岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(ぎふかかみがはらこうくううちゅうはくぶつかん)は、岐阜県各務原市にある博物館。
概要 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館Gifu-Kakamigahara Air and Space Museum, 施設情報 ...
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- 航空宇宙に関する資料(国産の航空機や実験機、航空関連資料、さらに宇宙開発関連資料など)の収集展示、将来の航空宇宙産業を担う人材の育成を図ることを目的とする博物館である[1]。1996年(平成8年)3月23日に「かかみがはら航空宇宙博物館」として開館。全面的なリニューアルを約49億円をかけて行い、2018年(平成30年)3月24日に「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」に改称する。
- 開館当初は各務原市の施設であり、運営も各務原市が行っていた。2018年のリニューアル後は岐阜県と各務原市の設置となり、岐阜県と各務原市により設立された、公益財団法人岐阜かかみがはら航空宇宙博物館が運営する[2]。
- 「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」の作者である松本零士が開館時から2021年(令和3年)3月まで名誉館長を務めていた [3][4][注 1]。
- 周辺には現存する日本最古の飛行場で航空自衛隊の飛行開発実験団が所在している岐阜基地や、日本では数少ない航空機製造工場である川崎重工業岐阜工場が基地の反対側にあり、「飛行機の街・各務原」の中心となっている。
- 岐阜基地と博物館は隣接する。また、岐阜基地と博物館の間には長さ1.2kmの搬入路があり、一部の航空機はこの搬入路で博物館に搬入されている。また、YS-11A-213、US-1A、P-2J、N-62 イーグレットなどは、博物館搬入のため、各地から岐阜基地へ最終フライトをした後に搬入路を経て博物館に展示された。
- 開館当初の延床面積は8476.00m2、展示面積は4950m2[5]。2018年のリニューアル時の増築により、敷地面積は78206.98m2、建築面積は11996.20m2、延床面積は12320.05m2[2]。展示面積は9400m2と従来の1.7倍になった。リニューアル後は世界で唯一、戦時中の姿をとどめる旧陸軍三式戦闘機「飛燕」の機体などが展示されている[6]。リニューアルに合わせて宇宙飛行士の山崎直子がアンバサダーに就任している。
- 展示機の増加等により企画展スペースが不足しているため、企画棟の建設が計画され[7]、2024年(令和6年)1月着工[8]。別棟として本館東側に建設され、本館とは渡り廊下でつながれる。建物は鉄骨平屋486.56m2[9]。2024年9月に完成。同年10月12日からの特別企画展「月への挑戦―アポロ計画から50年、人類は再び月を目指す―」がこけら落としとなり[9]、企画棟の名称が「スペースボックス」となることが発表された[10][11]。
- 開館当初は「PURURU」というマスコットキャラクターが存在し、グッズの販売や、PURURUを模した屋外のロードトレインも運行されていた。リニューアルを機にマスコットキャラクターは廃止されている。
- 岐阜県より博物館に相当する施設(指定施設)として指定されている[12]。
- 1989年(平成元年) - 各務原市が飛行実験を終えた飛鳥を獲得し、飛鳥を中心とする航空宇宙博物館の建設を構想。総合計画に盛り込まれる。建設場所などが決まる。
- 1991年(平成3年)8月 - 飛鳥の各務原市への貸与が決まる。
- 1993年(平成5年) - 各務原市にゆかりのある実験機や国産機を展示する博物館にすることが決まる。
- 1996年(平成8年)3月23日 - かかみがはら航空宇宙博物館として開館。各務原市が所有し、直接運営。
- 2005年(平成17年)4月 - 科学関連資料の展示を充実をはかり、かかみがはら航空宇宙科学博物館に改称。
- 2016年(平成28年)9月26日 - 建物増築による展示スペースの増床、展示レイアウト大幅変更、飛燕などの展示物を増やす[13]などの全面的なリニューアルを行うため一時閉館となる[14]。本館閉館中は2017年(平成29年)11月13日まで収蔵庫の限定公開が行われた[15][16]。
- 2018年(平成30年)3月24日 - リニューアルオープン。同時に各務原市と岐阜県の共同設置となり岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に改称。2017年度年は各務原飛行場開設100年にあたる。
- 2022年(令和4年)5月15日 - リニューアルオープン後の来館者数が100万人となる[17]。
- 2024年(令和6年)9月 - 別棟の企画棟が完成。
本館
- 1階
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- 展示エリア ※主に航空機関連
- 航空機と航空機産業の始まり
- 戦前・戦中の航空機開発
- 戦後の航空機開発
- 航空機のしくみ
- 空から宇宙へ
- シアタールーム
- オリエンテーションルーム
- ミュージアムショップ
- 空宙博カフェ(レストラン)
- ベビールーム・キッズルーム
- 中2階
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- 2階
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- 展示エリア ※主に宇宙関連
- 宇宙への出発 -ロケット-
- 宇宙から地球のくらしを支える -人工衛星-
- 人を宇宙に送る -有人宇宙開発-
- 宇宙と生命の謎を探る -宇宙探査-
- 屋上
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屋外
- 屋外実機展示場
- 遊具広場
- 芝生広場
- イベントテント
収蔵庫等
- 第1収蔵庫 - 収蔵及び修復施設(非公開施設)、1996年完成。
- 第2収蔵庫 - 収蔵及び修復施設(非公開施設)、2016年完成。
- 収蔵庫は2016年(平成28年)11月29日から2017年(平成29年)11月13日までは限定公開が行われている。
- 塗装庫 - 塗装施設の塗装庫がある(非公開施設)、1996年完成。
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開館時、航空機の展示機は24機(実機(供試体を含む)・レプリカ(復元機を含む))であった。2021年時点の航空機の展示機は31機(実機(供試体を含む)27機・レプリカ(復元機を含む)4機)、宇宙関連の展示機は22機(実機(供試体を含む)・レプリカ(復元機を含む))である[2]。2023年にはF-4EJ改戦闘機(実機)が追加されるなど展示物は増加し、2024年現在は実機41機、実物大模型(レプリカを含む)15機の計56機を展示し、実機展示数は日本最大である。
☆は日本航空協会の「重要航空遺産」に認定。★は日本航空宇宙学会の「航空宇宙技術遺産」に認定。△は経済産業省の「近代化産業遺産」に認定。
屋外展示
屋外展示の機体の特徴
屋外展示の機体は、それぞれ数年 - 10年おきに塗り直しを行っている。
実際に展示している屋外展示の機体
KV-107ⅡA-4輸送ヘリコプター
YS-11A-213中型輸送機
US-1A救難飛行艇
P-2J対潜哨戒機
屋内展示
屋内展示の機体は、屋外展示よりも多数の機体を展示している。
展示機(航空機)
乙式一型偵察機 1001号機復元品
三式戦闘機二型 6117号機
十二試艦上戦闘機 201号機レプリカ
KAL-1 JA3074号機
F-104J 36-8515号機
T-2 19-5173号機
F-4EJ改 07-8431号機
飛鳥
過去に屋内展示された機体
- 人力ヘリコプター YURI-I
- 2016年まで展示[22]。2017年から収蔵庫で保管中。
- OH-6J 31081(陸上自衛隊) : ヘリコプター原理説明及び操縦シミュレータ用。操縦シミュレータ運用終了後も2023年まで展示。2024年に貸付元である陸上自衛隊に返納。
- 軽飛行機式SS-2 JA2114(中日本航空専門学校)
- 三田式3改1型上級複座滑空機 JA2091(中日本航空専門学校)
- FA-200-180 JA3483(中日本航空専門学校)
- 機体の一部をカットし、飛行機の構造説明及び搭乗体験用として2016年まで展示。2023年現在、岐阜県立岐阜工業高等学校の「モノづくり教育プラザ」で実習用として使用。
- BK117
- 構造試験用の試作2号機。搭乗体験用。BK117に災害対策用として搬送実験を行ったバイク(カワサキ・スーパーシェルパ)、空中消火用バケットと合わせて展示。2014年まで展示後、収蔵庫で保管中。
- レット・ナドニー・ポドニク・クノビーチェ式L-13型 JA2235 法政大学体育会航空部「かわせみⅣ」
- 防大B-5型グライダー
- 本庄季郎が設計した富士重工業製のB-5型グライダーを防衛大学校が購入。後に改造され、防大B-5改1型となる。正式な展示はされず、修復工房(現・オリエンテーションルーム)で修復中の状態で見学可能な状態であった。2008年頃まで展示後、2011年に防大へ返納。
- 霧ヶ峰式K-14型グライダー
- 2000年に修復し展示。2008年頃展示終了。収蔵庫で保管中。
- CHicK-GRX
- ミラクルビークル(モックアップ) 空陸両用車
- 2002年に開催された丸の内ビル完工記念「After5 Years Technology Exhibition 近未来技術展」で展示された実物大模型、及び2002年8月に飛行実験に用いた1/3スケールの機体。2016年まで展示。
- 消防・防災無人観測機
- 飛行実験に成功したミラクルビークル(1/3スケールの機体)の技術を用いて、消防庁の技術研究費で、2005年に岐阜県工業会が研究開発した無人航空機。2016年まで展示。
- AS 332ヘリコプターJA6669(機体前部のみ)
- FA-200(胴体部のみ)
- 名古屋飛行場にあった「名古屋空港航空宇宙館」疑似飛行体験機(富士FA-200ムービングエア MK1034)の胴体部を使用した幼児用搭乗体験用。2016年まで展示。
- 研三(レプリカ)
- 2020年の企画展「スピードを追い求めた幻の翼 研三―KENSAN―」開催時に製作・展示。胴体前部のみ[23]。制作は博物館ボランティアの有志によるもの。企画展終了後は収蔵庫で保管中。
- HOPE(試験用供試体)
- HOPEの自動着陸技術に資するため、川崎重工が自主開発した実験機。開発される予定の大きさの約4分の1のスケール。2016年まで展示後、収蔵庫で保管中。
- ゼロスポーツEVフォーミュラ
- ゼロスポーツが開発した電気自動車。「かかみがはら航空宇宙科学博物館」の時期は航空宇宙関連以外の展示物が増加したが、殆どは「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」にリニューアル時に撤去された。
収蔵庫の機体
非公開であるが、事前予約制の「そらはく資料特別公開」などで公開されることがある。ここでは展示された実績が無い機体の一部を記述する。
- 萩原式H-23BA-2グライダー JA2023
- 萩原式H-23C-2グライダー JA2077
- 三田式3改1型上級複座滑空機 JA2080
- 三田式3改1型上級複座滑空機 JA2176
- 鷹取式SH-16Sグライダー JA2102
- KAT-1 JA3100
- 製造された機体(2機)のうちの2号機。東京都立科学技術大学で展示された後、各務原市が引き取る。状態が悪いために展示すること無く収蔵庫に保管。部品の一部はKAT-1の1号機の復元に使用された。
- T-1B 85-5801
- KM-2 6255
- 旅客機シミュレータ
- ボーイング787をモチーフとしている。2016年3月運用開始。無料だが土日祝日は当日整理券配布となっており、整理券がなくなり次第終了する。
- 小型ジェット機シミュレータ
- T-4モチーフとしている。2016年3月運用開始。無料だが土日祝日は当日整理券配布となっており、整理券がなくなり次第終了する。
- VRヘリシミュレータ
- BK117をベースとしたVRシミュレータ。川崎重工が開発[25][26]。2024年4月27日運用開始。有料であり、事前予約制である。
過去のシミュレーション体験
- ヘリコプター操縦シミュレータ
- 実機(OH-6J)の操縦席で操作し、模型のヘリコプターを操作。老朽化及びコロナ禍による体験型展示の運用休止により、2020年に運用終了。
- ヘリコプタ・シミュレータ
- 電動6軸揺動式のシミュレータ。2007年頃運用終了。
- 航空シミュレータ
- 三菱プレシジョン設計製造したシミュレータで、油圧式6軸揺動装置で実際の飛行機の動きを再現。定員は40人。2007年に稼働を中止し、2015年解体。
- 単発レシプロ機・シミュレータ
- 双発ジェット機・シミュレータ
- 電動6軸揺動式シミュレータ。2007年頃運用終了。
- ハングライダー・シミュレータ
- 本物のハングライダーと同じ三角枠を握りしめて、体の重心を移動することで飛行体験が可能。2007年頃運用終了。
- 宇宙飛行シミュレータ
- 地球から木星への旅を体験。定員は30人。名誉館長の松本零士のイラスト「大航海!!星の海へ!」が描かれている。2007年頃運用終了し、2015年解体。
- 名誉館長
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- 松本零士(1996年3月23日(前身のかかみがはら航空宇宙博物館の開館日) - 2021年3月31日)[27]
- 館長(岐阜かかみがはら航空宇宙博物館リニューアル後)
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- アンバサダー
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最寄り駅は名鉄各務原線の各務原市役所前駅であるが、航空自衛隊岐阜基地を迂回する必要があるため3km以上離れており、徒歩で30分以上かかる。前身のかかみがはら航空博物館の頃は各務原飛行場駅(当時)からシャトルバスが運行されていた。
注釈
松本零士に関するパネルや寄贈物などが展示されていたが、2018年のリニューアル後は寄贈物の一部を除いて撤去された。2021年3月から5月に開催された特別展「ユーリ・ガガーリン物語」で寄稿したのが名誉館長として最後の活動となった。