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学校教育法の一定の基準を満たす教育施設 ウィキペディアから
専修学校(せんしゅうがっこう、英称: specialized training college[1])とは、学校教育法第124条が定める日本の教育施設[注釈 1]である。修業年限は1年以上。
専修学校には、専門課程(専門学校, post-secondary course)、高等課程(高等専修学校, upper secondary course)、一般課程(general course)のいずれかまたは複数がおかれる[1][2]。高等課程のみを置く専修学校[注釈 2]は少なく、「専門学校」と称して専門課程とともに高等課程が置かれる専修学校が多い。
専修学校の教育が大学[注釈 3]の教育と違うところは、職業人を育成するための実践の重視であり[注釈 4]、授業の内容は平均して講義が5割、実習が4割、企業内研修[注釈 5]が1割であった[6]。
「大学」と「専修学校の専門課程」に同時に在籍する「ダブルスクール」の者も存在する。ダブルスクールの形態としては、その者が在籍する大学の課程が実務に直結しないため自主的に専修学校に入学する、大学と専修学校の間の提携制度の下に入学する[注釈 6]などがある。
専修学校は「職業もしくは実際生活に必要な能力を育成し、または教養の向上を図る[7]ことを目的として組織的な教育を行う[8]」教育施設である。1976年に、学校教育法に専修学校の規定を加える法律が施行され、それ以前に各種学校であった教育施設のうち、設置基準[9]を満たすものが専修学校に移行した。
学校教育法(昭和22年法律第26号)第124条括弧書きの規程により、以下に該当するものについては専修学校になれない。
一般に、専修学校の個別の校名に「専修学校」、「高等専修学校」、「専門学校」、「大学校参照」の名称がつけられる。なお、高等課程を置く専修学校以外の教育施設は「高等専修学校」の名称を、専門課程を置く専修学校以外の教育施設は「専門学校」の名称を、専修学校以外の教育施設は「専修学校」の名称を用いてはならない[10]。そのため、校名に「専修学校」という名称が入っていれば専修学校であることが、「高等専修学校」という名称が入っていれば高等課程を置いている専修学校であることが、「専門学校」という名称が入っていれば専門課程を置いている専修学校であることが判別できる[注釈 7]。
しかし、そうでない校名[注釈 8]の場合は、各種学校、無認可校といった教育訓練施設と区別できない。また、専修学校は学校教育法第1条に定められる学校(一条校)の名称[注釈 9]を用いてはならない[11]。また、専修学校は一条校の略称[注釈 9]も用いないことが通例である。
専門課程(せんもんかてい、specialized course)は第3期の教育(post-secondary education)とされ、後期中等教育の修了者(高校卒業者)に対して、高等学校における教育の基礎の上に職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、または教養の向上を図ることを目的として組織的な教育を行う[8]、ISCED-5Bレベルの課程[1][12]。
具体的には学校教育法(以下「法」)第125条第3項に基づき、下記のいずれかに該当する者が対象となる。
専門課程を置く専修学校を「専門学校」と称することができる[13]。
文部科学大臣の認定する専門課程のうち、2年または3年の課程を卒業した者には専門士、4年の課程を卒業した者には高度専門士の称号が授与される。
高等課程(こうとうかてい、upper secondary course)は、前期中等教育(中学校など)の修了者に対して、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、または教養の向上を図ることを目的として組織的な教育を行なう[8]、ISCED-3Cレベルの課程[1]。
具体的には法第125条第2項に基づき、下記のいずれかに該当する者が対象となる。
高等課程を置く専修学校は「高等専修学校」と称することができる[21]。
修業年限が3年以上の課程を修了した者は専修学校の専門課程に進学することができる(前項「専門課程」を参照)。
さらにこれに加えて、文部科学省の定める基準を満たす課程を修了した者は高等学校卒業者と同様に大学入学資格を有する[注釈 17]。
一般課程(いっぱんかてい、公式英称: general course)は、高等課程または専門課程の教育以外の職業もしくは実際生活に必要な能力を育成し、または教養の向上を図ることを目的として組織的な教育を行なう[8]。法令上では特に入学資格を定めない課程であり、入学資格は各校が定める。専修学校の中で設置基準が教員資格などの点でもっとも緩い。ISCEDでは分類非該当[1]。
特に大学受験予備校の高卒生対象コースに多く見られ、「大学受験科」などと呼ばれている[注釈 18]。小学生対象の学習塾にも一般課程の専修学校がある[要出典]。
最近では、少子化による大学入試の易化、大学での職業教育の充実により、専修学校の専門課程は志願者集めに苦戦しているといわれている[22][23]。
実際には、高校卒業者の専修学校進学率は平成に入ってからも15~20%のあいだを推移しており、2016年度も16.2%であった。都道府県別にみると、新潟県が最も高く26.5%であった[24]。新潟県には県内で27校の専修学校(NSGカレッジリーグ)を運営しているNSGグループをはじめ、専修学校が多数立地している。
2022年の就職率は、専門課程[注釈 19]卒が94.7%、短期大学卒が97.8%、大学卒が95.8%であった[25][注釈 20]。
専修学校は修業年限は1年以上、昼間課程の年間授業時間は800時間以上、夜間課程の年間授業時間は450時間以上、生徒は常時40人以上でなければならない。専修学校と各種学校は類似しているが、各種学校の方が基準は緩い[注釈 21]。
専修学校の設置基準は学校教育法のほかにも文部科学省令である「専修学校設置基準[9]」などに詳しく定められている。
なお、上記で用いられている「時間」という用語は単位時間[注釈 24]を指す。このことは専修学校設置基準関連法令の趣旨および概要を通達した別文書「学校教育法の一部を改正する法律等の施行について[27]」に記されている。
専修学校には高等課程、専門課程、一般課程ごとに、専修学校の目的に応じた分野の区分ごとに「教育上の基本となる組織」を置くものとされ[28]、「教育上の基本となる組織」に1または2以上の学科を置くものとされている[29][注釈 25]。
複数の課程を置き、多数の分野をあつかう専修学校では「工業高等課程」、「商業実務高等課程」、「工業専門課程」、「商業実務専門課程」、「文化・教養一般課程」などの名称の「教育上の基本となる組織」が置かれ、その下に学科が置かれる。
専修学校の施設および設備などについては、「専修学校設置基準」の「第5章 施設及び設備等」などに定めがある。
項目 | 内容 |
---|---|
原則 | 校地および校舎の位置および環境は、教育上および保健衛生上適切なものでなければならない(第44条)。 |
(必ず)備えなければならないもの | 校舎等を保有するに必要な面積の校地、校舎(第45条第1項) |
目的に応じ、備えなければならないもの | 運動場、その他必要な施設の用地(第45条第2項) |
目的、生徒数または課程に応じ、備えなければならないもの | 教室[注釈 26]、教員室、事務室、その他必要な附帯施設(第46条第1項) 必要な種類および数の機械、器具、標本、図書、その他の設備(第49条) |
なるべく備えなければならないもの | 図書室、保健室、教員研究室等(第46条第2項) |
目的に応じ、確保しなければならないもの | 実習場、その他の必要な施設(第46条第3項) |
夜間において授業を行う専修学校が備えなければならないもの | 適当な照明設備(第50条) |
なお、専修学校は、特別の事情があり、かつ、教育上および安全上支障がない場合は他の学校などの施設および設備を使用することができる(第51条)。
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基本的には4月入学・3月卒業である。
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専修学校は学校教育法第1条に定められた「学校(一条校)」ではないため、以下の点で問題が発生する。
このため、現状の設置基準を満たした全ての専修学校を一条校に位置付けようとする運動もある[39]。
この動きを受けて文部科学省は、「専修学校の振興に関する検討会議」を設置し、同会議は2008年10月20日、一定の水準を満たす専修学校を一条校に位置付けることを重要課題に挙げた報告書案をまとめた[40]。その後、2008年11月に「社会環境の変化を踏まえた専修学校の今後の在り方について(報告)」がとりまとめられ、「新たな学校種に関しては、キャリア教育・職業教育[注釈 42]の在り方の全体像を議論する中で、重要な課題の一つとして、より総合的・多面的で専門的な検討を行い得る場である中央教育審議会において、議論を深めていくことが適当」とされた。
これを受けて中教審キャリア教育・職業教育特別部会では、「新しい学校種」についても全30回にわたり議論された。例えば第4回[41]において、寺田盛紀委員は以下のように意見を述べている[42]。
その後中教審は、平成23年1月31日の第74回総会で「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申)[43]をとりまとめた。その第4章第4節「職業実践的な教育に特化した枠組みについて」の中で、次のように述べている。
以上を踏まえ、具体的な構想[注釈 44]が示され、「今後、高等教育関係者や学習対象者、産業界、公共職業能力開発施設関係者を含む各界の意向等を踏まえて、新たな枠組み全般の具体化について、詳細な検討が進められることが適当である」とまとめている。
その後、若者の「社会的・職業的自立」や「学校から社会・職業への移行」を巡る経緯と現状のたまに政府・文部科学省と中央教育審議会は、実践的な職業教育や技能訓練を行う高等教育機関として「職業大学」を設置する方針を固めた。これは高校卒業後の進学や、社会人の専門知識の習得を想定している。学校は新設せず、希望する既存の大学などに職業大学へ転換してもらう考えである。政府の産業競争力会議で原案が示され、2016年5月30日、実践的な職業教育を行う新しい高等教育機関として「専門職業大学」(仮称)を制度化するよう文部科学大臣に答申した。2017年3月10日、職業教育を行う新たな高等教育機関として「専門職大学」及び「専門職短期大学」制度を創設する学校教育法の一部を改正する法律案を閣議決定した。この法律案は2017年5月24日に成立し、5月31日に法律第41号として公布され、2019年4月1日に施行された。
専門職大学は、「大学のうち、深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させることを目的とするもの」[44]と規定されている。なお通常の大学に対しては、「文部科学大臣の定めるところにより、大学を卒業した者に対し、学士の学位を授与するものとする」[45]と規定されている一方で、専門職大学に対しては、「文部科学大臣の定めるところにより、専門職大学を卒業した者(第87条の2第1項の規定によりその課程を前期課程及び後期課程に区分している専門職大学にあっては、前期課程を修了した者を含む)に対し、文部科学大臣の定める学位を授与するものとする」と規定されている[46]。
また専門職短期大学は、「(第108条)第2項の大学(短期大学)のうち、深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を育成することを目的とするもの」[47]と規定されている。なお通常の短期大学に対しては、「文部科学大臣の定めるところにより、短期大学を卒業した者に対し、短期大学士の学位を授与するものとする」[48]と規定されている一方で、専門職短期大学に対しては、「文部科学大臣の定めるところにより、専門職短期大学を卒業した者に対し、文部科学大臣の定める学位を授与するものとする」と規定されている[49]。
一方で、現状の設置基準を満たした全ての専修学校を一条校にしようとする場合、既存の一条校との兼ね合いから以下のような問題が生じることが懸念されている。
また法令上の制限はないものの、2つ以上の一条校の学生[注釈 52]になることを独自に禁止している大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校が特に私立学校に多いため、これまでのダブルスクールが場合によっては不可能となってしまうことも懸念されている。
フリーライターの安田水浩は、以下の理由で一条校化に疑問を呈している。そして、大学が専門学校化するのに対抗して専門学校が大学化してはならず、「してはたまるか」と言い切る姿勢、すなわち大学に真似のできない専門学校を目指すことが必要ではないかと結論づけている[54]。
ジャーナリストの恩田敏夫は以下のように指摘している[39]。
短期大学を運営する山内学園および郡山開成学園は、第5回の「専修学校の振興に関する検討会議」において以下のように指摘したうえで、新専門学校については高等教育全体、新高等専修学校については中等教育全体の議論のなかで考えるべきと結論づけている[58]。
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