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小説家 ウィキペディアから
南條 範夫(なんじょう のりお、1908年11月14日 - 2004年10月30日)は、日本の小説家・経済学者。本名:古賀 英正。「條」は旧字のため南条範夫とも表記される。残酷ものと呼ばれる独特の作品や剣豪小説をはじめ、幅広い歴史小説、時代小説で知られる。東京市出身。
東京銀座の南紺屋町に、代々の医師の家に生まれる。8歳から中国・青島の小中学校を出て、山口高等学校から1930年東京帝国大学法学部卒業[1]、1933年同経済学部卒業[2]、助手となる。1936年満鉄調査部東京支社に入り、1937年宮崎正義が率いる日満財政研究会に、法学部助手だった戒能通孝らとともに参加[3]。軍による東亜支配を経済的に支える統制経済計画の策定に深く関与する。1940年東亜経済懇談会参事、中央大学経済学部講師、1941年日本出版文化協会海外課長、ついで企画課長、1943年上海で法幣の価値維持工作に従事、1944年三井本社研究室次長、敗戦後1946年日本経済再建委員会常務理事、1949年國學院大學政経学部教授。1951年都市不燃化同盟常務理事。1952年から立正大学教授。1956年首都圏整備委員会専門委員。大学では、金融論、銀行論、貨幣論の講座を担当していた。
中学時代までは父から小説を読むことを禁じられていたが、高校に入って読むようになり、大学以降でもまた小説への興味は小さくなった。日本経済再建協会の雑誌『経済再建』に随筆を書いていたのが好評だったため、1950年に『週刊朝日』の懸賞小説朝日文芸賞に応募して入選(「出べそ物語」ペンネーム南条道之介)。1952年に『サンデー毎日』の懸賞小説に入選(「マルフーシャ」)。1952年に初めて書いた歴史物「子守の殿」で第1回オール新人杯を受賞する。また1952年『サンデー毎日』で「『あやつり組』由来記」で入選、千葉賞で佳作。1953年から1954年にかけて「子守の殿」「不運功名譚」「水妖記」「畏れ多くも将軍家」で直木賞候補となる。1956年に「燈台鬼」で直木賞を受賞する[4]。一躍人気作家となり、多くの時代小説、歴史小説を執筆することとなる。この頃には経済団体の仕事はやめて、國學院大學と中央大学の講師だけは続けた。
1979年に國學院大學を定年退官となった後は、小説執筆に専念する。年1作長編を書き下ろすスタイルを確立し、その第1作となる「細香日記」で第16回吉川英治文学賞を受賞した。
2004年10月30日、肺炎のため死去した。享年95。90歳で書き下ろし長編『一十郎とお蘭さま』を発表するなど、高齢となっても執筆を続けており、『オール讀物』2004年2月号掲載の中編小説『乱世』が絶筆となった。
『無明逆流れ』(1957年)に始まる諸短篇や、映画『武士道残酷物語』の原作となった『被虐の系譜』(1963年)、『残酷物語』(1959年)、『古城物語』(1961年)などで残酷もののブームを巻き起こし、また組織における人間疎外という視点から「マゲをのせた現代小説」とも呼ばれた。一方で、奔放な武芸者月影兵庫のシリーズ(1958年 - )などの痛快な剣豪小説も人気があり、五味康祐、柴田錬三郎とともに、第一次剣豪ものブームをになった。
『わが恋せし淀君』(1958年)では、タイムトラベルで現代人が過去を訪ねるというSF的な設定も使っている。『抛銀商人』(1962年)では歴史上の商人達を題材にし、岩崎弥太郎の生涯を描いた『曉の群像』(1964年)など経済問題を盛り込んだ作品も手がける。現代を舞台にした推理小説として『からみ合い』(1959年)、『第六の容疑者』(1960年)などがあり、『参謀本部の密使』(1966年)では日露戦争前夜における軍事探偵明石元二郎を取り上げている。
國學院大學の同僚で親しかった桑田忠親は、南條が残酷物語を書く理由は「戦時中の大陸での体験を動機として、平和時にはその片鱗さえも見せない日本人が、駐屯地にいるだけでも、なぜ平気で驚くほど残忍な行為をするのか、その根源を歴史的に探索してみようとするにあったらしい」と述べ[5]、推理小説について権田萬治は「平凡で物静かな人間が、その仮面をぬいで突如として残酷な殺人者に変貌する恐怖とサスペンス、そして意外性」が特徴であると指摘している[6]。
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