谷 正純(たに まさすみ)は、宝塚歌劇団の演出家。日本大学芸術学部映画学科出身[1]。東京都出身[2]。
映画が好きで、映画監督志望だったが、菅沼潤、正塚晴彦といった日芸の先輩が宝塚歌劇団に入っていた関係で、学校に演出助手の募集があり、宝塚歌劇団は宝塚映画とは関係が深いので「そこから宝塚映画へ行けるかもしれない」という動機で応募した。
大学在学中には、日本テレビでアルバイトをしており、『ベルサイユのばら』の取材に携わったこともある。
1979年、宝塚歌劇団に入団。同期生には、石田昌也がいる[3]。
1986年宝塚バウホール公演『散る花よ、風の囁きを聞け』(花組)で演出家デビュー[2]。大劇場デビューは1990年の「秋…冬への前奏曲」[2]。植田紳爾の作風を受け継ぐ演出家で、歴史・恋愛ものの大作が多い正統派の「宝塚らしい」タイプである。主役の一人称も「僕」が多い。
近年は「ベルサイユのばら」の演出も手がける。
作曲は吉崎憲治に一任し信頼しており、またトップスターの大劇場お披露目公演を手がける事が多い(紫苑ゆう、真矢みき、久世星佳、真琴つばさ、和央ようか、瀬奈じゅん、真飛聖など)
演出家のほか、宝塚歌劇団理事、宝塚音楽学校の演劇講師も務めている[3]。
私生活では、元星組トップ娘役の南風まいの姉と結婚している[4]。
和・洋問わず規模やスケールの大きい歴史物の芝居で手腕を発揮する一方で、以前は劇中内の登場人物が舞台上で倒れる(消される)シーンが多く、特に『望郷は海を越えて』などは、主役の和央ようか演じる九鬼海人と、花總まり演じる由布姫以外、結末までにほとんどの登場人物が倒れるなどの内容だったため、「脚本が荒い」、「人権無視だ」といった指摘や批判[5]が相次ぐこともあった。
しかし、近年は『1914/愛』『愛と死のアラビア』のように、史実では若くして亡くなった人物の最期を描かない、できるだけ登場人物が平和な作風に変化している。また、『THE MERRY WIDOW』や『ANOTHER WORLD』のような喜劇や、落語を題材とした作品も得意としている。
脚本・演出
その他劇場作品
- 江戸影絵『散る花よ、風の囁きを聞け』(1986年 花組 宝塚バウホール 主演:朝香じゅん)*演出家デビュー作
- 王朝異聞『あかねに燃ゆる君』(1987年 花組 宝塚バウホール 主演:安寿ミラ)
- 元禄続き狂言『おもかげ草紙』(1988年・1989年 雪組 宝塚バウホール・日本青年館 主演:杜けあき)
- 江戸影絵『紫陽の花しずく』(1991年 月組 宝塚バウホール 主演:若央りさ)
- 天平夢幻譚『高照らす日の皇子』(1992年 月組 宝塚バウホール、日本青年館 主演:天海祐希)
- BOW MUSICAL COMEDY『FILM MAKING』(1993年 星組 宝塚バウホール、日本青年館 主演:真織由季)
- ミュージカル・セレブレーション『LE MISTRAL』(1994年 - 1995年 月組 ドラマシティ 主演:天海祐希)
- 寛永鎖国秘話『アナジ』(1996年 雪組 宝塚バウホール、日本青年館 主演:轟悠)
- 幕末悲話『武蔵野の露と消ゆとも』(1997年 星組 宝塚バウホール、日本青年館 主演:麻路さき)
- 天正異聞『ささら笹舟』(2000年 雪組 宝塚バウホール 主演:貴城けい)
- バウ人情噺『なみだ橋 えがお橋』(2003年 月組 宝塚バウホール、日本青年館 主演:月船さらら)
- バウ人情噺『くらわんか』(2005年 花組 宝塚バウホール 主演:蘭寿とむ・愛音羽麗)
- バウ人情噺『やらずの雨』(2006年 雪組 宝塚バウホール 主演:音月桂)
- バウ・ミュージカル『UNDERSTUDY』(2006年 宙組 宝塚バウホール 主演:七帆ひかる)
- ミュージカル『Kean(英語版)』(2007年 星組 日生劇場 主演:轟悠)*潤色・演出
- BOW MUSICAL『CODE HERO/コード・ヒーロー』(2010年 花組 宝塚バウホール、日本青年館 主演:朝夏まなと)
- ミュージカル『SAMOURAI』(2011年 - 2012年 雪組 ドラマシティ、日本青年館 主演:音月桂)
- MUSICAL『THE MERRY WIDOW』(2013年 月組 ドラマシティ、日本青年館 主演:北翔海莉)
- 浪華人情物語『銀二貫 -梅が枝の花かんざし-』(2015年 雪組 宝塚バウホール 主演:月城かなと)
- Bow musical『FALSTAFF 〜ロミオとジュリエットの物語に飛び込んだフォルスタッフ〜』(2016年 月組 宝塚バウホール 主演:星条海斗)[11]
- MUSICAL FANTASY『CAPTAIN NEMO …ネモ船長と神秘の島…』(2017年 雪組 日本青年館、ドラマシティ 主演:彩風咲奈)
- ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』(2020年 花組 ドラマシティ、日本青年館 主演:瀬戸かずや)
- バウ・ミュージカル『LOVE AND ALL THAT JAZZ』…ベルリンの冬、モントリオールの春…(2021年 月組 宝塚バウホール 主演:風間柚乃)
演出のみ
大劇場作品
2000年代
- 宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』(2001年 星組 主演:稔幸 / 宙組 主演:和央ようか)
- 宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』(2006年 星組 主演:湖月わたる / 雪組 主演:朝海ひかる)
2010年代
- 宝塚グランドロマン『風と共に去りぬ』(2013年 宙組 主演:凰稀かなめ)
- 宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』(2014年 宙組 主演:凰稀かなめ)
その他劇場作品
1990年代
- 宝塚グランドロマン『風と共に去りぬ』(1997年 花組 全国ツアー 主演:真矢みき / 1998年 雪組 全国ツアー 主演:轟悠)
- バウ・ミュージカル『心中・恋の大和路』(1998年・1999年 雪組 宝塚バウホール・日本青年館 主演:汐風幸)*潤色・演出[15]
2000年代
- 宝塚グランドロマン『風と共に去りぬ』(2001年 星組 全国ツアー 主演:稔幸 / 2002年 花組・雪組 日生劇場 主演:轟悠 / 2004年 宙組 全国ツアー 主演:和央ようか)
- 宝塚グランド・レビュー『ジャワの踊り子』(2004年 月組 全国ツアー 主演:彩輝直 / 花組 全国ツアー 主演:春野寿美礼)
- 宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』(2005年 星組 全国ツアー、韓国公演 主演:湖月わたる / 2006年 雪組 全国ツアー 主演:水夏希)
- バウ・ワークショップ『ホフマン物語』(2008年 月組 宝塚バウホール 主演:青樹泉・明日海りお)*脚本・演出[16]
2010年代
- 宝塚グランドロマン『風と共に去りぬ』(2014年・2015年 月組 梅田芸術劇場メインホール・中日劇場 主演:轟悠、龍真咲 / 2014年 星組 全国ツアー 主演:紅ゆずる)
- 宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』(2014年 雪組 全国ツアー 主演:早霧せいな / 2014年・2015年 花組 中日劇場・梅田芸術劇場メインホール、台湾公演 主演:明日海りお / 2014年 宙組 全国ツアー 主演:朝夏まなと)
- ミュージカル『心中・恋の大和路』(2014年 雪組 ドラマシティ、日本青年館 主演:壮一帆)*潤色・演出[15]
2020年代
- ミュージカル『心中・恋の大和路』~近松門左衛門「冥途の飛脚」より~(2022年 雪組 ドラマシティ、日本青年館 主演:和希そら)*潤色・演出[15]
- 宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-(2024年 雪組 主演:彩風咲奈)[17]
イベントの構成・演出
- ’96TCAスペシャル『メロディーズ・アンド・メモリーズ』(1996年 宝塚大劇場)*共同演出
- 歌劇「花の道より」300回記念『タカラヅカ・フォーエバー』(1997年 宝塚大劇場)*共同演出
- 『レビュー・スペシャル’99』(1999年 宝塚大劇場)*共同演出
- TCAスペシャル2000 白井鐵造生誕100年記念『KING OF REVUE』(2000年 宝塚大劇場)*共同演出
- 吉崎憲治オリジナルコンサート『TAKARAZUKA FOREVER』(2002年 宝塚大劇場)*共同演出
- 小林一三没後50年追悼スペシャル『清く正しく美しく』(2007年 宝塚大劇場)*共同演出
コンサート
- 紫苑ゆうリサイタル『True Love』(2009年)
- 峰さを理追悼 チャリティコンサート『愛の旅立ち』(2022年、2023年)[18]
公演
- 『心中・恋の大和路』(2007年)
- 堺少女歌劇団 『School Camp』(2020年)
- 『ベルサイユのばら50~半世紀の軌跡~』(2024年)[19]
2003年3月刊行 青弓社「宝塚アカデミア19」特集・センセの通信簿 参照。
星組が1993年に全国ツアーで再演(主演:麻路さき)
初演は1980年、星組にて。脚本・演出は菅沼潤が担当。