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頭部を衝撃などから保護するためにかぶる防護帽もしくは兜 ウィキペディアから
ヘルメット(英語: Helmet)または保護帽(ほごぼう)は、頭部を衝撃などから保護するためにかぶる防護帽もしくは兜のこと。
古来のヘルメットはおもに戦闘に使われる兜のことだった。現代でも軍隊や警察などで敵の攻撃から身を守るために使用されている。現代では強化プラスティックなどで安価・軽量なヘルメットを作ることが可能になり様々な場所で使用されている。落下物や飛翔物、あるいは転落・転倒の危険がある場所では安全上の理由から着用が推奨されている。やはり安全上の理由からスポーツや車両類の運転でもよく使用される。
江戸時代以前の武士がかぶっていた兜や、他にも剣道やなぎなたに用いられる面も広い意味でヘルメットの一種といえる。刀や矢で傷付けられることから頭部を保護する目的と、装飾をもって威容をあらわす目的がある。
青銅器時代から兵士の頭部を保護するための革や青銅製のヘルメットが使われていた。「ウルのスタンダード」と呼ばれるモザイク画には革製と思われるあご紐付きのヘルメットを被ったシュメールの兵士たちが描かれている。古代のヘルメットと言えばギリシアやローマの馬毛で飾られた前立付きのヘルメットが有名だが、この種のヘルメットはアッシリアの浮彫にも見ることが出来る。
落下物などから作業者の頭部を保護するために着用[注 1]する、合成樹脂を主なる原料に製作された帽子のうち、所定の検定を通過したものに対していう。通常は、単に保護帽、若しくは安全帽・保安帽とよばれ、英語ではSafety helmetと称する[1]。保護帽は、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならず(労働安全衛生法第42条)、保護帽を製造・輸入した者は、登録型式検定機関が行う型式検定(サンプル抽出したものを検定する)を受けなければならない(労働安全衛生法第44条の2)。
その構造としては、“殻”の部分である「帽体」と「内装体」から成り、内装体はさらに、保護帽を着用者の頭周サイズに合わせるための「ヘッドバンド」、保護帽の頭部への当たりを良くしたり衝撃吸収の役目をもつ「ハンモック」、保護帽の脱落防止の役目をもつ「あご紐(特に、耳の部分にあたるV字の紐を「耳紐」と呼ぶが、通常はセットで扱う)」、そして墜落時保護用(後述)のものには乗車用安全帽に同じく、帽体と内装との間に衝撃吸収ライナー(発泡スチロール製)が入れられる。
加えて、帽体内部には検定試験(後述)に合格した証として「労・検ラベル」が貼付され、型式・検定取得年月・合格番号・製造業者名・製造年月・検定区分 が表示されている。ハンモックに合繊テープを使用している型式の一部においては「環ひも」も存在するが、これは内装組み立ての際、補助的に使われるパーツである。
ちなみに、保護帽の規格では環ひもについて「調節できないこと」としているが、これは使用者が勝手に環ひもの内径を変えることによる危険を防止するためのものである。環ひもを緩めると被りは深くなる反面、頭頂部と帽体との距離は近接することになるが、そのような状態で物体が帽体に衝突すると、その衝撃でハンモックが「伸びきる前」に頭部が帽体と接触するという事故が生じて大変危険である。
一方、国家検定上の区分としては、物体の飛来・落下による危険を防止する「飛来・落下物用」、墜落・転落による危険を防止する「墜落時保護用」、電気による危険を防止する「電気用」の三種類に分類されるが、現在の墜落用保護帽は飛来落下物用も兼ねるのが普通である。併せて、近年では 折り畳めることや子供向けであることを特徴とした製品が、国家検定も取得し販売されるなどしており、これまで専ら作業現場で使用されるものでしかなかった保護帽の防災用品としての地位も築きつつある。
保護帽は、メーカーや加工業者に名入れ(ロゴマーク・社名など)を依頼したり、使用者自身がラベルに記名・貼付した状態で使用することが一般的である。また使用者が事故に遭ったりしたときのために、保護帽に名前や血液型を予め書いて着帽する。名入れはシルクスクリーンによって行われるほか、作業者の職階表示を兼ねたライン(周章)を貼付したり、玉掛作業員を判別しやすくするための緑十字(帽体上面に120〜150mm四方)の表示を行ったり、デザインステッカーを貼付するといった加工も行われ、保護帽の納入後に使用者側で 新規入場者教育修了証・担当業務・保有資格などのラベルを貼付することもある。
また、ヘルタイと呼ばれるヘルメット専用の色つきの帯を取り付けて色ごとに所属を表すこともある。そのほか保護帽に取り付けて使用できるオプション品として、防暑(または防寒)タレ・送風機・陽よけ(麦わら帽の“縁”だけのもの)などの季節用品、保護眼鏡・防災面・耳栓・イヤーマフといった保護具、ホイッスル・ペンホルダー・LEDライトのように、身近にあると便利な作業用品も用意されている。
日本では、産業用や土木工事として販売されているヘルメットであっても、道路交通法施行規則第9条の五に適合するものであれば、原動機付自転車やオートバイの乗車にも使用することができ、作業用安全帽や保護帽としてだけでなく、乗車用ヘルメットの規格にも適合している製品が市販されている[2]。
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
下記の作業において、使用者は労働者に保護帽を着用させなければならない。また労働者は、指示された場合に保護帽を着用しなければならない。
行政指導通達による保護帽の着用規定も存在する。
大きな衝撃を受けた場合や日々の使用から生じる損傷の程度によっては、耐用年数以内であっても新品との交換が必要。
作業に適した保護帽の選定が重要である。
おおむね下記の3種類に分類されるが、「全周鍔付」など特殊な形状の製品も存在する。
※ 本来は保護帽に含まれないが、関連が深いため同一項目とした。
物体の飛来落下や墜転落の恐れのない作業場所においても、作業内容によっては頭部をぶつける・切るといった災害が発生する。そのような場面において使用されるものが軽作業帽である。保護帽としての規格には満足しないため、労働安全衛生規則で保護帽の着用を定められた作業では使用することが出来ないが、反面安価であり、構造もより単純なものとなっている。当然、「保護帽の規格」に定められた あご紐 も不要であるが、これについては軽作業帽を扱う全メーカーがオプション扱いで用意している(トーヨー80型は、簡易なゴム紐を標準添付)。使用場所の一例としては、自動車工場の車体組み立て工程、狭所における機械装置の組み立て・調整作業、宅配便の集配拠点におけるロールボックスへの荷の積み卸し作業(ボックスの中間棚や、前面の蓋を掛けるためのバーに頭部をぶつける災害が非常に多い)などが挙げられる。なお、交換時期の目安や手入れなど、取扱法については保護帽に準ずるものとする。国内における軽作業帽の製造・販売は平成初期に開始され、布帽子の代替としてや“国家検定品に比較し安価なヘルメット”として、その普及を見せている。
乗り物に乗る時に用いられるヘルメットである。乗員が障害物や地面にぶつかる時の運動エネルギーを吸収、また、対貫通防護により頭部の傷害を防ぐためのものである。フォークリフトなどの場合は作業用のものが用いられている。
オートバイの乗車中は法令でヘルメットを着用することを義務づけている国や地域が多く、オートバイ用の製品には強度や保護性能に規格が定められている。
世界的に(ヨーロッパでも)、ライダーたちの間では、SHOEIとARAIのヘルメットが高い評価を得ていて、レースでも大半を占める。ARAIのヘルメットは転倒時に道路表面などにひっかかったりして首を痛めたりしないように突起物を極力減らし卵型であることをポリシーとしている(そのかわり、外見がとても保守的)が、SHOEIは新たな機能や斬新な外見、表面のパーツ(小さな突起物)を積極的に採用する傾向がある。
自動車のモータースポーツにおいても、事故や火災から頭部を守るためにヘルメットの着用が義務づけられており、公式競技やそれに準ずる競技、その他主催者が指定するイベントでサーキットなどを走行するには、国際的には国際自動車連盟(FIA)、日本では日本自動車連盟 (JAF) が定める競技規格ヘルメットの装着が必要になる。これ以外の目的でサーキットなどを走行する場合でも、低速の体験走行やパレードのような危険が予想されない場合を除き、オートバイ用を含めた何らかの規格に適合するヘルメットの装着が必要である。
F1など乗員の頭部が外部に出ている場合はオートバイ用のフルフェイスヘルメットに似た形状である(二輪用に比べ上下方向の視界の広さが必要ないため、眼の開口部が細長くなっている)。通常の車両の場合は顔が直接外気に曝されることがないため、ジェット形が使用される場合もあるが、この場合、火災から顔面を守るために、耐火繊維製のフェイスマスクを併用することが多い。ラリーなど、コドライバーとの会話が必要な競技では、インカム(ヘッドセット)が組み込まれているヘルメットが使われる。
オートバイ用のヘルメットと異なり、自動車競技用ヘルメットは耐火性能も重視されるため、材質が工夫されるほか、開口部は小さく、火炎の侵入を防止するための鼻当てが備えられる(逆にオートバイ用では、自動車競技用ほど耐火性能は重視されない)。また、オートバイ用は歩行者などへの衝突を考慮して外面に金属部品を用いないが、自動車競技用ではこの問題は無いため金属部品が使用される。そもそも規格自体が異なるため、自動車用ヘルメットをオートバイに用いた場合は法的な保護を受けられない可能性もある。2010年代以降は、頚椎部の保護を目的とするHANSとの接続のための端子(HANSアンカー)を備えることも求められるようになった。
警察官の所属部署(交通機動隊・高速道路交通警察隊、警察署の事故処理車など、自動車警ら隊では被らない)によってはパトカー乗車中にもヘルメットをかぶっている。
オーストラリア、カナダ、フィンランド、アイスランド、イスラエル、スウェーデン、ニュージーランドと、アメリカの37の州で自転車乗車時のヘルメット着用が義務化されている。アメリカの場合、オートバイよりも自転車の方が着用義務が厳しい。
日本では2008年6月の道路交通法改正で13歳未満の児童、幼児のヘルメット着用が保護者の努力義務となった[3]。また、同年4月から京都府では、自転車に同乗する幼児のヘルメット着用が条例で義務付けられている[4]。法的にそれ以上の着用義務はないが、主にサイクルスポーツでヘルメットが使われている。安全性の規格としてSG規格がある他、ロードレースに出場するにはJCF(日本自転車競技連盟)認定のヘルメットを着用する必要がある。
一般的なものは発泡スチロール成形のインナーシェルに薄いプラスチックのアウターシェルを被せており、転倒の際にはこれらを破損させる事で頭部への衝撃を緩和する。全体に通気用の穴が開けられているが、この構造は耐貫通性の基準を満たしていないためオートバイ用ヘルメットとしては認められない。
2007年に献体による自転車用ヘルメットの側面衝撃実験を行ったところ、側頭部を覆っていない八品目中七品で側頭部への接触(うち一つで骨折)が確認された[5]。
マウンテンバイクでも同様のヘルメットを使う事は多いが、マウンテンバイク向けとして保護面積を増やしたものも使われている。また、ダートジャンプ等の危険度が高い種目ではABS樹脂のシェルを持つスケートボード用と同様のものが使われ、本格的なダウンヒルではFRPのシェルで頭部を完全に保護するフルフェイス形が使われる。
自転車通学を認めている日本の小学校・中学校・高等学校では、自転車での登下校時にヘルメット着用を定めている場合が多い。特に中学校では自転車通学する人も多くヘルメットを付けている人も多い。東海地震に係る地震防災対策強化地域などでは徒歩通学の小学生にも登下校時にヘルメットを着用させている。構造的には保安帽と大差ないものと、自転車用・乗車用ヘルメットの基準を満たしているものもある。多くは前面に校章のシールなどを付けている。
ヘルメットは製造後時間が経つにつれ、シェルや衝撃吸収ライナーが劣化してくる。見た目での劣化状況は分かり辛いが、新品購入時よりも緩くなれば寿命の目安とされる[6]。日本のヘルメットメーカー二社は北米市場で購入後五年、製造後七年の品質保証を付けて販売しているが[7]、日本市場ではSGマークの表示有効期間[8]が乗車用ヘルメットでは使用開始後(購入後)三年となるため、期限内での交換を推奨している[9]。
また、ヘルメットは衝撃に対して潰れることで頭部を保護しているため、一度でも強く衝撃を受けたものは外見上大きな損傷が見られなくても保護能力を失っており、交換が必要になる。
転落や衝突といった危険を伴うスポーツでは、それぞれの用途に適したヘルメットが使用される。
アメリカンフットボールは非常に激しいボディコンタクトを伴うスポーツであり、頭部を保護するためにヘルメットの着用が義務付けられている。帽体表面がプラスチック製で、衝撃吸収用のパッドが内蔵されている点ではモータースポーツ用のヘルメットと類似しているが、顔面部分は金属の棒を格子状に組み合わせたフェイスガード(フェイスマスクとも)となっている。フェイスガードの形はポジションにより異なり、クォーターバック等のパスに関わるポジションでは視野を重視して目の部分が広く開いたフェイスガードが使われることが多く、逆に基本的にボールを扱うことの無い攻守ラインメンでは安全性を重視して格子の目が細かく頑丈で、顔面に加えて喉も保護できるよう大型のフェイスガードが使われることが多い。またフェイスガードには、ヘルメットと同じく頭部を保護するために用いられるマウスピースがストラップで吊られていることが多い。
ヘルメットはストラップで頭部に固定されるが、純粋な顎紐状のストラップでは激しいコンタクトには耐えられず、ヘルメットがずれた場合に首を絞めてしまう恐れもあるため、より固く固定できる顎当て(チンカップ)付きのストラップとなっている。
プレー中の勢いのある動きの中でフェイスガードを掴まれると首に大きな力がかかって脊髄損傷に結びつく可能性が高く、フェイスガードを掴むことはグラスピング・ザ・フェイスマスクという反則となっている。特にフェイスガードを掴んで力任せに引っ張るような悪質な場合には退場が宣告されることがある。
またタックル・ブロックの際に、手や肩を使わず、頭突きのようにヘルメットだけで相手にコンタクトすることはスピアリングという反則となっている。タックル・ブロックをする側の選手はすべての衝撃が首にかかるために脊髄損傷に結びつく可能性が高く、タックル・ブロックを受ける側の選手も堅いヘルメットをスピアリングの名の通り槍のように突き込まれて負傷する可能性が高く、これらを予防するための措置である。
落馬の際の頭部負傷防止のため、騎手、または調教等において競走馬に騎乗する者が着用する。日本中央競馬会(以下JRAとする)では、施行規程第39条第1項および第2項、同規定第95条第3項により帽色、種類等が定められている。帽色は枠番号によって8色に区分され、さらに同一枠番号に同一服色の馬が複数いた場合に第2色、第3色の染分け色が指定される。レースではJRAが備え付けた数種類のうち、騎手が希望した物が貸与される[10]。海外競馬においては勝負服のデザインに合わせた色のヘルメットを着用していることが多い。(JRA所属馬が海外でレースに出走する場合も同様)また美浦トレーニングセンターなどの調教場では、騎手や調教助手などの職種により決められた帽色のヘルメットを着用する[11]。
JRAで使用されるヘルメットは、脳神経外科の医師、メーカー、JRA等が共同開発したもので、骨折や損傷防止を第一とした堅牢なものではなく、柔らかい芝やダートといった路面での衝撃緩和による脳挫傷の防止に重点が置かれているため、発泡スチロール、ウレタン、皮革といった衝撃吸収材が素材に用いられている[12]。
馬産地として知られるアメリカ合衆国ケンタッキー州では、2004年2月4日のマイケル・ローランド騎手の落馬死亡事故に端を発し、安全性を求める声が大きくなった。事故以前にも州競馬機関規定のヘルメットは、フィット感に乏しく、レース中にずれて視界を遮断するなど、騎手の間から疑問の声が多く挙がっていたという[13]。事故から2週間後の16日にはヘルメット規制が撤廃され、2006年9月にはASTM規格の基準を満たしたヘルメットの着用を義務付ける新規定が施行された[14]。
ボートレーサーも、レース時に転覆等のアクシデントに備えてヘルメットを装着する。かつてはアメリカンフットボール用のものに似た形状のものが使われていたが、現在は自動車用のフルフェイス型に似たタイプのものが使用されている。ただ、視界確保のため開口部が広く取られているほか、モーター音を聞き取りやすくするため側面に穴が開けられているという違いがある。なお2021年現在、ボートレース用ヘルメットはアライヘルメットのワンメイクである[15]。
ウィンタースポーツ用に設計、製造されたヘルメット。2010年頃までに欧米のスキーヤー、スノーボーダーの大多数がヘルメットを着用するようになっている。
主にローラースケートやスケートボード向けに製造された、軽量なプラスチック製ヘルメット。BMXでもレース以外では、このヘルメットが多く使われている。アグレッシブ以外のインラインスケートでは、これよりも通気性の良い自転車用ヘルメットを使う事が多い。
打者、走者、捕手などに着用が義務付けられている。また近年では投手用ヘルメット(ヘッドギア)を着用する選手もいる[16]。
ラグビー、格闘技等のコンタクトスポーツではヘルメットは使用されず柔らかいヘッドギアが使用される。詳細はリンク先を参照。
戦闘に巻き込まれる可能性のある兵士達は軍用ヘルメットを着用するのが通例である。貫通力の高い小銃弾に対する防御は困難であるため第一次世界大戦前まではヘルメットは余り使用されず、一部で皮製ヘルメットが使われる程度であった。しかし第一次大戦中に榴弾や榴散弾の破片から兵士の頭部を保護する必要性が生じ、各国軍で採用されだした。以降、ベトナム戦争の頃までは材料として主に鋼鉄が使われていたが、近年はケブラーなどの繊維を数十枚重ね、フェノール樹脂を含浸させて成形したものが主流である。繊維を使った現代の軍用ヘルメットは鋼鉄製のものと比べると軽量だが防弾性能自体はあまり向上しておらず、小銃弾の貫通を防ぐことは依然として難しい。
第一次大戦当時は各国ごとに形状にバリエーションが見られたが、第二次世界大戦後は冷戦により、東西両陣営国の軍隊がそれぞれアメリカ軍・ソビエト連邦軍の軍制を取り入れ装備供与などを受けるようになると、西側陣営はアメリカ軍の、東側陣営はソ連軍の軍装の強い影響を受けヘルメットも統一されていく。
アメリカ陸軍は当初イギリス陸軍と同じ皿形のブロディヘルメットを使用していたが、1942年に独自デザインのM1ヘルメットに変更する。このデザインは第二次大戦後に西側諸国の主流となった(例:陸上自衛隊66式鉄帽)。しかし、20世紀末には耳まで保護する旧ドイツ軍様式(シュタールヘルム)がより優れているとして、以降同デザインを使用するようになった(PASGTヘルメット、俗称「フリッツヘルメット[注 2]」)。アメリカ軍のこの制式採用と同時期に冷戦は終結し、アメリカ軍の影響がより強まったことで、この「フリッツヘルメット」は各国軍(例: 陸上自衛隊88式鉄帽)や特殊部隊に広まり、共産圏である中国人民解放軍でも採用された[注 3]。旧ソ連時代は東側諸国に影響を与えていたロシア連邦軍でも21世紀に入ってフリッツヘルメット(耳を覆う部分がアメリカ軍のものより若干耳から離れている)[17]が、また旧ソ連構成国のカザフスタン軍や、アメリカとは敵対関係にあるミャンマー軍でもフリッツヘルメットが採用されている[18]。ベトナム軍もフリッツヘルメットを採用していることが2010年の軍事パレードで確認された。このように、現代の主要国軍の主要装備ヘルメットはほとんどがフリッツヘルメットに移行、ないし移行中である(一例として韓国軍はM1ヘルメットを未だ使用している[19]が、フリッツヘルメットへの置き換えが進んでいる)。
第二次大戦の頃は木の枝や草を挿して擬装するためのネットやバンドを使っていたが、その後迷彩戦闘服が普及すると、帽体の上から迷彩服と同じ柄の迷彩カバーをかぶせることが多くなった。迷彩カバーにも木の枝葉を挿す為のボタンホール状の穴を有すものがある。なお、記録映像や写真などで主にアメリカ軍の兵士がヘルメットの顎紐を結ばず、垂らしたりヘルメットの縁に掛けている場合があるが、これは銃弾が当たった衝撃や、砲弾や爆弾の着弾により起こった爆風の風圧により、顎に掛けている顎紐に首を引っ張られて脊髄損傷するのを防ぐためである。紐を掛けていなければヘルメットが飛ぶだけで済むという配慮であった。なお当時のアメリカ軍では、M1ヘルメット顎紐用のオプションとして、強く引っ張られると自動的に外れるバックルも存在した。
日本軍(陸軍・海軍)のヘルメット、九〇式鉄帽の帽体はクロムモリブデン鋼を用いた当時としては硬質で比較的高性能なものであった。これは当初、兵器に分類して「鉄兜(てつかぶと)」と称していたが、その後被服の分類に移された際「鉄帽(てつぼう)」に改称された。その名残で自衛隊では材質が鋼鉄からケブラーFRPに変わった現在でも、制式名称として「鉄帽(88式鉄帽)」と称している。
パラシュート降下を行う空挺部隊では、降下の際パラコードが引っかかって不開傘事故を起こすことを防ぐため周縁のつばの無いものを使う。他に降下時にフルフェイスのヘルメットを着用する例も見られる。 いずれにしてもヘルメットは重く、敏捷な動きを制限したり屋内などでの近接戦闘では邪魔になったりするので、野戦に従事しない特殊部隊では正規戦用のヘルメットを使わないことがある。そのような場合ではABS樹脂などの素材を用いた、防弾能力を持たない軽量な耐衝撃ヘルメットが使用されている。また登山用ヘルメットを流用する場合もある。
軍用機乗員もヘルメットを着装する。こちらは野戦用と違い、基本的には操縦室など機内で頭部を周囲にぶつけたときに保護する目的である。第二次大戦時までは革製または布製の頭巾が主流で、爆撃機などの大型機種ではスチールヘルメットも用いられたが、戦後はFRPなどプラスティック製のヘルメットを着用するようになった。 また、多くは強い日光や紫外線から目を保護する為の濃色バイザーが内蔵されている(現在では軽量化のため外付け式になっているものもある)ほか、無線電話用の支持アーム付きマイクや酸素マスクが付けられる作りになっている。特に戦闘機のパイロット用は加速度 (G) により増大するヘルメットの重量が首に負担を掛けるので軽量化が図られる一方で、パイロットの視界に直接情報を投影するヘッドマウントディスプレイ (HMD) を装備した物も登場している。
戦車や装甲車乗員も車内での頭部保護用としてヘルメットを着装する。多くの製品は車外戦闘よりも、狭い車内での衝撃吸収や、車内通話用のヘッドホン・マイクの装備を主な目的としている。ロシア(ソビエト連邦)から技術供与を受けた国々やドイツ連邦軍では、独特の緩衝パッドが設けられた布製または革製のヘルメットを使用する。
軍用と用途が似ているが、耐弾性を備えるものは重いためもっぱら特殊部隊などが使用する。暴徒鎮圧用の物もよく見られ機動隊等が装備する。顔面を保護するバイザーなどが取り付けられていることが多い。また一部の国の警察では警帽としてヘルメットを採用している。付随して頸部への打撃を分散するプロテクターが付いている場合が多い。
白バイ隊員やパトカー要員がかぶる物、また交番勤務者が黒バイ乗車の際かぶる物は、警察庁仕様ではあるが、公道を走るため「オートバイ用ヘルメット」である。特に白バイ隊員が被る物は、アライヘルメットの「CT-Z」がベースになっていることで知られる。
日本の新左翼の参加するデモや集会では、色とりどりの工事用ヘルメットがみられた。「ゲバヘル」等とも呼ぶ。これらは武装闘争時に機動隊の警棒から頭を保護するため、また別セクトとの内ゲバの際に角材から頭を保護したり所属セクトを明らかにしたりするために用いられた[20]。ヘルメットは、セクトに応じて色分けされ、太字でセクトの略称が記載されている。
ヘルメットに加え、公安や敵対セクトから身元を割り出されることを避けるために口鼻をマフラーやガーゼマスクで覆い、サングラスを着用することが多いが、顔全体を覆う二輪車用のフルフェイスヘルメットが用いられることは殆どない。
最盛期には新左翼に対抗した民青(黄色)や社青同協会派のような既存左翼も使用し、更には右翼系・宗教系の団体(日本学生同盟:カーキ色、新学生同盟(創価学会):白)でも一部で用いられた。
新左翼主要各派の主なデザインには以下がある。大半は正確には各学生組織のものである。
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