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桁部分にトラス構造を使った橋 ウィキペディアから
トラス橋(トラスきょう、英: truss bridge)は、主構にトラス(三角形の集合体)を用いた橋梁の種類[1]。
トラスは、三角形になるように棒材を両端で繋いだ構造を多数組み合わせたものであり、それを繰り返して主構を構成する。トラス橋の特徴はトラス部材には軸力のみが生じるとして設計される点である[1]。
材料は木材、鉄、鋼鉄などのものがある。ある程度以上の規模の橋は鋼鉄が主流である。鉄を使ったものの場合多くは箱型断面やH型断面の溶接構造が一般的だが、H形鋼や山形鋼が組み合わされた構造の場合もある。近年コンクリート製のものも作られるようになった[要出典]。
トラス橋の設計に伴う構造計算では部材のつなぎ目は一点であり、自由に回転できるようになっているものとして考える[要出典]。理想的なトラスでは荷重や温度変化に伴う部材のたわみや伸縮はこの接続点部分に集約される[要出典]。実際の橋梁においては、初期のトラス橋では理論と同じピン接合の構造が見られたが、現在ではガセットプレートによる剛結接合が一般的である[要出典]。
現在では50 mから100 m程度の径間で架設されることが多い[要出典]。
多くの場合、経済性や景観面でアーチ橋との比較の上、採否が決定される。同じ長さの場合、鈑桁橋よりも軽量となるが、架設に手間がかかる[要出典]。
なおトラス構造は他の形式の橋梁でも部分的に用いられることがあり、吊橋の補剛桁部分に用いたものは補剛トラス吊橋(例 : 明石海峡大橋)と呼ぶ。一方でアーチ部分がトラス状になったものはブレースト・リブ・アーチ橋(例 : 荒川橋)、橋脚がトラス状になったものはトレッスル橋(例 : 旧余部橋梁)と呼ぶ[要出典]。
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トラス橋は、その支持条件(支持方法)により単純トラス、連続トラス、カンチレバー・トラスに分類される[2]。
また、トラスは腹材の組み方(構造、形式)によって、ワーレン(Warren)、プラット(Pratt)、ハウ(Howe)、ダブル・ワーレン、Kなどに分けられる[2]。ワーレントラスで造った橋はワーレントラス橋、プラットトラスで造った橋はプラットトラス橋....のように、トラスの種類で分類することもある。
トラス橋は分類が多く、各分類について説明することも多いので以下、それぞれ節を設けて説明する。
2つの橋脚もしくは橋台でトラス構造の桁を支えるもの。トラス橋として最も簡単な形式である。
ひとつの長い桁をふたつの橋脚もしくは橋台間で完結させず、3つ以上の橋脚・橋台で支えるもの。
ゲルバートラス (Gerber truss) またはカンチレバートラス (英: cantilever truss) とは、ゲルバー構造(カンチレバー構造)を採用したトラス橋である。通常の橋は橋台や橋脚を下から支える支点として使いその上に桁を架けるが、カンチレバー橋は、両側の橋脚から空中に突き出したカンチレバー(定着桁、碇着桁)がヒンジを介して吊桁(吊径間、Suspended Span)を保持するものである[3]。通常のトラス橋は下弦が引張力を、上弦が圧縮力を受け持つが、カンチレバートラス橋の片持ち梁部分は逆で、上弦が引張力を、下弦が圧縮力を受け持つ。主として大きなスパンが必要な箇所に架けられる。
カンチレバー橋はハインリッヒ・ゲルバーが考案したため、日本ではゲルバー橋とも言われる。
載荷弦とは、上弦(水平方向の部材のうち、上側)・下弦(同・下側)のうち、荷重が乗る側のことである。鉄道橋でいえば、線路が載っている側である。
デッキトラスともいう。上弦が載荷弦となっているもの。桁内を通行することがないため、主構(上・下弦材およびそれらを結ぶ垂直材・斜材。即ち桁の側面)同士をつなぐ対傾構を設置することで強度を増すことができる。また桁の高さの分だけ橋脚の高さを抑えることができるため、経済的である。桁下に十分な空間がある場合などに採用される。道路橋の場合は、下路式に比べてトラスが自動車運転者の視界を妨げないという利点がある。
スルートラスともいう。下弦が載荷弦となっているもの。主構の内部を通行する。跨線橋や跨道橋、河川横断部など桁下の空間に余裕が少ない場合に採用される。道路橋の場合、トラス内部を自動車が通行することになるため、運転者の視界を狭める、橋幅が狭い場合、トラスに自動車のミラーが接触する恐れが有るため、大型車同士が離合出来ない、通過車両に車高・車幅制限がかかる、豪雪地の場合トラスに付着した雪や氷の塊が落下し、車両に直撃するといった短所がある。
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上下の載荷弦、不載荷弦ともに直線かつ平行であるもの[4]。現代での採用例が多い。
不載荷弦(荷重が載らない側の弦材)が曲線を描くもの。不載荷弦にかかる応力はトラスの中央部でもっとも大きく、端部でもっとも小さいため、その負担に応じて桁高を変化させたものである。多くは格点(部材の結合点)を直線で結ぶ、折れ線状である。長スパンとなった場合には不載荷弦端部の桁高を低くでき、中央部の断面積を平行弦トラスよりも小さくできるので、同じスパンの平行弦トラスよりも軽量化できる(平行弦トラスの不載荷弦中央部は、曲弦トラスの場合よりも高い強度が必要となる)。第二次世界大戦前の採用例が多い。
曲弦トラスの別称であるが、19世紀末から20世紀初頭の日本において多く架設された、セオドア・クーパーが設計した標準桁(当時は標準桁を各地で使用した)をクーパートラス (Cooper truss) という。径間100フィートから300フィートまで10種が設計され、うち9種263連が架設された。特定の形の呼称ではないが、径間200フィートの単線下路曲弦プラットトラス(かつ中央パネルの3格間の上弦部分が直線状となるシュウェドラートラス (Schwedler truss)が92連ともっとも多く架設されたためにその代名詞的存在となり、とくにこれをクーパートラスと呼ぶことがある。
上弦が放物線に近い形状の桁をパーカートラス (Parker truss) という。日本の国鉄では200フィートの複線用トラス桁で多く採用されていた。
通常、斜めに立ち上がる端柱を垂直にしたもので、「切り詰める」という意味の英語「truncate」に由来。下路式トラス橋で用いられる。川の流れに対して斜めに橋を架ける斜橋に多く用いられ、この場合、主構を真横から見ると、一端は斜めに、他端は垂直になっている。日本では比較的古い鉄橋でわずかに採用されたのみで、現在新たに架橋されるものでは採用されていない。
左右の主構のみで、上横構や橋門構がないもの。比較的に高さ低いトラス主構を採用して小支間の中路・下路トラス橋に見られる[4]。
プラットトラス (Pratt truss) とは、斜材を橋中央部から端部に向けて「逆ハ」の字形状に配置したものである。垂直材に圧縮力、斜材に引張力が生じる。この力の作用の仕方は、ハウトラスと逆である。斜材がK字形、Y字形となるものもあり、それぞれKトラス、Yトラスとも称する。端柱(端部の斜材)の有無は問わないが、端柱がある場合は端柱が、ない場合は端部の斜材だけ「ハ」の字形状になる。これも「逆ハ」の字形状になるものはトレリストラスといい、構造が異なる。
ピン結合に適した構造で、日本では明治時代によく採用されたが、やがてより部材が節約でき軽量化を果たせるワーレントラスに移行した。アメリカでは長さ250フィート(76.2メートル)までの鉄道橋を、木橋から鋼橋に架け替える際によく採用された。
マサチューセッツ州のトーマス・プラット (Thomas Willis Pratt) とその父、ケイレブ・プラット (Caleb Pratt) により考案され、1844年に特許が取得された。
径間が長いプラットトラスでは、部材が長大化することによる断面増・重量増、また圧縮材が長大化することにより部材が座屈する可能性が増すことから、部材が長大にならないように格点を追加し、そこから補助的に部材を挿入することで格間を短くしたものがある。それを分格トラスと総称し、さらにいくつかの種類に分かれる。
ワーレントラス (Warren truss) とは、斜材の向きを交互にしたトラス橋で、トラスが逆「W」形なのが特徴。プラットトラスと異なり垂直材がないため鋼材が節約でき、安価で軽量となる。斜材は橋中央部から端部に向けて「ハ」の字にあたる部分が圧縮力を、「逆ハ」の字にあたる部分が引張力を負担する。中央の「V」字形になる部分では活加重に応じて両者を負担する。
長スパンとなった場合には桁高が高くなり、それに比例して各部材が長く、太くなってしまうため副材として垂直材を設けることがある。垂直材は、端部から中央部にかけて、引張力と圧縮力を交互に負担する。
日本では、明治初期に小さなものが使用された後、しばらくはプラットトラスが主流となったが、昭和に入って再び使用されはじめた。
ジェームス・ワーレン (James Warren) とウイロビ・モンザニ (Willoughby Theobald Monzani) により1848年、特許が取得された。
ダブルワーレントラス (Double Warren truss) とは、斜材をすべて「X字形」に交差したもの。斜材への負担のかかり方は、通常のワーレントラスと変わらない。垂直材を追加したタイプもある。日本では明治時代に架けられた鉄橋のうち、1径間(1スパン)が比較的長い箇所では、ワーレントラスを採用すると強度が不足するため、強度を高められたダブルワーレントラスが採用された。しかし、径間や強度の割に多くの鋼材を要するため、技術が進んだ大正時代以降は採用が減少した。なお、ダブルワーレントラスをラチストラスと称することがあり、長支間へのトラス橋として再び採用されている[6]。
ラティストラス (Lattice truss) は、部材を格子状に組んだものである。主として木材が使用され、施工が容易であるとともに強固である。日本では1917年に国鉄でいくつか採用されたが、その理由は大型鋼板が入手できないことによるガーダー橋の代用品的存在であった。
キングポストトラス (Kingpost truss) とは、下弦が三角形の底辺を、上弦が三角形の2辺を構成し、三角形の頂点から下弦に向けて垂直材を備える、もっともシンプルなトラス橋である。垂直材をキングポスト(真束、しんづか)といい、下弦とともに引張力がかかる。斜材には圧縮力がかかる。スパンの短い橋で使用される。
ワデルトラス (Waddell truss) とは、キングポストトラスの分格トラスである。単純な構造であり、架橋現場での施工も容易。主として鉄道用の橋梁として使われた。
1882年から1886年まで東京大学で土木工学を教授し、『日本鉄道橋梁論』の著作もあるジョン・アレキサンダー・ロウ・ワデルが考案し、特許を取得した[9]。
クイーンポストトラス (Queenpost truss) とは、キングポストトラスを水平方向に拡大する際に、トラス部分を分割し、水平材で延長したものである。古い橋梁の補強として、下部に施工されることがある。
バートラス (Burr Truss) またはバー・アーチ・トラスとは、アーチとトラスとを組み合わせることで強度を上げた構造である。トラスは橋を構造物として保持するためのみに働き、荷重はアーチが負担する。主として屋根付橋に使用された。
セオドア・バー (Theodore Burr) が1804年に考案し、1817年4月3日に特許を取得した。
ハウトラス (Howe truss) とは、斜材を橋中央部から端部に向けて「ハ」の字形状に配置したトラス橋。垂直材に引張力、斜材に圧縮力が生じる。この力の作用の仕方は、プラットトラスと逆である。長くなる斜材が圧縮力を受け持つため、鋼製のトラス橋には採用されず、もっぱら木製の橋のみに採用される。端柱(端部の斜材)の有無は問わない。
マサチューセッツ州のウイリアム・ハウ ( William Howe) が考案し、1840年に屋根付橋の設計として特許を取得している。
アラントラス (Allan truss) とは、パーシー・アラン (Percy Allan) がハウトラスをベースに考案したもの。
ブラウン・トラス (Brown Truss) とは、上弦と下弦が平行である平行トラス。圧縮力がかかる部分に木材を使用して上弦と下弦とを結び、引張荷重がかかる、路床をつり下げるロッドに鉄を使用する。垂直方向の圧縮力を受ける部材はない。屋根付橋で用いられる。
ジョサイア・ブラウン・ジュニア (Josiah Brown Jr.) が考案し、1857年に特許を取得した。
ペンシルベニアトラス (Pennsylvania truss) とは、曲弦の分格トラスである。
ホイップルトラス (Whipple truss) は、プラットトラスの一種で、斜材にはすべて引張力がかかる。特徴的なのは、引張力を受ける部材が長く、多くの場合には細いことである。また、トラス部分は斜材の角度が浅く、二つ以上の支柱間を跨いでいる。
ボルチモアトラス (Baltimore truss) とは、平行弦の分格トラスである。圧縮力の加わる斜材が歪むのを防ぐために、載荷弦側に副材を配置する。単純で強度があり、鉄道橋で使用される。
ペグラムトラス (Pegram truss) とは、ワーレントラスとパーカートラスを組み合わせた形状をしている。上弦の部材はすべて同じ長さであり、対応する下弦の部材は上弦よりも長い。上弦と下弦を一組として考えると、その長さに差があるため、各支柱間(パネル)は長方形にはならない。パーカートラスで垂直になるべき部材は、側面から見て中央に向けて60 - 75度の角度で斜めに設置される。
ジョージ・H・ペグラム (George H.Pegram) が考案し、1885年に特許を取得した。
ボウストリングトラス (Bowstring truss) とは、上弦と下弦がそれぞれ弓(ボウ)と弦(ストリング)のような形状となっているもの。特に下路式の場合には端部が大きな開口部となり端部の強度に難が生じるため、現在ではほとんど採用されない。
日本では、1890年代にドイツのハーコート製のプレハブ式のものが70連ほど導入された。プレハブ式であったのは、組み立てに簡便なことを狙ったもので、そのためにピントラス構造であった(ドイツ国内では剛結合が一般的であった)。九州鉄道は47連を導入したが、その後、車両の大型化に伴い架け替えの必要が生じた。架け替えの理由は部材の劣化ではなく、単に設計荷重が少ないためだったので、それでもよい道路橋などに転用された。
下路式のタイド・アーチ (Tied arch) と同じとする見方もあるが、下路式タイド・アーチは基本的にアーチ部分と路床(補剛桁)が圧縮・引張荷重を負担するのに対して、本形式はトラス部分でも圧縮・引張荷重を受ける。トラスの組み方には、プラットトラスとワーレントラスがある。
スクワイア・ホイップル (Squire Whipple) が1840年に特許を取得している。
フィンクトラス (Fink truss) とは、既存の桁に、トラス構造を用いた補強を施した橋である。用いるトラスの形状には、キングポスト形やクイーンポスト形などがある。
アルバート・フィンク(Albert Fink)が1860年代に考案した。ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道によく見られる。
ベイリー橋 (Bailey bridge) とは、軍事用の、プレハブ式の橋。部材は標準化されており、必要に応じて長さを加減できる。
ポストトラス (Post truss) とは、ワーレントラスとダブル・インターセクション・プラットトラスを融合させた形式である。
シメオン・S・ポスト (Simeon S.Post) が1863年に考案し、特許は取らなかったが、ポスト・パテント・トラスと称されることがある[10]。
ボルマン・トラス (Bollman truss) とは、トラス橋と吊り橋の要素を持つ形式である[11]。下弦(載荷弦)はそれぞれ独立した錬鉄製の引張強度用メンバーによりつり下げられており、これを吊り橋のハンガーロープと同様と見ることができるが、上弦は鋳鉄を使って圧縮に対応している。
独学で鉄道橋梁技術者となったウェンデル・ボルマン (Wendel Bollman) が考案し、1852年に特許を得たもの。全鉄製の鉄道橋として初めて設計に成功したものである。
レンティキュラートラス (Lenticular truss) またはレンズトラス (Lens truss) は、水平方向の圧縮力と引張力が釣り合うため、それらの力はアーチを支える橋脚や橋台には伝わらない。これは、ほとんどのアーチ橋と同じ性質である。そのため、トラスを地上で組み立ててからジャッキアップして架橋するという施工方法をとることができる。
19世紀にイザムバード・キングダム・ブルネルにより鉄道用の橋梁として考案された。日本で架橋されたのは3例のみであり、下記の南河内橋が唯一の現存例である。
三弦トラスとは、断面が三角形となったトラス橋である。日本では、水管を弦材として用いる形で水路橋に多用される。
フィーレンデールトラス (Vierendeel truss) とは、梯子状の主構を持つ橋。部材を三角形に組んでピン結合する一般のトラスと異なり、部材に曲げの力を加えることで斜材をなくし、剪断力が働かないようにしたものである。トラスという語句が入っているが、部材は剛結されており、ラーメン橋に分類される。
アーサー・フィーレンディール (Arthur Vierendeel) が考案した。
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