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昇降のための道具 ウィキペディアから
梯子(はしご、ていし、英語: Ladder)とは、昇降のための道具[1]。はしごに「梯」や「階子」の字をあてることもある。
壁の表面などに立てかけて使う固い材質(木・竹・金属など)で出来たものと、頂上から吊るして使う縄などでできたものがある。固い材質の梯子は移動して用いられることが多いが、建物の壁に永久的に固定されているものもある。鉄道車両においては緊急時に車両から脱出する場合に使用する。
一般的な梯子は2本の縦木に足場となる横木を一定間隔で固定したものである[1]。梯子の足場は格(こ)または段と呼ばれる。
一般的な金属製の梯子には、2本の枠がいくつかの格で連結され移動する部分を持たない形状の固定された梯子、固定された梯子が2つまたはそれ以上の長さに分割され保管に便利になっている延長する梯子(その長さは互いにスライドさせることにより最大の長さとなる。地上の操作者によって簡単に延長できるよう、滑車のシステムが付いており、二連梯子、三連梯子などと呼ばれる)、伸縮自在の梯子(枠が短い同一形状の管材でできており、保管のためにそれぞれが内部にスライドする)などがある。
固い梯子は木製や竹製のものがもともと多かった。20世紀にはアルミニウムが軽量であることから一般的になった。固定設置のものではより耐久性のあるステンレス製も用いられる。電線の近くで作業するための梯子には、絶縁体の竹やガラス繊維強化プラスチック製の梯子が使われている。他、チタン製でアルミ製よりも軽量なものもある。
基本的には段に手足をかけながら昇降する。段に手をかけないものが階段として区別され、梯子よりも傾斜が緩い、大きく重厚といった相違があるが、厳密な線引きは無くどちらとも形容しがたいものもある。
足や手をかける場所は、踏み桟と呼ばれる[2]。
橋梁点検等において、移動梯子は一時的な足場として使用されることがあるが、日本の労働安全衛生規則第518条では2m以上の高所作業をする際には作業床を設けるか、墜落防止措置を講じなければならないことが規定されている(梯子は作業床の要求を満たしていない)。
梯子が地面をしっかり捉えるよう、梯子を安定させる装置がある。前項で説明したように15度の角度を保つことができるように予め接地部分を15度分欠く構造にしたり、接地面に合わせて関節のように動くような構造を持つものがある。また、ゴムなどの摩擦力の強い素材を端点に装着されていることがある。
梯子の上端を壁から遠ざけて保持するために支柱が付属されている場合がある。これにより、屋根の軒のような突き出した障害物を避けることができ、梯子を安全に用いる高さを増加させることができる。
鉄道車両においては、緊急事態が発生した場合に乗客を車両から避難させるため、車両によっては梯子を設置している。これは車両の床面と地上とは高さが約1mあり、飛び降りることは危険なためである。
主に地下鉄車両では緊急時において前面の貫通扉を開け、梯子をかけて乗客を避難させる。基本的に梯子は折りたたみ式の形状で、車両によっては併設して手すりも設置される。珍しい例では東京地下鉄において使用されている6000系・7000系・8000系においては、貫通扉裏側に直接非常階段を取り付けており、使用時にはこれを前に倒して使用する車両もある。近年は前面貫通扉や側面出入口下のドアレールに引っ掛け、緊締ベルトを外すだけで簡単に展開ができる 手すり付き梯子が普及している[3][4]。
地上線を走る鉄道では緊急に乗客を避難させる場合には側面のドアを開け、座席シートを使用して避難させることを考慮していた。これは従来使用されていた脚台(蹴込み)で座席を支える方式では、座面は板状の骨組みに詰物・座席表地を巻いて脚台に固定してあるだけである。このため、これを外してドアに引っ掛けて「すべり台」のようにして乗客を避難させることが可能であった。しかし、2000年代に入ると片持ち式座席の普及で、このような避難方式は不可能となった。片持ち式は、座面が壁で支持された骨組みに詰物・表地をかけただけで、脚台式のように取り外して使用することは不可能なためである。
この座席構造の車両ではさまざまな方法で梯子を用意している車両がある。座席の背ずりの裏側に階段(ステップ)を取り付けてある車両(例:京王9000系)や背ずりを外すと梯子が収納されている車両(例:小田急3000形2次車以降)がある。そのほか、床下に梯子をつり下げ、緊急時に組み立てて使用するものがある(例:東武50000系列・西武30000系・小田急4000形・東急3000系以降の新形式車両など)。また2010年代より近畿日本鉄道の車両にも梯子を取り付けを開始しているが、同社では運転席後部や妻面付近などの車内の空きスペースを活用して設置している。
消火活動や救助活動のために消防用車両に積載される金属製はしごを「消防用積載はしご」という[5]。単一式積載はしご、伸縮式積載はしご、 折りたたみ式積載はしごがある[5]。
避難はしごには金属製と非金属製がある[6]。金属製避難はしごには固定はしご、立てかけはしご、つり下げはしご(ハッチ用つり下げはしごを含む)がある[6]。
戦国期の攻城戦において兵が用いる特殊な梯子があり、例として、『軍法極秘伝書』(竹中重治著と伝わる兵法書)や『海国兵談』には、以下のものが絵図に示されている[7]。
この他にも、忍術書である『万川集海』では、「結梯(ゆいはしご)」と呼ばれる忍具があり、「真」=あらかじめ作られている場合と、「草」=その場で組み立てる状況に分類し、2本の竹を持っていき、縦の長さは6 - 8寸、長さはその場に対応して変えることが記述されており、梯子の上下の端2、3尺を菰(コモ、柔らかければ何でもよいとも記す)で包み、物音を立てさせない工夫(静粛性能)がなされていた[8]。
徳川幕府刑事図譜に、犯人の四方をはしごで囲み、凶器を持つ凶悪犯の行動を抑え込む捕具として使われている図を見ることができる[9]。
林業では、枝打ちや種子の採取、架線の設営などのために木に登る必要があり、伸縮を可能にした一本梯子が用いられる[10]。木に立てかけた梯子が外れないようにするため上部には固定用器具や下部にはスパイクがついている。
武家は「高みへ昇る」縁起を重んじ、瑞祥的な意味から梯子を家紋としたとみられ(後述書 p.314.)、島原の乱では松平信綱が馬印としている他、牧野忠成は番指物や使番旗印に梯子を用いている[11]。家紋の種類としては、「三段梯子」、「牧野梯子」、「六角笹に三段梯子」がある(前同 p.314.)。
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