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ラブホテルとは主に、休憩や宿泊、入浴に適した最低限の設備や部屋を持ち、予約なしで訪問して休憩滞在もしくは宿泊できる建物であり、利用客のほとんどが恋愛関係のカップルである施設を指す。ラブホ、ファッションホテルとも呼ぶ[1][2]。
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日本では風俗営業法の許可を受けて営業する必要があり、全国のラブホテルの軒数は2023年度時点で4,724軒であり、ここ5年では毎年110件程度減少している。[3]。
18歳未満の未成年は利用することができず、施設の入り口等に未成年が立ち入りしないように立ち入り禁止を示すマークが掲示されている[4]。
海外でいうモーテルだが、豪華な設備や華美な装飾等、日本独自といっていい進化を遂げた施設でもある[5]。
「ラブホテル」の別称として、ファッションホテル、カップルズホテル、ハッピーホテル、アミューズメントホテル、レジャーホテル、モーテル、ブティックホテルなどがあるが、レジャーホテル、ブティックホテル、モーテルなどの本来の意は性行為に限定した宿泊施設ではない。そのため、ブティックホテルはラブホテルの代用語としては使われなくなった[6]。
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ただ宿泊だけを目的とした施設ではないので、客に対して様々なサービスがある。
ウォーターベッド(マットレスに水が充填されている)が設置されていたり[12]、また電飾・ミラーボール、その他通常のホテルではまず見られないコンセプトで内装が作られている、などといった所から、SM用具[13]などの設備が用意されていたり、コスプレ用コスチュームをレンタルしたり[14]、と言ったサービスもある。またマッサージチェアや[15]、落書き帳[16]などが設置されている例も見られる。
部屋にある精算機や、フロントと各部屋を繋ぐエアシューターによって、部屋にいながら会計ができるホテルもある。客が部屋に入るとフロントからの遠隔操作で部屋の扉が施錠され、部屋内の精算機で料金を支払うか、電話でチェックアウトを告げるまで開錠されず出られないようになっている店もある。これが仇となり、火災の際に部屋から出られず客が死亡したケースもある[17]。
なお、日本以外のアジア圏各国と異なり、日本では一般の旅館業法ホテル(ホステル、ドミトリー等除く)でもテレビ等でアダルトチャンネルを普通に視聴することが可能であり(但し有料であることが多い)、これはラブホテル特有と言う訳ではない。
回転ベッドとは機械的操作によってマットレスを左右に回転させることができる円状のベッドである。
1960年末頃、大阪で登場したと見られる[注 1]回転ベッドに代表される電動ベッドは、目新しさを好む客に受け、様々な趣向を凝らしたものが登場した[18]。
しかし回転ベッドは、1985年の新風俗営業法によって「政令で定める構造又は設備」の一つとなった。そのため回転ベッドを設置するホテルは「店舗型性風俗特殊営業」となり、そのようなラブホテルの新設が1985年以降できなくなってしまっている。現在、その姿を見ることはほとんどなくなったが、今でも稼働中の回転ベッドが1985年以前から営業を行っている各地の古いホテルに存在するとみられる[注 2]。また、インフルエンサーが紹介した回転ベッド付きのホテルがSNSで話題となり、女子会やコスプレイヤーの撮影イベントなどで人気となるといった新たな傾向も見られる[19]。
回転ベッド自体は主に個人向けの設備として現在も新製品が製造・販売されており、東京ビッグサイトで行なわれるラブホテル業界向けの展示会にも出品されている。発案者は、電気工事を生業としていた「加藤雄二」という説や、名古屋で健康器具メーカーを経営する「奥村武司」、設計家の「早川文彦」など、諸説ある[18]。
リビアの最高指導者であったカダフィ大佐は、日本のラブホテルで使われている回転ベッドを業者から輸入し愛用していた[20]。これはトリポリにあるリビア大統領官邸が米軍に爆撃された時、各国の報道陣に現場映像を公開したとき明らかとなった。
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1980年代前後、ラブホテルにおける殺人事件が多発したため、警察の指導により監視カメラが設置されていることが多い。これは顧客名簿に記入しないことに対する代替処置でもある。
風営法届出のラブホテルは18歳未満は入店禁止であるため、18歳未満の子連れである家族単位での利用は認められない。
風俗営業法[22]は、「店舗型性風俗特殊営業」の一つとして「専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業」(第2条第6項4号)と規定している。
さらに、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令」[23](第3条)や「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則」[24](第4条)で「施設、構造、設備」についての基準を規定している。
具体的には以下のとおり。
そのため世間からラブホテルと考えられる内容と必ずしも合致せず、法に該当しないラブホテルも存在する。
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地域別に見たラブホテルの特徴は以下の通りである[29]。
ラブホテルに関する学術研究は数が少なく、包括的な論考は少ない。
社会学の分野では、比較文化論の見地からラブホテルを考察した研究が存在する[30]。
この研究を行ったキム・イッキョンは、5年間で1000室超[31]のラブホテルを調査しており、後に『スポーツニッポン』紙上に「ラブホ大学院」と題した連載を持つに至る。男と女の性愛学〜格差社会の最新版〜「ラブホ&セックス進化論」を週刊ポスト2009年6月26日号に寄稿するなど風俗ライター的な活動を行っている。
日本国には2005年現在約3万軒のラブホテルがあり、1軒あたりの平均客室は、約20室。一部屋につき1日2、3組の客が利用するというデータ[32]を元に計算すると、1日の全国の利用者は、約200万人に達する。利用に便利な日本全国のラブホテル等を紹介したホテルポータルサイトや、ホテルを紹介した雑誌などもある。
起源は、江戸時代茶屋の奥に布団が敷かれた「出会茶屋(色茶屋)」や、河原の遊覧船で行為する「川舟」と言われている[33][18]。
明治時代に鉄道が開通すると、新橋界隈に待合茶屋(待合)が次々と開業し、高級な待合は政財界人の打ち合わせや芸妓遊びなどに利用された。対して安価な待合が現在のラブホテルの原型であるといわれている[34]。
第二次世界大戦後は戦災で家を失くした者も多かったことから青姦が流行し、特に皇居周辺や大阪城周辺で青姦が多発した[37]。
住宅事情も悪く、狭い家屋で子供の目を気にする夫婦も多かったことから、本来労働者の宿泊所として経営していた和室の「連れ込み宿」(連れ込み旅館、アベックホテル、連れ込みホテル)が流行するようになる。宿泊客と異なり来客の回転率が高かったこと、また銭湯もない時代に「風呂あります」と掲げたことから宿は大繁盛した[37]。
1957年(昭和32年)、売春防止法が制定されると、遊郭が廃止されたことからその人気は益々拍車をかけた[37]。廃業を強いられた遊女屋が転業するケースが多かったが、活況ぶりを見て一般の住居を改装するケースもあったという。1961年、都内の連れ込み旅館の件数はおよそ2700件に上った[35]。
宿の名前は、「○○旅荘」「○○家」といった一般の旅館と区別のつかないものが一般的であり[38]、佇まいも旅館との差異はほぼ無く、女中がお茶出しをしていた。
1963年(昭和38年)には、アメリカから帰国した中島孝司氏によってモータリゼーションの発展に伴い、石川県加賀市に日本初のモーテルといわれる「モテル北陸」が開業。当初は長距離ドライバーやドライブ帰りの家族客を当て込んでいたが、当時の住宅事情もあってセックスを目的としたアベックが殺到。需要があるならとそちらに経営方針を転換、現在のラブホテルにも採用されているシステムを多く生み出した[注 5]。鉄道駅界隈のみであった連れ込み宿と異なり、カップルが知人に会うリスクも回避できる上、地価の安い山の中に建設できること、またモーテルという欧米のお洒落なイメージが人気を博し、地方にも続々と拡散[39]。1968年には1413件まで拡大した[40]。
1960年代後半からデザイナー・亜美伊新等による[41]豪華絢爛でユニークな「仕掛けホテル」として、派手なネオン、鏡張りの内装、回転ベッドや透明風呂などセクシャルなアイテムが備えられたホテルが見られる様になった[42]。特に東京の千駄ヶ谷でそのような施設が多く見受けられた[36]。
1970年代には「ラブホテル」という呼び方が一般的となり[43][注 6]、“ラブホテル=徒歩で入るホテル、モーテル=車で入るホテル”という線引きで仕切られた。ホテル名は、「エリザベス」「ロイヤル」「皇帝」等と言った西洋の王族をイメージする屋号が流行した。また1970年(昭和45年)の大阪万博を機に、「アメリカン」「ニューヨーク」「ナイアガラ」といった外国の地名を模した屋号も増加した[38]。
1973年(昭和48年)には、おとぎ話の城のような外観、男女がゴンドラに乗りお風呂に入るという「ゴンドラバス」等[44]豪華な設備の目黒エンペラー[注 7]が開業[35]となり、全国にお城型のラブホテルが増加した。特に地方では存在感を目立たせなくては注目され難かったことから、派手なネオンサインなど人目を引く外観のホテルが特徴であった[39]。
70年代前半までアメニティグッズは男性用のみであったが、70年代後半に出勤前にホテルでセックスしてもヘアセットが崩れないという理由から、シャワーキャップがバーのホステスに好評を博し、女性用のアメニティグッズが増加した[45][46]。
11PMやトゥナイトと言ったテレビ番組、平凡パンチや週刊プレイボーイと言った週刊誌など、マスメディアで過激な性情報が取沙汰されたこと[47]から、ラブホテルは1980年代にはパチンコ店と並び、「作れば儲かる」という千客万来の時代が訪れた[48]。しかし1985年(昭和60年)には、「18歳未満の者の性非行の場に供されることが極めて多い」という想像から制定された改正風営法や、風紀の悪化を懸念した自治体の条例により、このような形態でラブホテルを新規開業することは非常に申請手続きが煩雑になった。
そこで手続きが簡単なビジネスホテルとして建築してから、その後に改装してラブホテルとして営業するホテルが増加する。これらは風俗営業法[22]により届け出されている正規のラブホテルと分けて偽装ラブホテル(違法ラブホテル)と言われている[注 8]。
さらには、男女雇用機会均等法の改正を発端に女性の権利が向上し、ホテル選びの主導権が女性に移り始めたこと、ラブホテルがブティックホテルと呼ばれるようになる等、都会的なシンプル様式に需要が伸びたこと、建築費が安く済むことから、外観的に一般のホテルと大差ないラブホテルが増加した[47]。ホテル選びの主権が女性に移ろいだことによりホテルの屋号は海外旅行で人気の高い「パリ」、「フィレンツェ」、また女性の結婚願望を意識した「チャペル」や愛らしい名称等女性受けの良い語呂へと変化した[38]。
1990年代、ぴあ等の若者向け情報誌でもラブホテルが紹介され[49]、カラオケ、エステといった進化したサービスが付随されるも、90年代後半からラブホテルは衰退に入る[48]。
これは、1970年に260万人いた二十歳の人口が半分以下となった少子高齢化を主因とする。ほかに、草食系男子の流行[50]等、恋人のいない若者の増加傾向、さらに娯楽が多様化し相対的にラブホテルのバリューの低下がある。加えて一人っ子家庭や共働きの両親の増加、子供が自宅に恋人を招いてセックスすることに対して寛容になった家族の増加などの環境変化も一因とされている[48]。
ビジネスホテル、旅館のカップル向けサービスとの競争もある。ビジネスホテルではビジネス利用を謳いながらダブルベッド・クリスマスやバレンタインのプラン・自動精算機等を導入し、旅館では個室露天風呂、全室離れ、入口のわかりにくい隠れ家風、日帰りプランといったカップル向けサービスを採用しラブホテルに対抗している[51]。
高齢者[52]、中高年夫婦[53]、女性の利用が期待されており、女子会利用を掲げるホテル[54]も増加している。
ラブホテルをひとりで利用する、いわゆる「ひとりラブホ」の利用も増えている。利用の目的としては、大きな室内や風呂、そして遮音性に優れることから、通常のビジネスホテルの代替利用[注 9]で宿泊するケースのほか、夜勤者が昼間に仮眠をとるような場合、そして、単にひとりで閉鎖的空間で過ごしたい、といった理由があげられている。ビジネス利用客が増えるのはホテルとしても歓迎する。このため、インターネット予約や、さらに積極的にビジネス利用を前提にした設備を打ち出しているラブホテルもある[注 10]。ひとり利用歓迎、と明示しているホテルも増えつつある。
2011年1月に施行された改正風俗営業法により、それまで旅館業法にもとづき営業されていた全国の偽装ラブホテルのうちおよそ2700軒が、風営法上の移行申請手続きを行い正規のラブホテルとなった[55]。
2016年、政府はラブホテルの一般ホテルへの改装を条件付きで後押しする方針を固めた[57]。訪日外国人旅行者の増加を受け、東京や大阪周辺の一般ホテルの需給が逼迫するようになったため、旅館業法上の条件を満たすようにラブホテルを改装し、宿泊客の受け皿とする目的が指摘されている[58]。
日本の旅行会社はラブホテルとの契約に及び腰な状況が続いていたが、先入観に囚われない海外のオンライン旅行会社に登録し、世界から集客を行うラブホテルも増加[58]、また2017年、楽天トラベルが国内の旅行サイトでは初めてラブホテルの掲載を開始[59]、2019年にLINEトラベルjpがラブホテルの掲載を開始した[60]。
イギリス国内には少なく、ブライトンにはラブホテルを冠するホテルはあるが、ホテルスタッフによるホスト、シェフによる料理の提供がなされ、日本のそれとは異なる。
韓国において、日本のビジネスホテルにあたる中価格帯のホテルが極めて少ない為、ラブホテルを外国人観光客も含め、一般旅行者が利用する場合がある。価格の割りに設備がよいことから外国人観光客に人気のホテルもある[注 11]。韓国には、いわゆる日本式ラブホテルから、韓国独自の「荘旅館」「旅館」などが存在する[注 12]。ホテルによっては、宿泊者の多くが旅行者というところもあり、日本のようにすべてをラブホテルとして画一的に線引きするのは難しい。ただし、ラブホテルには必ずTVチャンネルにアダルト放送があるので、それが一般のホテルとの違いとなっている。また一部地域において、住宅団地内に、韓国の商習慣にのっとりラブホテルが密集し、近隣住民とトラブルになっている例もある。
2005年のAPEC釜山首脳会議や2010年から始まったF1韓国グランプリでは、会場周辺のホテル不足が深刻化し、取材に訪れた各国記者がラブホテルに宿泊させられる事態となった。2018年の平昌オリンピックでは、前年から既に価格が高騰しており、大会期間中は通常価格の8倍近く、最高で一泊70万ウォンのモーテルも現れている[61]。
台湾では、モーテル(モーテル)がラブホテル目的として利用されている。ただし、一般旅行者の利用もある。
また、商務旅館(ビジネスホテル)でもラブホテル兼業の店舗が多く、部屋にはコンドームが用意されていたり、テレビチャンネルにアダルト放送が入っている。ブティックホテルと銘打つホテルも外国客向け予約サイトに通常のホテルとしてリストアップされるがラブホテルを兼業している。
名称は日本と同様ラブホテルで、ブラジル・ラブホテル協会 (Brazilian Association of Love Hotels, ABM) という組織も存在する。
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