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アメリカの漫画『バットマン』に登場する架空のキャラクター ウィキペディアから
ジョーカー(The Joker)は、DCコミックスの出版するアメリカンコミック『バットマン』に登場する架空のスーパーヴィラン。ビル・フィンガー、ボブ・ケイン、ジェリー・ロビンソンによって創造され、1940年4月の"Batman #1"で初登場した。
ジョーカー The Joker | |
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ジャック・ニコルソン演じる映画版をモデルとした蝋人形(アイルランド国立蝋人形館) | |
出版の情報 | |
出版者 | DCコミックス |
初登場 | Batman #1 (1940年4月25日) |
クリエイター | ボブ・ケイン ビル・フィンガー ジェリー・ロビンソン |
作中の情報 | |
本名 | ジャック・オズワルド・ネイピア |
所属チーム | インジャスティス・ギャング インジャスティス・リーグ |
著名な別名 | レッドフード |
能力 |
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ビル・フィンガー、ボブ・ケイン、ジェリー・ロビンソンによって創造され、"Batman #1"(1940年4月25日)で初登場した。初登場時に一話限りで死ぬ予定だったが、編集上の介入によって免れた。ジョーカーは犯罪の首謀者として描かれ、歪んだユーモアを持つサイコパスとして登場した。コミックス倫理規定委員会による規制に対応して1950年代はイタズラをするマヌケなキャラクターになり、1970年代に暗いキャラクターに戻った。
バットマンの最大の敵として名高いジョーカーは、“Clown Prince of Crime”(犯罪界の道化王子)、“the Jester of Genocide”(虐殺する宮廷道化師)、“the Harlequin of Hate”(憎悪するハーレクイン)、“ace of spades”(スペードのエース)など様々なニックネームで呼ばれる。DCユニバースの進化の間に、ジョーカーの解釈およびバージョンは、次の2つの形式をとっている。オリジナルの知性と歪んだユーモアを持つサディスティックなサイコパスと、1940年代から1960年代にかけて人気があった、1960年代のテレビシリーズのような無害なイタズラ泥棒である[1] 。服装はロングテール、パッド入りショルダージャケット、ネクタイ、紫のスーツ、手袋、時々つばの広い帽子、尖ったつま先の靴、ストライプのパンツやスパッツである。
数十年の間に様々なオリジン・ストーリーが生まれた。基本的なオリジンでは、工場の化学薬品の溶液に落ちて真っ白な皮膚、緑の髪の毛、裂けて常に笑みを湛えた口に変化した。また、ジョーカーは超人的な能力を持っていない。カミソリのついたトランプ、笑気ガス、酸を噴霧する花などの有毒物質の調合、兵器を開発する化学工学の専門知識を駆使する。ジョーカーの性格や外観は、バットマンのアンチテーゼとして完璧な敵であると批評家によって考えられている。
大衆文化の中で最も象徴的なキャラクターの一つとして[2][3]、ジョーカーはこれまでに創造された最も偉大なコミックのヴィランと架空の人物の中に挙げられている[4][5]。キャラクターの人気から彼の衣類やコレクターアイテムとして多様な商品が存在する。
ヴィクトル・ユーゴーの小説を原作とする映画『笑ふ男』(1928年)の俳優、コンラート・ファイトのスチール写真はジョーカーを創造するきっかけになった。その製作者たち(ボブ・ケイン、ビル・フィンガー、ジェリー・ロビンソン)は、「実際は誰がジョーカーを思いついたのか」について長い論争を続けた。
フィンガーは『笑う男』のコンラート・ファイトからインスピレーションを受けて、ジョーカーのビジュアルを決めた。ロビンソンはジョーカートランプのスケッチを作成した[6][7]。
1939年にケインは17歳のロビンソンをアシスタントとして雇った[8][9]。ロビンソンはレタラーや背景のインカーとして仕事を始め、すぐにバットマンのコミックシリーズのメインアーティストになった。
1975年の“The Amazing World of DC Comics“のインタビューで、ロビンソンは次のように述べている。「私はバットマンをテストすることができる至高の悪役を望んでいたが、典型的な犯罪組織のボスやギャングなど容易に現れるようなキャラクターしか創造されていなかった。そこで、悪魔のように邪悪で、道化師のような悪役を創造し、(シャーロックホームズとモリアーティ教授との関係に似ている)バットマンの戦いの継続的な供給源として永続的なキャラクターを望んだ」[10][11][12]。
ロビンソンは、コロンビア大学の研究でいくつかのキャラクターのユーモアがジョーカーの感覚につながり、ジョーカーの名前は、彼が頻繁に手で持っていたトランプのカードを引いてたまたま最初に来たカードから取ったと述べた[13][14]。彼はジョーカーのトランプカードのデザインのスケッチを提供し、フィンガーと電話でジョーカーのコンセプトについて語った。フィンガーは笑うファイトの画像を提供したが、ロビンソンは不完全だと思った[10]。ロビンソンは、“Batman”#1のために余分な話が必要とされたときにバットマンの宿敵としてキャラクターを創造したといい、大学のコースのため物語の報酬を受け取ったと主張した[15]。ロビンソンは「彼らにジョーカーのスケッチを示し、その最初の会議では、ビルはそれを見て『笑う男』のコンラート・ファイトを思い出した。本当に、共同開発者であったボブと私でビジュアルを決めました」と述べた[15]。
しかし、ケインはフィンガーが『笑う男』のイメージを示して、ジョーカーのデザインとして使用した事を語った。後に、ロビンソンは自分がスケッチを作製したと反論した[7]。フィンガーは、彼はジョーカーの頭に似ていたコニーアイランドでの障害物競走公園内のイラストに触発されたと述べた[16]。
1994年にジャーナリストのフランク・ラブチーとのインタビューで、ケインはロビンソンの立場を次のように述べている。「ビル・フィンガーと私でジョーカーを創造しました。ビルは作家でした。ジェリー・ロビンソンは、ジョーカーのトランプカードを持って私のところに来ました。それが、私の知っている全てです。あなたが知っているとおり、ヴィクトル・ユーゴーの『笑う男』の俳優、コンラート・ファイトはジョーカーのように見えます。ビル・フィンガーは、コンラート・ファイトの写真を持っていたし、私にそれを示しめして、「これがジョーカーだ」と述べました。ジェリー・ロビンソンはそれとは全く関係ありませんでしたが、彼は死ぬまで、それを創造したと言うでしょう。彼はトランプのカードとして使用するために、ジョーカートランプを我々にもたらした」[17][18] 。
ジョーカーを創造した権利が争われており、フィンガーの貢献を認めながら、ケインとロビンソンはジョーカーの権利を主張した。ケインは多くのキャラクターの権利を共有することを拒否した(ケインは死ぬまでロビンソンの主張を否定した)。2011年にフィンガー、ケイン、ロビンソンは未解決の問題を残して死亡した[10][14][19]。
ジョーカーは1940年に初登場して以来、多くの改訂を受けている。キャラクターの最も一般的な解釈は、彼がレッドフードを装っていてバットマンと刑事に追われている事である。ジョーカーは化学物質のタンクに落ち、緑の髪、赤い唇、白い皮膚に変わる。ジョーカーがレッドフードを装った理由は時間の経過とともに変化している[20]。
1940年の"Batman #1"では、ジョーカーは市長のヘンリー・クラリッジ含む、ゴッサムの著名な市民の3人を殺すことを発表する。警察はクラリッジを保護しようとするが、ジョーカーは発表を行う前にクラリッジを毒殺していた。バットマンはジョーカーを倒して刑務所に送り、ジョーカーは気まぐれで残忍な犯罪を犯した事を告げた。
1951年の"Detective Comics #168"では、ジョーカーのオリジンを初めて紹介した。彼は外観が変化して、姿が似ているトランプの図から「ジョーカー」の名称を採用した[21]。
1952年に"The Joker's Millions"が発表された。この物語では、ゴッサムの市民はジョーカーが貧乏である事を自覚する事を恐れ、億万長者や有名人は彼の錯覚を維持するのに取りつかれており、彼は騙され続けて貧乏のままだった。
1970年代にサイコパスなどのキャラクターが再定義された。"The Laughing Fish"では化学物質で官僚を殺し、ゴッサムの魚に彼の顔を追加する。
1988年の『バットマン: キリングジョーク』(Batman: The Killing Joke)では、ジョーカーの1951年の物語を再構築した。彼は売れないコメディアンであり、妊娠中の妻を支えるためにレッドフードとして強盗を行った。バットマンに追いつめられて化学薬品のタンクに飛び込み、白い肌、赤い唇、緑の髪、裂けて常に笑みを湛えた口に変化する。妻と胎児の不慮の死と外見の変化から正気を失い、彼はジョーカーに変貌する[22]。ジョーカーはどんな人間でも正気を失う事を証明するために、ジェームズ・ゴードンを拷問する。そして、彼の娘であるバーバラ・ゴードンを銃で撃ち半身麻痺を引き起こす。バットマンがゴードンを救助してジョーカーを倒した後、バットマンはジョーカーとの敵対関係を終わらせてリハビリを提案する。ジョーカーは拒否したが、彼はバットマンと冗談を共有することによって感謝の意を示した。
1988年の"A Death in the Family"では、ジョーカーはバールでジェイソン・トッドを打ちのめし、爆発で殺した。トッドの死はバットマンに初めてジョーカーを殺す事を考えさせる。
1999年の"No Man's Land"では、ジョーカーの恋人ハーレイ・クインを初めて導入した。
2005年の"Under the Hood"では、復活したジェイソン・トッドはジョーカーを殺すことで死の仇を討つ事をバットマンに強制する。バットマンは彼がジョーカーを殺す事を自分に許可している場合、他の犯罪者を殺すことを止めることができなくなると主張して拒否する。
2011年の"New 52"では、ジョーカーは顔の皮を剥いでいる。"Death of the Family"でバットマン・ファミリーに対して攻撃を行い、ジョーカーは崖から暗い深淵に落ちた。
ジョーカーの本名は、2022年にDCコミックスによって初めて明らかにされた[23]。ジェフ・ジョーンズらによる2022年9月発売の「Flashpoint Beyond#5(The Clockwork Killer: Chapter Five: The Joke's on Me)」の中で、Psycho-Pirateによる情報として、「ジャック・オズワルド・ホワイト」(Jack Oswald White)がジョーカーの本名だと述べられている[23]。ただし過去の様々な作品のなかで様々な「本名」が取り沙汰されている[23]。たとえば1989年公開の映画『バットマン』や2017年発売のコミック「Batman: White Knight」の作中では「ジャック・ネイピア」(Jack Napier)[23]、2019年公開の映画『ジョーカー』の中では「アーサー・フレック」(Arthur Fleck)[23]、などとなっている[23]。
ジョーカーのオリジンで決定的なものは確立されていない。ジョーカーのオリジンについての話は、"Detective Comics #168"(1951年2月)にキャラクターが初登場してから約10年後に登場した。ここでは、彼の雇用主の指示で百万ドルを盗んだレッドフード(赤い仮面にタキシードマスクを被った犯罪者)だった。彼はバットマンから逃げる途中に化学薬品の溶液に落ち、白い肌、赤い唇、緑の髪、裂けて常に笑みを湛えた口となった。この物語は、ほとんどの場合に引用される基礎となった。
『バットマン: キリングジョーク』では、妊娠した妻を抱える売れないコメディアンだった。生活費を稼ぐために、かつて自分が勤めていた化学薬品工場へのギャングの強盗に参加する。レッドフードとして道案内を務めさせられるが、警察に張り込まれていたため強盗は失敗する。バットマンに追い詰められ、逃げるために化学薬品の溶液の中に飛び込んだ。妻と胎児の不慮の死と真っ白な皮膚、緑の髪の毛、裂けて常に笑みを湛えた口に変化した事から正気を失いジョーカーとなる。ジョーカーは正気を保つバットマンやゴードン市警本部長に対して、嫉妬あるいは羨望の念を抱いている。このオリジンは多くの物語で引用された。
"Batman: The Man Who Laughs"では、バットマンはレッドフードが落下を生き残ってジョーカーになったと推論する。"Batman #450"で"Death of the Family"のイベントの後、ジョーカーは回復を助けるためにレッドフードになるが、経験から外傷を受けるとわかる。他の物語ではこのオリジンを拡大した"Batman: Gotham Knights"のプッシュバックでは、ジョーカーの妻はギャングのために働いており、腐敗した警官によって殺害されたことを説明した。
しかし、「ジョーカー自身記憶が混濁し、どの過去が正しいのか分からず、本人も分かろうとする気もない」と説明される過去の設定の曖昧さは、ライターがキャラクターのオリジンを自由に創作できることに繋がった。ポール・ディニとアレックス・ロス による"Case Study"では、幼少期から犯罪のスリルを味わい続けるサディスティックなギャングであるレッドフードとしてジョーカーを設定した。彼は自分の容姿を変えることになるバットマンと運命的に出会う。この作品でのジョーカーは正気であり、死刑を回避するために狂気を装っていることが示唆されている。"Batman Confidential #7-12"(ラバーズ&マッドメン)では、犯罪を全て成功させていたが故に退屈し、生き甲斐を失っていた天才的な犯罪者ジャックがジョーカーのオリジンとして設定された。ジャックはバットマンに犯罪計画を阻止されたことで、彼に夢中になり新しい生き甲斐を見つける。そして彼の注意を引き付けるために、ブルース・ウェイン(バットマン)の恋人ローナ・ショアを人質に取って重傷を負わせる。激怒したバットマンの投げたバットラングにより、顔に笑いのような傷をつけられる。ジャックはバットマンの雇ったギャングに拉致されて化学工場で暴行を受ける。揉みあっているうちにギャングの放った銃弾が化学薬品のタンクに命中して(抗精神病薬に使用される)化学物質の洪水を浴び、ジョーカーに変貌する。"The Brave and the Bold #31"でスーパーヒーローのアトムは、生きている自分の両親を焼くジョーカーを見ている。"Zero Year" (2013)では、レッドフードが襲ったギャングを操っていた犯罪の首謀者であったことを示唆している。
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