20世紀最後のエースコンバットシリーズ作品で、約9ヶ月後にPlayStation 2が発売されるタイミングで発売された。初代プレイステーションではシリーズ最終作品となっており、ハードウェアスペックを使い切ることで、発売当時としては豪華な動画を多用した演出や写実的なグラフィックを実現している。
エースコンバット7制作時に後付された設定ではあるが、本作も他作品と共有する架空世界「ストレンジリアル」に編入されて他作品とストーリー上の繋がりがあることになり、結果的にストレンジリアルの年表では最も未来(2040年)に位置する作品となった。ユーザーインターフェースは白を基調とした未来的なインターフェースとしており、SFアニメを手掛けてきた佐藤大の脚本参加、大々的に導入されたアニメーション、テクノを基調としたクールなBGMなど、その作風はシリーズ内でも異色と言える。
ストーリー
2010年代に急激な成長を開始した「ゼネラルリソース」を始めとする国家を超える規模を持つ巨大多国籍企業体の台頭によって、国家という枠が意味をなさなくなった世界。国家を上回る力を持つ多国籍企業の台頭により国家が形骸化したことで国家間紛争は減少していったが、代わりに多国籍企業体同士の間で企業間紛争が繰り広げられるようになっていった。
2040年、ユージア大陸全域を領土としているが、今やゼネラルリソースの事実上の信託統治領と化している巨大連邦国家「USEA」では、ゼネラルリソースと新興企業の「ニューコム」の2つの世界的企業がしのぎを削り、両社が擁する私設軍事組織同士の軍事衝突の緊張が高まっていた。企業から全面的な支援を受ける弱小勢力に過ぎないが、名目上両社を調停する立場にある新国際連合共同体(NUN)の治安維持対策機構「UPEO」が擁する特別航空部隊SARFに所属する戦闘機パイロットである主人公(プレイヤー)は、同じくSARFのメンバーであるレナ、フィー、エリックらと共に、ゼネラルとニューコムの対立、そして人類の電脳化を巡る戦いに巻き込まれてゆく。
(2019年のゼネラルリソースについてはエースコンバット7の追加コンテンツで描かれている)
ゲームシステム
ゲームの進行方法が他の作品とはやや異なる。まず作戦報酬金額の概念がなくなり、機体の購入や売却といったシステムも同時に削除された。本作では物語の中に戦闘シーンが盛り込まれており、キャラクターとのやりとりがアニメーションで描かれている[2]。所属組織とシナリオの進行状況によって与えられる複数の機体から1つの搭乗機を選ぶ。飛行時の特徴では、燃料の残量計が無く、所要時間がクリア後のABCD評価の対象になる・ミッションによっては制限時間がある、等、経過時間のタイマーがゲーム上で重要になっている(2でも最速達成時間が保存される等、以前にタイマーが無かったわけではない)。
敵と交戦している途中にも決断を迫られる時がある。敵パイロットと会話の流れで転属していく場合もあり、物語は分岐してエンディングも変化する[2]。
追加された主なシステムは、機体ごとに特性の異なる機銃とミサイルが複数種用意され個別に選択が可能になったこと、作戦中のミッションアップデート(ブリーフィング目標達成後からの作戦目的追加)、離陸・空中給油・着陸の操作、戦闘結果によるシナリオ・ミッションの分岐、ミッションクリア時にランクで段階評価、視点操作、敵機への自動視点あわせなど。これらは続編でも用いられている。本作のみの特徴としては、所属先の変更、宇宙ステージ、独特のHUDの表示が挙げられる。特にHUDは、ベクトルマーカーの表示、上下左右の傾いている方向が視覚的にわかりやすい円状型角度計、速度計の横に併記された加速度を回転で示すグラフィックなどが特徴である。
作中で使われる用語の一部については、インターミッション画面で選べる用語集から参照し、詳しく知ることができる他、登場人物の会話ログの大半を再生することも可能[注 1]。
作戦中でのプレイヤーの行動によってシナリオやミッションが分岐し、5種類のエンディングが用意されている[注 2]。そして、全てのシナリオをクリアすることで物語の全体像がプレイヤーに分かる様になっている。本シリーズのほとんどは機体選択が比較的自由であるが、本作では本編中で進行しているルートやミッションによって、機体が最新式に更新されて旧式機体が廃止されたり、所属が変わることで使用可能な機体の系統が変更されたり、特殊な状況では使用できる機体や第2兵装が固定される場合がある数少ない作品でもある。
セーブデータは3つあるアカウントと言う形でいずれかに名前を入れて3つある難易度を選択することになる。プレイ中は使用しているアカウントごとに6つのデータが保存できるようになっている独特の仕様。そのため、3難易度ごとのセーブデータ(3アカウント)に個別のルートのセーブデータを作ることができる[3]。
エレクトロスフィアに常時接続しているという設定上、架空のOSのユーザーインターフェースに作中世界に関する断片的な情報が呈示される形式を取っている。
公式サイトに掲載されている開発スタッフのコラムによれば、膨大な追加要素のためデータがCD-ROM2枚分を超えそうになったところをデータ圧縮などの工夫をして収め、さらにCD-ROM上のデータ配置を最適化したことによりロード時間を「殆ど無い」と言えるまで短縮することに成功したという[4]。
作品の特徴
グローバル化に伴う多国籍企業の台頭とそれによる国家の崩壊、多国籍企業間の対立、マスメディアの概念・設定、インターネット、電脳化、AIを取り入れるなど、世界観の徹底した作り込みが行われ、前作までのシリーズ作品と比較してストーリー性が非常に強くなった。また、アニメパートを導入し、SFアニメ的世界観での戦争を体験可能とした。発売当時としては、アニメーションによる演出とプレイステーションの性能を限界まで引き出した3Dグラフィックのクオリティは高く、機体の挙動についても前作より緻密にコントロールが可能となった。
アニメによる演出
元々、本作はエースコンバットシリーズとは全く無関係な企画として制作が開始された。全体的には1970年に開催された日本万国博覧会のパビリオンなどに用いられたレトロフューチャーのデザインを用いており、シリーズ初のアニメパート導入によりカジュアルなSFアニメのような作風となっている。従って、トップガン的な戦争観を売りにするエースコンバットシリーズでは異色作となり、シリーズのファンを中心に否定的な意見もあった[5][6]。
アニメパート制作はProduction I.Gが担当し、脚本家の佐藤大を舞台設定・脚本担当として招いている。また、制作開始の3年程前に放送していた新世紀エヴァンゲリオンに影響を受けた制作スタッフが多く[7]、エアロコフィンで操縦を行う兵器デザインや登場キャラクターのデザインや心理描写に影響が垣間見える。アニメーションによるゲーム演出は各界に影響を与えることになり、アニメ業界には特に大きな影響を与えたとされている[7][8]。ゲーム業界ではファイナルファンタジーシリーズが社会現象と呼べるほど流行し、RPG以外のジャンルでもゲームの進行でストーリー進行が影響を受ける作品が多数制作されていた[5]。本作ではアドベンチャーゲームのようなシナリオ分岐とマルチエンディングを採用し、全てのエンディングに到達すると作中の世界に関する真実が明かされる仕組みとなっている。この仕組みは、シリーズ次回作の『04』以降にも影響を与えた。
現実的な未来世界の提示
作品の大部分は2040年の高度情報化社会における生活環境、国家の機能すら吸収してしまった多国籍企業体間の抗争の進展、実験的なマインドアップロードによりネット上に放出されたコピー人格の暴走を描いているが、全てのエンディングを見る前にも、折に触れて世界の真実についてのヒントが示される。本作はインターネット社会が到来する直前の1999年に発売された作品であるにもかかわらず、VR・IoT・AIが超高度に進化した時代のネット利用形態に留まらず、ナノマシン技術の応用、実験的な精神転送の結果として起こり得ることなど、技術的特異点到来の瞬間をも現実的な側面から精緻に予測して描き出している点において画期的な作品である。サブタイトルの「エレクトロスフィア = Electrosphere」も、コンピュータネットワーク上の空間をイメージした造語である[9]。
2020年の『エースコンバット』シリーズ25周年記念インタビューでも、民間企業の大躍進や、テレビ会議アプリの広まりを受けて、現実世界がエースコンバット3の世界に追いついて来たと指摘されていることから、世界観設定に先見の明があったことが分かる[7][8]。
備考
- 主人公は前作までは傭兵だったが、今作はスタート時には国際機関の航空部隊に所属している。また世界観設定のためシリーズで唯一『国家が編成する空軍』が登場しない(2017年現在)。基本的には国際機関や企業の正規軍に所属するが、ストーリー進行によってはクーデター軍といった非正規軍に所属する可能性がある。
- シリーズで唯一(2022年現在)、所属先を途中で変更できる。所属先は初期の公的機関、民間企業の私設軍事組織(2社)、蜂起した武装勢力の4つであるが、『国家が編成する空軍』や前作までのような傭兵には転職できない。
- 『UGSF』は『ACE COMBAT 3』の数世紀後の世界という設定が『New Space Order』の公式サイトで公表されている。ただし、これはいわゆる後付け設定である。
- また、ナムコおよびバンダイナムコが手掛ける作品においても、本作出自を思わせる舞台設定内容が存在する。
- 作中に登場する航空機の半数近くが架空の機体である。残りの航空機も、F-15、F-22、Su-37などの実在する機体の発展機という設定である。
- ジャケットイラストは白を基調とし、描かれている戦闘機はSu-37をベースにしたゲームオリジナルデザインの機体である。
- アニメーションパートが追加されたことからキャラクターの声に著名声優が起用されているが、前述の通り容量が限界に近いためキャラクターの英語音声は収録されず、日本語音声のみの作品となっている(2016年現在シリーズ中では唯一)。なお、シリーズの他作品は、『エースコンバット1』、『2』、『04』、『X』は英語音声のみ、『エースコンバット5』、『ZERO』、『6』、『X2』、『AH』、『3D』、『7』は英語・日本語両音声である。
- 英語音声はゲーム内のナビゲーション音声のみしか収録されていない。そのため、日本国外版はキャラクター・ストーリー面が大幅に削られている。同様に、ブリーフィング画面では日本語音声による口頭説明は削られたが、その代わりにブリーフィング画面用のBGMが挿入された。
登場人物
UPEO
- Nemo
- 名前はゲーム開始直後に行われるアカウント作成(セーブデータ作成)で初期設定されているアカウント名のもので、アカウント名は自由に変更可能。当初はSARF所属の4番機パイロットで、数々の戦闘の中で徐々に頭角を現し、時に同僚達の誘いを受け自身の判断で他の組織への異動する、あるいは拒否などしながら所属先をめぐり、エースパイロットとしての地位を固めていく。それらの分岐した全ての戦いが終わった時、エレクトロスフィア(電脳空間)を中心とした、この世界の真の姿を知ることになる。
- その正体は、ニューコム社の研究者、サイモン・オレステス・コーエン博士により開発されたAI(人工知能)。その性質上、コンピューターに神経接続された人物の記憶や外部のカメラの映像を読み取ったり、逆にハッキングを行ったり、エアロコフィンの同時操作をしたり、エレクトロスフィアにダイブしたり、といったことも可能としている。そして、作中の2040年の世界はサイモンによって行われたシミュレーションであり、かつてサイモンが横恋慕していたヨーコ・マーサ・イノウエ博士の死後、デッドコピー(複製人格)としてエレクトロスフィア上で生き残ったアビサル・ディジョンへの復讐を確実に遂行するためのテストに過ぎなかった。エレクトロスフィア上で活動するディジョンを、全てのシナリオで完全に消去できる可能性を証明すると、テスト完了と判断したサイモンによってパージされた[注 3]。本作のPS用ゲームディスクの盤面にも「2030 S.O.C PROJECT "NEMO" ARCHIVE DISC」と、サイモンのフルネーム「Simon Orestes Cohen」のイニシャル(前記のS.O.C)を含むプロジェクト名が印刷されており、このゲーム自体がサイモンの所業を収めたアーカイブであることを演出している。
- 台詞の類いは一切無く、無線の呼びかけやチャットにも全く返答しない。よって、自身の意思はミッション中での行動で示すことになる。自身が人間と言う認識で作られているため、作中での演出やエンディングによって自身の正体を断片的にのぞかせるようになっている。シミュレーション内では紘瀬玲名に自身との飛行パターンの類似性を指摘されており、オプトニューロンを使用した玲名の人機一体的な飛行とAIとして初めから機体と直結で飛行するNemoの性質が一致したのか、もしくは開発に当たっては実在のパイロットのデータも利用されている事が示唆されている。
- Nemoとはラテン語で「誰でもない」を意味する単語である。
- 紘瀬玲名(Rena Hirose)
- 声 - 白鳥由里
- 2021年4月27日生まれ[10][11]。SARFのパイロットであり、同隊の隊長を務める。コールサインはSARF-ONE。
- 太陽光線に含まれる「E-ray」を浴びることができない「シルバーストーン病」[注 4]を患っており、外出時は宇宙服のような防護服を着る必要がある[12]。そのことによって幼少期に周囲の好奇の目に晒され、内気な性格になり、その反動で空を飛ぶことへの強い憧れを抱いていた。2030年、わずか9歳にしてパイロットとしての才能を認められゼネラルリソースに入社。2031年から同社の極秘研究「DOE計画」の被験者となる。ゼネラル社の機密に関わっていたため、DOE計画の凍結後も長期間軟禁されていたが、2037年にUPEOへ移籍し、SARFのエースパイロットとなった。難病を抱えながら天才少女パイロットとして自己実現を果たした姿がマスコミで大きく取り上げられており、美貌だけでなく、感情を表に出さない性格と物静かな口調も相まって、UPEOのアイドルと呼ばれるなど、世間の高い人気を得ている。一方で「空を飛ぶ」ということにアイデンティティの多くを依存しており、空を舞える立場=「翼」を守るためには他を犠牲にすることを躊躇わない。また、現在は別組織に所属しているディジョンに、未だに強い従属心を抱えている。任務の最中、プレイヤーの戦闘機動に自分と似ている部分を感じ、関心を示す様になる[11]。
- ゼネラル在籍時に受けた手術によって、自らの中枢神経と操縦する機体とを直結する人工光速神経網(オプトニューロン)を埋め込まれており、空戦時にハイパフォーマンスを発揮する。UPEOでの乗機はオプトニューロン仕様の特殊なENSIシステムに対応した専用のSu-37で、このために作戦に応じた搭乗機の変更を困難としている。パイロットスーツも宇宙服に類似した独自のものを着用する。
- ストーリーの終盤では、イーオン粒子が存在する空域でのみ従来機よりも遥かに高性能なX-49 ナイトレーベンに搭乗し、自身に埋め込まれたオプトニューロンとの組み合わせで異次元の実力を発揮することになる[注 5]。
- フィオナ・クリス・フィッツジェラルド(Fiona Chris Fitzgerald)
- 声 - 渡辺久美子
- 2016年1月26日生まれ。SARF所属の2番機パイロット[13]。SARFでのコールサインはSARF-TWOで、NEU移籍後はSISTER。
- 22歳でエドワーズ大学院航空工学研究科修士課程を修了し、2039年にUPEOに所属した。明るく歯切れの良い性格で、時に粗忽な面も見せる隊のムードメーカーだが、本質はしっかりした優等生。同僚であるプレイヤーに対してはライバル意識も持っているが、寄せる信頼も厚い。両親がゼネラル社上層部に属するという恵まれた家庭に育ち、3歳の頃からパイロットとしての英才教育を受けてきたが、自らの正義感やニューコムに入社した姉のシンシアへの反発からゼネラル、ニューコムのどちらも選択せず、UPEOに入りSARFのパイロットとなった。幼い頃から常に比較されてきた天才にして夢想家の姉に対して、強い憧れや愛情、コンプレックスが混在した複雑な感情を抱いており、それが負けず嫌いな性格の元となっている[13]。
- エーリッヒ・イェーガー(Erich Jager)
- 声 - 保志総一朗
- 2016年8月30日生まれ[5][14]。SARF所属の3番機パイロット。コールサインはSARF-THREE。
- 2039年にオックスフォーム大学政治学部国際政治学科を卒業後、UPEOに所属する。中流階級の出身で、SARFのメンバーの中では最も飛んで戦うことに無自覚である。レナを同僚でありながらアイドル視し、ゼネラルとニューコムの戦争も他人事のようにとらえるなど、未成熟な面が目立ったが、戦いを重ねる中で成長していく。Su-37へのこだわりが強く、ゲーム開始時に同機に乗っているレナを羨ましがり、後に乗機としてからは、最新型のSu-43が配備された後もSu-37に乗り続ける[14]。
- なお、2019年を舞台としたエースコンバット7ではオーシア空軍のロングレンジ部隊所属のパイロットとして、息子がいるとされる「イェーガー」というキャラクターが登場しており、彼がエリックの父親であることが7のスタッフインタビューで示唆されている。
- ガブリエル・W・クラークソン(Gabriel W. Clarkson)
- 声 - 糸博
- 1984年2月29日生まれ。UPEO代表議員[15]。
- 2010年にオックスフォーム大学大学院政治学部国際政治学研究科の博士課程を修了。某国で官房長官・外務大臣を歴任した後、USEA連邦議会議員を経て2029年にNUN新国際連合役員に就任し、2037年にUPEO治安対策機構代表に着任。ニューコムと太いパイプがあり、「ゼネラルの傀儡」と揶揄され実質的機能を果たしていなかったUPEOの再建に成功する。穏健派として知られ、対話を重んじる平和的な人物ではあるが、その姿勢は前時代的なものと批判されることも多い[15]。
- ギルバート・パーク(Gilbert Park)
- 声 - 麦人
- 1992年3月6日生まれ。UPEO司令。本名は「朴・影鉄」であり、それを英語風に表している[16][17]。
- 2014年にペイジン大学経済学部を卒業してゼネラルリソースに入社後、2031年に同社の推薦を受けUPEOへ移籍した。ゼネラルリソース出身だが、過去にニューコムへの研究者移籍を手引きし、保身を図った研究者たちに首謀者としてゼネラルに売り渡された過去を持つ。そんな危機的状況にあったところをゼネラルのナシメント常務に救われると、ほとぼりを冷ます形でUPEOへ出向させられ、以降はゼネラルの意を汲んでUPEOを操る役を担うようになった。しかしそれに飽きたらぬ野心を秘めており(ディジョン曰く「人間の業そのもの」)、ゲーム中盤以降では関係の悪いクラークソンを暗殺し、ゼネラルとニューコムの共倒れを画策するようになる。あるルートでは、主人公自身の手により搭乗機を撃破され暗殺されることになる[17]。
ゼネラルリソース
- アビサル・ディジョン(Abyssal Dision)
- 声 - 江原正士
- 1997年10月10日生まれ[18]。GRDF隊長。コールサインはABYSS。
- 2018年にサンドバリーGR防衛大学工学部航空宇宙工学科を卒業。同年9月よりゼネラルリソースに入社し、GRDFのパイロットとして配属される。2026年のテロ鎮圧作戦における功績からGRDF隊長に任命され、体力の衰えが出る40歳を越えてなお第一線で活躍している。GRDFの隊長として、テレビ番組に出演しゼネラルリソースの意思を代弁することもあり、一介のパイロットに留まらない存在感を有している。その性格は沈着冷静で、腕利きの実戦派パイロットが揃うGRDFにあって部下から深い信頼を得ている。一方で深謀遠慮に富み、腕を見込んだプレイヤーに対し作戦飛行中にも関わらず露骨なGRDFへの勧誘を仕掛ける、あるいは上層部の意も得ないまま独断専行で作戦行動を行うなど、長い付き合いのあるキースですら行動の真意が掴めないことが多い。主人公と出会った当初は黒くカラーリングしたF-15S/MT"Eagle+"を専用機としているが、ゲーム中盤以降は同じく黒いF-22C"Raptor"に乗り換える。更に、ウロボロス結成以後は極秘に保管されていた超高性能戦闘機の「UI-4054 オーロラ」をウロボロスに持ち出して乗り換えている。ヨーコとはかつて恋愛関係にあり、彼女の研究にも被験者として協力していた[18]。
- ゲーム中に登場するディジョンは、2030年の電脳化実験でエレクトロスフィア上に複製された意識のみの存在で、ディジョン本人ではない。そのため、肉体の老化は無くなり、40代以降も第一線のパイロットであり続けることが可能となっていた。ウロボロスの声明によれば、これが人類初の電脳化であったという。2030年にゼネラル上層部はヨーコの電脳化に関する研究を危険と判断し、特殊工作部隊を送り込んで研究施設ごと爆破しこれを抹消したが、ヨーコとオリジナルのディジョンは当該研究施設内で電脳化実験を行っていたため、この爆破に巻き込まれて死亡している。この電脳化実験によりエレクトロスフィア上に複製された直後のディジョンの意識のコピーは、自身がオリジナルであると思い込んでおり、研究施設の複数のカメラを介して見知らぬ肉体を持ったディジョンとの恋愛模様と施設爆破の瞬間を目撃していた。その後は自分がオリジナルであると思い込んだまま、エレクトロスフィア上を移動しながら、自らが爆破事故から生還したように装っていた。しかし、研究施設爆破から10年が経過する間のうちに、ヨーコと言う恋人を殺された記憶や、現実世界で姿を見せる事が出来ず、自分以外に電脳化された人間が存在しないという孤独な状況が彼自身の性格を大きく歪めて行くことになる。最終的には、全人類を電脳化して肉体から解放するという建前を掲げて志願者を集め、ウロボロスを結成して既存企業に対してクーデターを起こす。
- どの展開においても最終的には必ず自らが乗る機体を撃破され、自分自身の人格データを破壊される事になる。エレクトロスフィアにおける戦闘時の「オマエは、サイモンだったのか」等と言った断末魔の言葉が真のエンディングへの伏線となっている。
- キース・ブライアン(Keith Bryan)
- 声 - 中村大樹
- 2010年5月19日生まれ。GRDFの戦闘機パイロット[19]。コールサインはMADCAP。
- 2028年にサンドバリーGR防衛大学付属高等学校を卒業しゼネラルリソースへ入社。ディジョンとのチームではもっぱら戦闘攻撃機に乗り、制空戦闘機に乗るディジョンのバックアップを務める。ディジョンとは古い付き合いで、彼と対等に話せ、またその操縦の腕を認められている数少ない人物。が、最近はディジョンとデータースワローを介する以外でコミュニケーションをとる機会が皆無で、一抹の寂しさを感じている。ストーリー進行によってはGRDFで共に戦うことになるプレイヤーを当初は見下すも、後に「相棒」と認める。意外に古風な考え方をしており、電脳化には全く理解を示さない。そのため全人類の電脳化を掲げるウロボロス、ひいてはディジョンとの対立の道を歩むことになる[19]。
- ヨーコ・マーサ・イノウエ(Yoko Martha Inoue)
- 声 - 玉川紗己子
- 1999年9月3日生まれ。ゼネラルリソースの科学者。2025年にアクセル大学大学院脳生理学研究科の博士課程を修了。同年ゼネラルリソースに入社すると、2028年より始動されたDOE計画に参加し、サブリメーションの基礎理論を構築する[20][21]。
- ディジョンと恋愛関係にあったが、2030年、電脳化実験を危険視したゼネラル上層部が彼女のいた研究施設に特殊工作部隊を送り込み、事故に見せかけた爆破工作を行ったことで死亡する。満30歳没[20][22]。
- オリジナルのディジョン以外にディジョンが電脳化されたことを知る唯一の人物であった。オリジナルのディジョンと彼女が爆破工作に巻き込まれて死亡したことで、エレクトロスフィア上にコピーされたディジョンは自身の実際の姿を示す術をなくし、その性格を歪ませていく[22][23]。
- アルデア・カルロス・ナシメント(Aldair Carlos Nascimento)
- 1964年7月21日生まれ。ゼネラルリソース社の常務。1989年ペイジン大学経済学部卒[24]。
- ゼネラルリソースの真の実力者であり、社内で失脚しかけたパークをUPEOへ送り込むなど、様々な策謀に関与している。心臓に持病を抱えており、人工心臓を含む数度の移植手術を受けている。ゲームの途中で、パークとディジョンの謀略によるハッキングにより人工心臓に誤作動を起こされたため突然死した。75歳没[25][26]。
ニューコム
- シンシア・ブリジット・フィッツジェラルド(Cynthia Bridgitte Fitzgerald)
- 声 - 川村万梨阿
- 2012年2月9日生まれ[27]。フィオナの姉で、Rナンバー開発に携わる一流の科学者にして、かつNEUのチーフコンサルティングパイロット。コールサインはPRIEST。
- 2033年にチョピンブルグ大学大学院遺伝子工学研究科修士課程を修了。同年にゼネラルリソースへ入社し、4年間の勤務を経て2037年にニューコムへ移籍した。ゲーム初登場時の搭乗機は専用のカラーリングが施されたR-102で、後に実戦配備されたR-103に乗り換える。エレクトロスフィアの可能性を狂信的なまでに信じる[27]。
- 両親はともにゼネラルの幹部で本人もかつては在籍していたが、保守的な体質を嫌い革新的なニューコムへ移籍した。本業のパイロットの他に、サイモンのAI研究の被験者として、電脳化実験にも協力している[27]。
- 本ゲームのオープニングアニメーションはシンシアがR-103をテスト飛行させるシーンで幕を開ける[28]。
- サイモン・オレステス・コーエン(Simon Orestes Cohen)
- 声 - 中尾隆聖
- 2000年1月17日生まれ。ニューコム・インフォに所属する技術者であり、プレイヤー達に多岐にわたって科学面の助言・協力を行う[29]。
- 2023年にアクセル大学大学院情報学研究科の博士課程を修了。在学中の2022年に研究発表した「遺伝子情報交換による人工知能構築の基礎理論」でエレクトラ賞を受賞。2023年よりゼネラルリソースに入社。8年間の勤務の後、2031年にニューコム社に移籍している。先鋭的なニューコムの中でも、科学に関してラディカルな発言・考え方をする人物。オープニングフィルムから、かつてヨーコに思いを寄せていたことが見て取れる。ストーリー進行によってはニューコムに移籍するプレイヤーに対し、意味深な発言をする。先鋭的なAI(人工知能)の研究者であるが、「無から人間そっくりのAIを実現することは不可能だが、逆に、人間の意識をAIに仕立て上げる方法ならば可能性がある」と語るなど、その思想は電脳化(人間の意識そのもののコピー)に近く、それを変質させるという応用ともとれる。この作品全体のストーリーの黒幕で、主人公であるAIを設計した張本人である[29]。