滝山寺
愛知県岡崎市にある寺院 ウィキペディアから
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山号は吉祥陀羅尼山。院号は薬樹王院。滝山寺鬼まつりで有名。
滝山東照宮が東側に、日吉山王社本殿が本堂の北側にそれぞれ隣接している。
『滝山寺縁起』(現存するものは近世の写本、以下『縁起』と略称)によれば、 奈良時代、 天武天皇の命で役行者(役小角)が青木川で拾った金色の薬師如来像を祀る吉祥寺として創建したとされる。その後、寺は放棄され荒寺となる。役小角は、奈良時代の伝説的な山岳修行者である。役行者草創の伝承をもつ寺院は日本各地にあり、その多くは山岳信仰、水源信仰に関わる山寺である。本寺もそうした山岳信仰の場であったと考えられる。
『縁起』によれば保安年間(1120年 - 1123年) 天台宗の仏泉上人永救(えいぐ)が地元の豪族物部氏の保護を受けて本堂を建てるなどして再興、次いで熱田神宮大宮司藤原南家を檀越に迎えることで寺勢はいよいよ興隆した。永救は加賀国出身で比叡山で修行したのち、布教のため三河の地に渡ったとされる人物で、この12世紀の僧永救の再興により、山岳信仰の場であった吉祥寺が、天台寺院としての形態を整えたものと思われる。
平安時代末期から鎌倉時代初期の住職であった寛伝(1142年 - 1205年)は、熱田大宮司藤原季範の孫で、将軍源頼朝の従兄弟であったため、頼朝による大伽藍の造立がなされるなど、鎌倉幕府の庇護を受けた[1]。寛伝は足利氏宗家初代当主足利義康の義兄弟でもあり、頼朝の強い推挙によって足利氏本拠地である下野の日光山満願寺座主を一時的に務めたものの、衆徒との関係が悪化し2ヶ月で三河へ戻った。現在寺に伝わる聖観音菩薩及び両脇侍〈梵天・帝釈天〉像は、『縁起』によれば頼朝の三回忌にあたる正治3年(1201年)、寛伝が頼朝追善のため仏師運慶・湛慶父子に作らせたものといい、様式的にも運慶一派の作として認められている[2]。
その後、藤原季範の子孫にあたる三河守護足利氏の保護を受けた。12世紀に三河国司藤原憲長と滝山寺の間で、阿知和郷の帰属が争われたが、熱田大宮司の藤原範忠により、滝山寺領として定められた。歴代この地の有力者に庇護され、他にも、滝村、米河内村などを寺領とし、鎌倉時代に412石を得ていた[3]。貞応元年(1222年)、足利家3代目当主足利義氏が本堂を造立。
南北朝時代には 足利尊氏の庇護を受け、重要文化財の本堂が作られた。しかし、臨済宗を重視する室町幕府の方針の影響などで、やがて滝山寺の勢力は衰え、戦国時代に寺領は諸勢力に侵された[4]。
近世初期には 徳川家康の庇護を受け、412石を得て復興。徳川幕府3代将軍徳川家光の治世に寛永寺を創設した天海の弟子亮盛が寛永寺の子院であった青龍院住職と兼務する形で、滝山寺住職を務め、以降滝山寺の勢力が増した。正保3年(1646年)10月18日、徳川家光の命により、岡崎城鬼門にあたる滝山寺境内に滝山東照宮が創建され[5]、200石の加増を受けた。
明治維新後は、石高がなくなり、滝山東照宮も独立するなど、規模が小さくなった。歴代住職の墓は弘願寺の裏に置かれている[6][7]。
1969年(昭和44年)1月中旬から本堂の屋根替え(檜皮葺)を行った。そのためこの年の鬼まつりは中止となった。屋根替えの工費は520万円で、国が8割、愛知県が1割、残りの1割を岡崎市と地元が負担した[8]。
『芸術新潮』2009年(平成21年)1月号の特集で滝山寺所蔵の観音菩薩立像・梵天立像・帝釈天立像が紹介されたことから、運慶の作がある寺として広い範囲で知られるようになった[7]。三体は境内の宝物殿(年中無休、拝観料300円)に置かれてある[9]。
2017年(平成29年)9月26日から11月26日にかけて東京国立博物館で特別展「運慶」が開催された。この特別展に展示するために観音菩薩立像が初めて寺の外に持ち出された[10]。移動に耐えられるよう、公益財団法人美術院が彩色の剥落止めなど、様々な修復を施した。取り外していた銅製の装身具も取り付けられた[11]。
2018年(平成30年)4月、朝鮮通信使の書とみられる扁額(へんがく)が、NPO法人朝鮮通信使縁地連絡協議会の会員の指摘により本坊で発見された。通信使の扁額が県内で見つかったのは数十年ぶりで、同市の広忠寺、稲沢市の禅源寺に次いで3例目。1682年(天和2年)の第七次の通信使で写字官だった李三錫の書号が彫り込まれている[12]。
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