Loading AI tools
かつて日本のシャープが製造販売したパソコンシリーズ ウィキペディアから
MZ(エムゼット)は、1970年代から1980年代にかけてシャープが販売していたパソコンのシリーズ名。当時、シャープはパソコン御三家といわれていた。
MZシリーズの始まりは、1978年5月に発売されたマイコン博士MZ-40Kという4ビットマイコンのトレーニングキットである。MZ-40Kの名前の由来は風呂ブザー用に用意してあった登録コードを流用したものであった[1]。
製品を発案した事業部は部品を販売する部署であり、計算機などを扱う部署との摩擦を防ぐ意味合いもあって、MZ-40Kに続いて技術者用のトレーニングキットという名目でMZ-80Kを半完成キットの形で発売した[2]。これらとは別に、MZ-80Tというワンボードトレーニングマイコンも用意されていた。 シリーズとして以下のような特徴を持っている。
MZ-80Kも試作機では、BASICもROMで搭載されたコンピューターであったが、シャープがROMを外部調達する都合上、ROMに納めたプログラムにバグが発覚すればその原価から多大な損害が発生する。このリスクを回避するため実際に商品化された製品で採られた苦肉の策が、システム全体をROMとして持つのではなく、最低限の処理を収めたモニターのみを本体にROMで搭載し、基本プログラムはカセットテープなどのメディアで供給するという、後に「クリーンコンピューター」とうたわれるシステムであった[3]。現実にはそれほど致命的なバグが露見することはなかったが、逆にマニアからすれば自分で自由にソフト開発ができる環境となっており、ハドソンソフトやキャリーラボをはじめとしてシャープ以外のさまざまなソフトハウスから言語、オペレーティングシステム等が発売されると共に、各種言語やシステムのリリースが行われたり、シャープ自身もハイスピードBASICなどのソフトウェア的なアップグレードを実施した。これらの状況から、苦肉の策の設計であったクリーンコンピューターは、ソフトウェア的にフレキシブルなシステムであることを、以降のMZシリーズの特徴的な設計として広告文句にも利用するようになった。この実装では、システムそのものを本体に持たないため、当時の標準環境であったBASICが利用可能になるまで、標準内蔵デバイスであるデータレコーダーからの起動で数分を要するという欠点もあったが、FDDの利用で10秒前後に短縮できるほか、MZ-80B以降のIPL (Initial Program Loader) では、MZ-1R12等のメモリーボードに予め起動するシステムを書き込むことでも改善することが出来た。同様にクリーン設計を採用したX1では、CZ-8RB01として予め拡張ボードに書き込まれたBASICも発売されていた。これらのSRAM若しくはROMボード上からの起動でも、それらは直接メモリー空間にマッピングされているわけではなく、IPLにより、メインメモリーに「転送」されて起動する。
MZ-80Kではコマンド自体が6種しか実装されていないものの、実際にROMで実装されているモニタは現在のBIOSに相当し、文字表示や内蔵デバイスへの入出力、音の出力などのローレベルな処理が書き込まれており、最低限の物しか存在していないわけではない。MZ-80Bでは、本体基板にはIPLのみをROMで実装し、モニタも含むシステムプログラムは、全てRAMに展開されるようさらにその設計を推し進めたものになり、同社X1では更にアドレスデコードの工夫によって、IPL自身が直接読み込むことが可能な容量が増えている。これら、ソフトウェアを固定しないかたちで進められたその思想は、X1turboやMZ-2500では再度、複雑化したハードウェアをサポートするためのBIOS(IOCS)が本体に実装されるようになり、結果として先祖返りするかたちになっている。また、他の機種であっても、起動時にディスク対応のモジュールの読み込みを行ったり、ROM部分のバンク切り替えによるRAM化が可能になるなど、実質的には実装の差は、互換性を維持するために搭載されるBASIC-ROMの有無のみになっていった。
初期の同シリーズは、本体・ディスプレイ・キーボード・データレコーダーを一体とし、本体のみでシステムが最低限完結するように設計されていた。機種によって構造やパーツは異なるものの、筐体は底面のビスを外すことで背面の蝶番を支点として、車のボンネットカバーのように持ち上げることが可能になっており、内部に用意された支柱によって固定し、内部をメンテナンスできるようになっている。PCシリーズを祖とするMZ-3500、MZ-5500シリーズを除けば、MZ-2000やMZ-1200の世代まで受け継がれる外観にも現れる特徴的な設計となっていたが、ディスプレイのカラー化などの流れとコストのバランスの都合から、MZ-700以降は見られなくなった。
MZ-80Kの発売に合わせ、ブランドの確立のため、シリーズのシンボルマークとして勇気、未来、探求、憧れの象徴として、ギリシャ神話の物語からアルゴ号をモチーフに作られたデザインが制定された。その意匠デザインの由来については「MZ-80 SERIES BASIC解説」の冒頭に言及があり、Oh!MZ誌上でも、その一節は取り上げられた。このロゴマークは、当時家電メーカーとしてのイメージが強かったシャープでは社名のみではインパクトが弱く、多くの売れ筋製品の名前などの要素や、対象になるユーザーの嗜好などを考慮し、新しいベンチャーとしてのイメージ[4]を託すかたちで新設された。この象徴的なマークは最終機まで引き継がれ、MZ-2500、MZ-2861では特殊キーのひとつにこのロゴが描かれたキーが存在する。
MZシリーズの内蔵データレコーダは、専用に周辺回路が設計されていることもあり、競合製品のデータレコーダよりも高い信頼性を確保していた他、読み書きの速度も競合製品の平均的な速度よりも高速[5]に設定されていた。記録されるデータはソフトウェア制御によるPWM変調で、同じデータの書き込みを繰り返し二回記録する。データの読み込みが失敗した場合は、二度目に記録したデータの読み込むを試みるようになっている[6]。このフォーマットは速度の差はあるものの引き継がれた。また、ハードウェアでは、その機種の標準速度を基準に調整されているものの、ソフトウェアによって波形は生成されるため、ソフトウェアによってある程度の記録速度の調整を行うことが可能であった。
MZ-80Bではソフトウェアでも頭出しやデッキオープン、早送り、巻き戻し等の制御が可能になった。この電磁制御のデータレコーダは別部署からリリースされたX1でも標準の内蔵デバイスとして採用された。また、MZ-2500では録再ヘッドがステレオ仕様になり、片方にデータ、片方に音声を記録し、ロードしながら音声を再生、本体側から音声を頭出しし、再生するなどの利用も可能になった。この信頼性と高速性を持つデータレコーダに加え、他社の競合製品と比較し、純正FDDの標準価格が高価であることも手伝い、フロッピーディスクの標準搭載への対応が遅れる遠因となった。
FDDインターフェイスの初期回路設計において、本来、負論理のバッファを通すところを直結し、その設計を踏襲したため、直接は互換性のない機種においてもそのままディスクサイドの指定や、実記録されるデータが、標準的なディスクに対し反転している。また、初期の1Sドライブが片面35トラックであり、互換性を維持するため、純正FDDであるMZ-80BFではヘッドにストッパーが装着され、公式なトラック数が2Dでも片面35トラックとなっている。ただしコントローラーやドライブ自体はそれ以降のトラックも取り扱えるため、本来のドライブ側の仕様である80トラックを利用できるようにする改造や、仕様外のそれ以降を利用するソフトウェアも個人、雑誌レベルでは存在している。Hu-BASICでは、ソフトウェア的に反転させることにより、記録媒体レベルでのX1との互換性が実現されている。
プリンターインターフェースは初期の実装ではMZ-80K系、MZ-80B系列それぞれ異なる独自仕様になっていたが、MZ-2000以降は一般的なセントロニクス準拠仕様に変わっている。ただし、MZ-1500では互換性維持のため、本体背面にMZ専用仕様とセントロニクス準拠仕様とを切り替えるディップスイッチがあった。なお、最初に発売されたMZ-80P2は放電破壊プリンターだった。その後のMZ-80P3以降はドットマトリクスプリンターである。MZ-700には、専用内蔵プリンタが存在[7]しており、その後継機であるMZ-1500にもそれを外付け可能にしたMZ-1P09が発売されている。このプリンタは、安価にボールペンによって本来高価であるカラーペンプロッターを実現していた[8]。
元々部品事業部のトレーニングキット名目での製品であり、メモリの増設にもハードウェアに手を入れる必要があるという状況もあいまって、MZ-2200の時代まで本体の回路図、モニタのソースコード、Z80の命令表等、ハードウェア、ソフトウェアを製作するのに必要な情報が、標準添付のOwner's Manualに記載されていることも特徴[9]であった。シャープ純正の言語や開発ツールは価格も高かったことから、これらのソースコードを使いこなしていたユーザーは多くはなかったが、シャープ社内開発担当者ではこれらの開発ツールが縦横無尽に有効活用されていたことが、前記モニタプログラムのソースコードから読み取れる。なお、MZ-1500の回路図およびROMモニタのソースコードは、工学社『MZ-1500 テクニカル・マニュアル』に掲載され、MZ-2500の回路図は、電波新聞社『Super MZ活用研究』、工学社『MZ-2500 テクニカル・マニュアル』〈Super Series 1〉[10]、ソフトバンク『Oh!MZ』に掲載された。BIOSやBASICのソースリストは工学社から発売された。本体だけではなく、シャープ純正オプションの一部では付属マニュアルに回路図が記載されている。
系列としてはMZ-80K系(40×25文字のテキスト画面を持つ。グラフィックキャラクタを使用した80×50ドットのセミグラフィックが可能)、MZ-80B系(320×200のモノクログラフィックを最大2画面分、テキストと別プレーンで持つ)、MZ-2000系(640×200の解像度に加えカラー表示対応)、PC-3100系、MZ-5500系(MZ-3500系を16bit化)などがある。
なお、MZの名称は同社のMebiusとZaurusの頭文字に、分割して引き継がれていると宮永好道がコラム[いつ?]で語っている。
1982年MZ-80Kグループを開発した部品事業部から、情報システム事業部にパソコン事業を移管。
MZ型番は、シリーズ名に下二桁に00を持つ3〜4桁の数字。PC型番は、PCからMZにシリーズ名が変更になり、全体としての命名規則が変わった。同時に周辺機器の型番もリセットされ、シリーズ全体で、カテゴリごとに末尾1からの連番で割り当てられた。ホビー用途では部品事業部由来の製品が多く広告、販売されていたこともあり、MZとしてイメージされるのは部品事業部由来のシリーズである。同一シリーズにバリエーションがある場合は、その下位二桁である00の部分にバリエーションを示す数字が割り当てられた。
以降のパソコン開発に、部品事業部でMZ-80を設計していた技術者達は参画していない。
部品事業部が展開していた主にホビー向けの流れを受けたシリーズ。代を追うごとにホビー向けの機能が充実して行き、多くの人がMZとして思い出すのはこちらの系列である。
存続する事業部となった情報システム事業部が元々展開していたシリーズの後継機。ビジネス向けの一体型PC、PC-3100S/PC-3200の、本体・キーボード分離型にした新型機の型番をMZに移行したもの。5.25インチフロッピーディスクドライブを搭載(MZ-6550のみ3.5インチ)。
SHARP BASICとして、(後にS-BASICと呼ばれる)PET由来のコマンド群を持つBASICをカセットテープ並びにフロッピーディスクで標準添付、並びにオプションとして供給していた。演算精度の高いもの、漢字表示や特定デバイスのサポート、カラー表示のサポートなど、拡張機能を実装したBASICは、別途オプションとして提供されている。それらBASIC以外にも、リロケータブルバイナリ出力でユーザー定義のマクロ命令記述も可能なマクロアセンブラ(リンカ・シンボリックデバッガ・P-ROMフォーマッタ含む)アセンブリ言語、マシンランゲージモニタ(現在でいうバイナリエディタ)等も別売されており、テープメディアゆえ使い勝手に難ありといえども極めて強力な開発ツールであった。Floppy Disk Operating System(FDOS)には前記アセンブラのほかBASICコンパイラも同梱されており、Z80のセルフ開発環境としてはコストパフォーマンスを考慮すると当時のCP/M-80をも凌駕するものであった。
シャープ純正の言語は前記のとおりバリエーションが直交している場合が多かったため、プログラマーはさまざまな言語を選択できたかわりに、アプリケーション使用者はその言語を購入する必要がある場合もあった。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.