コスマー (Cosmah、1953年4月4日生まれ) は、アメリカ合衆国の競走馬・繁殖牝馬。アメリカ殿堂馬トスマーや、名種牡馬ヘイローなどの母として知られる名繁殖牝馬の一頭である。
コスマーは1953年4月4日に、馬産家ヘンリー・ナイトがケンタッキー州に構えるアルマハーストファームで生産したサラブレッドの牝馬である[2]。マームード産駒の牝馬・アルマームードの初仔で、ローレンスリアライゼーションステークス勝ちのある種牡馬コズミックボムとの間に生まれている。1歳の時にサラトガのイヤリングセールに出品され、ガーデンステートパーク競馬場(英語版)の社長であったユージン・モリに7,0005ドルで購入された[2]。
競走馬としては2歳からデビューし、2歳時は9戦5勝の戦績を挙げた[3]。このうち1勝はステークス競走勝ちであるが、これはアスタルテステークスにおいて1着馬ダークヴィンテージが降着したことにより繰り上がりで優勝したものである[1][2][注 1]。このほかにもガーデニアステークスで2着、フリゼットステークスで3着に入っている[1]。3歳時は17戦して4勝を挙げ[3]、ステークス競走勝ちこそなかったが、ガゼルハンデキャップとページェントステークスの2競走で2着に入っている[1][2]。
4歳時に4戦して未勝利に終わったのちに競走馬を引退している[3]。通算30戦9勝2着5回、獲得賞金は85,525ドルであった。
競馬評論家エレン・パーカーの著した『Reine-de-Course』によれば、コスマーは15頭の産駒を出しており、そのうち10頭が競走馬になり、9頭が勝ち上がっている[1]。以下はその代表的な直仔[1][c 1]。
- コスミア(Cosmiah)
- 1959年生の牝馬。父オリンピア。不出走[c 1]。繁殖牝馬としてはアテナステークス優勝馬のマリースク(Muriesk)[4]を出した程度である[1]。5代先に武蔵野ステークス(G3)勝ち馬のエイシンロンバードがいる[c 1]。
- フラミンゴウェイ(Flamingo Way)
- 1960年生の牝馬。父サードブラザー[c 1]。26戦5勝[5]。4代先に阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に勝ったレッドリヴェールがいる[c 1]。
- トスマー(Tosmar)
- 1961年生の牝馬。父ティムタム。コスマーの産駒で最も高い競走成績を誇った馬で、5歳まで走り39戦23勝、1963年最優秀2歳牝馬、1964年最優秀3歳牝馬およびハンデキャップ牝馬を受賞、のちの1984年にはアメリカ殿堂入りを果たした[1]。繁殖牝馬としては期待外れで、23歳になるまでに4頭しか産まず、ニュージャージーフューチュリティ優勝馬のラジュデッカ(La Guidecca)[6]を出した程度である[1]。
- マリボー(Maribeau)
- 1962年生の牡馬。父リボー。8戦4勝の成績で、1965年のファウンテンオブユースステークスに優勝している[7]。種牡馬として194頭の産駒を残し、うち13頭がステークス競走勝ち馬となっている[1]。
- ファーザーズイメージ(Fathers Image)
- 1963年生の牡馬。父スワップス。21戦7勝[8]。種牡馬入り後に日本に輸出され、皐月賞優勝馬のハワイアンイメージやステイヤーズステークス勝ち馬のホッカイノーブル、毎日杯勝ち馬のエリモファーザーなどのステークス勝ち馬を日米で合計8頭出している[8][1]。
- ロイヤルマッチ(Royal Match)
- 1964年生の牝馬。父ターントゥ。不出走[c 1]。4代先に全日本2歳優駿(Jpn1)勝ち馬のグレイスティアラがいる[c 1]。
- パーフェクタ(Perfecta)
- 1965年生の牝馬。父スワップス。3戦1勝[9]。2代先にフランス2000ギニー(G1)優勝馬レミグラン(L'Emigrant)がいる[c 1]。
- クィーンスクレ(Queen Sucree)
- 1966年生の牝馬。父リボー。4戦1勝[10]。コスマー直仔のなかでも特に繁殖牝馬として成功した馬で、代表産駒にはケンタッキーダービー優勝馬キャノネード(Cannonade)がおり、そのほかにケンタッキージョッキークラブステークス(G3)などに勝ったサークルホーム(Circle Home)、国外でもアイルランドでステークス競走に勝ったデルサルト(Del Sarto)やワッスルタッチ(Wassl Touch)などを出した[1]。2代先にはハリウッドフューチュリティ(G1)に勝ったスティーブンスオデッセイ(Stephan's Odyssey)やエイコーンステークス優勝馬ロトカ(Lotka)、3代先にはセルビアの最優秀3歳牝馬ヴァトレナマカ(Vatrena Maca)、5代先にはウッドメモリアルステークス(G1)勝ち馬のエスケンデレヤなどが出ている[1][c 1]。日本では4代先に七夕賞勝ち馬のトーラスジェミニを出している[11]。
- ラブオブラーニング(Love of Learning)
- 1967年生の牝馬。父ヘイルトゥリーズン。7戦1勝[12]。2代先にサンタアナハンデキャップ(G1)勝ち馬アニュアルリユニオン(Annual Reunion)がいる[1]。
- ヘイロー(Halo)
- 1969年生の牡馬。父ヘイルトゥリーズン。競走馬としてはユナイテッドネーションズハンデキャップ(G1)など31戦9勝[13]。種牡馬として成功し、生涯で63頭のステークス勝ち馬を輩出、1983年と1989年の2度に北米リーディングサイアーに輝いている。子孫も種牡馬として成功しており、代表産駒には日本で13度のリーディングサイアーに輝いたサンデーサイレンス(Sunday Silence)、アルゼンチンのリーディングサイアー7回を記録したサザンヘイロー(Southern Halo)などがいる[1]。
- ラダムドゥラック(La Dame du Lac)
- 1973年生の牝馬。父ラウンドテーブル。不出走[c 1]。繁殖牝馬としてアイルランドでアングルシーステークス(G3)を勝ったレイクコモ(Lake Como)や、同父で同競走を勝ったシングルコンバット(Single Combat)などがいる。牝系の広がりが大きく、2代先にアメリカ最優秀芝牝馬に2度選ばれたフローレスリー(英語版)(Flawlessly)、サンタラリ賞優勝馬のナディア(Nadia)、ハードウィックステークス(G2)などに勝ったジンダバード(Zindabad)などがいる[1]。さらに3代先以降にはG1馬だけでもゲイムリーステークス(G1)勝ち馬ソフィーピー(Sophie P)、モーリスドギース賞優勝馬サインズオブブレッシング(Signs of Blessing)、ウッドフォードリザーブ・ターフクラシック(G1)勝ち馬ディヴィジデロ(Divisidero)などが出ている[c 1]。日本馬のローマンエンパイアやコンゴウリキシオーもこの牝系に属している[c 1]。
- オナートリックス(Honor Tricks)
- 1976年生の牝馬。父ボールドビダー。不出走。[c 1]。2代先にホーリスヒルステークス(G3)勝ち馬ブランキャスター(Brancaster)、小倉記念勝ち馬アラタマインディなどがいる[1][c 1]。
牝系図
牝系図の出典:[c 1]
- Emma (1817 Don Cossack) ---←2-d
- Comus Mare (1834 Comus)
- Bay Middleton Mare (1839 Bay Middleton)
- Sleight of Hand Mare (1846 Sleight of Hand)
- Duty (1860 Rifleman)
- Meteor (1867 Thunderbolt)
- Iskra (1878 Macaroni)
- Princess Iskra (1887 Robert the Devil)
- Splendour (1894 Sheen)
- Dazzling (1900 St. Leonards)
- Fly by Night (1910 Peter Pan I)
- Flying Witch (1917 Broomstick)
- Mother Goose (1922 Chicle)
- Arbitrator (1937 Peace Chance)
- Almahmoud (1947 Mahmoud)
- Cosmah (1953 Cosmic Bomb)---←(改行)
- ---↓コスマー牝系
- Cosmah (1953 Cosmic Bomb)
- |Cosmiah (1959 Olympia)
- | Muriesk (1979 Nashua)
- | My Rainbow (1987 Lyphard)
- | Pacific City (1993 Carson City)
- | *エイシンロンバード (2002 Victory Gallop)
- |Flamingo Way (1960 Third Brother)
- | *ダンシングフリー (1979 Dancing Count)
- | I'm Out (1984 Lord Gaylord)
- | *ディソサード (1991 Dixieland Band)
- | レッドリヴェール (2011 ステイゴールド)
- |Tosmah (1961 Tim Tam)
- |Maribeau (牡、1962 Ribot)
- |Fathers Image (牡、1963 Swaps)
- |Royal Match (1964 Turn-to)
- | *マッチレスネイティヴ (1968 Raise a Native)
- | ロイヤルコスマー (1982 ロイヤルスキー)
- | レディコスマー (1990 ノーザンテースト)
- | マヤノクリオネ (1997 サクラユタカオー)
- | パッションローズ (2005 アフリート)
- | ロンドンプラン (2020 グレーターロンドン)
- | ロイヤルティアラ (1991 ノーザンテースト)
- | グレイスティアラ (2003 フジキセキ)
- |Perfecta (1965 Swaps)
- | Suprina (1970 Vaguely Noble)
- | L'Emigrant (牡、1980 The Minstrel)
- |Queen Sucree (1966 Ribot)
- ||Cannonade (牡、1971 Bold Bidder)
- ||Circle Home (牡、1972 Bold Bidder)
- ||Georgica (1973 Raise a Native)
- ||Kennelot (1974 Gallant Man)
- |||Stephan's Odyssey (牡、1982 Danzig)
- |||Lotka (1983 Danzig)
- || |Lotta Dancing (1991 Alydar)
- || | Shootforthestars (1998 Seattle Slew)
- || | Centralinteligence (騸、2008 Smarty Jones)
- || |*マンボツイスト (牡、1995 Kingmambo)
- ||Boleen (1976 Bold Bidder)
- ||Princess Sucree (1979 Roberto)
- ||Wassl Touch (牡、1983 Northern Dancer)
- ||*ステラーオデッセイ (1984 Northern Dancer)
- || Altair(1991 Alydar)
- || Aldebaran Light(1996 Seattle Slew)
- || |Balmont(牡、2001 *ストラヴィンスキー)
- || |*エスケンデレヤ(牡、2007 Giant's Causeway)
- ||Dance Cat (1988 Danzig)
- ||Sucre Sucre (1990 Manila)
- |Halo (牡、1969 Hail to Reason)
- |La Dame Du Lac (1973 Round Table)
- ||La Confidence (1980 Nijinsky)
- || Flawlessly (1988 Affirmed)
- ||*アルパインスウィフト (1983 Storm Bird)
- || ローマステーション (1987 Law Society)
- || ローマンエンパイア (牡、1999 サクラローレル)
- ||Nazoo (1988 Nijinsky)
- |||Dream Bay (1993 Mr. Prospector)
- ||| Fountains Abbey (2005 Giant's Causeway)
- ||| Sophie P (2013 Bushranger)
- |||*プリンシピウム (1995 *ハンセル)
- ||| *コンゴウリキシオー (2002 *ストラヴィンスキー)
- |||Nadia (1998 Nashwan)
- |||Sunray Superstar (1999 Nashwan)
- || Sun Bittern (1999 Seeking the Gold)
- || Signs of Blessing (騸、2011 Invincible Spirit)
- ||Miznah (1989 Sadler's Wells)
- || Geisha Girl (1995 Nashwan)
- || Madame Du Lac (2005 Lemon Drop Kid)
- || Divisidero (牡、2012 Kitten's Joy)
- |Honor Tricks (1976 Bold Bidder)
- *アセルティンズエンジェルス (1987 Fappiano)
- アラタマインディ (牡、1997 A.P. Indy)
出典
Avalyn Hunter. “Cosmah (horse)”. American Classic Pedigrees. 2020年4月28日閲覧。