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西日本鉄道の特急型電車 ウィキペディアから
西鉄8000形電車(にしてつ8000けいでんしゃ)は、主に西日本鉄道(西鉄)天神大牟田線用の特急形車両として使用されていた電車である。
西鉄8000形電車 | |
---|---|
8000形 | |
基本情報 | |
運用者 | 西日本鉄道 |
製造所 | 川崎重工業 |
製造年 | 1989年 |
製造数 | 6編成36両 |
運用開始 | 1989年3月10日 |
引退 | 2017年10月15日 |
投入先 | 天神大牟田線 |
主要諸元 | |
編成 |
6両固定 (Tc-M-M-M-M-Tc) |
軌間 | 1,435 mm |
電気方式 |
直流1,500V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 110 km/h |
起動加速度 | 2.5 km/h/s |
減速度(常用) | 3.5 km/h/s |
減速度(非常) | 4.0 km/h/s |
編成定員 | 750人(座席339人) |
車両定員 |
両端車116人(座席50人) 中間2・4・5号車130人(座席60人) 中間3号車128人(座席59人) |
自重 |
先頭車29.3t 中間2・4号車37.2t 中間3号車35.6t 中間5号車35.5t |
全長 | 19,500 mm |
全幅 | 2,716 mm |
全高 |
4,080 mm パンタグラフ搭載車 4,170 mm |
車体 | 普通鋼 |
主電動機 | 三菱MB-3189-B |
主電動機出力 | 135 kW |
駆動方式 | WN駆動方式 |
歯車比 | 83:18 (4.61) |
編成出力 | 2,160 kW |
制御方式 | 抵抗制御 |
制御装置 | 三菱電機 ABFM-188-15MDHD |
制動装置 |
発電制動併用電気指令式電磁直通空気制動 三菱MBS(先頭車)/MBS-D(中間車) |
保安装置 | 西鉄型ATS |
大牟田線(当時)の西鉄特急には、1973年(昭和48年)以来2000形が使用されていたが、1987年(昭和62年)に実施された国鉄分割民営化により九州旅客鉄道(JR九州)が発足し、大牟田線と並行する鹿児島本線の列車増発や新駅設置など積極的な営業政策が進められたため、西鉄としては競争力の強化が課題となっていた。また、福岡市では1989年3月からアジア太平洋博覧会を開催することが決定しており、これを機会として製造から15年が経過した2000形に代わる新形式の特急形車両が製造されることとなった[1]。
西鉄の歴代特急車は、初代1000形(1300型)・2代目2000形に対して3代目である本形式が8000形と命名されたのは、登場前年の1988年(昭和63年)が前身の九州電気軌道時代を含む西鉄創業80周年だったことに由来する[2]。
6両編成6本(36両)が製造された[3]。1989年2月に8011F・8021F・8031F(F=編成)が落成し、続いて8041F・8051F・8061Fが同年4月に落成した[4]。
普通鋼製で、両端に両開き式の乗降扉を設けた片側2扉構造である。本形式では2000形と異なり、先頭車前部が前面展望を考慮した設計となっており、前面運転室と乗降扉の間に眺望性を良くした区画を設けている。
前面は「く」の字形に傾斜させた非貫通形とし、前面窓は左右対称の大形曲面ガラスとして視界を確保している。前面下部に丸型の前照灯・尾灯を配置し、前面上部の窓の内側と側面中央上部に種別・行先表示器を設けている。前面運転室と乗降扉の間の窓は高さ1,050mm×幅2,660mmの大形固定窓となっており、他の窓に比べ高さ・幅ともに大きく、当時の鉄道車両としては最大級である。他の窓も2列ごとの固定窓としており2000形に比べ眺望性が向上している。なお、扉寄りの窓1枚はどの位置でも止められるバランサ付きの1枚下降窓となっている。また、先頭車の運転台側の扉は後方にオフセットされている。
車体塗装は、白色(ケープアイボリー)地に窓周りと車体裾が深みのある赤色(カーディナルレッド)としている。
なお、本形式では、全編成とも転落防止幌の取り付け改造は行われていない。
本形式は特急形車両ではあるが、通勤・通学利用も考慮した設計である。乗降扉間の座席は900mm間隔で配置されたバケット式でワインレッドのチェック柄モケットを張った転換クロスシートとなっているが、乗降扉寄りの座席は固定式で、車端部連結面寄りの座席は青色モケットのロングシートとしている。カーテンは横引き式とし、開閉可能な窓の部分にはロールアップカーテン(上から引き出すカーテン)も設けている。連結面寄りの扉周りとロングシート部分には三角形のつり革を設置している。
冷房装置は天井形集中分散式になっており、ラインデリアによる冷風撹拌として車内温度の均一化を図っている。2001年(平成13年)から天神大牟田線で弱冷房車が導入されたことにより、本形式では下り方先頭車(番号末尾1)が弱冷房車に設定されており、当該車両には弱冷房車を示すステッカーが貼付された。
大牟田方から3両目の車両(番号末尾3)連結部付近にはカード式の公衆電話を設けた。電話周囲は防音のため客室との間に仕切りが設けられており、この関係で定員が2名(座席1名)少なくなっている。通話料金が高額なこともあり、設置当初から利用者が少なく、電光案内装置などで宣伝したが[5][注 1]、その後の携帯電話の普及もあり、電話は2000年(平成12年)4月から2001年11月にかけて施工された重要部検査の際に順次撤去された。
落成後まもなく車内の貫通路上部と運転室出入口上部にLED式の情報案内装置を設置した。この案内装置は次停車駅の他、営業案内も表示する。また自動車内放送装置も設置されている。
特急の車内チャイムは、西鉄独自のものといっていい、「E」と「C#」の2打音が使われてきたが、8000系導入後は到着案内に以下のような駅別に異なったチャイムを使用していた。アーティストは福岡県出身者または福岡県に所縁のある人物となっている。
その後、一旦先述の2打音のみに戻されたが、再び車内チャイムが使われた。
2015年以降、外国語案内を加えた放送更新後は車内チャイムを使用していない。
2000形と異なり、一般的な左側配置の運転席となった(右側には方向幕設定機が埋め込まれている)。運転装置は西鉄初のT型ワンハンドルマスコンとしている。
警笛は従来の空気式のものの他、電子式の警笛も併設された。本形式以降の西鉄の新形式車両はいずれも空気式と電子式の警笛を併設している。
5000形とほぼ同一で、台車は西鉄初の車体連結のダイヤフラム型空気ばねを採用し、軸箱支持は円筒ゴム軸箱支持方式としたKW-60A形(電動車)およびKW-61A形(制御車)が採用されている。
ブレーキは西鉄初の発電制動併用電気指令式電磁直通空気制動が採用されている。
制御方式は旧来の抵抗制御としている。導入時には抵抗制御に代わる制御方式の導入が検討されたが、結局見送られた[6]。主な理由としては以下の点が挙げられる。
車両別の設置機器については下記「編成」を参照。
← 大牟田
|
竣工日 | LED案内表示器装着改造 | 観光列車化改造 | 運用終了 | 廃車 | |||||
8011 | 8012 | 8013 | 8014 | 8015 | 8016 | 1989年2月7日 | 1989年12月5日 | 2016年10月2日 | 2016年12月14日 | |
8021 | 8022 | 8023 | 8024 | 8025 | 8026 | 1989年2月13日 | 1989年11月27日 | 2016年7月10日 | 2016年9月21日 | |
8031 | 8032 | 8033 | 8034 | 8035 | 8036 | 1989年2月15日 | 1990年9月6日 | 2015年9月27日 | 2015年12月22日 | |
8041 | 8042 | 8043 | 8044 | 8045 | 8046 | 1989年4月1日 | 1990年10月1日 | 2015年4月3日 | 2015年7月3日 | |
8051 | 8052 | 8053 | 8054 | 8055 | 8056 | 1989年4月17日 | 1990年10月25日 | 2014年3月19日 旅人化 | 2017年9月16日(旅人としての運用) 2017年10月15日(完全運用) |
2018年1月12日 |
8061 | 8062 | 8063 | 8064 | 8065 | 8066 | 1989年4月20日 | 1990年11月19日 | 2015年10月4日 水都化 | 2017年7月22日 | 2017年10月14日 |
両端2両が制御車(ク8000形)、中間4両が電動車(モ8000形)のMT比4M2T編成となっている。
8051編成は、2014年(平成26年)に太宰府観光活性化を目的として約3,500万円をかけて観光列車「旅人(たびと)」に改造された。主な改造内容は次のとおり。
「旅人」の愛称は、奈良時代に大宰帥として大宰府で多くの和歌を詠んだとされる歌人・大伴旅人にちなんでおり、第39代太宰府天満宮宮司の西高辻信良により命名された。
同年3月22日のダイヤ改正に際し運行を開始。9時台始発の福岡(天神)発太宰府行下り急行の運用に就いた後、太宰府線内の普通列車として夕ラッシュ時前まで同線を往復する。2017年8月26日のダイヤ改正により、これらに加えて平日朝夕の福岡(天神) - 二日市・筑紫・小郡間の普通列車にも使用されるようになった(大宰府観光列車「旅人 -たびと-」)。
2017年9月16日に運行を終了し、3000形の新編成に代替された[9]。小郡発福岡(天神)行き急行J100列車としての運行が「旅人」としての最後の営業運行となり、福岡(天神)駅で引継式が行われた[10]。
8061編成は、2015年(平成27年)に約3,600万円をかけて柳川観光列車「水都」に改造された[11]。主な改造内容は次のとおり。
「水都」は柳川市長の金子健次により命名された。美しい水の都・柳川のほか、博多弁の「好いとう」にも掛けている。
同年10月4日に運行開始した[12][13]。改造前と同様、主に特急に使用されており、運用は一定ではないが、毎月当月分の運用予定が発表されていた。
2017年(平成29年)に老朽化により3000形の新編成に代替された。同年7月21日限りで特急運用を終了、翌7月22日の筑紫発福岡(天神)行き普通4100列車が最後の営業運行となった。福岡(天神)到着後、3000形「水都」と並べて引継式を行い、式終了後は筑紫車両基地へ回送された。
主として特急に使用されていたが、転換クロスシート主体の座席構造を有し、編成は6両固定、また乗降用扉は片側2ヶ所で、通勤ラッシュ時の輸送には不向きな構造であるため、平日朝夕の混雑時間帯は太宰府線や天神大牟田線の普通など比較的混雑度の低い列車の運用に就き、その時間帯はロングシートの5000形などの他形式が特急運用に充当された。また、年末年始やゴールデンウィークなどの多客期は混雑緩和のため本形式に代わり3000形や5000形、6000形・6050形の7両編成が終日特急運用に入ることがあった。それらの時期・時間帯を除く日中の特急運用は一部列車を除き本形式が使用されていたが、検査や故障などで工場に入場している編成が多い場合には主に5000形が特急に使用された。特急運用との関係で、極わずかであるが急行列車にも充当されていた。
本形式は特急運用主体のため、他形式より走行距離が長いことから、西鉄の車両の中では唯一重要部検査サイクルの「60万km以内」に該当し、平均検査周期は前回の検査出場から2年5ヶ月から2年10ヶ月の範囲で入場していた。8年周期の全般検査では次回の全般検査までの間に2回重要部検査を受けていることになる。また、車体の検査票はかつて白地に白文字表記だったが、2002年(平成14年)7月から2004年(平成16年)4月にかけて実施された全般検査の際には、順次赤地に白文字表記へと改められた。
本形式は老朽化を理由に2015年度より3000形に順次代替されることになり、8031・8041編成が2015年度に、8011・8021編成が2016年度にそれぞれ運用離脱し、観光列車に改造されなかった4編成が消滅した。
観光列車に改造された2編成については、8061編成「水都」が2017年7月22日をもって運行を終了し、3000形改造による2代目「水都」に代替された。「水都」の運用離脱により8000形の特急運用が消滅した。
最後に残った8051編成「旅人」は2017年9月16日をもって「旅人」としての運用を終了し、3000形改造による2代目「旅人」に代替された。その後、ラッピングや車内の装飾を撤去し、外観・車内をほぼ原形に戻したうえで[14][注 2]、同年10月7日から15日にかけて引退イベントが行われた[15]。10月7日に事前応募者を対象に筑紫車両基地で撮影会と部品オークションを行い、翌10月8日から10月13日まで特急を中心に運用し、10月14日の急行K081列車を最後に一般営業運行を終了、10月15日に福岡(天神)→花畑→筑紫のルートで事前応募者を対象にしたラストランツアーを実施したあと、筑紫車両基地に入庫し「にしてつ電車まつり」で車両展示された[15][16]。
引退後は全車両が解体されており現存しない。
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