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歌人、国文学者 ウィキペディアから
佐佐木 信綱(ささき のぶつな、1872年7月8日(明治5年6月3日[注 1]) - 1963年(昭和38年)12月2日)は、日本の歌人・国文学者。正三位[1]。勲六等。文学博士。日本学士院会員。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。
一時は桂園派に連なる歌を詠んだが、和歌改良の風潮に接して革新の気風を抱き、1897年(明治30年)頃から独自の歌境をうち立て、有望な新星として注目された。「ひろく、ふかく、おのがじし」をモットーとし[要出典]、新詩社系、根岸短歌系双方との交流を深めた。
国文学者としての実績も豊富で、特に『万葉集』の研究で有名。
三重県鈴鹿郡石薬師村(現在の鈴鹿市石薬師町)で、国学者で歌人の佐々木弘綱の長男として生まれる。父の教えを受け5歳にして作歌する。1882年(明治15年)上京し、高崎正風に歌を学ぶ。1884年(明治17年)、東京大学文学部古典講習科に進む。1890年(明治23年)、父と共編で『日本歌学全書』全12冊の刊行を開始した。1896年(明治29年)、森鷗外の『めざまし草』に歌を発表し、歌誌『いささ川』を創刊した。また、落合直文、与謝野鉄幹らと新詩会をおこし、新体詩集『この花』を刊行した。
1898年(明治31年)に歌誌「心の華」(後に「心の花」と改題)を発行する短歌結社「竹柏会[2]」を主宰し、木下利玄、川田順、前川佐美雄、九条武子、柳原白蓮、相馬御風など、多くの歌人の育成にあたった。国語学者の新村出[注 2]、翻訳家の片山広子、村岡花子、後に娘婿となる国文学者の久松潜一も信綱のもとで和歌を学んだ。『思草』をはじめ数々の歌集を刊行した。1934年(昭和9年)7月31日、帝国学士院会員に就任する[3]。1937年(昭和12年)に第1回文化勲章を受章した[4]。帝国芸術院会員。御歌所寄人として、歌会始撰者でもあった。その流れで貞明皇后[注 3]ら皇族に和歌を指導している。日本文学報国会短歌部会長であったことから、「愛国百人一首」の選定委員に選ばれている。
1952年(昭和27年)には上代文学会の設立に関わり、学会誌『上代文学』創刊号に祝辞を寄せている[5]。
1963年(昭和38年)、急性肺炎のため死去した[6]。墓所は東京谷中霊園の五重塔跡近くにある。
1944年(昭和19年)から1963年(昭和38年)まで晩年の19年を過ごした熱海市西山町の邸宅「凌寒荘」は、2003年(平成15年)に熱海市が取得して以降、ボランティアによって管理・公開されている[7][8]。
立春短歌会を主宰した五島茂は信綱の業績を評して次のようにまとめている[9]。
上田三四二は歌人としての信綱について「氏を大歌人と呼んでいいかどうか、私は疑う。けれども、氏は疑いなく大学者だった。」と評している[9]。三四二は「信綱にとって作歌と学問は別のものではなく、信綱の歌は学と識を備えた伝統的な詩歌の正統だった。しかし、近代以後の短歌は子規や啄木といった「歌学の何たるかをわきまえぬ」独断的・直感的な近代詩歌が、詩歌の革新を成し遂げてしまっている。信綱の歌の見方は正しい見方だが、文学においては正しい判断が文学を生かすとは限らない」と考察している[9]。
「夏は来ぬ」の作詞でも知られる。「卯の花の 匂う垣根に 時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ」。
東京都の千代田区立麹町中学校、筑波大学附属小学校、台東区立根岸小学校、板橋区立赤塚第三中学校、世田谷区立緑丘中学校、栃木県の那須烏山市立烏山小学校、埼玉県の川口市立本町小学校、滑川町立宮前小学校、神奈川県の神奈川県立横浜平沼高等学校、横浜市立戸塚高等学校、清泉女学院中学高等学校、清泉小学校、横浜市立大綱小学校、岐阜県の岐阜県立武義高等学校、山梨県の中央市立三村小学校、郷里三重県の三重県立四日市高等学校、四日市市立楠中学校[11]、鈴鹿市立石薬師小学校、滋賀県の近江八幡市立八幡小学校、奈良県の奈良県立奈良高等学校、吉野町立吉野中学校、静岡県の磐田市立福田中学校、磐田市立福田小学校、熱海市立熱海中学校、山口県の下関商業高等学校などの校歌は彼の作詞による。また千葉工業大学の校歌は彼が選歌した。
三重県鈴鹿市石薬師町には佐佐木信綱記念館がある[15]。記念館の施設内にある信綱資料館の展示室は、2019年に雨漏りが発生して閉鎖されていたが、2022年1月28日に展示を再開した[15]。
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