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病原性や有害性を有する糸状菌、細菌などの微生物を殺し減少させる操作 ウィキペディアから
殺菌(さっきん)とは、病原性や有害性を有する糸状菌、細菌などの微生物を殺し減少させる操作のことである。滅菌と異なるのは具体的な程度は定義されておらず、滅菌のような完全な効果は保証されていない。電磁波、温度、圧力、薬理作用などを用いて細菌などの組織を破壊するか、生存が不可能な環境を生成することで行われる。すべての種類の菌を殺さなくても、生物に悪影響を及ぼす細菌などの微生物が減少すれば殺菌とみなされる。主に病原体の除去(感染症の予防)、食品の鮮度保持などが目的で実行される。対象とする細菌などによっては効果が期待できない方法もある。人体や有益な生物への障害、高熱や腐食による装置の破損、食品の風味の変質などを引き起こすことがあるため、対象の細菌などの微生物に合わせて適切な方法を選択することが重要である。低温殺菌法のパスチャライゼーション(英語名: pasteurization)はルイ・パスツールからきている。
一般に「殺菌」は、消毒のことを言い、効能などを表記する際、殺菌と消毒をまとめて殺菌消毒などと言われたりするなど、ほぼ同じ概念として扱われてしまっていることが多いが、専門的には異なる概念である。その他、類似する概念として、除菌、抗菌などもあるが、これらも微生物学や医学、食品科学の分野において、意味が異なる概念である。この項目ではこの概念の違いにつき解説する。また、抗生物質の作用機序を表す言葉として殺菌や静菌という用語を用いることがある。市販の洗剤や消臭剤などにおいて、「殺菌」、「除菌」、「抗菌」を謳った製品が存在するが、滅菌のような完全な効果は保証されていない(商品の説明欄に「全ての菌・ウイルスに効果があるわけではありません」などと書かれているのはそのため)。
具体量が定義されているのは「滅菌」のみである。
滅菌(sterilization 英語の語源は不妊手術のように、不妊化すること)は、有害・無害を問わず、対象物に存在しているすべての微生物およびウイルスを死滅させるか除去することである。実際には菌数が完全にゼロとすることは現実的ではないため、無菌性保証レベル(sterility assurance level, SAL)を満たすことをもって『滅菌した』とする。SAL≦10-6(滅菌操作後、被滅菌物に微生物の生存する確率が100万分の1以下であること)が国際的に採用されている。同じ概念が、日本薬局方においても「最終滅菌法」として採用されている。 本記事で扱う殺菌、消毒、除菌、等の用語の中で、滅菌がもっとも厳重な方法であり、その用途は限定される。手洗いの際「ヒトの手指を消毒する」ことはできるが、ヒトの手指を滅菌しようとすれば、手指の細胞ごと全部殺すことになり、手指の滅菌は事実上不可能である。 また、対象物をたとえ滅菌できても、一般的な外気に触れれば、再び菌が繁殖することになる。例えばカビの除去で、カビを滅菌した状態(俗に言う「カビの根」が残らない状態)にしたとしても、空気中に漂う胞子が再着落すれば、カビが再び増殖することになる。
殺菌 (microbiocidal effect, bacteriocidal-) は文字通り菌を殺すことである。極端な話、1%の菌を殺し、まだ他の菌が99%残っている状態でも「殺菌」を達成したと言える。このため、滅菌のような完全な効果は保証されない。
消毒 (disinfection) は、対象物を使用しても害のない程度まで対象物に存在している病原性のある微生物を、減らすことである。この手段として殺菌が行われることもあるが、殺菌せずに病原性を消失させることにより消毒が達成されることもあるので、殺菌や滅菌とは少し意味合いが異なる。
以下は学術的な専門用語としてはあまり使われず、より噛み砕いた、あるいは曖昧な意味で用いられることがある。
除菌は、対象物から菌を除いて減らすことである。手を水で洗うことから、ろ過などにより菌を取り除くなど、様々な程度の範囲がある。対象や程度を含まない概念である。
抗菌 (antimicrobial effect, antiseptic, antibacterial-) は、(細)菌の増殖を阻止することである。繁殖を阻止する対象や程度を含まない概念。経済産業省の定義では、対象を細菌のみとしている。そのため日本工業規格の抗菌仕様製品では、かび、黒ずみ、ヌメリは、効果の対象外になっている。JIS Z 2801
防カビ (antimicrobial effect, anti-mould) は、真菌の増殖を阻止することである。繁殖を阻止する対象や程度を含まない概念であり、対象を真菌のみとしている点が異なる。数菌にのみ効果があるものから、数百種類に効果のあるものもあり、持続期間もメカニズムもまちまちである。ぎりぎりJIS規格(JIS Z 2911)レベルの数菌にのみ効果がある防カビ剤を一般住宅で用いても、発生するかびの種類が多いため、防止効果は期待できない。防カビ表示があってもカビが発生するのはこのためである。少なくとも建築物に発生する恐れのあるカビ全てに対応できるタイプでなければ、カビを防止することは出来ない。 殺菌や除菌に用いる次亜塩素酸ナトリウムや消毒用エタノールは、直ちに殺菌効果がなくなるため、塗布しても継続的な防カビ効果は無い。
静菌 (microbiostatic effect, bacteriostatic-) は、菌を殺さないがその増殖を止めること(低温保存、乾燥など)である。対象や程度を含まない概念である。
この項目では、殺菌の方法について解説する。ただし、消毒法・滅菌法などが混在して書かれているので注意が必要。上述したように殺菌と消毒は意味合いが異なるため、消毒法に限定した方法は消毒剤に別記している。該当項目を参照のこと。
殺菌する方法には、大きく分けて、物理的な方法によるものと、化学的な方法によるものがある。
高温処理することによって殺菌が可能である。微生物は有機物から構成されるため、特に水分存在下で加熱(湿熱)すると死滅しやすい。ただし、一部の細菌が作る芽胞は極めて耐熱性が高く、100℃で沸騰させても死なないため、滅菌する際には、100℃より高い温度を用いる必要がある。
なお、電磁波には殺菌以外の有用な効果があるため、その効果を期待して用いられることがある。例えば、菌が増殖する際に発生する有機脂肪酸などによる悪臭に対しても、原因物質を分解し消臭する効果がある。また、食品に放射線を照射する場合(食品照射)もあるが、殺菌目的での食品照射は2005年現在日本では認められておらず、ジャガイモの発芽阻止目的の照射に限られている。
液体や気体を、特殊なフィルターで濾過する。フィルターにある孔の径よりも大きな微生物はフィルターを通過できないために除去される。細菌用メンブランフィルターや中空糸膜などが使用される。ただしマイコプラズマなどの小型の不定形細菌やウイルスなどには無効である。
対象に直接電界や電流を印加し、クーロン力による物理作用、電気化学反応による抗菌物質の毒性、により殺菌を行なう。
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(滅菌)エチレンオキシドやホルムアルデヒドなどのアルキル化剤の気体(ガス)や、酸化剤であるオゾンの中に、対象物を静置して滅菌する。熱に弱い器具の滅菌にエチレンオキシドが用いられる。また汚染した建物の滅菌にホルムアルデヒドガス(ホルマリン燻蒸)が用いられる。ただし使用するガスは人体に有害なものが多いので、対象物へのガスの残留や、処理終了後の排気には注意を要する。
これらは通常、液体あるいは水溶液として消毒の目的で用いられることが多い。ただし、重金属化合物や一部の殺菌剤は樹脂やセラミックなどに混ぜて使うことで抗菌樹脂、抗菌セラミックなどとして用いられることがある。
この他、カテキンなどのポリフェノールや、ペパーミントやユーカリなどの植物精油、わさびやしょうがなどの香辛料にも殺菌効果が認められるものがある。
次亜塩素酸ナトリウムなどを添加することにより殺菌を行う。
殺菌よりも消臭、乾燥を目的とする意味合いが強い。
熱湯による殺菌や、漂白剤、殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウムが主成分)を用いることが多い。業務用では紫外線殺菌灯やオゾンも用いられる。
主に次亜塩素酸ナトリウムやエタノールによるカビの除去を行う。
下水処理水や浄水での病原菌の殺菌には塩素系殺菌が古くから用いられてきた。クリプトスポリジウムなどの新たな殺菌の必要性から、オゾン殺菌、紫外線殺菌などが検討されている。[3]
まず、塩素消毒はほとんどの下水処理場では塩素消毒が採用されている。病原性大腸菌の消毒には有効な手段と考えられている。原虫やウイルスにおいて、塩素耐性が知られている。[4]
また、オゾン消毒は欧米で水道水の消毒に用いられており、日本で塩素消毒が法律で規定されているため、水道水への適用は脱臭に限定されている。下水処理やプールの消毒や食品工場の空気の殺菌などに用いられており、細菌の殺菌だけではなく塩素消毒に耐性のある原虫シストやウイルスに効力を発揮する。[3]
そして、紫外線殺菌も食品工業、医療品工業など様々な分野で利用されている。水銀灯が用いられ、紫外線を発生させ、波長250~260nmの紫外線を使用し微生物の核酸構造を破損し死滅させ、細菌、ウイルスなどすべてを殺菌する。 [3]
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