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Xバンド防衛通信衛星(えっくすばんどぼうえいつうしんえいせい)は、防衛省がPFI方式で整備・保有・運用する防衛用の通信衛星。愛称は「きらめき」。日本の叡智を結集した「天空に美しく光り輝く」衛星という意味が込められている[1]。
従前から、防衛省・自衛隊が部隊間の通信用に利用していたスカパーJSAT保有の商用通信衛星(スーパーバードB2号機、D号機)が、2015年度に設計寿命に達するため、その後継機として計画された。
従前の事業の進め方では、商用衛星スーパーバードの防衛省専用の通信中継器を保有する株式会社エム・シー・シーから借り上げる方式であったが、本事業より、衛星2機の製造から運用終了までの長期間を一括して民間企業に発注するPFI方式によって実施され、衛星は防衛省専用のものとなる。「宇宙空間の平和利用」という日本国政府解釈により、商用通信衛星の利用のみであったが、2008年(平成20年)に宇宙基本法の制定により、軍事専用衛星の保有が可能になった。
2011年(平成23年)度、既存機の設計寿命までの期間余裕が少ないことと、PFI法改正の必要から、1号機の中継器の製造が先行して事業化され、日本電気が受注した。
2012年(平成24年)12月、防衛省はスカパーJSATホールディングスを「Xバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業」の事業者として選定し、2013年(平成25年)1月15日に、スカパーJSATが設立した「株式会社ディ-・エス・エヌ」と事業契約を締結した[2]。衛星の基本構成要素となる衛星バスは、当時防衛省から指名停止中であった三菱電機が製造するDS2000であったが、代替品が無いため承認を経て採用された。
当初1号機となる「きらめき1号」は、2016年(平成28年)7月に、アリアン5で打ち上げられる予定であったが、ギアナ宇宙センターへの輸送中に損傷したため修理が必要となり、打上げは2018年に延期された[3]。国の安全保障用の人工衛星にもかかわらず、外国のローンチ・ヴィークルであるアリアン5で打ち上げられる理由は、きらめき2号に比べてきらめき1号の方が衛星重量が重く、H-IIAの静止軌道打ち上げ能力では通信衛星の搭載燃料を減らさざるを得ず、要求される衛星寿命の15年を満たせなくなることと、その質量に対応する国内の打ち上げでは経済的に不利になるためであった[4]。その後、2018年(平成30年)4月6日6時34分(日本標準時)に打ち上げられた[5]。
2号機となる「きらめき2号」は、日本標準時の2017年(平成29年)1月24日16時44分に、種子島宇宙センターからH-IIAロケットにより打ち上げられ、約30分後に予定の軌道へ投入された[6]。
スーパーバードC2号機の後継についても、PFIにより3号機として整備される予定であり、2023年度の打ち上げを目指していた[7]が、H3ロケット1号機の打ち上げ失敗の影響を受け2024年度の打ち上げとなり[8]、2024年11月4日にH3ロケット4号機によって打ち上げられた[9]。
PFI方式とはいえ、従前とは違って防衛省が独自に通信衛星を保有・運用することになるため、有事においても防衛省が主体的に衛星を運用できる。また飛躍的な通信の高速・大容量化が図られているため、短時間での映像などのデータの伝送が可能となり、弾道ミサイル発射情報や海外に展開した部隊が活動する現場の状況を日本国内で速やかに把握することが可能となる。また通信の秘匿性も高められており、通信妨害や通信傍受に対する抗堪性が高められている。さらに通信方式の違う陸・海・空の3自衛隊のそれぞれの通信を変換して伝送できるため、自衛隊の統合運用能力を高めることができる[10]。本衛星システムで使用されるXバンドは、降雨などの気象の影響や大気による減衰を受けにくく、抗堪性、秘匿性、広帯域性に優れているため、移動体衛星通信に適している周波数帯域である[11]。
安全保障に関わる衛星であるため、情報収集衛星と同じく、衛星の具体的な性能や性能を推測されないように衛星重量は非公開である。また静止衛星であることは公開されているが、情報収集衛星と同じく、衛星の詳細な位置情報を同定されないように衛星分離時刻も非公開であり、きらめき1号、2号ではJAXAによるインターネットを介した、打ち上げ生放送も行われなかったが、きらめき3号では行われた[12]。
地上施設の整備は日本電気が行い、維持管理はNTTコミュニケーションズが行う。地上施設のうち局舎の整備と維持のみは前田建設工業が行う[16]。
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