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日本の精神保健福祉法で規定された、精神障害者に対する手帳制度 ウィキペディアから
精神障害者保健福祉手帳(せいしんしょうがいしゃほけんふくしてちょう)は、精神障害者に対する手帳制度である。表紙には、精神障害者と直接にはわからぬよう単に『障害者手帳』と表記されており、広義の「障害者手帳」の各種のうち、本手帳のみを指す場合がある。
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1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第45条に規定された。
1995年(平成7年)の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正で同法第45条に規定された障害者手帳である。精神障害者が一定の精神障害の状態であることを証する手段となり、各方面の協力を得て各種支援策を講じやすくすることにより、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としている。発達障害者に対しては、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の「第5章:精神と行動の障害(F00-F99)」に含まれるため、知的障害を伴わない場合で基準を満たせば交付されることとなっている。
本手帳制度の施行により、障害者基本法第2条に規定された障害者(身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む))があり、日常生活に相当な制限を受ける者)に手帳制度が整った。
身体障害者手帳・療育手帳と異なり、手帳には2年の有効期限がある。2年ごとに医師の診断書とともに申請をし、手帳を更新する。診断書に基づき、診断書が書かれた時点での申請した当事者の能力障害、機能障害(精神疾患)の状態を精神保健福祉センターが判断し、手帳の支給・不支給ならびに、支給の場合は等級が決定される。更新した場合は、期限が切れる旧手帳は返納し新しい手帳が支給される。不支給や、支給された場合でも等級に不服がある場合は、期日以内であれば再申請や不服申し立てができる。申請をしたからといって、自動的に手帳が支給されるわけではなく、新規申請の場合も、手帳を更新する場合も、必ず審査を受ける。
この手帳を持っていることにより、後述のような各種サービスや就労支援を受けられる。就労している場合は、年末調整や確定申告により、所得税・住民税の障害者控除の対象となる。また、精神障害者保健福祉手帳を所持している当事者を雇用した、企業やその他法人へ、日本国政府からの補助金支給などの措置も行われている。
精神状態が快方に向かった場合など、諸事情で更新申請をしない場合、申請をしても不支給の認定を受けた場合は、手帳は発行した地方公共団体へ速やかに返還することとなり、有効期限後は効力を失う。手帳が失効した場合は、都道府県知事が記載する精神障害者保健福祉手帳交付台帳から個人記録は削除される。即ち障害者としての公式な認定は無くなるが過去の交付及び返還の記録はずっと残される。
手帳は、他人へ貸与ならびに譲渡できない。
都道府県知事には、あらかじめ指定された医師の診断に基づいて、精神障害の状態にないと判断した場合は手帳の返還を命令できる権限がある[1]。また、申請を受け、精神障害と認定せず、手帳を支給しない場合は都道府県知事は申請者に理由を通知する義務がある[2]。
手帳の表紙には「障害者手帳」とのみ表示され、表紙を見ただけでは、精神障害者の手帳であることが分からないようになっている[注 1]。これは被交付者のプライバシーに配慮したもので、他の障害者に比べ精神障害者に対する偏見が深刻である点に鑑みて決定された。
上記のように、手帳には証明写真が貼付される。これは2006年(平成18年)10月1日申請分から改訂されたもので[注 2]、当初は既存の2制度と異なり、顔写真を手帳に載せなかった。更新義務のない身体障害者手帳と異なり、発行後2年毎の手帳有効期限が定められているため、写真の添付されていない旧様式の手帳は、2006年以降に更新すると証明写真添付の新様式に更新された[注 3]。性別の記載がある旧様式の手帳は、2014年4月以降に更新すると性別の記載がない新様式に更新された。
三級に限っては、写真添付を任意としている都道府県がある(その場合写真添付欄に都道府県のシールプレスが押印される)。
また写真付き身分証明書ではなく、その旨の特記もないため、別途証明書の提示を求められる時がある。また後述の手帳呈示でのサービスを受けられないケースが多い。
厚生省(現・厚生労働省)保健医療局長通知「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」(1995年9月12日発、2011年3月3日最終改正)の「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の説明」[3]によると下記の疾患が対象である。
申請窓口は居住地の区市町村で、本人または本人の意思のもと家族が申請する。窓口にある申請書に記入し、医師が作成して署名捺印した書式(A3用紙1枚、若しくは書式に準拠してコンピュータで出力したA4版2枚)の診断書の添付が必要。精神保健指定医その他精神障害の診断又は治療に従事する医師による診断書の日付は、精神障害に係る初診日から6カ月を経過している必要がある。更新の場合、有効期限の3か月前から申請可能。審査を行い、等級が決定されれば精神障害者保健福祉手帳を、等級に非該当となった場合は、不承認通知書が都道府県知事から交付される。有効期間は2年。
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令」[4]によって、精神障害の状態は、下欄に規定する障害等級に該当する程度のものとされ、重い順に1級・2級・3級と決められており、手帳の等級によって受けられる福祉サービスに差がある。
障害等級 | 精神障害の状態 |
---|---|
一級 | 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
二級 | 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
三級 | 日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
本手帳と障害年金は別の制度であり、本手帳の等級が1級であるから障害基礎年金は確実に1級と認定される保証はない(障害基礎年金の判定業務は日本年金機構(旧社会保険庁)が行う)。逆に、障害年金の受給者は、医者の診断書の代わりに年金証書を提示することで年金と同じ等級の手帳の交付を受けられる[5]。このため、実用上は本手帳の等級が障害年金の等級を下回ることはないと言える。それ以外は都道府県及び政令指定都市による手帳等級判定格差もあり、本手帳と障害年金の等級の関係は一概には言えない。
判定業務は、都道府県か政令指定都市の精神保健福祉センター(地域によっては、名称を「精神医療センター」としているところもある)が行う[6]。
判定基準は、平成7年9月12日健医発第1133号厚生省保健医療局長通知「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」[7]の中に書かれている「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」による。判定材料は申請時に提出された診断書をよりどころにしている[8]。判定基準は「精神疾患(機能障害)の状態」と「能力障害の状態」の各指標で構成されている。
等級や各発行自治体により異なるが、共通して下記の福祉施策が実施されている。
自治体における福祉サービスは、自治体運営交通機関の運賃減免[注 4]・公共施設や駐車場等の利用料減免[12][13]・公共図書館の貸出点数および期間の加算[14]・地方公共団体運営の公営住宅への入居優先などがある。
NHKでは受信料の免除制度が設けられている[15](1級、もしくは等級を問わず世帯全員が住民税非課税の場合)[16]。
民間事業者によっては原則、写真を貼付した手帳所持者に限るが、携帯電話料金(携帯電話料金の障害者割引を参照)、映画館[17]や劇場[18]の入場料、テーマパーク[19]や遊園地[20][21]、展望台入場料[22][23]、カラオケボックス[24]、ボウリング場[25]、日帰り温泉[26][27]と言った娯楽施設等において割引制度を設けている場合がある。等級によって免除・割引率が違う場合もあるが、民間福祉サービスにおいては、概ね他手帳や等級における変化はない(公共交通は後述)一方、日本郵便の青い鳥郵便葉書の無償配布は、重度の身体障害者・知的障害者が対象であり、精神障害者のみ対象外としている。
手帳を提示することにより受けられる優遇対象は、基本的には運営側の持ち出しであり、実質的な優遇内容は映画等興業など業界団体及び運営事業者の意向、被交付者が居住する地域の施設・制度及び地域自治体の意思に依存する。そのため、制度の適用範囲に自治体間で相違があることから、他地域へ転居した場合など、他の自治体発行手帳では利用できない福祉サービスや地域によっての適用範囲の差も存在する。なお民間ではあるが、スマートフォンアプリのミライロID[28]がマイナポータルの障害者情報と紐付け可能なため、施設や交通機関で手帳の代わりに呈示して割引を受けられるケースが増えている[29][30]。
これまで精神障害者は、法定雇用率の対象とされていなかったが、2006年(平成18年)4月1日の障害者自立支援法施行に伴い、精神障害者保健福祉手帳所持者については法定雇用率の対象とされるようになった。2012年(平成24年)には、雇用の義務付けの方針が厚生労働省内で定まり[31]、2018年(平成30年)4月1日より雇用することが義務化された[32]。
鉄道事業者においては、JR[33]・大手私鉄全社[34]については、2025年(令和7年)4月1日までに精神障害者に対する割引制度が導入されることとなっている。
旧国鉄の障害者割引では、介護者を伴わなければ旅行できない重度の障害者の二人分の運賃を実質的に一人分に割引くことを目的としており、さらに、運賃が高額となる100 kmを超える場合には、負担軽減の観点から、障害等級を問わず、単独で利用する場合も割引される。
1949年(昭和24年)に身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)が制定され、身体障害者手帳の交付が始まったのに伴い、同法の附則によって国有鉄道運賃法(昭和23年法律第122号)が改正され、介護者を必要とする身体障害者が乗車する際に両者の運賃を半額とする旨の規定が追加された。その後、1952年(昭和27年)に国鉄は「身体障害者旅客運賃規定」(昭和27年日本国有鉄道公示121号)を制定し、障害の等級による区分を設け、100 kmを超える場合に単独乗車の割引を認められた[35]。
かつては内部障害者はJRの割引対象外であったため[36]、同じ身体障害者手帳の中でも第1種又は第2種の記載がある手帳といずれも記載がない手帳が混在していたことになるが、現在はJRが全ての障害者に対して割引を認めているため、全ての障害者手帳に第1種又は第2種の記載がされる予定である。
1991年(平成3年)に知的障害者が割引の対象に追加された。
国鉄分割民営化後は、旧国鉄から引き継いだJRの旅客運賃割引規則が社内規則として定められており[35]
JRの規則では、JRの第1種(JRの区分は身体障害では障害の種別によって等級の区分が異なり、同じ障害種別の同じ等級でも差が生じる場合もあるなど極めて複雑であり、障害等級から容易に判断できないため、手帳にJRの区分の記載がある[注 5])かつ介護者同伴の本人及び介護者の両者の普通乗車券、定期券、回数券、または101 km以上(切り上げ計算のため100.1 km以上が対象)を利用する場合の本人の普通乗車券および12歳未満の第2種障害者の介護者の定期券に限り割引を行っている事例が大半である。
精神障害者(精神障害者保健福祉手帳のみの所持者)に対しては、上記のJR・大手私鉄以外の事業者は導入に差が出ている。なお後述のように、内容もまちまちで大半の大手私鉄のように第2種では全く意味をなさない或いは適用外と明示する割引もある。また一日乗車券などの割引切符は、そもそもの割引に重畳出来ないとして殆ど適用されない[37]。
しかし、駅等のバリアフリー化も進み、介護者を伴わず一人で行動できる障害者も増えており、もはや第1種かつ介護者同伴または100 km超の距離制限は、旧国鉄時代の制度を踏襲しているだけで合理性がないのではないかという意見も存在する。一方で、一人で鉄道に乗れるのであれば、割引は不要ではないかという意見も存在する。もう一方で、一人で歩ける障害者に割引はおかしいと思う人もいるだろうが、障害者には多くの金銭的負担があるので、障害者が単独で障害者割引で鉄道を利用したとしても不平等ではないのではないかという意見も存在する[38]。
JRの社内規則における精神障害の割引種別は、精神障害の障害等級の一級を第1種、二級又は三級を第2種とする方針が明らかになっており[39]、それに従い厚生労働省が精神障害者保健福祉手帳に旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄を設け、第1種又は第2種の記載がされるよう方針を出し[40]、各自治体が令和7年4月1日までに実施している[41]。
国土交通省はJR各社に対して精神障害者に対する割引の導入を度々協力を要請していた。他の交通機関での導入状況を踏まえ、2025年(令和7年)4月1日発売分より、JR各社において、精神障害者に対する割引が導入される予定である[42][43][44][45]。
JR各社は、2022年(令和4年)度の鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会で、現在も実施している身体障害者・知的障害者に対する割引についても、従来の主張通りJR東日本は「通学定期券の大幅な割引や、障がい者割引などは、社会として必要なものと理解しているが、本来は事業者の負担ではなく、文教政策や社会福祉政策の一環として、社会全体で負担されるべきものではないか。」という考えを表明している[46]。JR西日本も「JR東日本と同じ考え」とした上で[47]、社会福祉政策に応じて実施する割引運賃への補填の検討を求めている[48]。同様に、JR東海も「そうした観点も当然あるという受け止め」と回答している[47]。
JR各社が2025年4月の精神障害者割引導入を公表したのは、従来から各種団体や国会及び地方自治体での決議に押された部分はあるが、発表されたのは2024年4月11日である。最終的に決断のトリガーとなったのは、その10日前の2024年4月1日に、事業者による合理的配慮の提供が義務化された改正障害者差別解消法が施行されるという動きであった。[要出典]なおJR東日本のえきねっとやJR西日本のe5489、およびJR四国のスマえき[49]では、マイナポータルを介してインターネットによる障害者割引が可能だが、精神障害者に適用拡大されるかは未定。
急行料金は、JRの第1種かつ介護者同伴の場合に限り、本人と介護者のJRの急行券(指定席利用時の指定席料金を除く)が5割引となる。2025年4月1日からは、精神障害者についても急行券の割引が適用となる。
ただし、特別急行券は割引されないため、新幹線の開通や急行の特急格上げで、定期運転の急行列車が消滅したことで、臨時の急行列車を除き、急行の障害者割引は事実上廃止された。
特急料金を急行料金よりも安価に設定することも可能であり、全車特別車両化や、ライナー列車のように乗車整理券として料金を徴収するなどのあらゆる料金設定が考えられるため、あえて急行を復活させる理由はないと言える。
JR以外では、秋田内陸縦貫鉄道の急行券はJRの第1種または精神障害1級で介護者同伴の場合は5割引となる[50]。急行券の割引は他の私鉄・第三セクター鉄道の急行では行われていない。
大手私鉄では2025年(令和7年)4月1日までに精神障害者に対する割引制度が導入されることとなっている。大手以外では精神障害者のみ実施していない場合がある。私鉄の割引率もJRと同様の5割引が採用されているが、地方鉄道では最低運賃の設定等により、実際の割引率が5割を下回る場合もある。また、私鉄ではJRと異なり10円未満の端数切り上げの会社も多いため注意が必要である。
2017年(平成29年)4月1日からは、大手私鉄では初めて西日本鉄道[51][注 6]が距離や種別に関係なく割引をグループの筑豊電気鉄道や西鉄バス(系列会社も含む)とともに導入[52]したことを受け、同日福岡県に路線網を持つJR九州バス[53]や昭和バス(佐賀県内では導入済み)[54]・堀川バス[55]、福岡市交通局(福岡市地下鉄)[注 7]も西鉄と同様に割引制度を開始している。なお九州の一般事業者に広く割引が広がったのは、西鉄の九州内での地位(例えば、西鉄のICカードシステムであるNimocaを使用する大分県の複数の事業者)及び同社が九州運輸局で九州内事業者の前で「精神障害者割引をしたため、減収になったケースはなかった」と発言したのが大きいとされ[要出典]、後述のように同社は中長距離バスでも県内から九州内や自社メイン路線に適用を拡大している。一方、中小私鉄や近年開業した旧国鉄転換、新幹線/在来線分離により発足した第三セクター鉄道の大半(2025年4月以降はJR準拠が一部あるものの、全社になる見込み[56])、富山地方鉄道、三陸鉄道、松浦鉄道、広島電鉄、とさでん交通[57]、長崎電気軌道、熊本電気鉄道、2025年4月1日から東京モノレール[58]やつくばエクスプレス[59]など多くの事業者が種別や距離に関係なく一律に対象とするケースが増えている。なお2025年4月1日より従来はJRと一体化して運行していたため適用外であった智頭急行[60](線内の回数券だけ既適用)、伊豆急行[61]、伊勢鉄道[62]、京都丹後鉄道[63]もJRに合わせた基準で実施する方針。なお同様に一体化して運転しているえちごトキめき鉄道[64]は開業時から、北越急行は2018年12月1日の運賃値上げ時[65]に、土佐くろしお鉄道[66]は自社で購入した場合に適用している(IRいしかわ鉄道は、JR七尾線連絡運輸切符は対象外のため、別途精算するよう案内[67])。また2023年に宇都宮ライトレール[68][69]が開業時に適用した事で、栃木県内の路線バスも追随したというケースもある[70][71]。
2023年(令和5年)4月1日より近畿日本鉄道(近鉄)でも割引が実施されている[72]。ただし西鉄と異なりJRの身体障害者・知的障害者に対する割引とほぼ同等で、JRと同じになる、101 km以上(切り上げ計算のため100.1 km以上が対象)を利用する場合で、1級では本人及び介護者の両者の普通乗車券および定期券・回数券、2・3級は本人の普通乗車券・本人が小児(12才未満)の場合介護者の定期券に限り割引の対象となる。
以下は近鉄(2025年4月1日以降のJR)と同等の制度で導入されているが、そもそも連絡運輸含めても101キロ以上の区間がないため、第2種単独乗車の規定が空文化している事業者も多い。
2023年10月1日より京浜急行電鉄(京急)[73]、京王電鉄[74]、東急電鉄[75]、南海電気鉄道[76][77]。
2024年(令和6年)3月16日に名古屋鉄道(名鉄)[78][79]。
同年6月1日に、京成電鉄(京成)が西鉄同様の距離制限なく社線(新京成電鉄(2025年4月1日より京成電鉄に合併)及び北総鉄道)連絡を含む片道乗車券に限り、精神障害者への割引を開始した[80][81]。2025年(令和7年)4月1日にはICカード・回数乗車券[82]・定期乗車券についても精神障害者への割引が開始される予定である。[83][84][85]。
2025年1月19日[86]に阪急電鉄と阪神電気鉄道(それに合わせて山陽電気鉄道[87]も値上げと同時また神戸電鉄[88]割引を開始し[89][90])、4月1日から、西武鉄道[91]、京阪電気鉄道、小田急電鉄[92]、東武鉄道、相模鉄道が開始する事で大手私鉄全社で精神障害者割引が導入となる。なお西武鉄道だけは51キロ以上が対象。
補足だが北越急行、近鉄、山陽やJR九州、JR四国、JR北海道のように運賃値上げと同時に適用と言うケースが見られる。これは申請を一本化したい事業者の意向もあるが、その一方で同時に掲示される事による一般利用者からの反発を招く恐れがある。
地下鉄はJRや大多数の大手私鉄とは異なり、等級にかかわらず短距離の単独利用でも割引となる事業者が多い。
札幌市営地下鉄、仙台市地下鉄、名古屋市営地下鉄、福岡市地下鉄は短距離の単独利用でも割引の対象となる[93][94][95][96]。
都営地下鉄[97][98]と東京メトロ[99]は2024年8月1日より(普通乗車券のみ、ICカードや回数券、定期券等は2025年4月1日より)、大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)は2025年1月19日(予定)より[100]精神障害者に対しても割引を実施するが、いずれも近鉄と同様の規定であり、単独利用は対象外である。
但し東京メトロは、2025年4月1日より「メトロはこね」の特別急行券を利用し、かつ101 kmを超える場合において小田急電鉄及び箱根登山鉄道と連絡運輸乗車券を発売するため、第2種の精神障害者ならびに単独利用でも割引になると発表している[注 8][101]。
また多くの政令指定都市の住民の障害者に対しては、大幅な縮小[102]で条件や詳細が選択制である福岡市[注 9]がやや特殊な他は、公営交通が無料や毎年の低廉な負担額で利用できる福祉乗車証を発行している。もっとも、通常の障害者割引として、岡山市、広島市、熊本市など地元事業者が発行自治体に問わず精神手帳所持者の市内交通が半額となっているところも多い。
福祉乗車証で割引になる事業者では住民とそれ以外で格差が生じている。特に精神障害者割引を実施していない横浜市交通局(2025年3月31日まで)[103][104]、京都市交通局、神戸市交通局は、精神障害者についても住民が無料または低廉な負担となり、住民以外でも身体・知的障害者は地下鉄内短距離、若しくはバスの単独利用でも割引となる一方で、住民以外の精神障害者はたとえ通勤・通学・通院に利用する場合や、都営地下鉄新宿線本八幡駅や横浜市営ブルーライン湘南台駅(2025年3月31日まで)のように駅所在地が運営事業者の自治体でない場合は最寄り駅でも全く割引されず、手帳発行自治体の住民と住民以外や、障害手帳種別で大きな差が生じている。
バス運賃の割引は鉄道と同様に法的根拠はないが、1952年(昭和27年)8月の運輸省自動車局長通知「バス運賃の割引について」(昭和27年自旅第1691号)において身体障害者及び同乗することが必要な介護者の運賃を半額とすることが規定された[35]。
現在は国土交通省が告示する「一般乗合旅客自動車運輸事業標準輸送約款」に障害者割引の規定があり、割引の実施を促す形となっている。1991年(平成3年)に標準輸送約款の割引対象に知的障害者が追加され、2012年(平成24年)7月31日に改定された標準運送約款の24条に「精神保健及び精神障害者福祉に関する運賃を割引する」旨明記された[105][35]。
標準輸送約款を適用する場合は輸送約款の認可が不要であるが[106]、各社が独自に輸送約款の認可を受ければよく、実際の割引の適用可否は事業者の判断となるが、標準輸送約款の割引対象に精神障害者が加わったことから、精神障害者を割引の対象から外すことは、輸送約款の認可が必要になるという点で身体障害者・知的障害者を割引の対象から外すことと同等の扱いとなっている。しかしながら、独自の輸送約款で認可を受ければ標準輸送約款に従う必要はなく、その場合も、身体・知的障害者を割引の対象から外す事例はあまり多くない一方で、精神障害者のみ割引の対象から外す事例は少なくないのが実情である。
割引率は「一般乗合旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度[107]」で「原則として一定率を減じて運賃設定する」ことが書かれているのみであり、標準運送約款などにも具体的な記述はないが、過去の運賃および料金に関する制度の通知で普通運賃は5割、定期券は3割の割引とすることとされていたため、大半の事業者はそれに沿った割引を実施しているが[35]、割引率の基準や目安などは存在しないため、事業者によっては割引率が異なる可能性もある。
このように、割引対象や割引率(または割引額)は事業者が個別に決定するものであり、特に定期券は主流の割引率でも3割であることから、介護者を必要とする障害者の二人分の運賃を実質的に一人分に割引くという本来の障害者割引の目的を完全には果たせていないことが多い。
一方、標準輸送約款でも割引の詳細は規定されていないが、バス運賃の割引は多くの場合で等級や距離の制限のない障害者本人の割引と、JRの第1種などの条件(精神障害2級または3級も含めるなどJRと違う区分の場合もある)での介護者の割引の両方を実施しており、100 km以下などの短距離の単独利用でも割引の対象となる場合が多い。
ただし、例えば大阪シティバスではJRの第一種は精神障害者を含む全ての障害者に対して本人単独利用および介護者同伴時の割引があるが、JRの第二種では身体障害者・知的障害者は本人の割引がある一方で精神障害者は割引がないように、等級などで制限が行われる場合もある[108]。しかし、この場合でもJRの第一種であれば介護者がいない場合でも割引を受ける事ができるなど、一般的な鉄道の割引よりも充実していることが多いと言える。
特に各自治体が運営または事業者に委託しているコミュニティバスは、それぞれの自治体が個別に割引を決定しているため、実施形態はさまざまであり、無料から身体障害者でも割引がない場合[109]まであるので、制度を都度乗務員や自治体に確認する必要がある。
国土交通省から協力要請が行われていることや、標準輸送約款の割引対象に精神障害者が加わったことなどから、割引を開始する事業者もある。
路線バス運賃は後述する高速バス・長距離バス・空港発着バスを除き、対キロもしくは均一の上限運賃制で、認可を受けた上限運賃の範囲内で設定、もしくは協議運賃となる。
上限運賃の設定の根拠となる原価計算の際に障害者割引を前提としていた場合は、廃止には再度運賃の審査または協議が必要になる可能性が考えられる。割引の廃止はあまり行われていないが、大阪シティバスの自社運行路線では2017年度頃までは精神障害者に対しても割引が行われていたが[110][111]、精神障害者割引が存在しない旧大阪市営バスの事業を引き継いだこともあり、精神障害者のみ割引が廃止された[112][113]事例も存在する。その後、大阪シティバスでは2025年1月19日から実質1級のみというかつての自社運行路線の割引よりも縮小された形で単独での利用および介護者と同時に利用する場合の精神障害者割引が開始された[100][108]。
なお東京都では都営バス[注 10]、西武バス、国際興業バス、東武グループバス、京成グループバスなどは他県跨ぎ路線を含め発行自治体に関係なく半額を適用しているが、東急バスや神奈中バスのように、身体障害者・知的障害者は無条件で半額とする一方で、精神障害者は、東京都発行の精神手帳のみ、かつ都内区間だけ利用する場合のみ半額適用にするという特殊な割引を実施している。東京都発行の精神手帳のみを対象とした割引ではあるが、東京都との取り決めはなく、東京バス協会に加盟する事業者が自主的に東京都発行の手帳のみを対象にしたものであり、東京都から補助が行われているわけではない[114][115][116]。
路線バスのうち、専ら一の市町村(特別区を含む)の区域を越え、かつ、その長さが概ね50 km以上の路線、又は空港発着で、停車する停留所を限定する路線は、影響が比較的小さい「軽微運賃」として、認可された上限運賃の範囲で決定する上限運賃制よりも緩い事前届出制であるため[117]、変更命令が出されるような極端な事態を除き、基本的に自由に運賃を設定することができる。
前述の路線バスの項目で示したように、割引率に基準や目安があるわけではないが、通常の路線バスと同じく5割引が主流であり、路線バスと同様に、等級や距離の制限のない障害者本人の割引と、JRの第1種または独自の条件で介護者の割引の両方を実施していることが多い。また伊予鉄バスのようにリムジンや特急バスを適用除外にしているために、例えばJR松山駅=松山空港間で路線バスは適用、リムジンバスは適用外と言うケースがある[118]。
また、バスでは急行・特急料金や座席指定料金、特別車両料金などが設定されていることが少なく、全額が運賃の扱いであることが多いため、割引率で5割を採用した場合は鉄道よりも割引率が高くなりやすい傾向にある。
ただし、身体障害者・知的障害者に対する割引についても全く行われていなかったり、主要な予約サイトでは割引が適用できないなどの制限がある場合もある他、割引率(または割引額)を引き下げたり、また、認可された上限運賃の縛りを受けずに運賃を設定できるため、通常運賃を高めに設定した上で、障害者割引と併用できない割引料金を事実上の標準的な運賃として運用することで、割引率が著しく低下していたり、割引が全く意味をなさない場合もある。
都市間高速バスの割引は、競合する高速バスや他交通機関と比較した考えになったり、通常の路線バスで多くみられる公営バスなどの行政が主体の運営や、行政の赤字補填によって維持されている赤字前提の路線ではないことなどから、割引はウィラーアライアンス[119](一部の共同運行路線を除く)、加越能バスの名古屋=高岡(氷見)線、ブルーライナー、平和交通全線と同社が主導してのちに参入したJRバス関東、京成バスの「エアポートバス東京・成田[注 11]」、西鉄バス(自社単独の新宿=福岡の「はかた号」を含むが、福岡=名古屋の名鉄バス運行便など、共同運行路線の一部を除く)[120]、福岡=長崎間「九州号[121]」(九州急行バス)、関東、名古屋、九州=四国各方面「コトバスエクスプレス」(琴平バス)などのごく一部の事業者の路線に限られている。
このように、精神障害者に対しても割引を実施している高速バス路線はごく一部であったが、そのような事業者の中でもコロナ禍前後には割引の縮小が顕著で、東京バスグループ[注 12]は2019年12月31日、オリオンバスは2022年1月1日に割引を撤廃し[122]、オリオンバスは知的障害者に対する割引も2022年1月12日から廃止された[123]。その後JR鉄道割引を境に、大手のウィラーアライアンスはJRや大手私鉄などの鉄道割引導入に先駆けて2024年6月1日より割引を開始し[119]、また九州島内最大勢力である西鉄バスが、従来の県内及び一部近県路線に加えて2024年10月1日[124]から大部分の路線に適用するなど新たな動きが出ている。
ただし、以前は身体障害者・知的障害者に対する割引さえ実施していれば輸送約款の認可を省略できたものの[注 13]、2012年(平成24年)以降標準輸送約款の割引対象に精神障害者が加わったことから、精神障害者を割引の対象から外すことは、輸送約款の認可が必要になるという点で身体障害者・知的障害者を割引の対象から外すことと同等の扱いとなっている。しかしながら、障害者割引を定めない独自の輸送約款で認可を受ければ標準輸送約款に従う必要はないため、割引を実施しない場合も多く、その場合も、身体・知的障害者を割引の対象から外す事例はそこまで多くない一方で、精神障害者のみを割引の対象から外す場合が大半であるのが実情である[125]。
また、鹿児島県のいわさきコーポレーション(1級=介護者を含む、2級=本人のみ、3級=対象外)等のように、等級別で割引に差異があるため同社と共同運行している鹿児島空港=市内便などの場合、事業者(南国交通[126]・鹿児島市営バス)により扱いが異なる場合もある[127]。
一部の定期観光バスについても、地域やコース、運行会社などによって異なるが、「はとバス[128]」(コース番号のアルファベットがA・B・Cで始まる「定期観光」のみ対象。要電話予約。Web予約不可)「亀の井バス」別府地獄めぐり(割引率は低いが、実質、地獄組合加盟の7地獄の入場券分が割引となる。ハイウェイバス・ドットコム、@バスで電話で予約可能)等が可能。
精神障害者全体への割引制度がないが、その地方公共団体の住民である精神障害者(精神障害者手帳所持者・療育手帳や身体者手帳の場合は条件が異なる)に対しては福祉乗車証などといった何らかの証明書を交付すると、公営交通などの運賃を無料とする例もある(例:京都市交通局[129])。
仙台市交通局は、2021年3月31日まで仙台市または宮城県発行の精神障害者福祉手帳を提示した場合のみ、本人分の普通乗車券に限って割引対象としていた。翌4月1日以降は手帳の発行自治体を不問とし、あわせて介護者や定期券への割引を開始した[130][注 14]。
地域独自のICカード乗車券では自動的に割引運賃を引き去る機能のある障害者用カードを発行するものがあり、手帳を提示することで購入できるが、多くのカードにおいて手帳に対応した有効期限が1年あるいは当初翌々年の誕生日、以後毎年更新など地元在住者以外では使用しにくいケースが多い[132][133][134]。交通系ICカード全国相互利用サービス加盟のICカードについては、中京圏各社で導入されている「manaca」と西日本鉄道などで導入されている「nimoca」、福岡市交通局の「はやかけん」[135]などの障害者用カードがあるものの、いずれも導入各社の障害者割引制度との関係から、身体、知的も含めて利用できる事業者は限定される。また割引カードで乗り越しても乗り越し運賃を支払えない問題もある(例:名古屋市=名鉄、福岡市=JR九州)。
なお、相模原市・堺市以外の政令指定都市では、静岡市や広島市などで手帳発行自治体に問わず一律の割引措置を行うか、在住者に自治体内の無料パス交付、或いは双方の措置をとっている。また名古屋市においては、手帳所持の市民に福祉特別乗車券を配布した上、2015年(平成27年)10月1日から名鉄バス、2016年(平成28年)4月1日から千葉市(モノレールを含む、また県内もJRバス関東以外の一般バス)に続き、名古屋市が主に出資する全ての交通機関(地下鉄・市バス・名古屋ガイドウェイバスガイドウェイバス志段味線・あおなみ線)で全都道府県・全等級の精神障害者保健福祉手帳所持者に対して、半額割引を行っている[136]。(地下鉄は日進市、ガイドウェイバスは春日井市、市バスは両市を含む9市町に跨がるがいずれも対象である。名鉄、JR東海、近鉄の名古屋市内区間は福祉特別乗車券の対象区間であり名古屋市在住者は実質無償であるが市外在住者が介護者なしで利用する場合は半額割引は対象外(名鉄、近鉄は名古屋市内のみ乗車の場合は100km以内の為介護者なしの場合は対象外)、JR東海に至っては介護者ありの場合でも割引対象外、市も僅かに出資しており、藤が丘駅にて地下鉄と乗り換えが可能なリニモ(筆頭株主は県)は介護者同伴1級のみ対象(身体、知的も介護者同伴のJRの第1種のみ対象、なお100kmを超える区間は存在しない)のため注意が必要である。)なお三重交通は一般路線バスと一部の高速バスで半額割引を実施しており名古屋市営バス、名鉄バスと同様名古屋市内では市内在住は実質無償、市外在住は半額となる。
船舶運賃については国土交通省や運輸局の通達により、シルバーフェリー、太平洋フェリー、新日本海フェリー、商船三井フェリー[137][注 15]、東海汽船[138][139]小笠原海運、東京九州フェリー、名門大洋フェリー、阪九フェリー、四国オレンジフェリー、松山・小倉フェリー、フェリーさんふらわあ、マルエーフェリー、大分ホーバードライブなどの中長距離フェリー事業者が、2等船室若しくは2等寝台相当額に対して割引を行う事例がみられるほか[注 16]、短距離の航路(市営船含む)も割引が実施されている地域がある。但し青函フェリーやたこフェリーのように廃止された例もある。
航空運賃は高速バスと同様に事前届出制となっている。
航空運賃では、国際線および主要な格安航空会社(LCC)、一部の離島発着便の場合は、従前から身体障害者・知的障害者・精神障害者を問わず障害者割引自体が存在しない。更にLCCの場合は、小児運賃についても存在しない。
他方、障害者割引を実施している航空会社[140][141]については、2016年以降に国土交通省と航空各社の間で精神障害者への割引導入に向けて協議し、準備を進めていた[142]。日本航空とJALグループ各社[143]が2018年(平成30年)10月4日予約・搭乗分より、天草エアライン[144]が同年12月22日搭乗分(同年10月22日予約分)より、全日本空輸[145]・ソラシドエア[146]・スターフライヤー[147][注 17]、AIR DO [148]が2019年1月16日予約・搭乗分より、フジドリームエアラインズが同年3月31日搭乗分(同年1月31日予約分)より、東邦航空(東京愛らんどシャトル)が同年6月1日予約・搭乗分より従来から設定していた国内線の身体障がい者割引が、新たに精神障害者も対象となった。新中央航空も2020年10月1日より身体障害者割引運賃を障がい者割引運賃に変更する形で、精神障害者も対象とした[149]。2024年1月31日就航のトキエア[150]にも設定がある。同伴者も1名に限り、同様の割引が適用となる。
航空各社の障がい者割引は、航空会社や区間により割引率が異なる。特に、JALグループとそれ以外では大きくルールが異なる。
JALグループ(日本航空、日本トランスオーシャン航空等)では2023年4月から障がい者割引は「ディスカウント方式」となっており、「フレックス」、「セイバー」、「スペシャルセイバー」、「往復セイバー」、「プロモーション」の5区分の運賃について、約20%の割引を行う。予約変更等の取り扱いは、各運賃区分によって取り扱いが異なり、ベースとなる運賃区分に準ずる。したがって、フレックス以外は予約を変更することができない[151]。
JALグループ以外の航空会社の場合、早期購入割引(ANAスーパーバリュー等)や株主割引、パッケージツアーと比較すると割高になる場合が多い(当日等の割引運賃適用外で搭乗する場合や、繁忙期はこの限りでない)一方で、障がい者割引の場合は、早期購入割引等やパッケージツアーのように発売できる座席数や予約変更に制限がなく、空席があれば片道から購入可能で、且つ予約変更可能であるのが利点となる。ANAの「プレミアムクラス[152]」は、シート料金(ANAは運賃と料金が一体で発売されるため、路線ごとに普通席との差額にバラツキがある)は割引対象外だが、運賃が普通運賃扱いのため、早期購入割引や株主割引と違い、幾分予約しやすい。JALグループも2023年4月の運賃制度変更前は、ANA等と類似の制度であった。
障がい者割引で利用の際、チェックインカウンターにて手帳提示、確認作業終了後に搭乗券控えが渡されるが、JALやANAのマイレージ会員であれば、事前に障がい者手帳のコピー(要写真付き)と申請書(各航空会社ホームページから印刷入手可能)に必要事項を明記の上、発送。登録作業完了後は、通常利用時と同じく、空港でのチケットレス・チェックインレスで搭乗が可能(コードシェア便を含む。空港でも初回のみ、有人カウンターで障がい者手帳とマイレージカードを提示・登録すれば期限内は通常時と同じくチェックイン可能)。大手会社のマイレージカードを使用しない予約や大手以外では下記の2種がある。大手やスカイマークなどは、搭乗都度有人カウンターにて、手帳若しくは前述のミライロIDを提示して手続きを行う必要がある。一方独自のマイレージシステムを持つAIRDO、ソラシドエアではマイレージ情報に対して初回登録時は手続きが必要なため、特に混雑期や悪天候時などは早めの来港が必要となる[注 18]。また登録済みでも、JAL(ANAは不要)は手帳の有効期限が切れた場合は、改めての手続きが必要であることが、身体・知的療育手帳とは異なる。期限切れの場合は手帳と紐付けた予約が出来ない。(会員外で予約して、当日チェックイン時に窓口で手帳を提示すれば搭乗可能)
また制度ではないが、事前搭乗サービスを実施している事業者では、手帳かミライロID提示で等級に関係なく対象者となる。
日本のタクシー運賃は地域ごとに上限運賃と下限運賃(上限運賃から約10%)の範囲内の運賃が申請された場合は自動的に認可される自動認可運賃が設定されており、この範囲内で運賃を申請した場合は審査を省略することができる制度となっている。
タクシー運賃は原則として全ての事業者からの申請(実際には事業者団体による一括申請[153][154])を前提とする同一地域同一運賃制度であったが、1993年(平成5年)10月から同一地域同一運賃が廃止され、上限運賃の改定申請事業者の車両数の合計が当該運賃適用地域における全体車両数の5割を超えた場合に運賃改定手続を開始することになり、1998年(平成10年)3月からは個人タクシーは除外され、申請があった法人事業者の車両数の合計が7割を超えた場合に運賃改定手続を開始することとなった[155]。
このように、現在は事業者団体による一括申請は行われておらず、各事業者が個別に運賃改定申請を行うこととなっている[156]。
タクシーの身体障害者割引は、愛知県でいち早く運転手と愛知県の自動車交通労組の負担で実施されており、熊本県と山梨県でも一部実施されていた[157]。
現在の形の障害者割引は東京都では1990年(平成2年)5月26日に開始され[158]、当初は六大都市等に限られていたが[159]、事業者による運賃改定申請で身体障害者割引を含む運賃の申請が行われた地域で新たに実施されるようになり[160]、1992年(平成4年)の夏までに全国で順次導入された[161]。
知的障害者割引は東京都では1992年(平成4年)5月に開始された[158]。
現在は身体・知的障害者ともに全国で割引が実施されており、国土交通省自動車局長通知「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度について」では身体障害者、知的障害者に対して1割を割引すると記載されるまでに至っている。一方で、統一した実施がない精神障害者は、事業者が割引対象とする可能性がある被爆者・戦傷病者とともに「事業者の申請に基づき個別に設定するものとし、割引率は1割とする」とされている[35]。
2025年時点では精神障害者割引が含まれる運賃の申請ができるだけのタクシー事業者の賛同が得られないようであり、割引の申請に至った地域がなく、個別の事業者が実施している状況となっている。
タクシー協会単位で精神障害者割引が実施されている場合もあり、2019年時点では秋田県ハイヤー協会[162][163]、東京ハイヤー・タクシー協会[164]、愛知県タクシー協会[165]などに加盟するタクシー事業者の多くが精神障害者割引を実施している。ただし、これらのタクシー協会でも全ての事業者の賛同が得られるまでには至っておらず、協会に加盟していても割引を実施していない事業者も存在する[163][162][164][166]。
他方、東京都の個人タクシー組合では統一的な精神障害者割引が実施されており[167][168]、東京の個人タクシーが組合に加盟する場合は割引を実施することになり、個人タクシーは特に割引の導入が進む事態となっている[169]。
このように、会社により異なり、割引が行われる場合は障害等級や距離にかかわらず10%引となる。同じ地域でも会社により異なる場合もある。また運転手の知識のなさゆえに本来割引が受けられる場合でも拒否されたり、逆に対象外であるにもかかわらず身体、知的の手帳と誤認するなどし割引を適用されたりするケースも多く混乱の原因となっている。他の交通機関と異なり歩合給などの制度が影響し、会社によっては障害者割引によって運転手の給与が下がることがあるため、クレジットカードでの支払いとは併用出来ないなどと意図的な不正拒否も行われることもある。なお、実施している割引を不当に拒否することは道路運送法違反として厳正に処分される[170]。
有料道路料金は介護者が同伴の場合でも料金が変わらないため、介護者を伴わなければ旅行できない重度の障害者の二人分の運賃を実質的に一人分に割引く障害者割引は存在しない。
有料道路の割引は、障害者が移動する場合に、ハンドル操作や各種装置の運転操作に困難を伴い、身体的な苦痛や疲労が著しいため、走行の条件のよい有料道路を利用することが相当程度余儀なくされている実情があり[171]、通勤、通学、通院等の日常生活において、有料道路を利用する障害者に対して、自立と社会経済活動への参加を支援することを目的としている[172]。また、肢体不自由者が運転する場合には、走行条件のよい有料道路を通行することが交通安全上も望ましいという判断も働いている[173]。
有料道路の割引は1979年(昭和54年)6月1日に開始された。対象は歩行機能が失われた下肢または体幹の不自由な身体障害者であり、これは、足がわりとして自動車を運転する障害者に対する割引が目的であり、より重度の障害者は対象外であった[174]。さらに、聴覚障害者等の他の身体障害者は、歩行機能が失われているというわけではなく、自動車を足がわりとしなければならないという程度が低く、道路の場合は一般道路の通行もでき、有料道路の通行を余儀なくされる程度も下肢体幹不自由者に対してかなり低いため、対象外となった[175]。また、日常活動で利用する範囲という観点から、日本道路公団(現:NEXCO)以外の道路の割引は、隣接する都道府県までに制限されていた[176]。
上肢(手)に障害のある人が運転できる自動車も開発されたこともあり[177]、歩行機能が失われているというわけではないが、1986年(昭和61年)12月から手の不自由な障害者が運転する場合も割引されるようになった[173][178]。
しかし、1992年(平成4年)6月15日に道路審議会で、内部障害者の運転と重度障害者の介護者の運転を割引の対象とする答申が出され[179]、結局1994年(平成6年)には、歩行機能、運転の苦痛や疲労、交通安全上の望ましさの程度にかかわらず、すべての身体障害者本人の運転が割引対象となった[180][181]。
また、このときに介護運転として、重度の身体障害者、重度の精神薄弱者(知的障害者)の移動のために介護者が運転する場合も対象となった[180][181]。
一方で、精神障害者は、そのような身体障害者の割引の趣旨とは少し違うため、割引は行われていない[182][183][注 19]。また、身体障害者と知的障害者の間でも格差が存在する[注 20]。
2024年時点では、減収により収支に与える影響や本制度のこれまでの経緯、他の公共交通機関における割引の実態等を踏まえつつ、制度の趣旨に該当する精神障がいの程度とそれに伴う移動の困難性を考慮している状況であり、現時点で精神障がい者の方に直ちに障害者割引を適用することは難しいとしている[184]。
なお、重度の身体・知的障害者の介護者の運転が割引となった際は、精神障害者保健福祉手帳の制度ができる1995年(平成7年)より前であり、精神障害者は障害の事実が手帳等で確認できないため、対象外とされたが[185]、手帳の制度ができた後の1999年(平成11年)に開始された身障者等割引制度研究会では、精神障害者のうち、単独では移動が著しく困難な者の介護者運転の場合についてのみ割引の対象としてはどうかという議論もあった[182]。しかし、この時は結局移動が著しく困難な精神障害者の介護者の運転も対象にはならなかった。
このように、現在ではNEXCO管轄の高速道路・有料道路[186]、都市高速などの地方道路公社の多く[187]では本人運転と介護運転で高速道路料金の割引が行われており、本人運転では等級にかかわらず全ての身体障害者が全ての距離で対象になり、介護運転では重度の身体・知的障害者が介護者の運転する車に同乗する場合に対象となる。なお、重度の障害の範囲はJRの区分の第1種と同等である。身体障害者で本人が運転しない場合は本人が運転した場合より割引の条件が厳しくなっている。
2021年7月19日~2021年8月9日の東京オリンピック期間中と2021年8月24日~2021年9月5日の東京パラリンピック期間中に首都高速道路が行う1000円上乗せは通常割引の対象とならない精神障害者も事前申請により免除となる。(新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い東京オリンピック・パラリンピックが364日延期した為対象期間が変更された。)
上記の問題に対し、国が主体となって3障害一律の割引を行なうために動くべく、2016年3月頃から各地の都道府県議会で「障害者差別解消法に基き、精神障害者に対しても同一の交通機関の割引を行う」決議が全会一致でなされている[188][189][190]。
2021年6月11日、赤羽一嘉国土交通大臣から国土交通省内各局に対し、「真の共生社会実現に向けた新たなバリアフリーの取組」に関する大臣指示を行った。その中で、精神障害者割引の導入促進に関して、「本取組の具体的な方向性や目標等を早期に定め、その実現に向けた検討等を開始すること。」を指示内容として明記している[191]。
他方、高速バスの割引が次々に廃止されるなど、相反する動きもみられる。
なお療育手帳では、全日本手をつなぐ育成会等、関係諸団体の運動の結果、JR運賃や鉄道料金の割引制度が設けられた[192]。
厚生労働省は従来より発達障害は精神障害の範疇としていた[193]。同省の通知では申請用診断書に発達障害に当たるICD-10カテゴリーF80-F89、F90-F98の記入が可能である[194]。
参考までに、都道府県または政令指定都市によっては、知的障害者向けの障害者手帳である療育手帳の取得が可能な場合がある。日本は、発達障害者専門の障害者手帳はない[195]。
手帳自体には、知能検査の診断から、50~69程度と生活年齢の遅れで、軽度の知的障害がみられる場合も多い。最近では知的障害者に配慮した福祉サービスも行われている。 療育手帳とは違い合併症が見られる傾向は少ない方で、3級の登録が特に多い。重心化したものでは対象外である[注 21]。
手帳取得後は更新が必要である。例えば精神障害者福祉手帳は、等級に関わらず更新は2年に1回、2018年時点で手帳更新に必要な診断書を精神科クリニックに通い、精神科医に書いてもらい、担当する福祉課に精神障害者福祉手帳と証明写真と共に提出し、手帳の更新手続きを行う。
都道府県知事は精神障害者保健福祉手帳交付台帳を備えて、手帳の交付に関する事項を記載する義務がある。精神障害者保健福祉手帳を返還をするか死亡した場合、記載された事項は削除される[196]。記載される個人情報は精神障害者の氏名、住所及び生年月日、障害等級、精神障害者保健福祉手帳の交付番号、交付年月日及び有効期限、精神障害者保健福祉手帳の再交付をしたときは、その年月日及び理由である[197][注 22]。
一部の精神障害者患者会が、当時の大きな圧力団体である全国精神障害者家族会連合会および全国精神障害者団体連合会が、厚生省に要望して強引に制定したとの証言がある。また病者総番号制、結局精神病者分断(行政に都合の良い精神病者と都合の悪い精神病者を分けるだけ)と批難している[198]。
認定条件は日本国政府が示した「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」によりつつも都道府県、政令指定都市で幅広い裁量があるため、行政行為としての信頼性と安定性を損なっている、障害者施策の推進に手帳が役に立っていない(実質生活保護の障害加算の決定程度)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律には、身体障害者福祉法第15条に定めている指定医制度のような制度がなく、精神科医でなく事実上知識が浅くても、手帳申請用の診断書が書けてしまい、その診断書によって正しい判定がされず、精神障害者の権利侵害につながるなどが指摘されている[8]。
精神障害者保健福祉手帳を持っていることにより、所得税や住民税などの控除を受けていた労働者が、何らかの理由で手帳が失効した場合、税金負担が一般と全く同じになり、生活が圧迫される。
精神障害者保健福祉手帳の判定の基準が、未だに旧式の「国際障害分類(ICIDH)」に則っていることに対して、批判がある[8]。障害については、21世紀を迎えた現在では、国際連合の世界保健機関が制定した「国際生活機能分類(ICF)」の基準が広まっているからである。
2009年(平成21年)に、神奈川県にて携帯電話料金の障害者割引目的での手帳偽造事件が発覚している[199][200]。2014年(平成26年)には、受け取る障害年金の額を上げようと目論んで、医師の診断書を偽造する事件が発覚した[201]。
障害者自立支援法が施行される前まで、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第32条により精神科通院医療費の一部を公金にて負担した制度があった。この制度の申請時にこの手帳が交付されている者は医師の診断書が不要であった[202]。
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