クラシック音楽(、英: classical music、独: Klassische Musik 、仏: musique classique、伊: musica classica)は、一般に[1]西洋の伝統的な作曲技法や演奏法による芸術音楽を指す[2]。宗教音楽、世俗音楽のどちらにも用いられる。
今日一般的に「クラシック音楽」と称されるものはバロック音楽、古典派音楽、ロマン派音楽に当たる1550年頃から1900年頃の音楽であるが、それ以前のものも、それ以後のものも、同じ流れに属する音楽は今日あわせてクラシック音楽と呼ばれることが多い。また、古典派時代の宴席用音楽、ロマン派時代のウインナワルツなど、純粋に観賞用としてつくられたわけではない実用音楽も、今日ではクラシック音楽と呼ばれている。主な時代区分を以下に示す。
「クラシック音楽classical music」という用語は早くとも19世紀まで使われていなかった。その頃、ヨハン・ゼバスティアン・バッハからルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンまでの時代の音楽を復活させる試みがなされたことにより、クラシック音楽が他と区別されるようになった[3]。初めてオックスフォード英語辞典でクラシック音楽が言及されたのは1836年のことである[4]。
8世紀頃、キリスト教の聖歌であるグレゴリオ聖歌が誕生し、9世紀頃にはグレゴリオ聖歌がネウマ譜で記譜されるようになった[5]。これが中世西洋音楽の始まりである。11世紀頃にはオルガヌムと呼ばれる多声音楽が生まれ、12世紀後半頃からはサン・マルシャル楽派やノートルダム楽派によってさらに発展した[6]。15世紀にはブルゴーニュ公国でブルゴーニュ楽派、ついでフランドル楽派が成立し、ルネサンス音楽が確立された[7]。16世紀には本格的な器楽音楽の発達[8]、オペラの誕生が起こり[9]、宮廷の音楽が栄えた(バロック音楽)。バロック音楽の代表的な作曲家としては、ヨハン・ゼバスティアン・バッハとゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルが挙げられる[10]。これ以前の音楽を初期音楽とよぶことが多い。
その後1720年頃になると民衆にも現在「クラシック音楽」と呼ばれているような芸術音楽が広まり、古典派音楽とよばれる「形式」や「和声」に重点をおいた音楽に発展した。1720年代から1780年代までは前古典派と呼ばれる作曲家群の活動が続き[11]、1780年代から1820年ごろにかけてフランツ・ヨーゼフ・ハイドン、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの3人によるウィーン古典派の活動によって古典派音楽は最盛期を迎えた[12]。またこの頃から一般的に音楽が芸術として見られるようになる。
19世紀に入ると「表現」に重点を置いたロマン派音楽に移行し[13]、まずフランツ・シューベルト、次いでロベルト・シューマン、フェリックス・メンデルスゾーン、フレデリック・ショパンといった作曲家が盛んに作曲を行った[14]。19世紀半ばにはフランツ・リスト、リヒャルト・ワーグナー、ヨハネス・ブラームス、アントン・ブルックナーらが現れ[15]、各国の民謡や民族音楽の要素を取り入れた国民楽派も生まれる[16]。20世紀頃には「気分」や「雰囲気」で表現する印象主義音楽や、和声及び調の規制をなくした音楽などの近代音楽が生まれ、さらに第二次世界大戦後は現代音楽とよばれる自由な音楽に発展していった。[注釈 1]
CD店、図書館、音楽関連書籍ではしばしば以下のように分類される。[17][18]
音楽チャートにクラシック音楽のアイテムがめったに登場しないことからもわかるとおり、クラシックファンの数はポピュラー音楽ファンに比べて圧倒的に少ない。しかし、いくつかの成功例がある。
- ラ・フォル・ジュルネ
- 1995年にフランスのナントで始まったイヴェント。短時間・低価格のコンサートを多数開催し、初心者でも聴きやすくした。この試みは他国にも拡大し、日本でも「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 「熱狂の日」音楽祭」の名で2005年の東京を皮切りに行われている。
- アダージョ・カラヤン
- 1995年発売。ヘルベルト・フォン・カラヤンの演奏の中からゆったりかつ叙情的な作品または楽章を集めたコンピレーションアルバム。全世界500万枚のセールスを上げた[19]。
- 小澤征爾&ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート2002
- 小澤征爾指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートのCDが100万枚を超えるヒットとなった[20]。
- ベスト・クラシック100
- 2005年発売。有名曲の聴きどころだけを集めたコンピレーションアルバム。70万枚を超えるセールスを上げた[21]。
- 「のだめオーケストラ」LIVE!
- 2006年発売。音楽大学を舞台とした漫画(のちにアニメ及びドラマ化)「のだめカンタービレ」に登場するクラシック曲を収録。オリコン週間チャートで最高6位、2006年年間チャートで74位を記録した。
- Classic fm
- イギリスのクラシック音楽専門の民間FM放送局[22]。1992年に放送を開始した。現在では、FM放送以外にデジタル衛星テレビ、ケーブルテレビ、デジタルラジオ放送を行うほか、ストリーミング放送やポッドキャスト配信も行っている。よく知られた小品を数多く取り上げる。
- 大作は編集して短くする。交響曲等は一番ポピュラーな楽章だけを選んで放送する。リクエストで人気投票を行い、ヒットチャートのように紹介するなどの、ポピュラー音楽の商業放送では常套手段となっている手法を導入している。
- Classic Manager-クラシックマネージャー [23]
- 著作権保護期間が経過したクラシック音楽を無料鑑賞できるアプリケーションサービス。ジャンル別で自動再生される機能や自分だけのオリジナルアルバムを作成できたり、作成したアルバムを共有して楽しめるなどクラシック音楽愛好家の中で密かに話題となっているサービスである。無料鑑賞可能な音源は7万7801個にもおよび、初心者でも利用できるように自動再生機能に力を入れている。
注釈
作曲家の三宅榛名は「今もクラシックの作曲家はいますか?」という質問に対し、「「クラシックの作曲家」とよばれる作曲家は、正確にいうと今現在は、いません。21世紀のクラシックの作曲家は、ふつう、「現代音楽の作曲家」とよばれています」という見解を示している。(三宅榛名『音楽が好きだ! (4) クラシックってなんだろう?』ポプラ社、1994年 p.31。)
出典
Rushton, Julian, Classical Music, (London, 1994), 10
"Classical", The Oxford Concise Dictionary of Music, ed. Michael Kennedy, (Oxford, 2007), Oxford Reference Online. Retrieved July 23, 2007.
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p23-26 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p27-28 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p36-41 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p49-52 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p53-59 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p65-68 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p69 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p77 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p87 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p93-95 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p97-100 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p103-104 音楽之友社 2009年4月10日第1刷