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中国の福建省に発祥した郷土料理 ウィキペディアから
福建料理(ふっけんりょうり、中国語: 福建菜; 拼音: Fújiàncài、<フージェンツァイ>)または閩菜(中国語: 闽菜; 拼音: Mǐncài、<ミンツァイ>)は、中華人民共和国福建省を中心に食べられている郷土料理。中国料理の八大料理のひとつに挙げられ、広義には台湾料理、海南料理などを含む。
福建料理という言葉は、狭義には、福建省内の地方料理群を指す。福建省西部(閩西)では主に客家料理が食べられており、これも狭義の福建料理に含めることが多いが、分けて考えることもできる。
広義には、上記の福建省の料理のほか、台湾の台湾料理、海南省の海南料理を含めた、類似する風味や特色を持つ料理群を指す。八大料理でいう福建料理は広義で使われている。通常、八大料理の広東料理に含められている広東省東部の潮州料理や、西部の雷州半島の料理も福建料理と共通する特徴を持つものが多く、これらも基準によっては広義の福建料理に含めることもできる。
中国の東南部に位置する福建省は、台湾海峡をはさんで台湾と向かい合っており、海岸線も長く、入り組んだ半島、島も多く、漁業も盛んであるが、全体的には平地が少なく、山がちな土地柄である。このため、海に面した地区では海産物を多用するが、山間地域では、山で採れる筍、キノコや野生動物、川魚、カエルなどの淡水産の食材を使う特徴があり、地区ごとの差が大きい。
福建省西部(閩西)の客家料理を除いた、広義の福建料理では、全体的に次のような特徴がある。
これに対して、福建省西部(閩西)の客家料理は、米の文化圏であり、さまざまな加工品を用いることは同じであるが、小麦粉料理は少なく、味付けは比較的塩辛く、トウガラシなどの辛味を加えるなどの風味の違いがある。トウガラシは福建省中部(閩中)の三明地区などでも多用される。
広義の福建料理に含まれる、台湾料理は、上記の福建省の料理と共通する特徴を持ちながら、鰹節や味噌などの和食の調味料やエシャロット、バジルなどの海外の食材を取り入れて、より複雑な味を持つこと、海南料理は、椰子の風味や魚醤を多用することなどの差異がある。
福建省東部の福清市には日本の黄檗山萬福寺の普茶料理のもとになった黄檗寺があるほか、福州市郊外の鼓山には涌泉寺、南部の厦門市には南普陀寺、泉州市には開元寺という大きな寺院があり、これらの寺院で供される福建風の精進料理も有名である。これらの寺院ではシイタケを主な出汁の材料とし、タケノコ、キクラゲなどのキノコ、生麩、豆腐などを素材としてよく用いる。
なお、福建省は武夷岩茶や鉄観音などのウーロン茶や、ラプサンスーチョンなどの紅茶を中心とした茶葉の産地であり、喫茶の文化も根付いているが、茶請けは通常落雁、貢糖、米老などの菓子やドライフルーツ、ナッツの類に限ることが多く、広東省の飲茶のような点心をいっしょに食べる文化は広がっていない。
福建省は、もともと閩越族が住んでいた地域と言われ、秦代以降に兵士や役人などの中原地方の漢族が移住し、混合文化を形成した場所と考えられている。
唐の徐堅が著した『初学記』は漢の王粲の『七釈』を引用して「西旅游梁,御宿素粲。瓜州紅麹,参糅相半,軟化膏潤,入口流散。」と記しており、当時西域や中原地方で用いられていた調味料の紅麹が移民とともに福州に伝えられ、「紅糟羊」、「紅糟魚」など、現在も作られている料理につながっているといわれる。
福州には琉球館が設けられ、琉球王国の役人が駐在するなど、日本などの海外との交流の歴史も長く、沖縄県の沖縄料理や長崎県の卓袱料理、普茶料理にも大きな影響を与えている。
また、南部の泉州も、海のシルクロードと呼ばれる東南アジア、南アジア、西アジアとの交易を通じて発展した都市であり、ケチャップの語源と言われる魚醤や、ナマコなどの乾物など、食材の交易もここを通して行われることが多かった。
逆に、東南アジアのマレーシア、インドネシア、シンガポールなどに移住した華僑の故郷である福建省には、これらの地域からサテソース、サンバルソースなどの新しい風味を持ち帰り、福建料理に新しい味をもたらしてもいる。なかでもサテソースは沙茶醤として現地化し、広く用いられている。
狭義の福建料理である福建省内の料理は、北、南、西の各地区で食べられている福州料理(閩北料理)、閩南料理、閩西料理に大きく分類されることが多い[1]。
広義の福建料理はさらに台湾料理、海南料理も含まれるが、これらについてはそれぞれの項目を参照のこと。
福州料理(福州菜 フージョウツァイ Fúzhōu cài)は、閩北料理(閩北菜 ミンペイツァイ Mǐnběi cài)とも呼ばれる。この場合の閩北は、福建省を閩南、閩北、閩西の3つに分けた場合の言い方である。福建省を閩東、閩西、閩南、閩北、閩中の5つに分けた場合、省都の福州は、閩東と呼ばれる地域の中心であるが、これに閩北、閩中の部分を合わせた地域に相当する[1]。閩東は海に近く、海産物も利用するが、閩北、閩中では干物などの利用に限られ、主に山の素材を利用するなどの差異があり、閩中では付け合せにトウガラシをよく利用するなどの風味の違いもあるため、さらに細分することも可能である。
日本に出身者が多く来ている福清市を含めて、福州市周辺の料理の特徴として下記がある。
沙県は、福建省中部(閩中)の三明市に属す小都市であるが、「扁肉」とよばれる小ぶりなワンタンや「焼麦」(シューマイ)を中心にした「小吃」で中国では全国的に有名な場所となっている。コメ、小麦粉、タロイモなどのでんぷんや豆腐などの主原料の違いや、包む材料の違い、成型方法、加熱法の違い、味付けの違いなどで200種以上の「小吃」があるともいわれる。沙県の中心部には小吃街と呼ばれる横丁もあるが、有名店は県城の中に散在している。これらの店では出す料理が専門化しているので、多様で美味な小吃を賞味するには、ホテルの「小吃宴」などと称するコース料理を選ぶほうが手っ取り早い。他に、「煨豆腐」と呼ばれるあぶり焼き豆腐や、江西料理の「瓦罐湯」と似た「燉罐」という壷蒸しスープ、塩漬けにして干したアヒルなどがある。沙県では、生の辛く赤いトウガラシを刻んで入れることも好まれる。
福建省北部(閩北)の南平市に属する邵武市にも名物小吃がある。
福建省南部のアモイ市、泉州市、漳州市を中心とした沿岸地域の料理。海産物のうまみを生かしたあっさりしたスープに、トウガラシやニンニクの風味を加えて変化を持たしている。台湾料理と共通点が多い。東南アジアのマレーシア、インドネシア、シンガポールなどに移住した華僑の故郷である福建省南部には、これらの地域からサテソース、サンバルソースなどの新しい味ももたらされ、沙茶醤として根付き、厦門のサテ麺(沙茶麺)などの名物料理ができている。
広東省の潮州と同じく米の粥をよく食べ、草魚の魚粥などの専門店も多い。
アモイには南普陀寺があり、また、台湾からの来訪者も多いため、福建省南部の都市には精進料理専門店も少なくない。
閩西料理(閩西菜)は、福建省西部の竜岩周辺の地域で食べられている客家料理の一種。閩南地方の漳州市に属す華安県や南靖県でも閩西料理の系統が食べられている。広東省東部、江西省南部、台湾など、他の地域の客家料理と同じく、米を加工した各種の主食があり、山の幸を取り入れ、乾物を多用する素朴な料理である。
しかし、福州料理や閩南料理の影響を受けた料理があり、寧化県と清流県にはソウギョの刺身があるなど、他の地域の客家料理と異なる地域性もある。味付けは、一般に塩味が強く、味は濃い目で、トウガラシで辛味もつける。
広義の福建料理は、広東省東部と西南部、海南省と台湾にも広がる広範囲で食べられているが、これらの地域以外に関しては、さほど普及しておらず、北京、上海などの大都市には専門店が多少ある程度にとどまる。ただし、福建省中部の沙県の小吃(点心)を出す小規模店だけは県政府のバックアップもあって、フランチャイズで中国各地に広く分布しており、東京にも店舗がある。
海外では東南アジアの華僑、華人の間でも広く福建料理が浸透している。
日本においては、長崎市や熊本市において福建省からの華僑が中華料理店を開き、チャンポン、皿うどん、太平燕といった大衆的な料理を生み出した経緯がある。普茶料理、卓袱料理といった、手の込んだもてなし料理も日本に伝えられ、アレンジされながらも、伝えられている。また、福州を通じてつながりが深かった琉球王朝は、福建風の料理、菓子、デザートなども取り入れ、今日の沖縄料理のバラエティのひとつとなっている。
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