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キャビテーション(英: cavitation)は、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象である。空洞現象ともいわれる。この現象は19世紀末に、高速船用のプロペラが、予想された性能を発揮しなかったことから発見された[1]。
液体の流れの中で圧力がごく短時間だけ(水では大気圧の1/50程度の)飽和蒸気圧より低くなったとき、液体中に存在する100マイクロメートル以下のごく微小な「気泡核」を核として液体が沸騰したり溶存気体の遊離によって小さな気泡が多数生じる。気泡核がなければ気泡も簡単には発生しない。
圧力が変化すると沸騰などによって生じた気体の体積も変化し泡の大きさが変わる。膨張と収縮を繰り返しながら圧力の上昇に応じてしだいに小さくなってゆく。小さくなる過程で、プロペラのような硬い表面近くの泡は粘性と表面張力も作用して、その表面に張り付きながら泡の遠い側がくぼみ、ジェットの勢いで表面に衝突して泡は分裂する。このジェット流で硬い表面にエロージョン(壊食)が発生する。この過程は次の気泡運動力学のレイリー(Rayleigh)の運動方程式で記述される。
最終的には周囲の圧力が飽和蒸気圧より高くなり、周囲の液体は泡の中心に向かって殺到して、気泡が消滅する瞬間に中心で衝突するため、微小ながら強い圧力波が発生し、騒音・振動を発生させる。あまりに圧力が高い場合には金属が破損する場合もある。爆薬の水中爆発によって大量の高圧気泡が発生することによって起こる破壊力を持ったキャビテーションの波をバブルパルスと呼ぶ。
水中でのキャビテーションの作る30マイクロメートル前後の微小な泡は、50キロヘルツ以上の高周波水中振動波(水中音波)を高い効率で減衰する[2]。
キャビテーションを支配する要因として、以下が考えられている[1]。
これらのうち、流れの状態を表す基本的な無次元数として、キャビテーション数σが定義されている。
また、トーマのキャビテーション数(Thoma's sigma) も用いられる。
キャビテーションはその様子と発生原因で以下のように分類できる[1]。
また、舶用プロペラの場合には以下のような分類がされる。
一般的に、流体機械にとってキャビテーションは害になり、以下の影響を与える。
キャビテーションを起こさないようにするには、形状、面積を最適化するという2つの方法がある。
水中で移動する物体の速度を増加させていくと、それにつれてキャビテーションによる気泡の発生する量が増加していき、ついには物体をほぼ完全に覆ってしまう。この現象をスーパーキャビテーションと呼ぶ。これを積極的に利用した応用の一例としてスーパーキャビテーション・プロペラがある。
先端部を除き水との直接の接触が避けられることで、いわゆる粘性抵抗から自由になるという特長が得られ、水中において従来はありえなかった移動速度が可能になる。物体全体としてそれを利用したものとしては、代表例にソ連の魚雷、シクヴァルがある。シクヴァルは、人為的に大量の気泡を先端部から発生させ、そこにできた空洞内に魚雷全体を包むことで水の抗力を低減しているとされており、水中でありながら200ノット(約370キロメートル毎時)以上の速度を実現しているといわれている。
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