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中華人民共和国の主力戦車 ウィキペディアから
59式戦車(59しきせんしゃ 59式主战坦克・WZ-120)は、中華人民共和国の中戦車である。1959年にソビエト連邦のT-54をライセンス生産したものであり、全ての中国戦車の基礎となった。
性能諸元 | |
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全長 | 9.00 m |
車体長 | 6.04 m |
全幅 | 3.27 m |
全高 | 2.59 m |
重量 | 36.0 t |
懸架方式 | トーションバー方式 |
速度 | 45 km/h |
行動距離 | 430 km |
主砲 | 59式56口径100 mmライフル砲 |
副武装 |
54式12.7mm機関銃 59式7.62 mm機関銃 |
装甲 | 鋳造砲塔・溶接鋼板 |
エンジン |
12150L 4ストロークV型12気筒水冷ディーゼル 520 hp |
乗員 | 4名 |
1949年の中華人民共和国建国の時点で中国人民解放軍は375両の戦車を保有していたが、それらは旧日本軍の95式軽戦車や97式/97式改中戦車などの日本製戦車、第二次国共内戦での国民政府軍から鹵獲したM4中戦車やM3軽戦車などのアメリカ製戦車であり、その多くが旧式化していた。当時の中国では中華民国時代を通じて戦車の国産化は行われておらず、全ての戦車は外国からの輸入に頼っていた状況であった。その後のアメリカとソビエト連邦の間で対立が深まり、世界を二分する冷戦体制となると、国防工業の設立と兵器の自給体制の確立が早急に求められることになり、社会主義諸国の盟主であるソビエト連邦の全面的な支援を要請することで、1950年代からT-34/85中戦車、IS-2重戦車、SU-76・ISU-152・SU-100各自走砲などの装甲戦闘車両が供与され、従来の雑多な旧式車両の更新を行うとともに、人材の育成も行われた。これにより、本格的な装甲部隊の編成が行なえるようになった。
その後、中国は戦車の自給体制の確立を目指すこととなり、1952年の中国共産党中央軍事委員会兵工委員会において「関于兵工建設問題的報告」が作成され、国防産業建設に関する5ヵ年計画が提示された。その中には戦車と戦車のエンジンの国産化の計画も立案されており、1953年にはソビエト連邦が中国の経済建設に関する広範な支援を行う「関于蘇聯政府援助中国政府発展中国国民経済的協定」が締結され、その中に戦車・エンジン・砲弾・光学照準装置など戦車生産に必要とされる各種工業の施設の建設も含まれていた。当時の中国の工業地帯は東北部と沿海部にあったものの、海上からの攻撃を受けやすく国防上のリスクを抱えているので、ソ連やモンゴル人民共和国に近く、その援助を受けやすい内陸部の内モンゴル自治区の包頭市に製鉄工場を中心とした機械製造業・化学産業・産業研究施設などを配置した総合コンビナートが建設された。これは、内陸部に総力戦を支える重工業基地を建設することを最大の目的としていたが、内陸部の資源地帯と産業をリンクさせて効率的に重工業を発展させて、経済的に立ち遅れた内陸部の振興の核となることも期待されていた。その中に戦車製造工場の第617工場があり、工場建設と平行して、1955年11月にはT-54Aの実物が中国に供給されており、1956年にはT-54A戦車のライセンス生産権が中国に譲渡され、設計図や生産に必要な各種資料が引き渡された。エンジンの生産は黄砂の多い内モンゴルの環境が適していないことから山西省、トランスミッションや光学照準装置等の精密部品の生産は上海でされることになり、ソ連の技術者の支援を受けながら他の各地の工場でも部品が生産され、これらは第617工場に送られた後に最終的な組み立てが行われた。
当初は第617工場にてソ連から供与された部品を組み立てるノックダウン生産で1958年から生産が始まったが、その後に国産化された部品の使用率を次第に高めて行き、1961年までに砲塔・装甲板・戦車砲・弾薬も国産化できるようになったが、照準装置や夜間暗視装置などの精密機器や装甲板の生産に必要なニッケル等のレアメタルに関しては、中国とソ連の路線対立が深刻化する1964年頃まではソ連からの輸入に頼っていた。
59式戦車はT-54Aと同じく、車体は溶接鋼板、砲塔は鋳造鋼板で製造されている。
操縦席上部のハッチに、2基のペリスコープが設置されており、その内の1基には夜間操縦用に赤外線暗視装置が標準装備されている、T-54Aで標準装備されるようになった車長や砲手用の暗視装置は搭載されなかったため、夜間戦闘は非常に困難である。砲塔の旋回は電気モーターを使用しており、砲塔の最大旋回速度は毎秒10度である。
砲塔上部の装填手用ハッチの手前には換気用ベンチレーターのドーム型カバーが設けられ、ソ連では換気システムの変更によってT-55以降廃止されたのに対し、中国では88式戦車まで引き継がれる特徴の1つとなっている。操縦手座席の直後にある車体底部には脱出口が設けられている。装甲の厚さに関してはオリジナルのT-54Aと同じである。
99式 | 96式 | 88式 | 80式 | 69/79式 | 59式 | |
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画像 | ||||||
世代 | 第3世代 | 第2.5世代 | 第2世代 | 第1世代 | ||
全長 | 11 m | 10.65 m | 9.32 m | 9.22 m | 9 m | |
全幅 | 3.4 m | 3.3 m | 3.37 m | 3.29 m | 3.27 m | |
全高 | 2.4 m | 2.3 m | 2.29 m | 2.8 m | 3.27 m | |
重量 | 54 t(99A式) | 42.5 t | 38.5 t | 38 t | 36.5 / 37.5 | 36 t |
主砲 | 48口径125mm滑腔砲 | 51口径105mmライフル砲 | 56口径100mmライフル砲 (69式) 51口径105mmライフル砲 (79式) |
56口径100mmライフル砲 | ||
副武装 | 12.7mm重機関銃×1 7.62mm機関銃×1 対戦車ミサイル |
12.7mm重機関銃×1 7.62mm機関銃×1 |
12.7mm重機関銃×1 7.62mm機関銃×1 | |||
装甲 | 複合+ERA | 複合 | 鋳造・溶接鋼板 (一部複合) |
鋳造・溶接鋼板 | ||
エンジン | 水冷4ストローク V型12気筒ディーゼル |
液冷4ストローク V型12気筒スーパーチャージド・ディーゼル |
水冷4ストローク V型12気筒ディーゼル | |||
最大出力 | 1,200 hp 1,500 hp(A型) |
1,000 hp | 730 hp | 580 hp | 520 hp | |
最高速度 | 70 km/h | 65 km/h | 57 km/h | 50 km/h | 45 km/h | |
懸架方式 | トーションバー | |||||
乗員数 | 3名 | 4名 | ||||
装填方式 | 自動 | 手動 | ||||
C4I | 不明 | × |
T-54のコピーからスタートしたこともあり当初はD-10TGをコピーした59式56口径100mmライフル砲を搭載していたが、59-II式以降は、オーストリアから供与されたモデルをベースにライセンス生産を始めたNATOの標準規格であるイギリス製L7系105mmライフル砲を採用。近年では更に強力な120mm滑腔砲を搭載するモデルも登場している。
副武装も、T-54のDShKM 12.7mm 重機関銃をコピーした54式12.7mm機関銃を車長キューポラに、SGMT 7.62mm 重機関銃をコピーした59式7.62mm機関銃を主砲同軸に各1丁装備する。
1963年から本格的な生産が始まりその後も数多くの改良を重ねつつ1980年代半ばまでに10,000輌以上が生産され、うち6,000輌が中国人民解放軍陸軍に配備されたとされる。59式戦車は以後中華人民共和国で開発される戦車の母体となり、これに中ソ国境紛争時に捕獲したT-62戦車や独自のルートで入手したT-72戦車の技術を盛り込み独自の発展を遂げた。
59式戦車が最初に実戦に参加したのは1965年に起きた第二次印パ戦争で、パキスタン陸軍の59式戦車がインド陸軍のT-54/55やヴィジャンタ(ヴィッカーズMk.Iのライセンス生産型)と対決したが、防御能力の低さから弾薬や燃料が誘爆する車両が続出した。その後、1979年の中越戦争では人民解放軍とベトナム人民陸軍の双方が59式戦車を使用し、山岳地域では機動性に劣り苦戦したが、やはり双方が使用した62式軽戦車に対しては優位な立場にあった。1980年のイラン・イラク戦争ではイラン陸軍とイラク陸軍の双方が69式戦車とともに、59式戦車を使用した。また、1989年の六四天安門事件の鎮圧にも運用されて無名の反逆者で世界的にも有名になった。しかし、1991年の湾岸戦争では、イラク陸軍の59式戦車がT-54/55/62/72、69式戦車などとともにアメリカ陸軍のM1エイブラムスに対して一方的な大敗北を喫した。1997年の第二次スーダン内戦ではスーダン政府軍、第一次コンゴ戦争ではザイールの大統領特殊師団が反政府勢力に使用していた[1][2]。
21世紀に入ってからも数多くの近代化改修が行われながら5,000輌近くが中国人民解放軍で現役とされ、旧式化に伴い96式戦車や99式戦車との交代が進められている。各国に輸出した59式戦車の改修パッケージの売り込みも積極的に行なわれている。近代改修モデルでは箱形のERA(爆発反応装甲)や105mm戦車砲や120mm/125mm滑腔砲も追加され延命を図っており、その内容も現在主流となっているNATO軍規格にあわせた内容となっている。また、コンピュータでリモートコントロールできるように改修した無人戦車も開発されている[3]。
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