Loading AI tools
富士山に登ること ウィキペディアから
富士登山(ふじとざん)では、日本最高峰である富士山(標高3776メートル)への登山に関して解説する。
富士山は、現在の山梨県(旧甲斐国)と静岡県東部(旧駿河国)にまたがってそびえる雄大・優美な山形の独立峰であり、山岳信仰や観光などを目的とする登山が行なわれてきた。現代における正規の登山道としては、山梨県側から入る「吉田ルート」と、静岡県側から入る「須走ルート」「御殿場ルート」「富士宮ルート」の合計4つが設定されている[1]。
富士山は神体山(霊山、霊峰)として古来崇められ、修行や参拝のための登頂・入山が行なわれて歴史が長い。伝説では飛鳥時代、聖徳太子が乗馬して山頂に至り[3]、役小角が流刑先の伊豆大島から海上を歩いて富士山頂に通ったとされる。
平安時代の貴族にして学者の都良香が記した『富士山記』には富士山頂の実情に近い風景描写がある。これは、良香本人が登頂、または実際に登頂した者に取材しなければ知り得ない記述であり、平安時代に山頂へ至った者がいた傍証として重要である。
鎌倉時代には村山修験による修行のための登山が確立し、現在につながる4つの登山口が既にあった。富士山本宮浅間大社に伝わる正治2年(1200年)の『末代証拠三ケ所立会証文』には「東口珠山」「南口大宮」「北口吉田」と、「須山口登山道(現在の御殿場ルート)」「大宮口登山道(現在の富士宮ルート)」「吉田口登山道(現在の吉田ルート)」の3ルートが記され、また北口の下山道と位置付けられていた「須走口登山道(現在の須走ルート)」は北口より歴史が古い可能性が高いことから、鎌倉時代には既に存在したと考えられている[4]。考古学的資料から見ても、現在につながる4つのルートが遅くとも南北朝時代には開かれていたことは確実である[4]。戦国時代の富士山北麓について甲斐国で書かれた『勝山記』によれば、既に修行ではなく参拝のための登山が確立していたことがわかる。
古くは駿河国側の3ルートが「表口」、甲斐国側が「裏口」と呼ばれた。大宮口は大宮・村山(現在の静岡県富士宮市)の2つの村落に管理される「大宮・村山口登山道(現在の富士宮ルート)」であり[4]、また北口には吉田(現在の山梨県富士吉田市)以外に河口(現在の山梨県富士河口湖町)が管理する「船津口登山道(現在の吉田ルート)」があった[4]。戦国時代以降に富士登山が盛んになると、主に6つの村落が登山客を巡って争うようになった。なお船津口は六合目で吉田口に合流し、吉田口は八合目(現在の本八合目)で須走口に合流するため、頂上の内院散銭などの利権は須山(現在の静岡県裾野市)、大宮・村山、須走(現在の静岡県小山町)が管理していた[4]。
江戸時代中期以降には関東地方を中心に富士講が流行し、一般人による信仰目的の登山が増加した。宝永4年(1707年)の宝永大噴火で須山口は70年以上、大宮・村山口と須走口は30年以上不通になり、河口が隆盛するが、さらに富士講が流行ると、河口は当初これを避けた。これに対し吉田が早いうちから受け入れたため、河口を押しのけ頂上の利権争いに加わるまで隆盛し、現代につながる吉田口優勢の状態になった[4]。
観光目的の登山は特に西洋の登山文化が導入された明治期以降、特に東京府と山梨県を結ぶ中央線の開通以降に盛んになった[5]。明治以降になると「精進口登山道」など新しいルートが次々と開削されたが主流になることはなく、昭和半ばにバスで各ルートの五合目まで行けるようになると、古来の4ルート以外は衰退していった。
富士山はかつて女人禁制とされていた[6]。しかし、江戸時代に登山客の増加につれて二合目、三合目、期間限定で五合目などと徐々に解禁されていった。江戸時代後期の天保3年(1832年)に女性では初めて高山たつが登頂[7]。幕末開国後の万延元年7月26日(1860年9月7日)には、駐日英国公使ラザフォード・オールコックが外国人として初登頂をとげ[8]、慶応3年(1867年)10月には、英国公使ハリー・パークス夫人が、外国人女性の初登頂者となった[9]。
登山を趣味とする今上天皇は、皇太子時代の2008年(平成20年)8月7日 - 8月8日に20年ぶりに富士登山を行った。1988年(昭和63年)にも富士登山を試みたものの途中で悪天候で引き返したが、2008年(平成20年)は天候にも恵まれ山頂まで到達できた。富士宮口五合目から登山を開始し、混雑する富士宮口登山道から新六合目で分かれて宝永山に到着後に御殿場口登山道に入り[注 1]、御殿場口7.9合目の山小屋(赤岩八合館)に1泊した後、翌朝6時30分頃、無事登頂とお鉢巡りを行った。下山は御殿場口の大砂走り経由で、そのまま御殿場口新五合目まで下り、昼までに下山を完了した[10]。登頂の際、富士山頂で見た日の出を見て句を詠んでいる。
「雲の上(へ)に太陽の光はいできたり富士の山はだ赤く照らせり」
静岡県側の御殿場市観光協会では皇太子の辿ったルートを、登山口となる富士宮口五合目の標高の高さと、御殿場口の静けさや下山ルートの大砂走りなどの魅力を兼ね備えた「プリンスルート」[11]として宣伝を始めた。このルートは従来は荒れていた区間もあったが、皇太子一行の通行に先立ち再整備されたものである。道標等も整備され、「プリンスルート」の名称も道標や案内図に正式に採用されている。マイカー登山者の利便性を考慮し、2009年(平成21年)シーズン以降、富士宮口のマイカー規制時に二合目の水ヶ塚公園駐車場と御殿場口新五合目の間にシャトルバスを運行している。また、このルートを使う登山者の増加に伴い、休館状態だった御殿場口の山小屋「わらじ館」が2011年から本格的に営業を再開した。
富士山の気候は厳しく、登山道が山頂まで利用できる時季は、公式には夏山登山に限られる。山開きおよびシーズン終了は7月から9月にかけてで、日取りは年とルートにより異なる[12]。残雪の多い年は7月中旬まで登山道に雪が残り、ルートの開通が山開きに間に合わないことがしばしばある。
9月に入ると営業している山小屋が少なくなり、宿泊や休憩、飲料水・食事、トイレの提供の問題により、登山者は徐々に少なくなる。静岡県側は、9月の第一日曜日を過ぎると富士宮ルートと御殿場ルートの七合目以上の山小屋および須走ルートの多くの山小屋は閉鎖される。山梨県側は、吉田ルートの山小屋については、9月上旬までは、大多数の山小屋が営業し、9月14日の閉山の直前まで営業するところが多いが、山頂の山小屋は8月下旬から徐々に休業し始める。
日本最高峰である富士山の地形や気候は、後述するように非常に厳しく、上記期間以外において、万全な準備をしない登山者は、原則登山が禁止されている[13]。特に積雪期・残雪期の無謀な登山は、自殺といえる行為である[13]。
「富士登山における安全確保のためのガイドライン(主に夏山の期間以外における注意事項)」[14]は、「気象条件が特に厳しいために遭難事故が発生するリスクが非常に高くなっている」ことや、「積雪期には傾斜が急な斜面が広範囲に渡って凍結するため、転倒等で滑落した場合に死亡事故につながる可能性が高い」ことなどを根拠に、「万全な準備をしない登山者の登山(スキー・スノーボードによる滑走を含む)」を禁止している。また、充分な技術・経験・知識・装備・計画のある登山者にも、登山計画書を所轄の警察署に必ず提出するよう要求している。
五合目以上の登山道は夏山期間以外は閉鎖される。御中道など五合目周辺も冬期は積雪し登山道が閉鎖される。2014年は12月1日に閉鎖し、2015年は6月20日に開通した[15]。吉田口登山道は、5合目より下に関しては、富士山駅から馬返のバスは2015年は5月2日から11月3日がバスの運行期間[16]。冬期は積雪する。 山開きしていない期間、山小屋は閉鎖されており、天候の急変や体調不良に陥っても避難できる場所は限られる。また、携帯電話の電波も停波していることがあり、救助要請が不可能な場所もある[17]。
登山前に環境整備の協力金1,000円を支払う必要がある[23][24]。 また吉田ルートは、2024年からプラスして通行料2,000円の支払いが義務化された[23][24]。
現在、一般観光用として使用されている登山道には静岡県側の「富士宮ルート」「須走ルート」「御殿場ルート」、山梨県側の「吉田ルート」の4ルートと、バリエーションの「プリンスルート」がある。登山者の約六割は吉田ルートを使用する[25]。いずれのルートも、登山の知識と経験、装備が欠かせない[26]。
各ルートの登山口(自動車道の終点)は「五合目」又は「新五合目」と呼ばれ、その標高はルートによって大きく異なる。五合目の標高が一番高いのは富士宮ルートで、新五合目の標高が一番低いのは御殿場ルートである。静かな雰囲気を楽しめる須走ルート。小屋の数が多く、登山者の数も多い吉田ルートと、それぞれ特徴がある[27]。富士宮ルートの五合目は標高2,380mだが、御殿場ルートの新五合目は標高1,440mである。各登山口や主要駐車場では、環境・安全対策の財源となる原則1,000円の「富士山保全協力金」を支払う[28]。
富士山の五合目周辺から山頂にかけてはほとんど樹林帯がなく、火山礫の登山道をひたすら登ることになる。最短の場合、標高差1300m程で山頂に達することができる[20]。
山頂を一周する「お鉢巡り」もよく周られているが、外周の一部は昭和後期以降通行不可能となっている。また、五合目付近を周る「御中道」は、半分が廃道となっており一周することはできない。宝永山付近を散策する「宝永山遊歩道」も一般的によく登られている。
麓からの徒歩でのルートとしては、吉田ルートに繋がる「吉田口登山道」と「精進口登山道」、御殿場ルートに繋がる「御殿場口登山道」と「須山口登山歩道・下山歩道」がよく整備されているほか、下記一覧以外に富士宮ルートに繋がる「村山口登山道」、須走ルートに繋がる「須走口登山道」(「富士箱根トレイル」の一部)も再整備されている。
登山上級者が使用するバリエーションルートは、「主杖流し」「長田尾根」「屏風尾根」「七太郎尾根」「大沢崩れ左岸・右岸」「仏石流し」「小御岳流し」「吉田大沢」など複数存在するが、落石や滑落などもあり大変危険である。また、麓からの徒歩でのルートも、昭和の半ばごろまであった「人穴口登山道」「上井出口登山道」「新大宮口登山道・懸巣畑(カケスバタ)口登山道」「山中口登山道」「船津口登山道(河口口登山道」などは五合目までの自動車道の開通により、いずれも未整備の廃道となっている。一部は林道や自衛隊演習場内となっているので、上級者であっても登山は困難・あるいは不可能である。
色 | ルート名 | 県 | 登り (km) |
下り (km) |
五合目(新五合目) の標高[29] |
山小屋・売店の数[29] | 標準所要時間[29] | 車でのアクセス |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
富士宮ルート | 静岡県 | 5.0 | 5.0 | 2,380m | 9(五合目1・頂上1含む)[注 2][注 3] | 登り5時間10分・下り3時間30分 | 県道152号・県道180号 | |
吉田ルート | 山梨県 | 7.5 | 7.6 | 2,305m | 23(五合目5・頂上4含む)[注 4] | 登り5時間55分・下り3時間10分 | 富士スバルライン | |
須走ルート | 静岡県 | 7.8 | 6.2 | 1,970m | 14(五合目2・頂上4含む)[注 5][注 6] | 登り6時間55分・下り3時間 | 県道150号 | |
御殿場ルート | 静岡県 | 11.0 | 8.5 | 1,440m | 5(新五合目2含む)[注 7][注 8] | 登り8時間20分・下り3時間30分 |
県道152号 | |
プリンスルート[注 9] | 静岡県 | 6.4 | 2,380m | 6(五合目1含む)[注 10][注 3] |
富士宮口五合目 〜 宝永第一火口 〜 山頂 |
県道152号・県道180号 | ||
吉田口登山道 | 山梨県 | 2,220m (馬返しは1430m) |
3(馬返し〜六合目)[注 11] |
馬返し 〜 吉田口六合目 |
||||
精進口登山道 | 山梨県 | 2,305m | 0 |
精進湖民宿村 〜 富士スバルライン五合目 |
||||
御殿場口登山道 | 静岡県 | 1,440m | 1[注 12] |
中央青少年交流の家 〜 御殿場口新五合目 |
||||
須山口登山歩道 | 静岡県 | 1[注 13] |
水ヶ塚公園 → 御殿場口六合目 |
|||||
須山口下山歩道 | 静岡県 | 1[注 13] |
御殿場口旧二合八勺 → 水ヶ塚公園 |
|||||
お鉢巡り | 山梨県 静岡県 |
5[注 14] |
山頂一周 |
|||||
御中道 | 山梨県 | 2,305m | 0 |
奥庭バス停 〜 大沢崩れ |
||||
宝永山遊歩道 | 静岡県 | 2,380m | 1(五合目1含む)[注 15] |
富士宮口五合目 〜 宝永第一火口 〜 宝永山 |
上記の所要時間は目安である。また、御来光前後やお盆時期などの混雑時は交通渋滞が起き、さらに時間がかかる。各登山ルートを登りきった場所(お鉢巡りルートとの合流点)を「頂上」又は「山頂」と呼んでいるが、これらは標高3,776mの富士山最高地点の剣ヶ峰とは異なる。
山梨県鳴沢村・富士吉田市の富士スバルライン五合目(船津口旧五合五勺・小御岳頂上、1964年(昭和39年)開通)を出発し、吉田口六合目(天地の境)を経由して、富士山北側から山頂を目指すルート[30]。全登山者の六割以上がこのルートを利用する。登山口の標高は2,305m。吉田ルートは頂上への4コースの内で小屋の数が多く、登山者の数も多い[27]。本八合目で須走ルートへ合流する。富士スバルライン五合目には富士小御嶽神社、八合目には富士山天拝宮・烏帽子岩神社、九合目には迎久須志神社、頂上には久須志神社がある。
登山道と下山道が大きく分かれている。下山道も本八合目で須走口下山道と分岐し、獅子岩付近より御中道を経由して吉田口六合目で登山道に合流する。富士スバルライン五合目から吉田口六合目へ至る道は、登山道と下山道の兼用である。もともとは後述する「船津口登山道」に該当(もっと厳密に言えばこの区間も御中道であり、吉田口五合目までは泉ヶ滝で分岐する)し、現在でも富士スバルライン五合目と吉田口五合目とは位置が異なる。よって、以前は吉田口登山道と区別するため「河口湖ルート」とも呼ばれていた。
麓からの徒歩道として吉田ルートに合流する登山道は、富士スバルライン五合目で合流する「精進口登山道」と、六合目で合流する「吉田口登山道」の2つがある。
静岡県富士宮市の富士宮口五合目(新大宮口旧三合五勺、富士山スカイライン・1969年(昭和44年)開通)を出発し、富士山南側から山頂を目指すルート[31]。登山口の標高は2,380m。頂上への1コースの内、五合目の標高が一番高い[27]。頂上には富士山本宮浅間大社奥宮がある。静岡県側では最も利用者が多い。
お鉢巡り上にある各ルートの「頂上」・「山頂」のうち富士宮口山頂が最高峰の剣ヶ峰に一番近い。五合目の富士山総合指導センター前に登り口がある。このあたりからは剣ヶ峰方向が望める。火山礫の幅広の道を登ると樹木がなくなり、なだらかな道をたどり2軒の山小屋が並んでいる六合目に着く。ここまでは観光客が多い[27]。
麓からの徒歩道としての登山道は富士山スカイラインの開通後、長らく未整備であったが、古来の「村山口登山道」が一部の崩落個所を除きかつてとほぼ同じルートで2005年(平成17年)に復旧した。富士宮ルートとは六合目で合流する。
静岡県小山町の須走口五合目を出発し、富士山東側から山頂を目指すルート[33]。登山口の標高は1,970m。本八合目で吉田ルートが合流する。五合目には古御岳神社、六合目には胎内神社、九合目には迎久須志神社、頂上には久須志神社がある。
麓からの徒歩としての登山道は長らく未整備であったが、2013年(平成25年)に「富士箱根トレイル」というトレッキングコースの一部として、「須走口登山道」の馬返しから須走口五合目からまでが再整備された。
静岡県御殿場市の御殿場口新五合目(旧二合目)を出発し、富士山南東側から山頂を目指すルート。登山口の標高は1,440m。御殿場ルートの新五合目の標高は頂上への4コース内で一番低い。登路よりも、長大な砂走りの下りコースに人気がある[27]。頂上には銀明水(湧き水)がある。標高差・距離・歩行時間の長いルートで、健脚向けとされる[34]。富士登山駅伝のコースである。
麓からの徒歩道としての登山道は長らく未整備であったが、1997年(平成9年)に「須山口登山歩道」、1999年(平成11年)に「須山口下山歩道」が旧来とは別ルートで新たに整備された。須山御胎内からは少し離れてしまっているが、水ヶ塚や弁当場を通るため宝永大噴火前のルートには近いとされる。「御殿場口登山道」も徒歩で登山可能である。
環境省と市の集計による7月1日 - 8月31日(ただし2015年は9月14日まで、2016年は9月10日まで)の入山者数の推移は以下の通り[36][37][38][39][40]。赤外線カウンターによる登山者数調査であり、赤外線カウンターは登山者と下山者を識別しており、この数値は登山者数(入山者数)の数。括弧内はルートごとの8合目でのシェア。環境省は8合目に、市は5〜6合目に赤外線カウンターを設置している。
年 | 吉田口 | 富士宮口 | 須走口 | 御殿場口 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
6合目 | 8合目 | 8合目 | 8合目 | 新5合目 | 8合目 | 8合目 | |
2005 | 141,472 | 108,247 (54%) | 57,962 (29%) | 25,416 (13%) | 3,450 | 8,667 (4%) | 200,292 |
2006 | 167,368 | 119,631 (54%) | 61,611 (28%) | 30,536 (14%) | 3,608 | 9,232 (4%) | 221,010 |
2007 | 194,007 | 132,980 (57%) | 54,011 (23%) | 33,394 (14%) | 3,613 | 11,157 (5%) | 231,542 |
2008 | 247,066 | 172,369 (56%) | 64,034 (21%) | 52,323 (17%) | 4,078 | 16,624 (5%) | 305,350 |
2009 | 241,436 | 169,217 (58%) | 67,590 (23%) | 43,861 (15%) | 6,870 | 11,390 (4%) | 292,058 |
2010 | 259,658 | 184,320 (57%) | 78,614 (24%) | 48,196 (15%) | 8,754 | 9,845 (3%) | 320,975 |
2011 | 228,775 | 165,038 (56%) | 72,441 (25%) | 40,179 (14%) | 8,078 | 15,758 (5%) | 293,416 |
2012 | 246,616 | 189,771 (60%) | 77,755 (24%) | 35,577 (11%) | 9,789 | 15,462 (5%) | 318,565 |
2013 | 232,682 | 179,720 (58%) | 76,784 (25%) | 36,508 (12%) | 17,709 (6%) | 310,721 | |
2014 | 208,328 | 141,996 (58%) | 57,054 (23%) | 29,109 (12%) | 15,503 (6%) | 243,662 | |
2015 | 136,857 (58%) | 57,912 (25%) | 24,005 (10%) | 15,713 (6%) | 234,217 | ||
2016 | 151,969 (61%) | 59,799 (24%) | 20,996 (8%) | 15,697 (6%) | 248,416 |
ほとんどの山小屋は簡易宿泊所の性質が強く、必要最低限の機能しか備えていない[41]。ゆえに過剰な期待は禁物である[41]。
山梨県側(吉田ルート)の山小屋は、一般的には夏山期間(7月1日 - 9月上旬)のみ営業するが、10月上旬までの営業や、通年営業も少数ある[42]。一方、静岡県側(富士宮ルート・須走ルート・御殿場ルート)の山小屋は、夏山期間終了の1 - 2週間前に営業を終了することがある[43]。
一般的には宿泊者向けの就寝スペースと食事スペース、トイレ程度である。宿泊者以外が利用できる食堂や売店、土産物屋を備えた山小屋もある[注 16]。風呂やシャワー、洗面所はない[41]。
小屋ごとに営業時間は異なる。24時間営業の山小屋もあるが、大半は夜から翌日早朝までは閉まる[41]。
以前はほとんど垂れ流しで、山の斜面に垂れ流された排出物が、富士山の自然遺産としての世界遺産不推薦の原因の一つとなっていた。静岡県側を中心に、県や地元NPOにより早くからバイオトイレの試験的な導入が行われていた。前述の世界遺産登録への取り組みが本格化して以降は、山梨県側でも環境庁(後に環境省)の指導で導入が進められた。現在では全ての山小屋のトイレが環境配慮型に切り替わった。
基本的に有料で、1回100円 - 300円[44](山頂は300円、それ以外は200円が中心)の利用料金を支払う必要がある。臭気の問題から、小屋から少し離れて建てられている。処理方式はトイレごとに異なるので、利用に際しては利用方法や注意事項を確認する必要がある[41]。夏山期間以外は閉鎖される。
一部の山小屋は、宿泊者以外の登山者の、屋内での雨宿りや休憩を禁止している[41]。こうした山小屋は非常時の避難所にはなりえない。しかし、有料又は無料で休憩できる山小屋もある。
富士山を安全に登るためには、他の山と同様、登山の知識と経験、装備が不可欠である。しかし知名度の高さや五合目までのアクセスの良さが災いし、初心者や装備を欠いた登山者がしばしば入山し、遭難している。遭難の主な原因は、疲労や体力不足、装備不備、悪天候、高山病、持病の悪化、過密スケジュールなどである[14]。御殿場ルートでは疲労と道迷い、須走ルートでは転倒、富士宮ルートでは転倒と発病が多い[45]。静岡県側の3ルート(御殿場ルート、須走ルート、富士宮ルート)では、平成15年から24年までに390名が遭難し、33名が死亡、150名が重軽傷を負っている。山梨県側の吉田ルートも似たような状況である[45]。
静岡県警および山梨県警による遭難者数の統計は以下の通り[14]
2020 年は新型コロナウイルス拡大防止のため、夏山期間中は閉山
年 | 遭難者数 | うち死亡・行方不明者数 | ||
---|---|---|---|---|
夏期 | 夏期以外 | 夏期 | 夏期以外 | |
2003年 | 31 | 15 | 0 | 1 |
2004年 | 22 | 15 | 0 | 5 |
2005年 | 15 | 15 | 3 | 4 |
2006年 | 15 | 15 | 1 | 3 |
2007年 | 23 | 17 | 0 | 3 |
2008年 | 43 | 13 | 5 | 3 |
2009年 | 44 | 13 | 6 | 4 |
2010年 | 49 | 17 | 4 | 4 |
2011年 | 39 | 22 | 2 | 4 |
2012年 | 42 | 34 | 1 | 12 |
2013年 | 84 | 37 | 2 | 11 |
2014年 | 61 | 19 | 4 | 6 |
2015年 | 53 | 22 | 0 | 5 |
2016年 | 69 | 42 | 2 | 8 |
2017年 | 54 | 29 | 0 | 7 |
2018年 | 78 | 17 | 6 | 2 |
2019年 | 56 | 11 | 4 | 4 |
2020年 | 0 | 5 | 0 | 1 |
環境保護および五合目駐車場の過剰混雑のため、登山シーズンはマイカー規制が富士スバルライン(吉田ルート)、ふじあざみライン(須走ルート)、富士山スカイライン(富士宮ルート)で行われている。この間は麓から五合目まで指定車両を除いて通行禁止となる。この規制は、概ね開山期間に合わせて実施される。
規制対象日(2024年)
代替駐車場
代替駐車場から五合目まではシャトルバスが運行されている。
御来光とは高山で拝む日の出のことである。阿弥陀如来等、仏陀の出現に日の出を例えた表現である。富士山では御来光を頂上で見ようという登山者が多く、日の出直前の頂上付近は渋滞で動かなくなることもある。山小屋の前や登山道の途中で御来光を迎える事もある。影富士とは富士山自身の影が日没前や日の出の直後に、太陽の反対側の雲海や地表に投影することである。富士山は独立峰であるため、東に開けた御殿場ルートでは曇天などでなければ、登山道のどこからでも御来光と影富士を見ることができる。山頂にも、日の出直後の影富士を見ることができる地点がある。
山梨県側の登山道(吉田ルート)の呼び方が「吉田口」と「河口湖口」の2種類が混用されていたり、標識が統一されていなかったりして分かりにくかった。そのうえ不必要な場所に標識が乱立しており、必要な標識の認識の妨げとなっていた。また、外国語表記が少なく増加し続ける外国人登山者に不親切であった。そのため2009年の山開きに間に合うよう案内標識の統一が図られ、標識の乱立も改善された。その結果、山梨県側の登山道については「吉田口」(吉田ルート。ただし五合目は「富士スバルライン五合目」)の名称で統一され[注 20]、標識の枚数も整理されて大きく減少した。この新標識は基本的に日本語・英語・中国語・韓国語の計4ヶ国語で表記されており、外国人にも分かりやすくなった[49]。また、各登山道で標識の色も統一された。
お鉢巡りとは、富士山山頂の火口を一周することである。
富士山頂郵便局で投函された郵便物には基本的には風景印が押印される。窓口に出された郵便物だけでなく、局前のポストに投函された郵便物でも風景印が押印される。窓口では登山証明書も発行している。
近年は軽量な金属製のストックを使う登山者が増えているが、富士山では昔ながらの木製の金剛杖の使用も多い。この金剛杖には日章旗や旭日旗などをつけて販売されることも多いほか、各山小屋では記念の焼印を有料で行っている。このため、すべての小屋の焼印を集め、杖を焼印でいっぱいにした登山者も見かける。雨天時は焼印を行わない小屋もある。
山頂の富士山本宮浅間大社奥宮および久須志神社、富士宮口山麓の富士山本宮浅間大社本宮や、吉田口山麓の北口本宮冨士浅間神社、富士スバルライン五合目の富士小御嶽神社、須走口山麓の東口本宮冨士浅間神社など、富士登山にかかわる一部の神社では金剛杖への朱肉刻印を有料で行っている。これらの神社では御朱印をいただくこともできる。
登山シーズン中の7月上旬から8月下旬は山小屋に臨時の基地局が置かれるうえ、多くの場所では麓からの電波も受信できるため、NTTドコモ、au、ソフトバンクなどの携帯電話が利用可能である[50][51]。全社とも LTE も対応している[52][53]。そのため閉山中の電波は繋がりづらい。シーズン中でも、山頂の火口側など、山小屋からの電波も麓からの電波も届きにくい場所では、電波が極めて弱く、圏外になることがある。登山者が充電の設備を使用可能な山小屋は限られており、充電のためにはモバイルバッテリーの持ち込みが必要になる。
五合目〜山頂の物資の輸送はブルドーザーやクローラーダンプにより行われている。他山域で行われているヘリコプターでの輸送よりも、悪天候に強く大量輸送ができるというメリットがあるが、多くの車両の購入費用や保守費用の他、ブルドーザー道の保守費用がかかるため、ヘリコプター輸送よりも商品に対する価格上乗せ額が大きくなる。吉田ルートではブルドーザー道は下山道としても利用されている。このブルドーザー輸送は、富士山レーダー建設を機に従来の馬方組合と強力組合が合同して始めたものである。
富士山の登山道や周辺には非常にゴミが多かったことなどが一因となり、富士山の世界自然遺産登録が実現しなかった[54]ことを踏まえ、富士山美化のために、NPOや企業などが毎年清掃登山活動を行っている。
富士山の世界文化遺産登録に際しては、入山者が多いことによる「神聖な雰囲気」の維持が課題として指摘された[55]。上記のようなゴミ清掃や環境配慮型トイレの導入などが進んでも、富士登山人気の高まりによる自然環境や霊山としての雰囲気への圧力は大きい。このため山梨・静岡両県は「望ましい登山者数」(1日当たり吉田口4000人、富士宮口2000人)をまとめた。これは世界遺産を所管する国際記念物遺跡会議(イコモス)に報告される予定である[56]。
新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年(令和2年)の夏は感染拡大防止の観点から登山が禁止となった。山小屋の営業も行われず、事故が起きても救助が困難であるため登山道を閉鎖した。こうした措置は広く登山が解禁された近代以降では初のことになる[57]。
静岡県側では富士山スカイライン、ふじあざみライン、県道152号富士公園太郎坊線を封鎖したため5合目までも行くことができなくなり、新富士駅・富士駅・富士宮駅・三島駅・裾野駅・御殿場駅などから5合目に向かう登山バスも運休となった。一方、山梨県側では6月15日から富士スバルラインを開通させ、5合目までは通行可能となった[58]。
なお、閉鎖されている道路に侵入した場合、道路法違反となり処罰されることになる[59]。
ウィキメディア・コモンズには、コロナで登山できなくなった富士山と感染対策をする世界遺産構成資産に関するカテゴリがあります。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.