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日本の映画作品、『男はつらいよ』シリーズ第39作 ウィキペディアから
『男はつらいよ 寅次郎物語』(おとこはつらいよ とらじろうものがたり)は、1987年12月26日に公開された日本映画。男はつらいよシリーズの39作目。タイトルは同年に森川時久監督による映画が公開された『次郎物語』のパロディである。が、冒頭の回想夢と寅が為し得なかった母親との素直な再会を秀吉を通してやり直すという点から見ると寅次郎の「物語」である。
薄幸の少年のために一緒に母親探しの旅に出る寅次郎(渥美清)が、やはり男運の悪い美人(秋吉久美子)と出会い…。「ふることもふられることもない」マドンナとの関係。寅次郎は自らが渡世人であることを強く意識し、立場をわきまえる。[1]そのためもあってか、とらやでの騒動は一度もないに等しい。
時期的には『キネマの天地』(1986年)と『ダウンタウン・ヒーローズ』(1988年)の間に公開されている。山田洋次監督のロード・ムーヴィとしては『家族』(1970年)、『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)がある。
ラスト、17歳の満男(吉岡秀隆)の「人間はなんで生きているのかな」の問いに寅次郎が真摯に答える場面については、100年インタビュー(NHKデジタル衛星ハイビジョン2007年11月15日放送)で山田洋次監督が幸せの価値について、やはり自作の『学校』(1993年)と併せて解説した。
寅次郎の夢 寒い雪の夜、他人の物に手を掛けたことで父親から激しく折檻される少年寅、かばう母。寅は初めての家出をする。追いすがるさくら。「今にきっと偉い人間になって帰ってくるからな」今も同じだと気づいた時に兄を呼ぶ女の子の声で目が覚める。
「とらや」を秀吉という男の子が訪ねてくる。秀吉は、テキヤ仲間「般若の政」とふで(五月みどり)の子どもで、女・酒・賭博に溺れる極道者の政が、ふでに蒸発され、秀吉を遺して急死したので、「俺が死んだら寅を頼れ」という遺言で、郡山から柴又へやって来たのだ。とらやの皆はびっくりするが、間もなく寅が帰り、「ふでが秀吉を捨てた」という誤解からふでを強く擁護する。
二人の母親捜しの旅が始まった。テキヤ仲間の情報をもとに、和歌山へ。天王寺で誘拐犯と間違えられて派出所に連行されるといった騒動を起こしつつも、ふでが新和歌浦のホテルで働いていることをつきとめる。しかし、訪ねると既に吉野に移ったという。元気のない秀吉を励まし、吉野へ行くがそこにもいない。その晩、秀吉は旅の疲れから高熱を出し、旅館で寝込んでしまう。隠居していた老医師(松村達雄)の適切な処置とたまたま隣室にいた宿泊客・高井隆子(秋吉久美子)の手厚い看護もあり、秀吉は何とか回復する。寅次郎と隆子は成り行きで「かあさん」「とうさん」と呼び合うことになる。隆子は美貌のわりには幸福とはいえない女だった。男に捨てられ死んでしまおうと思っていたという。宿の夜、ふでの居所がつかめ、明日はという段になり二の足を踏み出す寅、秀吉を自分の息子とし隆子と共に柴又に帰ろうと提案するが、秀吉は寝てしまっている。とっくりを片手に部屋に入ってきた隆子。別れを惜しむ旅人同士の二人は再会までの操を契る。突然「大事な人生なのに粗末にしてしまった」と泣き崩れる隆子に寅は「大丈夫だよ。これからいいこと一杯待ってるよ。な」と優しく声をかける。「そうね、生きててよかった。そう思えるようなことがね」隆子は秀吉と寅の布団の間に入り、堕胎した子が秀吉くらいだと告白する。布団に入るよう促し手を伸ばす隆子、横になった寅の頬に手が触れ押し戻したところで秀吉の盛大なおねしょで雰囲気は台無しとなる。(寅は救われた?)
隆子との別れ、「さよなら、体に気を付けてね」「かあさん、どうもありがとう」「かあさんもよ、今度会うときにはもっと幸せになってるんだぞ。な」 寅と秀吉の旅は続く。ふでが働いているという志摩の島に連絡船で渡り、目当ての松井真珠店へ行くと、病気のため海岸の別荘で療養中とのことだった。久しぶりに息子に対面して喜ぶふでを見て、寅はホッとする。寅は引きとめられたが、秀吉が自分に未練を感じてはいけないと連絡船の乗り場へと急ぐ。更に心を鬼にして、「一緒に柴又へ帰りたい」という秀吉を叱る。秀吉は、寅の乗った船を泣きながら追う。
柴又にいったん帰ったがすぐに正月の商売へと発つ寅を見送りながら、満男が「人間は何のために生きてんのかな」と問うと[注 1]、寅は「生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるじゃない。そのために人間生きてんじゃねえのか」と答え、「そのうちお前にもそういう時が来るよ」と言って別れる。
正月に隆子がとらやを訪ねてきた。隆子はさくらたちとの会話で、秀吉が無事母親に会えたことを知り、寅と「とうさん」「かあさん」と呼び合ったことを思い出して笑う。ふでからの「秀吉と2人で幸せに暮らしています」との感謝の賀状もとらやに届いていた。二見浦で露店を開き、仲間と雑談している寅の前をふでと秀吉と連絡船の船長(すまけい)が仲睦まじく通り過ぎる。寅は、「俺たちのような人間が声をかけると迷惑なんだ」と隠れつつ、一人ごちる。「船長が秀のてておやか。いいだろう。あいつだったらいいだろう」と。
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