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人工衛星 ウィキペディアから
Nano-JASMINE(ナノ・ジャスミン、Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration)とは、日本の国立天文台が開発していた人工衛星である。重量35kgの超小型衛星で、太陽同期軌道から恒星の天球上での位置を測定することを目的とする。打ち上げは2022年予定であった[1]。
Nano-JASMINE は日本初の位置天文衛星で、大気の影響を受けない宇宙空間から恒星の位置を高い精度で測定し、恒星までの距離(年周視差に基づく)や固有運動を明らかにすることを目的としている。順調に打ち上げられれば1989年に欧州宇宙機関が打ち上げたヒッパルコス衛星に続く世界2番目の位置天文衛星となる予定であったが、2013年12月に欧州宇宙機関がヒッパルコス衛星の後継機であるガイア衛星を打ち上げたため、この時点では世界で3番目の位置天文衛星となる見込みであった。日本で計画されているJASMINEシリーズの最初の一機と位置づけられており、将来的に打ち上げが予定されているより大型の「小型JASMINE」や「JASMINE」に向けて技術の検証を行うことが目標の1つとなっていた[2]。
衛星は一辺50cmの立方体で、35kgの質量がある。観測のための開口部は2箇所にあり、99.5度離れた2方向を同時に観測することで精度を高めるように工夫されている。これは基本的にヒッパルコス衛星やガイア衛星と同じ方式である。恒星の光は口径5cmの赤外線望遠鏡に集められ、時間遅れ積分 (TDI) と呼ばれる技術を用いてCCDセンサーで記録される。2方向同時観測やTDIを実現するため、Nano-JASMINE には超小型衛星としては高い姿勢制御・温度制御の精度が要求される[3]。観測波長は近赤外のzバンド(波長0.9μm)を中心とした広い波長帯(zwバンド)である。
Nano-JASMINE は日本の位置天文衛星の技術検証としての位置づけとともに、科学的成果も期待されていた。小型衛星であるため欧州宇宙機関のガイア衛星に比べて観測精度はかなり劣るが、ガイア衛星では観測困難な明るい星でも観測可能であるため、貴重な観測データが得られると期待されており、最終的にはガイア衛星のデータとNano-JASMINEのデータをまとめた統合カタログを作成することになっていた[4]。
Nano-JASMINEは重量35kgの小型衛星だが、重量1400kgのヒッパルコスと同程度の観測精度を持っている。ヒッパルコスが観測した恒星の位置情報は、恒星の固有運動のため次第に不正確になりつつある。Nano-JASMINEはこれを再び精確なものに更新することが期待されていた。また、ヒッパルコスのデータと組み合わせると、従来より一桁高い精度で恒星の運動を決定できると考えられていた[5]。
当初は2011年8月にブラジルのアルカンタラ射場からウクライナ製のツィクロン(サイクロン)-4ロケットで打ち上げられる予定だったが[6]ロケット側と射場側の財政問題でスケジュール延期が続いていた[7]。この打ち上げは新型ロケットの試験飛行を兼ねるため、無料で提供されることとなっていた[5]。2014年5月の情報では、打ち上げは2015年第二四半期となっていたが、ウクライナ情勢の影響を受けさらに不透明さが増していた[8]。衛星は2010年には組み立てが完了したが、東京大学で保管された状態のままであった[9]。
2015年に入りガイア衛星の研究チームが本ミッションへの支援を申し出、欧州宇宙機関が無償で打ち上げを行うことになった[1]。2018年12月時点で打ち上げは2022年とされていた。
しかし、衛星の製造から年月が経過し、劣化が進んだことや、小型JASMINEの開発に注力することから打ち上げは断念され、機体は岐阜かかみがはら航空宇宙博物館にて常設展示されている[10]。
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