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文字列で始めから読んでも終わりから読んでも文字又は音節の順が変わらず、意味の通るもの ウィキペディアから
回文(かいぶん)とは、始めから(通常通り)読んだ場合と終わりから(通常と逆に)読んだ場合とで文字ないし音節の出現する順番が変わらず、なおかつ、言語としてある程度意味が通る文字列のことで、言葉遊びの一種である。英語では palindrome ([ˈpælɨndroʊm] パリンドローム)という。
また、落款では右上から左上に行き、左下へ下がって右下へもどる、つまり右上から反時計回りで読む読み方を回文という。
西暦79年にヴェスヴィオ火山の噴火によって滅亡したヘルクラネウムの街の遺跡に「Sator Arepo Tenet Opera Rotas」という回文が刻まれている事から、回文の起源は少なくとも西暦79年またはそれ以前まで遡ることができる。
中国では前秦の時代から既に詩体の一つとして行われていた[1]。有名なものとしては蘇軾の江南本織錦図回文原作三首(七言絶句)が知られる[1]。
英語では「Madam, I'm Adam」(マダム、私はアダムです)のような例が知られている。
日本でも「新聞紙」「磨かぬ鏡」「竹藪焼けた」「ダンスが済んだ」「なるとを取るな」「私負けましたわ」など、言葉遊びとして古くからいくつもの例がある。日本では11世紀頃から始まったとされる[1]。小瀬渺美は安政期に新潟の俳人が刊行した回文俳諧集を挙げて、当時から日本で回文の文化が普及していた可能性を指摘している[2]。
日本語の著名な古典的回文として以下のものがある。いずれも五七五七七の短歌律形式をとっている。
- 長き夜の 遠の睡りの 皆目醒め 波乗り船の 音の良きかな
- むら草に くさの名はもし 具はらは なそしも花の 咲くに咲くらむ[3]
- 惜しめとも ついにいつもと 行春は 悔ゆともついに いつもとめしを[3]
回文は前から読んでも後ろから読んでも意味が同じものだが、これに対し「gateman」(後ろから読むと「nametag」)のように前から読んだ場合と後ろから読んだ場合で意味が変わるものを semordnilap(シモードニラップ)と呼ぶ。これは palindromes(=回文)を後ろから読んで作られた造語で、「semordnilap」という単語自身が semordnilap の例になっている。この言葉は論理学者の Dmitri A. Borgmann によって作られたとされている。これに似た日本語の言葉遊びにたいこめがある。
他の多くの言葉遊びなどと同様、回文の規則も詳細はその言語の運用の影響を受け揺れがある。日本語の場合、まず音素に対応しない文字である仮名を基本的な単位としていることが挙げられる。また俳句の「五・七・五」などの単位である「拍」とは異なり、拗音は独立している。よってそもそも正確には「逆に読む」のではなく「逆に(仮名)文字を並べる」と定義すべきである。一般に濁音、半濁音、促音、拗音は清音と同一として考えることが多い。すなわち、「は行」と「ば行」と「ぱ行」、「つ」と「っ」、「や」と「ゃ」などは逆にした際に入れ替わっても問題はないとするが(これらは古い仮名の記法には無かった点でもある)、一致させた作品もある(拗音や促音の扱いは2通りありうる)。回文作家の中にはこれにこだわる者もいる。
日本語の回文といえばふつう、かな表記の回文をさす。ローマ字表記日本語の回文(例えば「あかさか」は回文ではないが、akasaka がそうで、テープで逆回してもほぼ同じに聞こえる)については、高木茂男 (1976). 数学遊園地. 講談社. ISBN 9784061178915[4]に例が見える。漢字表記の回文については、文章の回文は日本語の文章として成立しないので作成がかなり困難であるが、「山本山」のキャッチコピーのように単語(特に固有名詞)で回文とみなすこともある。
1661年(寛文元年)に刊行された『紙屋川水車集』には以下の41文字の回文があり、最長の日本語回文とされていた。現在では1000文字以上の回文も作られている。
- はれけき先の日 あのつま香をもとめむ 色白い梅(むめ)ども 岡松のあひのき 咲きければ
蟹行カノンは、音譜を前から読んだものと後ろから読んだものとを同時に演奏するものである。J.S.バッハの「音楽の捧げもの」にその例がある。
ハイドンの交響曲第47番『パリンドローム』の第3楽章は、逆から読んでも同じ楽譜になる。
それにちなんで、ダグラス・ホフスタッターは著書『ゲーデル、エッシャー、バッハ』の中で回文的な会話からなる作品を作っている。亀とアキレスの会話が続き、途中で蟹がひと喋りして出て行くが、その後の会話が前半のアキレスと亀の立場を変えて逆にたどるように構成されている。
幕末の仙台に一千句以上の回文的な和歌・俳諧を創作した廻文師・仙代庵(細屋勘左衛門・1796年-1869年)がいる。
分子生物学でも回文またはパリンドロームという用語を用いる。これはDNAまたはRNAの配列に関して、二重鎖の一方を読んだ場合と、もう一方(相補鎖)を逆向きに読んだ場合が同じになる構造をいう。制限酵素で切られるターゲット配列はたいてい小規模の回文構造である。 また大規模な回文構造はヘアピン状の立体構造をとりうるが、これは遺伝子の調節配列などに多くの例がみられる。
(なんらかの位取り記数法で記した場合に、)回文数とは、14641のように逆に数字を並べても同じ数になる数である。同様に回文素数とはそのような素数のことである。
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