新型コロナウイルス感染症対策本部
日本の内閣に設置された組織 ウィキペディアから
日本の内閣に設置された組織 ウィキペディアから
新型コロナウイルス感染症対策本部(しんがたコロナウイルスかんせんしょうたいさくほんぶ、英語: Novel Coronavirus Response Headquarters)は、日本の内閣に設置された組織。2020年1月30日に閣議決定より設置され、2023年5月8日に廃止された。
新型コロナウイルス感染症対策本部は、2019年末以降に世界で感染が拡大した新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の対策のために設置された組織である[1]。
2020年(令和2年)3月26日に新型インフルエンザ等対策特別措置法第15条第1項が規定する「政府対策本部」[2]として指定され[3]、閣議決定と新型インフルエンザ等対策特別措置法が設置根拠[3]となる。「政府対策本部」が置かれた場合、その名称、設置場所、設置期間を国会に報告することが義務づけられている[4]。設置場所は東京都の中央合同庁舎第八号館とすること[5]、設置期間は2020年(令和2年)3月26日から新型コロナウイルス感染症対策を推進するため必要と認める期間とすること[5]、などが国会に報告されるとともに公示された[5]。名称は、従来同様に「新型コロナウイルス感染症対策本部」と称する[5]。「政府対策本部」が置かれた場合、各都道府県も「都道府県対策本部」が置く[6]。
会議の庶務機能は、厚生労働省など関係する機関の協力の下、発足当初より内閣官房が担う[7]。「政府対策本部」も、庶務機能は引き続き内閣官房が担う[8]。
廃止後に新たな変異株等が発生した場合には「新型インフルエンザ等対策閣僚会議」で対策を協議することとなっている[9]。
政府行動計画に基づく基本的対処方針に従い、指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関は、それぞれ新型コロナウイルス感染症への対策を実施する。新型コロナウイルス感染症対策本部は、指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関が実施する同感染症の対策に対して、総合的な推進に関する事務を所管する[10]。新型コロナウイルス感染症対策本部は、同感染症の対策を的確、かつ、迅速に実施するため、必要に応じて指定行政機関、指定地方行政機関、都道府県知事、指定公共機関の間で総合的な調整を行う[11]。国内で発生した新型コロナウイルス感染症が国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあると認められ、全国的かつ急速な蔓延により国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるときは、本部長が「緊急事態宣言」を公示することができる[12]。
2020年(令和2年)1月30日に設置されて第1回会議を開催した[14]。設置根拠は閣議決定「新型コロナウイルス感染症対策本部の設置について」に基づく[1]。
新型コロナウイルス感染症対策本部で検討・決定された対策には以下の様なものがある。それ以外の対策については2019年コロナウイルス感染症の流行に対する日本の行政の対応を参照。
2020年(令和2年)4月7日に本部長の内閣総理大臣安倍晋三は、新型インフルエンザ等対策閣僚会議の下に設置されている新型インフルエンザ等対策有識者会議の基本的対処方針等諮問委員会に、緊急事態宣言の公示に向けて諮問した[注 3]。対策本部においては緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置発令期間中の人流抑制や飲食店における酒類提供の制限と時短営業の要請などを行うことを決定している。
2020年3月28日に定められた「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」では[20]。手洗い、咳エチケットの励行や、外出する際にマスクを着用することなどを呼びかけた[20]。3月28日に改定された方針では、「3つの密」を避けることが重要であるとし、不要不急の外出を控え、テレワーク等を導入することで人流を抑制することとしたが、諸外国で行われていたようなロックダウン(都市封鎖)は行わないこととした[21]。5月14日の改定では、「人と人 の距離の確保」「マスクの着用」「手洗いなどの手指衛生」などを基本的な感染対策の例としてあげている[22]。2021年(令和3年)11月19日の方針改定では、屋内においてマスクの着用を推奨することが盛り込まれ、特に不織布マスクが推奨された[23]。2023年(令和5年)2月10日には混雑する場所や病院・高齢者施設など一定の条件や場所を除いて推奨ではなく、個人の判断に任せる方針を決め、3月13日より、適用された[23]。
2020年初頭からマスクの需要が逼迫するようになり、2月13日に決定した「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」では、マスク生産設備導入補助費として4.5億円が投入された[24]。 3月10日に決定された緊急対応策第2弾では、マスクの転売行為を禁止し、さらに国が2000万枚の布製マスクを買い上げて介護施設等に配布、医療機関には医療機関向けマスク1500万枚を国で一括購入して必要な医療機関に優先配布すること、マスクメーカーに対する更なる増産支援などの方針が盛り込まれた[25]。4月1日の第25回会議で、本部長の内閣総理大臣安倍晋三は、緊急経済対策の一環として全世帯に布マスク2枚を配布する、と表明した[26][27]。この対策は、自由民主党や公明党など与党が要求したものではなく、自由民主党政務調査会や公明党政務調査会など与党政策部会に諮ってない[28]。自由民主党政務調査会長の衆議院議員岸田文雄が「突然出てきてびっくりした。事前に聞いていなかった」[28]と発言するなど与党議員からも懐疑的な意見が挙がり支持者から批判された[29]。国外でもFOXニュース、ブルームバーグ、CNNなどが報じた[30][31][32]。総理大臣官邸に勤務する経済官庁出身官僚が「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」と安倍総理大臣に進言し、2020年3月初旬に全世帯配布を検討したが配布手段や予算規模などの課題に加えて「そもそも国民は布マスクを使っているのか」と根本的な疑問から廃案となった[29]。4月に突如復活して4月9日に副本部長の内閣官房長官菅義偉は、布マスクの単価は200円程度[29]で、配達費用とあわせて2020年度(令和2年度)予算の予備費と同年度補正予算から合計466億円を投じる、と正式発表した[33]。世界保健機関は、新型コロナウイルス感染症に「布マスクの使用を推奨しない」[34]。布マスクは、表面の間隙がウイルスの径よりも大きく不織布マスクと異なりフィルターがないが、感染者が装着した場合に体液飛沫の拡散を抑制する可能性があると指摘する者もいる[34]。欧州の疾病対策センターは、医療用マスクの供給が停滞して医療機関に十分に供給されていない状況で市民の布マスク利用は検討される、としている[35]。日本医師会会長の横倉義武は、「ウイルス防止の役割はあまりない」[36][37]と指摘しつつ「国民の安心をつくるということではそれなりの効果はある」[36][37]と説明した。総理大臣官邸の官僚らにとって酷評は想定外[38]で、「アベノマスクと言われていますが」[38]と質問された警察庁出身の内閣官房副長官杉田和博は、記者に「それは君たちが言っているんだろ」[38]と応対した。のちに、通商産業省出身の内閣総理大臣秘書官佐伯耕三が発案したと報じられた[38][注 4]。
コロナ蔓延下において景気の悪化が懸念され、2020年(令和2年)3月18日には「生活不安に対応するための緊急措置」として、「個人向け緊急小口資金等の特例の拡大」「公共料金の支払・国税・社会保険料・地方税等の猶予」などの措置が行われた[39]。
2020年(令和2年)2月13日には、中小企業、小規模事業者に対して、日本政策金融公庫等による貸付や信用保証協会によるセーフティネット保証による資金繰り支援を行うことや、休業手当などの一部を助成する雇用調整助成金の要件緩和などの措置が決定された[24]。3月10日には、「新型コロナウイルス感染症特別貸付制度」が創設され、雇用調整助成金制度の対象拡大などが行われた[25]。
本部長、副本部長、本部員、幹事は、個人を個別に任命するのではなく、官職に対する充て職である。
国務大臣が新型コロナウイルスに感染していた場合に、閣内で新型コロナウイルス感染症が蔓延することを防ぐための措置として、本部員が出席する会合は、第25回会議以降は本部員を2チームに分け[40]て交代で出席することとした[40]。 本部長の内閣総理大臣安倍晋三は第25回会議以降も全ての会合に出席するため、本部員の財務大臣麻生太郎[41]は第25回会議以降の出席を見合わせていた[40]。
本部員が出席する会合は、国会審議開催日は国会議事堂の院内閣議室で開催され[14]、ほかは総理大臣官邸で開催されることが多い[42]。第1回会議は国会議事堂で開催されたが[14]、第3回会議は総理大臣官邸で開催された[42]。設置から廃止までの間、持ち回りも含めて104回の会合が行われた[9]。
2020年(令和2年)2月16日の第10回会議では、本部員である法務大臣森雅子、文部科学大臣萩生田光一、環境大臣小泉進次郎の3名が公務以外の理由で欠席した[46]。小泉は第10回会議を欠席 [46]して新年会と称して地元の有権者と飲酒に興じ[46]、第201回国会で問題となった[46]。小泉は、2月19日の衆議院予算委員会審議で国民に謝罪するよう求めた本多平直に[46]「危機管理のルールに基づいた対応をしている」[46]と答弁し、2月25日の衆議院予算委員会審議で国民に謝罪するよう求めた小川淳也に[47]「私が横須賀に戻った事実は、謝ったところで変わらない」[47]と反論し、それぞれ謝罪に応じなかった。森は地元の書道展で挨拶するため欠席したと説明して「反省している」[46]と回答した。萩生田は地元の消防団関係者の叙勲祝賀会に出席したと説明して「指摘は真摯に受け止め、緊張感をもって対応したい」[46]と述べた。
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