも、人命を最優先に確保する避難対策[4]としてハザードマップ に注目している。そして新たなハザードマップの作成、ならびに従来のハザードマップを大幅に見直し、ハザードマップの策定過程に地域住民を参画させることで、地域特性の反映や、住民への周知、利活用の促進、さらには地域の防災力の向上を見込んでいる[5]。
2020年には宅地建物取引業法施行規則が改正され、不動産取引時に水害ハザードマップを活用したリスク説明が義務化された[6]。
このほか、特定の災害を対象とせず、避難経路や避難場所、防災機関等の情報を表した地図を「防災マップ」と呼ぶことがある。
2000年3月に有珠山の噴火が発生した。この噴火では、3月29日に気象庁より「緊急火山情報」が発表され、これを受けた自治体(伊達市、壮瞥町、虻田町)は、危険地区の住民に対し「避難指示」を発令した。
この噴火では、金比羅山の火口群から熱泥流が流出し温泉街を埋めるなど、甚大な被害が発生した。しかしながら、一人の死傷者も出ていない。これは第一に日本で初めて事前予知に成功したこと、第二に「有珠山火山防災マップ」(平成7年度版)が作成・公表されており、第三に各自治体がこの防災マップに基づいて避難指示を出し、第四に住民の迅速な行動があったためといわれている。なおこの噴火では、最大で15,815名が避難勧告・指示の対象となった。
2002年3月、有珠火山防災会議協議会(災害対策基本法第17条に基づく。伊達市(事務局)・虻田町・壮瞥町)と、豊浦町・洞爺村の5市町村により平成7年度版の「有珠山火山防災マップ」を新しく改訂した。これは2000年の噴火により火口の地形変動があったなどのため、火砕流到達範囲などの危険区域が変わったことなどによる。この地図は、5市町村のほとんどの世帯に配布された。
本州の真ん中にある富士山が噴火した場合社会に与える影響が大きい。そこで国の防災機関や地方自治体を中心に学識経験者などが集まって「富士山ハザードマップ検討委員会」を設立し、万が一の際の被害状況を想定して避難・誘導の指針とした。この「富士山火山防災マップ」では過去の富士山の噴火を参考にしながら、様々な火山災害を予想している。その中で火山灰被害の例として宝永噴火や貞観噴火の被害実績が詳細に検討されている。ハザードマップについては、中間報告(2002年6月)と検討報告書(2004年6月)の2回、調査結果をまとめた報告書が出されており、内閣府の防災部門のホームページで公開されている。
日本経済新聞の調査により、豪雨災害において見直す必要がある洪水のハザードマップについて、全国主要市区の約4割で改定が終わっていない。[7]激甚化する水害に対して迅速な避難につながるように、ハザードマップの改善が求められている。
アメリカ合衆国では、アメリカ合衆国連邦危機管理庁(FEMA)の主導により、地図に100年に1度の確率での浸水域と500年に1度の確率での浸水域をあわせて表示した想定浸水域図の整備が行われている[8]。
欧州連合(EU)では加盟国に洪水ハザードマップ等の作成などを求める「洪水リスクの評価・管理に関する指令」を2007年10月に公布した[8]。これにより加盟国は2015年までに複数の発生確率(低頻度又は激甚な事象、中頻度、高頻度)に対応したハザードマップの作成が義務づけられた[8]。
オランダでは10から100年に1度の発生確率の内水氾濫を対象としたハザードマップが作成された[8]。
イギリスでは100年に1度の発生確率(高潮氾濫域では200年に1度の発生確率)の浸水想定区域図と1000年に1度の発生確率の浸水想定区域図が作成されており、これらの浸水想定区域図はインターネット上で公表されている[8]。
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