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アルフレッド・ヒッチコック監督のアメリカの映画(1960年) ウィキペディアから
『サイコ』(Psycho)は、1960年のアメリカ合衆国のサイコスリラー映画。監督はアルフレッド・ヒッチコック、出演はアンソニー・パーキンスとジャネット・リーなど。全編モノクローム映像。音楽はバーナード・ハーマン。
サイコ | |
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Psycho | |
監督 | アルフレッド・ヒッチコック |
脚本 | ジョセフ・ステファノ |
原作 | ロバート・ブロック |
製作 | アルフレッド・ヒッチコック |
出演者 |
アンソニー・パーキンス ヴェラ・マイルズ ジョン・ギャヴィン マーティン・バルサム ジョン・マッキンタイア ジャネット・リー |
音楽 | バーナード・ハーマン |
撮影 | ジョン・L・ラッセル |
編集 | ジョージ・トマシーニ |
製作会社 | シャムリー・プロダクションズ |
配給 | パラマウント映画 |
公開 |
1960年6月16日 1960年9月4日 |
上映時間 | 109分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $806,947[1] |
興行収入 | $50,000,000[2] |
配給収入 | 1億512万円[3] |
次作 | サイコ2 |
ヒッチコック監督の前作『北北西に進路を取れ』に引き続き、タイトルデザインをソール・バスが担当。脚本はジョセフ・ステファノ、作家ロバート・ブロックがエド・ゲインの犯罪にヒントを得て執筆した小説『サイコ』が原作。撮影はユニバーサル映画のスタジオ。配給はパラマウント映画。
1992年に「文化的、歴史的、美学的に重要な作品」としてアメリカ国立フィルム登録簿に登録[4]された。
金曜日の午後[注 1]、アリゾナ州フェニックスのホテルで、地元の不動産会社のOLのマリオンは恋人サムと情事にふけっている。カリフォルニアで金物店を営むサムは、離婚した元妻への慰謝料や、亡くなった父親の借金の返済のために、マリオンとの再婚に踏み切れずにいる。
職場に戻ると、マリオンは客が支払った4万ドルを銀行まで運ぶように言われる。それは娘の結婚祝いに父親が買った新居の代金だった。ところがマリオンは銀行には寄らずに、自宅に帰って身支度をすると、車でサムのいる町へ向かってしまう。
その途中、西に向かうハイウェイで日が暮れたため、マリオンは路肩に停めた車の中で夜を明かす。朝になってパトロールの警官に起こされたので、マリオンは持ち逃げが発覚したのかと不安になる。警官は免許証を確認しただけだったが、警官の車はマリオンの後ろをつけてきた。
町の中に入ると、マリオンは車を買い替えようと中古車店に寄る。スタンド売りの新聞で事件が報道されていないことを確かめたが、尾行してきた警官は離れたところから監視していた。中古車店の店主は取り引きを急がせるマリオンを不審に感じるが、マリオンは言い値通りに4万ドルの中から代金を支払うと、店主と警官がいぶかしげに見つめる中、乗り換えた車で出ていく。
さらに車を進めるうちに再び夜になり、土砂降りの雨が降ってきて視界がきかなくなった。ハンドルを握るマリオンの顔に声が重なる。…マリオンはまだ出社しないのか?…社長、あの子はいつも月曜は少し遅刻するんです…来たらすぐ知らせるんだ、まだ来ないのか? 気分がよくないから早退すると言っていたが、いや待てよ、その1時間後くらいに車に乗っているのを見たな、もしかして…キャシディさんを呼ぶんだ!…いえキャシディさん、私はまったく関知していません、うちで10年間働いていた女性でして…社長、あんたが信頼したんだろ? 全額そっくり返してもらうからな…[注 2]。そのときワイパー越しに「ベイツモーテル 空室あり」のネオン看板が目に入ったので、マリオンは宿に泊まることにする。
そこは12部屋ほどの平屋建てのモーテルで、隣接した小高い丘には2階建ての屋敷が建っていた。その屋敷の2階の窓に女性らしき人影が見えたが、クラクションを鳴らすと出てきたのは若い男で、ノーマンという青年だった。ノーマンは宿帳を出し、マリオンは偽名で宿泊の受付をした。ノーマンは食事を提供することを申し出ると、マリオンをすぐ隣の部屋に案内した。
その部屋でマリオンが札束の隠し場所を探していると、窓の外から見える屋敷から声が聞こえてくる。それは高齢の女性の声で「見知らぬ若い女なんかに食事を出すんじゃない。男がみだらな気持ちを抱いてしまう」と叱りつけていた。食事を運んできたノーマンは、部屋の外で待っていたマリオンに、あの声は母親で、今日はいつもとは様子が違うと言う。食事は受付の裏の応接室でとることになった。
マリオンはパンを口に運びながら、向かいに座ったノーマンと会話をする。応接室に飾られた鳥のはく製を趣味で自作した話から、母親の話になる。母親はノーマンが5歳の時に夫を亡くし、女手ひとつで息子を育てた。数年前に新たな男と出会ってモーテルを建てた。しかしその男も死んだ。その喪失は大きすぎた。母親は病気になり、それ以来ノーマンが世話をしてきた。母親には腹が立つことを言われるけど、自分のほかに面倒を看る者はいない。ノーマンはそう語った。マリオンは軽い気持ちで「お母さんをどこかに預けたら?」と助言したが、その瞬間ノーマンの表情は一変して彼女を凝視し、「精神病院に入れろということかい?君はあそこがどういうところか分かってるのか?」と問い詰めた。マリオンは驚いた表情で「ごめんなさい。そんな深い意味はないの」と謝罪し、ノーマンは穏やかな表情に戻り「母親は時々気性が激しくなるだけで正気を失ってるわけじゃないんだよ」と説明した。
話がマリオン個人の話になり「あなたは何から逃げてきた?」と問われたのでマリオンは驚く。ノーマンは「みな自分の罠に閉じ込められている。罠から抜け出そうとどんなにもがいても、誰も抜け出せない。そして自分は罠の中で生まれたが、そのことはもう考えないようにしている」と語った。
ノーマンの話を聞きながら、マリオンは自分も罠に閉じ込められている。でも今のうちなら罠に囚われる前の自分に戻れるかも知れないと考え、マリオンは明日の早朝にフェニックスに戻る決心をした。そのことをノーマンに告げてから部屋に戻った。ノーマンは壁に開けた穴からマリオンの着替えているところを、少しのぞき見したあと、意を決したように屋敷に帰った。
部屋に戻ったマリオンは紙に数字を書き出して、中古車の代金は自分の預金から補填できることを確かめ、その紙を細かく裂いてトイレに流すと、脱衣してシャワーを浴び始める。まもなくシャワーカーテン越しに人影が現れる。その侵入者は刃物を振りあげると、カーテンを荒々しく開けてマリオンに襲いかかる。悲鳴をあげて抵抗するマリオンを執拗に突き刺すと、すぐに侵入者は出ていく。マリオンはカーテンを掴もうと手を伸ばすが、力尽きて倒れこみ、タイルの床に顔半分を押し付けて息絶える。流れ出た血がシャワー水と混じって渦を巻き、排水口に吸い込まれていく。
屋敷から「母さん 血だよ 血だよ」と叫ぶ声が聞こえ、ノーマンが駆け出してくる。モーテルの部屋で現場を確認すると、ノーマンはモップとバケツを手にして部屋に戻り、血痕を丁寧に拭き取る。マリオンの死体をカーテンにくるみ、所持品をスーツケースに押し込んで彼女の車のトランクに積み込む。そして車を近くの沼地まで運転して沼に押し出す。車は沼の中にゆっくりと沈んでいった。
サムの金物店にマリオンの妹ライラが姉の消息を尋ねに来る。そこにライラを尾行してきたアーボガストが加わる。私立探偵のアーボガストは、奪われた金が戻りさえすれば良いという被害者の意向に沿って、警察を避けるために雇われていた。サムはマリオンが金を持ち逃げした話を初めて聞いて驚く。アーボガストは、当初はサムとライラを疑っていたが、2人が事件とは無関係と判断すると、手掛かりを求めて、町中の宿屋や貸し部屋を回って聞き込みをする。
私立探偵はやがてベイツモーテルに行き着く。宿帳にマリオンの偽名らしき署名を確認したので、ノーマンにマリオンの写真を見せて追及すると、彼女が投宿したことは認めたが、その他のことは知らないと言う。屋敷にいるという母親に話を聞きたいと言ったが、会わせようとしない。ノーマンの態度を不審に感じたアーボガストは、いったん退くと、公衆電話でライラに捜索の途中経過を伝えた。
モーテルに戻ったアーボガストは、ノーマンが受付や応接室に見当たらないので屋敷に向かう。玄関を入って2階への階段を上がっていくと、階上の部屋のドアがゆっくり開いていく。階段を上りきった瞬間、部屋から飛び出してきた人物が刃物を振りあげて襲いかかってくる。額を刺されたアーボガストは、もがきながら仰向けに転落する。襲撃した人物は階段下で膝をついて刺し続けた。
アーボガストからの連絡が来ないので、サムがモーテルへ行って名前を大声で呼ぶが返答はない。その声は沼地にいたノーマンにも聞こえた。アーボガストを見失ったサムとライラは、保安官に相談しようと自宅を訪ねる。保安官は、夜中でもあって気が乗らない様子だったが、求めに応じてノーマンに電話をしてくれた。その電話で私立探偵がモーテルを訪れたことを確かめると、保安官は私立探偵のほうを怪しんだ。私立探偵はノーマンの母親に話を聞くと言ったらしいが、母親は10年前に事件を起こして死んでいる。当時関係を持った男が既婚者だと分かったので毒薬ストリキニーネを用いて殺し、母親も同じ毒薬をあおって死んだ。2人の死体をベッドで発見したのはノーマンで、保安官の妻は埋葬を手伝った。だから屋敷に母親がいるはずはないという。
ノーマンは、沼地にいたときにアーボガストを探す男の声が聞こえ、モーテルに保安官の電話がかかってきたので、身辺に危機が迫ってきたのを知った。ノーマンが屋敷に入ったあと、2階の部屋から地下室への移動を嫌がる声と、それを説得する声が聞こえてくる。そのあとノーマンは両腕に何かを抱えて階段を降りていった。
サムとライラは、保安官を礼拝中の教会まで訪ねたが協力を断られたので、2人だけでモーテルを探るしかなくなった。カップルを装ってモーテルの宿をとり、ノーマンにさとられないように部屋を調べると、トイレの近くに金額と思われる数字を記した紙片が落ちていた。マリオンが滞在した証拠を見つけた2人は手分けして、サムがノーマンを引き留めている間に、ライラが屋敷に入って母親を探すことにした。
しかしライラは、2階の豪華なインテリアの部屋を探しまわっても、手掛かりを見つけられなかった。一方ノーマンはサムが時間稼ぎをしていることに気づき、サムを殴りつけてモーテルを飛び出した。1階に降りたライラは、窓越しにノーマンの姿が見えたので、逃れようと奥へ進んだ。
地階へ降りる階段があったので地下室に入ると、ランプの下で椅子に座った女性の後ろ姿を見つけた。探していた母親と思ったライラが肩に手を触れると、椅子が回って干からびた死人の顔面が現れた。驚いて悲鳴を上げると、女の姿をした人物が戸口に駆け込んできた。その人物が刃物を振り上げてライラに襲いかかろうとした瞬間、追いかけてきたサムが背後から腕と肩を抑え込んだ。もがくうちにその人物のかつらがはずれ、衣装がずれた。その人物はノーマンだった。
警察署の署長室で、ノーマンを診察した精神科医がその結果を説明する。
ノーマンは10歳で父親を亡くして以来、すでに危険なほどの問題児だった。母親は依存心が強く自分本位の女性で、何年もの間、母親と息子は2人だけの世界で生きてきた。母親が男と深い仲になったとき、ノーマンはその男のせいで母親が自分を見限ったと感じた。彼の怒りは一線を越え、母親と男の2人を殺害した[注 3]。
母親を殺したストレスには耐え難いものがあった。そこから逃れるために、ノーマンは母親を生き返らせようと考えた。墓場から母親の死体を盗み出し、ミイラ化の処置をした。だがそれでも動かないミイラに不満だった。そこでノーマンは自分自身で女装し、母親のように行動し、語ることを始めた。
やがてノーマンの人格の中に母親の人格が宿り、2人の人格が同居するようになった。同居した2人の人格は、どちらが支配的になるかをめぐって争いになる。ノーマンの場合、しばしば母親がノーマンを支配した。ノーマンがモーテルの女性客に惹かれたときに嫉妬心から女性客を襲ったのも、ノーマンを支配した母親だった。
今やノーマンの中の母親は、完全にノーマンを支配している。拘置室で毛布をまとって椅子に座ったノーマンの姿に母親の声が重なる。「息子は私のせいにしているけど、女の子たちや男を殺したのは、すべてノーマンがやったことです。だって私ははく製の鳥のように指一本動かせないんだから。ほら見て、私は蠅すらも叩こうとしないでしょ」
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |||
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東京12ch版 | フジテレビ版 | TBS版 | ソフト版 | ||
ノーマン・ベイツ | アンソニー・パーキンス | 西沢利明 | 辻谷耕史 | ||
マリオン・クレイン | ジャネット・リー | 山東昭子 | 武藤礼子 | 佐々木優子 | |
ライラ・クレイン(マリオンの妹) | ヴェラ・マイルズ | 幸田弘子 | 鈴木弘子 | 相沢恵子 | |
サム・ルーミス(マリオンの恋人) | ジョン・ギャヴィン | 広川太一郎 | 川合伸旺 | 神谷和夫 | 小山力也 |
ミルトン・アーボガスト(私立探偵) | マーティン・バルサム | 島宇志夫 | 渡部猛 | 有本欽隆 | |
アル・チェンバース(保安官) | ジョン・マッキンタイア | 雨森雅司 | 八奈見乗児 | 飯塚昭三 | |
フレッド・リッチモンド(精神科医) | サイモン・オークランド | 岡部政明 | 加藤正之 | 稲葉実 | |
トム・キャシディ(金持ちの経営者) | フランク・アルバートソン | 雨森雅司 | |||
チェンバース(保安官)夫人 | ルリーン・タトル | 鈴木れい子 | 好村俊子 | 火野カチコ | |
キャロライン(マリオンの同僚) | パット・ヒッチコック | 吉田理保子 | 榊原良子 | ||
ジョージ・ロウリー(不動産会社の社長) | ヴォーン・テイラー | 北村弘一 | 西川幾雄 | ||
チャーリー(中古車店の店主) | ジョン・アンダーソン | 村松康雄 | 屋良有作 | 掛川裕彦 | |
ハイウェイパトロールの警官 | モート・ミルズ | 木原正二郎 | 郷里大輔 | ||
ノーマ・ベイツ(ノーマンの母親)の声 | バージニア・グレッグ ポール・ジャスミン ジャネット・ノーラン | 京田尚子 | 大方斐紗子 | 磯辺万沙子 | |
その他 | — | — | — | 伊藤和晃 吉沢希梨 長克巳 倉持良子 佐藤晴男 斉藤次郎 | |
日本語版スタッフ | |||||
演出 | 山田悦司 | 岩浪美和 | |||
翻訳 | 榎あきら | 森みさ | 前田美由紀 | ||
効果 | 赤塚不二夫 | ||||
調整 | 栗林秀年 | ||||
制作 | グロービジョン | 東北新社 | ACクリエイト | ||
解説 | — | — | |||
初回放送 | 1968年5月9日 『木曜洋画劇場』 | 1975年9月5日 『ゴールデン洋画劇場』[5] | 1983年6月16日 『名作洋画ノーカット10週』 | — |
受賞
ノミネート
映画の前半では、マリオンの犯した横領をめぐる心理的葛藤を描くクライム・サスペンスの様相を呈し、「車を購入する際の不自然な挙動」や「それを不審に思う警官」など、不安定な心理状態と緊迫感が丁寧に演出される。ところが、彼女は何の前ぶれもなく刺殺される(『シャワー・シーン』)。モノクロでも凄惨な映像と音楽は、後に多くの他の映画作品において模倣やパロディーが繰り返された。細かなカットについて、タイトル・シーケンスも手がけたソール・バスは、「自分が絵コンテを描いた」と主張している。
後半では、マリオンの妹と探偵らによるマリオン探しが主眼になり、謎とサスペンスは次第にベイツ・モーテルへと集中していく。探偵殺害シーンでは“カメラが人物の背後からはるか頭上へ1カットで急速に移動する”など、多くの映像テクニックが駆使されている。最後にマザーコンプレックスのノーマンがかばう母親の正体が明らかになり、物語は「この世にいないはずの人物によるモノローグ」という大胆かつ実験的な終結を迎える。
本作は同時期に公開された映画『血を吸うカメラ』と、異常殺人というモチーフの重なりや、その主題へのアプローチの差異などで比較されることもある。[要出典]
公開当時のキネマ旬報ベスト10では35位だった。
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