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鉄道の軌間 (1,372 mm) ウィキペディアから
4フィート6インチ軌間(以下、1372 mm軌間)は、鉄道線路のレール間隔をあらわす軌間の一つ。主に19世紀初期のスコットランドのラナークシャー地方の鉄道で採用されたため、英語圏ではスコッチゲージ(英: Scotch gauge)とも呼ばれる。イングランドの初期のいくつかの鉄道で採用された4 ft 8 in(1422 mm)軌間とは異なっていた。初期の鉄道会社は各社独自の軌間を選択したが、19世紀後半には、各鉄道会社間との同一の軌間(いわゆる標準軌と呼ばれる)が確立されたことにより、各会社間との車両の乗り入れが促された。1840年代初頭には、標準軌の鉄道がスコットランドで建設し始め、最終的にすべての1372 mm軌間は標準軌に改軌された。1372 mm軌間の鉄道は1846年にイギリスで法的に使用できなくなった。
スコットランドで用いられなくなった後、1882年開業の日本の東京馬車鉄道がこの軌間を採用し、その後継の東京都電車(都電)や後発の他社もこれに倣ったため、この軌間は特に東京圏で広く用いられることとなった。こうした経緯から、この軌間は日本で馬車軌間(ばしゃきかん)と呼ばれるほか、東京ゲージ[1][2]と呼ばれることもある。
19世紀初めから中期にかけて、数社の旅客鉄道が、1372 mm軌間で建設された。
ロバートスティーブンソン・アンド・カンパニーは、ガーンカーク・アンド・グラスゴー鉄道向けにスコッチゲージの機関車であるセントロロックス(英: St.Rollox)を製造した。これは後にペイズリー・アンド・レンフルー鉄道に売却された[3][5]。
上記の鉄道に加えて、1822年と1835年の間に承認された3つの鉄道があり、ダンディー地方にて建設された。その路線の軌間は、4 ft 6+1⁄2 in(1384 mm)であった。
グレインジャーとミラーは、同じエリアに1676 mm(5 ft 6 in)軌間の鉄道を2路線建設した。トーマス・グレインジャーは、1435 mm(4 ft 8+1⁄2 in)では狭すぎ、イザムバード・キングダム・ブルネルの2140 mm(7 ft 1⁄4 in)では広すぎると考え、この軌間を選択したと言われている[3]。
グラスゴー・ペイズリー・キルマーノック・アンド・エア鉄道とグラスゴー・ペイズリー・アンド・グリノック鉄道(1837年7月15日に議会の承認を得て、後にグラスゴー・サウスウェスタン鉄道とカレドニアン鉄道となる)は、開業時から標準軌で建設された[3]。
ジョージ・スチーブンソンに由来し、スティーブンソンゲージとしても知られる1435 mm(4 ft 8+1⁄2 in)軌間は、1846年軌間統一法の発効後、グレートブリテン島の標準軌となった[7]。旧路線のいくつかの路線は存在しているが、使用されていない。
日本国内では、東京馬車鉄道が1882年(明治15年)の開業時から1,372 mm軌間を使用した[8][注 1]。同鉄道がこの軌間を採用した経緯は不明である[1][9]。ニューヨークの馬車鉄道がかつて1,372 mm軌間を採用していたのに倣ったとする説[10]が存在したものの、実際にはニューヨークの馬車鉄道が1,372 mm軌間を採用していたことは一度もない(当初から1,435 mmの標準軌を採用していた)ためその説は誤りだとする反論[1]がある。
東京馬車鉄道が東京電車鉄道と改称して動力を電気に改めたが軌間はそのまま引き継ぎ、同じ東京市内で開業した東京市街鉄道と東京電気鉄道も1,372 mm軌間であった。3社は合併して東京鉄道と改称した後、東京市に買収されて東京市電気局の運営による東京市電(のちの東京都電)に引き継がれた。また、東京市電への乗り入れや中古車両の購入を視野に入れた同業他社も1,372 mm軌間を採用し、このうち王子電気軌道と城東電気軌道は後に東京市電へ組み込まれた[注 2]。
鉄道及び軌道事業者によって運営する路線は、1993年(平成5年)の函館市電一部廃止以降、以下の区間のみ。
都市高速鉄道としては京王電鉄、都営地下鉄新宿線のみ採用している。特に京王電鉄については、その創業期に東京市電への乗り入れを計画したことや、軌道法により敷設を始めたことなどから1,372 mm軌間を採用し、地方鉄道として開通させた旧玉南電気鉄道区間(府中駅 - 東八王子駅間)では京王電気軌道への合併後に1,067 mmから1,372 mmへの改軌も行ったが、最終的に東京市電乗り入れは実現しなかった。1945年(昭和20年)には京王線が軌道法から地方鉄道法による鉄道に変更されたが、以後も1,372 mm軌間を使用し続けた。後に都営新宿線を建設する際、都が相互乗り入れを予定している京王帝都電鉄(当時)に対して1,435 mmへの改軌を迫ったが、営業運転を継続しながら改軌を行った1950年代の京成に比べ、1970年代の京王線のダイヤと車両数では営業を続けながらの改軌工事が不可能であったことなどから、京王の言い分が関係各所に受け入れられ、都営新宿線の方が京王に合わせて1,372 mm軌間を採用したという経緯がある。これにより都営地下鉄が当時保有する3路線全てが、いずれも乗り入れ先の都合でそれぞれ異なる軌間となった[注 3]。日本の改軌論争も参照のこと。
以上のように、1,372 mm軌間は東京周辺では広く採用されたのに対し、日本国内のみならず世界的に見ても東京以外での使用例がきわめて少ないことから(特に西日本での採用例は全くない)、これを東京ゲージと呼ぶ専門家もいる[1][2]。
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