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レッド・ツェッペリンのアルバム ウィキペディアから
『フィジカル・グラフィティ』(英語: Physical Graffiti)は、イギリスのロックバンド、レッド・ツェッペリンの第6作アルバム。1975年2月24日発売。プロデューサーはジミー・ペイジ。レコーディング・エンジニアはキース・ハーウッドほか。
1973年、レッド・ツェッペリンは狂気的なアメリカツアーを終えて帰国、映画『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ』の追加撮影などを行なった後、11月から新作録音のためにロニー・レイン所有の車載スタジオとともにヘッドリィ・グランジに入った。しかし、ジョン・ポール・ジョーンズがバンドからの脱退を希望し、作業は一旦中断された。ツェッペリン側は噂が広まらないよう努めたがどこからか情報が漏れだし、一気に「ツェッペリン解散か?」と騒ぎ立てられるようになった。この時のジョーンズが脱退しようとした理由について、後に大きく語られたのが「ジョーンズがウィンチェスター大聖堂の聖歌隊指揮者の座を狙っていた」というものだった[4] が、ジョーンズは「あれは冗談だった」と笑い飛ばした上で、当時脱退を考えていたのは事実だとしている[5]。結局、ピーター・グラントの熱心な説得により、ジョーンズは脱退を撤回、翌1974年春にレコーディングは再開された[4]。
1974年は、ツェッペリンにとって初めてコンサートが行われない静かな1年となったが、この年、アトランティック・レコードとの契約が切れたバンドは、プライベート・レーベル「スワン・ソング」を立ち上げた。レーベル名の由来は、ペイジがお遊びで弾いていたインストゥルメンタル曲の題名から来ている。「スワン・ソング」にはツェッペリンの他、マギー・ベルや、後にペイジと活動を共にするポール・ロジャース率いるバッド・カンパニーも加わった[6]。
録音作業の多くはヘッドリィ・グランジで行なわれ、ロンドンのオリンピック・スタジオで追加作業が行なわれた。一連の作業でLP1枚半分にも及ぶ素材が出来上がり、バンドは曲を削るよりも、これまでの未発表曲を加えて2枚組で発表することを決めた[4]。アルバムには新作8曲に加え、『レッド・ツェッペリン III』『IV』『聖なる館』からの未発表曲7曲が加えられた。ミキシングはロンドンのオリンピック・スタジオに於いて、キース・ハーウッドが行った。本来ならば1974年9月に発売される予定だったが、ミキシングの遅れや、後述するアートワークの作成に手間取り、結局1975年2月のリリースとなった[6]。
『フィジカル・グラフィティ』という題名は、ペイジが考案した。アートワークのコンセプトにもなっているグラフィティ(落書き)と、アルバム制作にどれだけのフィジカル(肉体的)なエネルギーが注がれたかを表しているのだという[4]。本作はツェッペリンにとって初の2枚組作品であり、総収録時間が80分を越えているため、CD版も2枚組でリリースされている。
ジャケットは厚紙の外箱と2枚の内袋とで構成されている。外箱にはニューヨーク、セントマークス69番地に実在するアパートが大きく印刷され(表側が昼、裏側が夜の写真になっている)、くりぬかれたアパートの窓から内袋が見える仕掛けになっている。内袋の両面にはメンバーのプライベート・ショットや(中には女装した写真もある)ピーター・グラント、他にもエリザベス・テイラーやニール・アームストロングなどの有名人、さらには1953年のエリザベス2世の載冠式の写真がはめ込まれ[4]、入れ方を変えるごとに窓から見える絵も変化するという趣向である。内袋を包むインサートにアルバム・タイトルや曲目、クレジットなどの情報が記載されている。
デザインのモチーフとなったのは、プエルトリコ出身の作曲家、ホセ・フェリシアーノの1973年のアルバム『Compactments』である。ジャケットに描かれたアパートは4階建てに見えるが、モデルとなった建物は実際には5階建てである。また、ジャケット表側の左側の階段に腰をかけている人物がジョン・ボーナムではないかという噂もあったが、事実ではない[7]。
『フィジカル・グラフィティ』は1975年2月24日に、全世界で発売された。アメリカのビルボード・チャートでは3位に初登場。翌週には首位を獲得し、6週間その位置を守った。また、さらにツェッペリンの過去のアルバム5枚がチャートに復活し、6枚のアルバムを同時にチャート・インさせるという初の快挙を成し遂げた[6]。イギリスでも1週のみだが首位を獲得している。2015年にリリースされた最新リマスター版も、米ビルボード・チャートで11位[8]、イギリスでは6位[9] にランクイン。
収録曲が多かった事もあるが、前作『聖なる館』にもまして、彼らのキャパシティーの広さを示す作品となった。ローリング・ストーン誌は本作を「まるで『トミー』、『ベガーズ・バンケット』、『サージェント・ペパーズ』を一つにしたような傑作だ」と最大級の賛辞を送っている[10]。ロバート・プラントも「全てが目を見張るほどすんなりと解け合った。全員がアルバムを気に入ってたし、それって本当に大事な事なんだ」と語っている[11]。
『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500』に於いて、73位にランクイン[12]。
1987年初CD化。1993年の『コンプリート・スタジオ・レコーディングス』で全曲リマスター化。1994年単独リリース。2015年2月、リリースからちょうど40年後に最新リマスター版をリリース。デラックス・エディションおよびスーパー・デラックス・エディション付属のコンパニオンディスクには、各曲のラフ・ミックス・バージョンや初期バージョン等が収録された。
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