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衛生管理者(えいせいかんりしゃ、英: Health Supervisor)とは、労働安全衛生法において定められている、労働環境の衛生的改善と疾病の予防処置等を担当し、事業場の衛生全般の管理をする者、またはその資格(国家資格)である。一定規模以上の事業場については、衛生管理者免許等の資格を有する者からの選任が義務付けられている。
衛生管理者 | |
---|---|
英名 | Health Supervisor |
実施国 | 日本 |
資格種類 | 国家資格 |
分野 | 保健・衛生 |
試験形式 | マークシート・講習 |
認定団体 | 厚生労働省 |
認定開始年月日 | 1947年(昭和22年) |
等級・称号 | 第一種・第二種・衛生工学 |
根拠法令 | 労働安全衛生法 |
公式サイト | https://www.exam.or.jp/ |
特記事項 | 実施は安全衛生技術試験協会が担当 |
ウィキプロジェクト 資格 ウィキポータル 資格 |
事業場の衛生管理においては医師だけで全ての業務を行うことは困難であり、指導員のような者が必要と考えられ、日本独自の制度として発足した。1947年制定の労働基準法、旧・労働安全衛生規則に規定された。
以降、伝染病の流行、職業性疾患への取り組み、特殊健康診断、作業環境測定法の制定、女子労働基準規則の制定、喫煙対策、過重労働による健康障害防止などの時代背景をもとに、何度か規定が改定され、現在に至っている。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
衛生管理者は以下のいずれかの資格を有する者の中から選任しなければならない(第12条、規則第10条)。
衛生管理者は原則としてその事業場に専属することとされる。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、当該労働衛生コンサルタントのうちの1人については専属の者である必要はない(規則第7条1項2号、昭和61年6月6日基発第333号)。
事業者は、衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から[2]14日以内に衛生管理者を選任しなければならず(規則第7条1項1号)、選任したときは、遅滞なく所定の様式により所轄労働基準監督署長に届出なければならない(規則第7条2項)。所轄労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、衛生管理者の増員または解任を命ずることができる(第12条2項)。
事業者は、衛生管理者を選任できないことについてやむをえない事由があり所轄都道府県労働局長の許可を得たときは、規則第7条1項各号の規定によらずして衛生管理者を選任することができるが(規則第8条)、許可の実績は年数件程度である[注 1]。都道府県労働局長は、必要であると認めるときは、地方労働審議会の議を経て、衛生管理者を選任することを要しない2以上の事業場で、同一の地域にあるものについて、共同して衛生管理者を選任すべきことを勧告することができる(規則第9条)。
なお派遣労働者等、「専属」には当たらない者であっても、「その者が職務を遂行しようとする事業場に専ら常駐し、一定期間継続して職務に当たることが明らかにされている」「衛生管理者として行わせる具体的業務及び必要な権限の付与並びに労働者の個人情報の保護に関する事項を契約において明記する」ことを要件に衛生管理者として選任することができる(平成18年3月31日基発第0331004号。ただし、下記「第二種衛生管理者免許保有者を選任出来ない職種」を除く)。
すべての業種において、常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任が義務付けられている(第12条、施行令第4条)。同様に、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場においては、安全衛生推進者もしくは衛生推進者の選任が必要である(第12条の2)。
常時使用する労働者数が50人以上200人以下の場合は、衛生管理者は1人以上選任しなければならない。200人を超え500人以下では衛生管理者は2人以上、以降、500人を超えると3人、1000人を超えると4人、2000人を超えると5人、3000人を超えると6人以上の衛生管理者を選任しなければならない(規則第7条1項4号)[4]。
但し、労働安全衛生法は、船員法の適用を受ける船員については、適用除外となっているため(第115条)、船員のみを使用する事業場においては衛生管理者を置く義務はない(その代わりに船員法による「船舶衛生管理者」の資格が存在する)。なお、同条において、鉱山保安法第2条第2項及び第4項の規定による鉱山における保安に関しては労働安全衛生法が適用されないが、衛生に関する部分は鉱山における保安には含まれないため、衛生管理者の選任については当然に適用がある。
また、国家公務員の事業場(つまり、国の官公署)については、国家公務員法附則第16条において、労働安全衛生法の適用を除外しているため、衛生管理者を置く義務はない(ただし、地方公務員の事業場においては、地方公務員法に適用除外の規定がないため、衛生管理者を置かなければならないので注意)。
業種 | 衛生工学 | 第一種 | 第二種 |
---|---|---|---|
一定規模以上の有害業務事業場 | ○ | △[注 2] | × |
工業的職種の事業場 | ○ | ○ | × |
上記以外の事業場 | ○ | ○ | ○ |
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気・ガス・水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業(いわゆる工業的職種)については、第二種衛生管理者免許保有者を選任できない(規則第7条1項3号)。
以下のいずれかの事業場については、複数の衛生管理者のうち少なくとも1人は衛生管理者の業務に専任する者を置かなければならない(規則第7条1項5号)。また有害業務事業場のうち太字文の業務を行う事業場については、複数の衛生管理者のうち少なくとも1人は衛生工学衛生管理者免許を持つ者の中から選任しなければならない(規則第7条1項6号)。
親事業者(ある事業者の意思決定機関(株主総会その他財務及び営業又は事業の方針を決定する機関)を支配している事業者)の事業場の衛生管理者が子事業者(支配されている事業者)の事業場の衛生管理者を兼ねる場合には、次の要件のいずれにも該当するときは、それぞれ、事業場に専属の者を選任しているものと認められるものであること。これにより親事業者の事業場の衛生管理者が子事業者の事業場の衛生管理者を兼ねることを認められた後、それぞれの事業場において別の衛生管理者を選任するに至った後は、再びこれによる兼務を行うことは認められないものであること。なお親事業者の事業場における安全管理者が子事業者の事業場の衛生管理者又は衛生推進者を兼ねること及び親事業者の事業場における衛生管理者が子事業者の事業場の安全管理者を兼ねることは認められないものであること。(平成18年3月31日基発第0331005号)。
衛生管理者の職務としては、労働衛生と労働衛生管理に分類できる。
労働衛生については、ILOとWHOが1950年に採択した労働衛生の目的が参照される。この中で『人間に対し仕事を適用されること、各人をして各自の仕事に対し、適用させるようにすること。』と述べられている。
労働衛生管理については、時代により若干の違いがあるものの、労働安全衛生法では、
などが述べられている。
衛生管理者は、総括安全衛生管理者が統括管理する業務(第25条の2の規定により労働者の救護に関する技術的事項を管理する者を選任した場合は、救護に関する事項を除く)のうち、衛生に係る技術的事項[6]を管理するとともに(第12条1項)、少なくとも毎週1回作業所等を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない(規則第11条1項)。また、事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなしうる権限を与えなければならない(規則第11条2項)。「衛生に関する措置」とは、第12条1項の規定により衛生管理者が行なうべき措置をいい、具体的には、次のごとき措置を指すこと(昭和47年9月18日基発601号の1)。
規則第7条1項6号の規定により選任された衛生管理者は、これらの業務のうち衛生に係る技術的事項で衛生工学に関するもの[7]を管理しなければならない(規則第12条)。
衛生管理者が事故等でその職務を行うことができないときは代理者を選任しなければならない(規則第7条2項)。衛生管理者は、産業医の指導および助言を受け、また総括安全衛生管理者が選任されている事業場においては総括安全衛生管理者の指揮を受ける。
衛生管理者は、労働基準法第41条でいう「監督若しくは管理の地位にある者」に当然には該当せず、該当するか否かは当該労働者の労働の態様によって判定される(昭和23年12月3日基収3271号)。
衛生管理者の選任、職務違反をした者は、50万円以下の罰金に処せられる(第120条)。
衛生管理者として所定の実務経験を積むことで、心理相談員や労働衛生コンサルタントの受験資格を得ることができる。
事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、衛生管理者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に対し、これらの者が従事する業務に関する能力の向上を図るための教育、講習等を行い、又はこれらを受ける機会を与えるように努めなければならない。厚生労働大臣は、この教育、講習等の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする(第19条の2)。これに基づき、現在「労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針」(平成元年5月22日公示第1号、最終改正平成18年3月31日)が公示されている。事業者は、安全衛生業務従事者に対する能力向上教育の実施に当たっては、事業場の実態を踏まえつつ当指針に基づき実施するよう努めなければならない(指針)。
初任時教育時には当該業務に関する全般的事項について教育が行われる。時間数は第一種衛生管理者(カッコ内は第二種衛生管理者)のもの。
定期教育及び随時教育時には労働災害の動向、社会経済情勢、事業場における職場環境の変化等に対応した事項について教育が行われる。時間数は第一種衛生管理者(カッコ内は第二種衛生管理者)のもの。
衛生管理者として選任されるための免許が衛生管理者免許であり、次の3種類がある[注 3]。
第一種・第二種衛生管理者免許は、厚生労働大臣の指定する指定試験機関の行う免許試験に合格することにより与えられる。現在では、公益財団法人安全衛生技術試験協会が唯一の指定試験機関である。受験には資格が必要であり、その代表的なものを次に示す。
このうち、労働衛生の実務の確認は、事業者証明書により行われる。なお、第一種衛生管理者免許は、保健師、薬剤師等の一定の資格を有する者に無試験で与えられ、無試験の場合の免許申請は住所地の都道府県労働局長に対して行う。
衛生工学衛生管理者免許については試験は行われず、一定の受講資格を有する者が厚生労働大臣の定める講習を受け、修了試験に合格することにより取得できる。所持資格により一部科目免除が適用されるため、所要日数は最短で半日、最長で5日に分かれる。修了試験の難易度はそれほど高くないと言われているものの、免除科目が無い場合には講習は5日間に及び、実施する機関も少ない。
厚生労働省が設置し中央労働災害防止協会(中災防)が運営する東京安全衛生教育センター(東京都清瀬市)、大阪安全衛生教育センター(大阪府河内長野市)の2箇所で定期的に実施される。また、財団法人労働安全衛生研修所が行なっていた労働安全衛生大学講座を受講した者で、受講者が大学理工系の卒業者であること、または第一種衛生管理者資格のある人に限り衛生工学衛生管理者に係る講習と認められる。
なお、衛生工学衛生管理者の免許申請は、免許試験を受けた場合と異なり、居住地の都道府県労働局で申請する。
全講習免除
労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格した者のうち、作業環境測定士となる資格を有するか、労働衛生コンサルタント試験(労働衛生工学)に合格した者か、3種資格とも有する場合も同様でかつ第一種衛生管理者免許試験に合格し同免許を有する者(この場合は合格証、登録証、免許証を持って居住地の労働局に申請して免許を得る。)
講習コース | 労働基準法 (2時間) | 労働安全衛生法 (関係法令を含む) (6時間) | 労働衛生工学 に関する知識 (20時間) | 職業性疾病の管理 に関する知識 (6時間) | 労働生理 に関する知識 (2時間) | 計 (時間) |
---|---|---|---|---|---|---|
5日コース | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 36 |
4日コース | ○ | ○ | 26 | |||
3日コース | ○ | ○ | 22 | |||
2日半コース | ○ | 20 | ||||
2日コース | ○ | ○ | ○ | 10 | ||
1日半コース | ○ | 6 | ||||
半日コース | ○ | 2 |
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