Loading AI tools
日本の映画、メディアミックス作品、その主人公たる架空のヒーローの名前 ウィキペディアから
『仮面ライダーZO』(かめんライダーゼットオー)は、東映スーパーヒーローフェアの一作として1993年4月17日に公開された特撮映画。および、それに登場するヒーローの名称[注釈 1]。
仮面ライダー誕生20周年記念作品[注釈 2]。仮面ライダーシリーズ初の劇場用オリジナル作品であり、東映とバンダイが提携した初の作品でもある[3][4]。
タイトルについては、バンダイが提示した初期タイトル案「仮面ライダー
本作品は、原点回帰を大きな主題として制作された。ドラスとその配下の怪人が、監督の雨宮慶太が得意とする生物的なデザインになっているのに対し、ZOは石ノ森が生物を意識してベルトやブーツ・手袋などを排除し、体のラインや関節の継ぎ目が不自然にならないようにしたシンプルなデザインになっており[9]、必殺技もパンチとキックのみで、その他の武器や能力は一切持っていないなど[7]、仮面ライダー1号のオマージュとなっている[10]。
なお、次回作『仮面ライダーJ』や前作『真・仮面ライダー 序章』と同様、平成に制作された作品であるが、『仮面ライダークウガ』以降のいわゆる「平成仮面ライダーシリーズ」には含まれていない。
遺伝子工学の権威・望月博士に作り出された「ネオ生命体」ドラスは、より完成された生物になろうと、望月博士の息子・宏を誘拐し博士に手術を迫ることを目論む。
同じく望月博士によりバッタの遺伝子を組み込む改造手術を施された博士の助手・麻生勝は、謎の声に導かれ、宏の身を守るため行動を開始した。
麻生勝が変身した、ネオ生命体実験体第1号[14][15]。バッタの遺伝子を人間に組み込んだ「改造人間」で、有機的改造を受けているため、変身前でも常人の数倍のパワーと反射神経を有する[16]。
変身後の姿はバッタを模しており、全身を濃緑色の強靭な外殻状生体装甲が覆い、その繋ぎ目を黄金の生物的ラインが駆け巡る。
ZOは、人間の肉体を基盤としたネオ生命体の試作型にあたる。望月博士の分析によれば、人間の肉体を使っているため、ドラスよりも未熟とされていたが、4年間の昏睡中に腹部のレッドコアが大自然のエネルギーを存分に吸収したことで、ドラスと対等に渡り合える戦闘能力やテレパシー能力など、博士の予想を上回るパワーの発揮が可能となった[17][18]。
感情が高ぶると真紅の目が眩く発光し、口腔部分から3対の牙状器官クラッシャー[19][20]が一時的に飛び出し、敵を威嚇すると同時に、抑えきれない怒りが「気」となって後頭部のスリットから放出される[18]。
なお、彼に「仮面ライダー」の名を与えたのは宏である[注釈 4]。
愛する者を守りたいという強い意志や、悪への強い怒りが麻生の心に生まれると、それが変身のためのエネルギーとなって放射され、大自然のエネルギーと融合して光を発し、麻生の全身を包み込むことでバッタの遺伝子が組み込まれた体内のメカニズムが反応し、ZOへと変貌する[18]。
歴代ライダーと同様に変身ポーズが存在するが、ZOのそれはきわめて簡素であり、最終決戦でのみ披露された。変身ポーズは精神を昂揚させて集中するためのものであるため、不可欠なものではない[18]。
肉体は、超至近距離でドラスのマリキュレイザーが直撃したにもかかわらず、表面が焦げ付く程度で済むほどの強度を誇る。自己再生能力も高く、傷口も短時間で治癒される。
打撃は厚さ20センチメートルの特殊合金をぶち抜き[26]、蹴撃は打撃の約3倍もの威力を発揮する[26]。走力はオリンピック選手の4倍以上[27]、跳躍力は一跳び130メートルである[26]。
必殺技はZOパンチ、ZOキック[19][28]。発声は基本的に行わず、技を決める場合は咆哮する場合が多い。島本和彦によるコミカライズ版ではライダーパンチ、ライダーキックとなっており、特にライダーパンチは「命を捨てた男の放つ絶対ギリギリの瞬間のきらめき」と呼ばれ、コミカライズ版の重要なキーワードとして扱われている。
大自然のエネルギーが生み出した[31]、ZO専用のスーパーバイク。その姿は、バッタもしくはZO自身の姿を模している。
変身前の麻生は市販バイク(スズキ・バンディット400[32][注釈 5])に乗っているが、これがZOへの変身時に麻生の体から発散される大自然のエネルギーを受けて変形[31]、Zブリンガーとなる。その際、エネルギーは緑色の炎のように揺らぎながら麻生とバイクを繭状に包み込み、Zブリンガーの装甲を形成する[29][31]。
カウルは1,000度の高熱や100Gの衝撃にも耐える装甲で覆われ、ボディはビルの5階から落下しても無傷の頑丈さを誇る[29]。50トンの90式戦車を跳ね飛ばすほどの突進・Zブリンガーアタックが必殺技で、この技でドラスとの初戦に白星を挙げた。
バイクに乗っての変身シーンは、仮面ライダー旧1号の変身を意識している[7][33]。雨宮は、1号のように変身前後の映像を二重写しにしようとしていたが、時間の都合で見送られた[7]。
望月博士によって生み出された完全生物。人間のように感情に左右されず、物事を怜悧に考え、ただ自らの強大なパワーを揮う無慈悲で凶悪な性質[34]。
外見と高い知能に反して精神年齢は幼く、一人称は「僕」、望月博士を「パパ」、麻生(ZO)を「お兄ちゃん」、宏を「宏君」と呼ぶ。時々漏れる呼吸音のような音の他、声変わり前の少年のような甲高い声でしゃべる。
成長過程で自我に目覚め、人間を「感情に左右される二流の生物」と判断し、それを支配する「神」になろうと望むようになる。生命力の源である緑色の溶液で満たされた生体プール[35]から出ると数時間しか生きられない[36]ため、これを克服する体質の再改造手術を行うよう望月博士に迫り、宏を拉致した[34][37]。しかし一方で、望月博士を父親のように慕っており、望月博士を生体プールに融合させたのは博士の愛情を独占したいという意図もあってのことだった[34]。
小説版ではよりはっきりと宏に羨望の感情を抱いていたと吐露しており、父親である望月博士からも拒絶されて生じた孤独感が全ての暴走の原因となっていたが、「家族」の暖かさを手に入れたいという彼の真の願いが叶えられ、救われることはなかった。
ネオ生命体の本体にあたる球体がスクラップ置き場にあった廃材を分子分解し、再構成して作り出した戦闘用ボディ[35][40]。破壊のみを追求した形態である[40]。
ボディの一部が欠損しても、本体を破壊されない限り[44]、周囲の物質を分子分解して取り込み、再生することができる[出典 4]。生体プールの外ではエネルギーが補給できないため、長時間の戦闘を行えないのが弱点。また、高圧電流にも弱く、電流攻撃を受けるとその部分が瞬間的に分子分解を起こし、欠損してしまう[40][46]。
最終的にZOを体内に取り込むことによって、レッドドラスとも呼ばれる強化形態になり、望月博士に最後の改造を迫るが、博士が宏をかばったのを見てついに博士を生体プールから引きずり出してしまう。さらに宏を絞め殺そうとした瞬間、宏のズボンのポケットから転がり出たオルゴール時計のメロディを聞いて精神に乱れが生じ、その隙に生体プールを望月博士に破壊され、宏の呼びかけで覚醒したZOと分離。続けざまに放たれたZOキックを受け、「パパ…」と言い残して生体プールの側で力尽き、消滅した。
右肩の赤い球体からは分子破壊光線マリキュレイザー[43][40]を放つ。目と連動した照準で、正確な狙撃・速射が可能[44]。
尻尾・ドラステール[40]は触手のように自在に動かせ、最大6メートルまで伸び[35]、厚さ30センチメートルのコンクリートをも貫く[35]。
ドラスがZOパンチによって貫かれた腹部の穴からZOを体内に取り込み、パワーアップした姿[35][49]。より筋肉質な外見となり、体色が灰色を基調としたものから血のような赤色に、下顎が小さくなり、小さい赤色の目が巨大な黒い眼に、長く太い湾曲した触角がZOのように細く短くなっているなどの違いがある[50]。
ZOとの戦いでエネルギー不足に陥ったドラスが自身の細胞から生み出した[46]2体のネオ生命体。
望月博士役に竹中直人、清吉役にいかりや長介を配するというキャスティング案があった[59]。
ドラス役は、当初演じていた横山一敏が『特捜ロボ ジャンパーソン』へ参加するため、途中で高岩成二に交代した[60]。ZO役の岡元次郎と高岩は、後に平成仮面ライダーシリーズで対決シーンを演じることも多く、本作品がその最初とされる[60]。
1992年2月にオリジナルビデオとして制作・発売された『真』の売れ行きが好調だったことから成立した企画である[67][注釈 9]。『真』の続編とする案や仮面ライダー1号からBLACK RXまでが登場する娯楽大作とする案なども存在していたが、最終的に新たな仮面ライダーの単独作品となった[67]。
当時の東映ビデオ社長・渡邊亮徳とバンダイビジュアル社長・山科誠の協同企画案を、マルチ・キャンペーンによる興行力の増幅策推進を条件に、東映社長・岡田茂がいち早く製作に踏み切った[1]。岡田は1992年9月のインタビューで、「今は映像が末広がりで商売になると、商社なんかが儲かる手口を研究しているけど、映画そのものはあんまりよく判らず、投資対象、商売対象として手掛けてみようというようなところと組んでも東映としては意味がない。映画を製作してお互いちゃんと儲けて分の立つことをやろうというところとじゃないと僕は提携したくない。来年の5月にはバンダイの山科君と組んで『仮面ライダー』の新作を出すことに決めている。バンダイはキャラクター商品をリフレッシュして大量販売を狙って力を入れるわけだし、東映は事前にプロモーションの一環として、映像事業部が『仮面ライダー・ワールド』を全国展開するというように、お互い組むことで、両社の総合戦略でゴールデンウイークの一大イベント化しようと、これは組んで意味があることだから、早く決めようというので公開一年前のこの春、『よしやろう』と決めたんだ」[68]、1993年6月のインタビューでは「『仮面ライダーZO』の製作は社内でも抵抗があったんだが、オレが『ダメだ、やれ』とゴールデンウイーク興行を強行させたんだ」などと述べている[69][70]。
当時、東映のゴールデンウイーク興行は、1991年の『本気!』『シャイなあんちくしょう』の2本立てが配収1億5,000万円、1992年の『赤と黒の熱情』も配収2億円に届かずと、2年連続で悲惨な状況に追い込まれていたため、岡田の「やっぱり子ども狙いが確か」という判断により、この年1993年のゴールデンウイーク興行に本作品を据えた[1][70]。
製作の正式決定は1992年3月[1]。映画、テレビ、催事、物販など、各分野の機能を有機的に結び付け、その相乗効果を興行に及ぼすというマルチ・キャンペーンを実施するためには早期の製作決定が必要だった[1][68]。
映像に対する並々ならぬ意欲を燃やしていた山科は、1992年8月24日付けでバンダイメディア事業本部を販売子会社・バンダイビジュアルに譲渡し、企画から販売まで映像事業を一元化し、映画への積極的投資を打ち出した[71]。
「20周年記念作品だから単独作品として公開すべき」との声があったが、興行面でのリスクを考慮して「東映スーパーヒーローフェア」と銘打ち、スーパー戦隊シリーズ『五星戦隊ダイレンジャー』やメタルヒーローシリーズ『特捜ロボ ジャンパーソン』の各劇場版と併映された[4][72]。そのため、当初の想定していた90分前後より短い48分という尺に物語を詰め込んでおり[4]、かなり展開が駆け足になってしまっているが、雨宮としては、尺が短いからこそ幕の内弁当のようにギッシリ詰め込みたかったそうである[73]。
企画に際し、最初に石ノ森が提出したシノプシスは『天空の騎士』というタイトルで、宇宙から飛来したライダーというストーリー展開であったが、撮影スケジュールや予算面の都合から不採用となる[7]。その後、雨宮に撮影の指揮、脚本家の杉村升にシナリオ面の指揮がそれぞれ委ねられ、最終的には従来の作品のように大規模な「悪の組織」が登場しない、1人の科学者によって作り出された生命体同士の対決という、非常にスケールの小さな物語としてストーリーラインが完成した[7]。
演出面では、前述した「特撮の幕の内弁当」という意図のもと、CG・操演・モデルアニメーション・ワイヤーアクションなど、多様な表現が用いられた[出典 9]。撮影されたが尺の都合でカットされたシーンの一部は、DVD・Blu-rayの映像特典に約15分間のダイジェスト映像としてまとめられている。
制作費は3億円[1]。この額を聞いたアメリカの映画関係者は「なんであれだけのものが、そんな低予算で作れるのか」と驚いたという[76]。
1992年11月19日製作開始、同年12月20日撮影完了、1993年2月3日完成[1]。
雨宮にとっては、本作品が初の全国公開作品である[3]。雨宮は、初代『仮面ライダー』をリアルタイムで視聴していたと公言する大ファンで、企画当初は1号ライダー(仮面ライダー1号)=本郷猛を主人公とした物語にしたいと考えていたという[7][77]。諸般の事情からその考えは実現できなかったものの、本郷のような「頼りがいのあるお兄さん」のイメージとして土門廣をキャスティングしたという。
音楽は、『仮面ライダーBLACK』『仮面ライダーBLACK RX』を手掛けた川村栄二が担当[78]。川村の起用は、東映プロデューサーの吉川進の推薦によるものであった[78]。当時、川村は『五星戦隊ダイレンジャー』にも起用されており、作業は並行して行われた[78]。
全国200館で公開され、観客は100万人を動員[7]、配収4億5,000万円を上げ[69][70][注釈 10]、岡田は「『仮面ライダーZO』が1993年4月邦画のナンバーワンになったわけだろ。この現実…。『仮面ライダーZO』がよかったか、悪かったか、議論があるが、とにかくこの種のもの狙って凌ごうということでな。年寄り狙いのもの(『動天』『福沢諭吉』など)をたまにやるのもいいが、当てるのは大変だから、当分は徹底して、幼児、ローティーン狙いで着実に稼ぐことを考えるよ。17~18歳から20代のヤングがビデオに取られちゃったんだから、子ども狙いに力を注ぐ。これが一番稼ぎがいいんだから。正月、春、夏、全部マンガで押すという形をどんどんやらせるよ」[69][70]、「映画を取り巻く状況が変わって、ウチも数年ズーッと低迷を続けて来ているのいうのが現状。そこで、思い切って子供路線に転換というのが現在です。色々言われるが、子供路線があるじゃないかと、ウチもまだ生きられるということ。製作・配給・ビデオ、どういう組み方したら東映のメリットになるか、相乗的に相互補完的に協業の実を上げようということです。ヤング・ターゲットのビデオの考え方も取り入れ、子供観客中心にね。確実に儲けを確保する以外、いまの構造的な映画不振、凌ぐ道はないやね。子供路線といっても色々あるから、まあ20歳以下のお客対象にモノを考えるということ。大人もの? ふざけるな、来やしねえじゃないか、なんぼやっても来ねえものやるバカ、何処にいるかということです。全番組子供向けにしてもいいんだよ。大人向きの映画是非やらせてくれというから、損せんように身を削って考えたものなら許可してるだけです」などと話した[79]。
本作品公開後に次の劇場用ライダー新作の企画が開始された際、雨宮は本作品の続編を提案している。一緒に提出されたZOの新デザインは手足が銀色になり赤いマフラーやベルトを身に付けた、いわばZO強化案というべきものになっていた。しかし、結果的に新作は『仮面ライダーJ』となっている[注釈 11]。
本作品は、原作(映画)・コミカライズ版・小説版でまったく話の方向が違うことが大きな特徴として挙げられる。望月博士によって生み出されたZOとドラスの戦いという点はいずれも変わらないが、宏と麻生の交流を主軸にした原作、作者の作風の影響か麻生が心の弱さや力不足を特訓で克服していく熱血な要素の強いコミカライズ版、逆に「家族」をテーマに宏・望月・ドラスそれぞれの内面描写に大きく力を入れた小説版、といった具合である。
すべて、バンダイビジュアルよりリリースされている。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.