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ロシア製のナローボディ旅客機(初飛行はソ連時代) ウィキペディアから
Tu-204(ツポレフ204;ロシア語:Ту-204トゥー・ドヴィェースチ・チトィーリェ)は、ロシアのツポレフ設計局が開発した双発旅客機である。最大210名の乗客を輸送することができ、機体のスペックはほぼボーイング757に近い。ソ連を中心に就航している中距離路線用三発機Tu-154の買換え需要に対応するために開発されたものである。性能が向上した最新型のTu-204SMは2010年12月29日に初飛行した。[1]
ツポレフ Tu-204/Tu-214
Tupolev Tu-204/Tu-214
本稿では派生型のTu-214についても取り扱う。
この旅客機の開発には、ロシアのIl-96と同様に革新的な技術が導入されており、西側のエアバス機などに導入されているフライ・バイ・ワイヤとグラスコックピット、主翼端に付けられたウイングレットに加え西側同様の航空電子機器を装備し、さらにロシア製の航空機では初めてイギリス製のロールスロイスRB211-535ターボファンエンジンを装備している。また機体には特殊な金属素材が多用されているという。
エアバスやボーイングの旅客機に比べ、ほぼ同様な機能を持った機体を割安で購入できるメリットがある反面、ツポレフの営業力と製品サポート力に難点があるとの指摘もあり、ローンチ当初はロシア国外向けのセールスはほぼゼロであった。
そのため、長年ロシア以外で導入した国はなかったが、低価格(2007年現在 約3,500万USドル)であることや、(オプションとして)エンジンに信頼性の高いロールス・ロイス製を選択出来るということもあり、諸外国からの発注が集まってきており、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の高麗航空やシリアのシリア航空、キューバのクバーナ航空など、欧米のメーカーから(政治的・経済的な理由により)旅客機を購入するのが難しい国からの発注を受けたほか、貨物機としてのオーダーもあった。
後継としてはイルクート MS-21が開発されており、競合を避けるため統一航空機製造会社では2009年からの製造を中止する検討を行い[2]、2016年4月に正式に中止を決定した。残りについては発注があれば製造するという[3]。
年度 | 1989 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生産機数 | 1 | 1 | 2 | 2 | 5 | 2 | 1 | 3 | 1 | 1 | 2 | 4 | 3 | 4 | 4 | 2 | 3 | 4 | 2 | 10 | 6 | 3 | 6 | 1 | 2 | 1 | 2 | 2 | 3 | 3 |
Tu-204の基本モデルである。またTu-204Cは貨物専用の基本モデルである。
Tu-204-100は最初に開発されたモデルで、ソロヴィヨーフ製のPS-90Aエンジンを搭載している。Tu-204-200はTu-204-100重量増加型である。なお、Tu-214はTu-204-200とまったく同様の機体であるが、組み立てメーカーが異なる。
世界市場向けに販売拡大することを狙い、西側の先進航空技術を盛り込んだモデルである。ロールスロイス製のRB211-535エンジンなどを搭載している。
基本モデルであるTu-204よりも胴体を6m短くしたもので、航続距離を延長したものである。ウラジオストク航空の発注により生産されることになった。
Tu-204-300よりも短い路線向けに開発されるもので、翼を小さくしたぶん巡航速度をマッハ0.84に増加させた機体である。競争相手はボーイング737NGシリーズとしている。
石油系燃料に変わる代替燃料を使用する試験機である。 Tu-206は液体水素を使用しTu-216は天然ガスを使用するとしている[4]。
Tu-214はTu-204-100の最大離陸重量を引き上げた発展型であり胴体延長型でもある。同様に開発されたTu-204-200との決定的な違いは、主翼の前にある胴体の左側のドアの大きさとL2ドアが乗降用ドアとなっている点である。従来はTu-204-200と呼称されていたが、現在は区別されるようになった。
製造はTu-204-200を生産しているアヴィアスタル-SPではなく、カザンのカザン航空機製造合同で実施されている[5][6]。両方の工場ともツポレフ設計局とは独立しておりそれらの生産機種の設計をある程度管理できる。17機が製造されたが、製造・販売コストの高さから2010年4月13日にカザンは商用型の製造を中止した[7][8]。
Tu-214とTu-204-200との違いは組み立てを行う製造メーカーである。Tu-204-200はウリヤノフスクのアヴィアスタル-SPで生産され、Tu-214はカザンのカザン航空機製造合同で生産される[5][6]。両方の工場ともツポレフ設計局とは独立しておりそれらの生産機種の設計をある程度管理できる。主な違いは主翼の前にある胴体の左側のドアの大きさである。Tu-204は2つのドアと2つの非常脱出口がある。Tu-214は3つのドアと1つの非常脱出口がある。
2010年にTu-214は計10機が航空会社で運用中で12機が受注されている。Tu-214を運用する航空会社はロシア航空 (5), トランスアエロ航空 (3) とエアスターズ (2)である。トランスアエロ航空はさらに7機追加発注している[9]。
Tu-214が初飛行したのは1996年3月21日であったが、開発が著しく遅れたため量産型初号機が飛行したのは2001年4月10日のことであった。その後ロシアの航空会社に引き渡されて就航している。このクラスの旅客機では新品の価格が世界で最も安いものの、ボーイングやエアバスといった強力なライバルがいる市場と重なっているため、ロシア市場においても苦戦している模様である。
Tu-214を運用する航空会社は: ロシア航空 (5), トランスアエロ航空 (3) とエアスターズ (2)である。トランスアエロ航空はさらに7機追加発注している[9]。
日本には、ダリアビア航空がTu-154を代替したTu-214を用いて、ハバロフスクからの青森便と新潟便を運用していたほか、チャーター便も飛来することもあった。ダリアビア航空がウラジオストク航空に吸収合併され定期便が廃止された後も、チャーター機が飛来したこともある。
Tu-214SRは、2009年6月に2機が就役しロシア航空が運用している。
Tu-214Rはロシア空軍が2機(機体番号RA-64511 シリアル番号42305011、機体番号RA-64514、シリアル番号42305014)を運用している。ただし民間機登録番号「RA-64511」を冠していることから、民間機をチャーターする形で運用しているようである。
オープンスカイ条約用のTu-214ONもロシア空軍が運用しており、2機(RF-64519とRF-64525)が製造されている。2018年5月21日から29日にかけて、Tu-2140N機の調査の第1段階を実施する予定で機体と監視装置の技術能力の予備的なデモンストレーションを行う。これにはヨーロッパ、アメリカ、カナダの参加者20名が参加する予定[10]。
Il-20Mの後継となる電子偵察型で、2009年に初号機が初飛行した[16]。開発などの遅れからロシア連邦軍参謀本部情報総局と裁判沙汰となるなどしたが[17]、2018年に研究開発が完了する予定[18]。
2012年12月17日と12月18日には、飛行試験のためTu-214Rが日本の領空に接近し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した[19][20][21]。この際の試験では、Tu-214Rは低速飛行時の安定性が悪く、偵察任務の為にそのエリアを哨戒飛行し、調査を行なうといった仕事には向いていないという結果が得られたため、調達の中止が検討された[22]。これを受け改良がされたようで2機目のRA-64514は外観が変化している。RA-64514は2015年にウクライナとの国境近くで試験飛行を実施したことがFlightradar24で確認されている[23]。
Tu-204SMは2011年から2018年のロシアの国内外の単通路機の民間航空機市場における地位を維持、拡大する事を目的とした計画である。この中距離旅客機は210席(2クラスの場合174席)で急成長する格安航空会社の市場を対象とする。この機体はロシアと国際民間航空機関(ICAO)と欧州航空航法安全機構の新しい国際安全基準に適合するように改良された。
Tu-204SMの利点は小型の機体とPS-90Aエンジンを搭載するTu-204-100/100E/100Vに多くのデザインと空力の類似性を享受しつつ改良されたPS-90A2エンジン(ETOPS 180 対応)によってもたらされる。航法装置とアビオニクスにより2人乗務が可能になり以前の機体よりも1名乗員が減った。直接の運行経費はTu-204-100/300よりも10から15%削減された。
レッドウィングス航空は44機のTu-204SMを受領する予定である。ロシア最大の航空機リース会社であるイリューシン・ファイナンス(IFC)によると2月にレッドウィングスとの44機のTu-204SMの交渉は完了して2011年3月に調印した。イリューシン・ファイナンスは以前はTu-204-100をクバーナ航空、高麗航空とレッドウィングスへ貸し出し、Tu-204-300をウラジオストク航空と高麗航空へ、Tu-214 (Tu-204-200)3機をトランスアエロ航空へ貸し出した。
レッドウィングス航空は既にTu-204-100とTu-204-100Vを運行し、2010年に更に1機加える。アヴィアスタル-SPで生産される最新型のTu-204-100であるTu-204-100Vを運行する唯一の航空会社である[27]。
15機のTu-204SMを発注して2011年から受領が始まるモスクワ航空が最初の運用会社になる予定である。イランエアツアーズによる大量の発注はアメリカの企業であるプラット・アンド・ホイットニーがエンジンの開発においてアヴィアドヴィガーテリに携わっている事によりイランへの経済制裁の脅威にさらされる。売却を完了する為にTu-204SMにTu-204に搭載されるPS-90Aエンジンを代わりに搭載することが検討される。[28]
生産数の少ないTu-204に対してツポレフは下請企業に飛行機の全体の価格を27–30%引き下げる為に値下げを求めた。これらの下請企業は2016年までTu-204SMの44機の製造をこの条件で了承した。報告によるとレッドウィングス航空は2011年までにこの発注をすると見られる[27]。
Tu-204SMの飛行試験は2010年12月29日に成功した[1]。予定では最初のTu-204SMの納入は2011年である[25]。
204-100 | 204-120 | 204SM | 214 | 204–300 | |
---|---|---|---|---|---|
操縦士 | 3名 | 2名 | 3名 | ||
座席数 | 210席 (1-クラス, 標準) 175席 (2-クラス, 標準) | 164席 (1-クラス, 標準) 142席 (2-クラス, 標準) | |||
座席間隔 | 32インチ (1-クラス, 標準) 39 & 32インチ (2-クラス, 標準) | 32インチ (1-クラス, 標準) 41 & 32インチ (2-クラス, 標準) | |||
全長 | 46.14メートル (151 ft 5 in) | 40.19メートル (131 ft 10 in) | |||
全幅 | 41.8メートル (137 ft 2 in) | ||||
翼面積 | 184.2平方メートル (1,983 sq ft) | ||||
全高 | 13.9メートル (45 ft 7 in) | ||||
胴体幅 | 3.8メートル (12 ft 6 in) | ||||
胴体高 | 4.1メートル (13 ft 5 in) | ||||
客室幅 | 3.57メートル (11 ft 9 in) | ||||
客室高 | 2.16メートル (7 ft 1 in) | ||||
最大離陸重量 | 103,000キログラム (227,000 lb) | 105,000キログラム (231,000 lb) | 110,750キログラム (244,160 lb) | 107,500キログラム (237,000 lb) | |
最大着陸重量 | 88,000キログラム (194,000 lb) | 89,500キログラム (197,300 lb) | 93,000キログラム (205,000 lb) | 88,000キログラム (194,000 lb) | |
最大積載量 | 21,000キログラム (46,000 lb) | 23,000キログラム (51,000 lb) | 25,200キログラム (55,600 lb) | 18,000キログラム (40,000 lb) | |
最大離陸重量での滑走距離 | 2,250メートル (7,380 ft) | 1,800メートル (5,900 ft) | 2,250メートル (7,380 ft) | 2,500メートル (8,200 ft) | |
巡航高度 | 12,600メートル (41,300 ft) | 12,100メートル (39,700 ft) | |||
巡航速度 | 810 - 850キロメートル毎時 (500 - 530 mph) | ||||
最大速度 | 900キロメートル毎時 (560 mph) | ||||
最大積載時航続距離 | 4,300キロメートル (2,700 mi) | 4,100キロメートル (2,500 mi) | 4,000キロメートル (2,500 mi) | 4,340キロメートル (2,700 mi) | 5,800キロメートル (3,600 mi) |
最大燃料積載量 | 41,000リットル (9,000 imp gal; 11,000 US gal) | 35,700キログラム (78,700 lb) | 44,600リットル (9,800 imp gal; 11,800 US gal) | 45,000リットル (9,900 imp gal; 12,000 US gal) | |
エンジン (x 2) | アヴィアドヴィガーテリ PS-90A | ロールス・ロイス RB211-535E4 | アヴィアドヴィガーテリ PS-90A2 | アヴィアドヴィガーテリ PS-90A | |
最大推力 (x 2) | 157キロニュートン (16,000 kgf; 35,000 lbf) | 186.3キロニュートン (19,000 kgf; 41,900 lbf) | 157キロニュートン (16,000 kgf; 35,000 lbf) | 158.2キロニュートン (16,130 kgf; 35,600 lbf) |
出典: 統一航空機製造,[29] ツポレフ,[30] 204SM.[24][31]
PS-90A2 エンジン Tu-204SMのエンジンは新型のロシア製PS-90A2でAP-33航空規格に適合する。
Tu-204 | Tu-204SM | エアバスA321 | ボーイング 757-200 | Tu-154M | |
---|---|---|---|---|---|
座席数 | 210 | 210 | 220 | 216 | 176 |
最大離陸重量, т | 103,0 | 108 | 89 | 108,8 | 102 |
最大積載量, т | 23 | 23 | 21,3 | 22,6 | 18 |
巡航速度, km/h | 850 | 830-850 | 900 | 850 | 950 |
必要な滑走路長, m | 2500 | 2500 | 2500 | 2500 | 2300 |
燃費, g/pass.km | 19,3 | 19,25 | 18,5 | 23,4 | 27,5 |
費用 US$100万ドル | 35 (2007年) | 40-45 (2010年) | 87-92 (2008年) | 80 (2002年) | 15 (1997年) |
下記の一覧にはTu-214も含まれる 全運用会社 (2010年10月時点) [9][34]
航空会社 | タイプ | 運航中 | 発注中 | 待機 |
---|---|---|---|---|
カイロ航空 | 3 x 204-120 2 x 204-120C | 2 | 0 | 3 |
エアスターズ | 214 | 1 | 0 | 1 |
オレンエア | 204-100 | 1 | 0 | 0 |
中国国際貨運航空 | 204-120CE | 0 | 4 (キャンセル) | 1 |
DHL航空 | 204-100C | 1 | 0 | 1 |
中国貨物航空 | 204-120CE | 0 | 2 | 0 |
アトランティック航空 | 204 | 0 | 0 | 0[35] |
アヴィアスタル-TU | 204 | 4 | 0 | 4 |
カブミンボディアヴィア | 204-100 | 2 | 0 | 0 |
クラス航空 (クラスノヤルスク航空) | 214 | 0 | 0 | 1 |
パレスチナ (政府) | 204-100 | 0 | 1[36] | 0 |
ロシア航空 (商業) | 204 | 0 | 0 | 2 |
ロシア航空 (政府)[37] | 214 2 x 204–300 (発注) | 6 | 6 | 0 |
S7航空 | 204 | 0 | 0 | 0[38] |
ウラジオストク航空 | 204–300 | 6 | 0 | 0 |
クバーナ航空 | 2 x 204-100CE 2 x 204-100E | 4 | 0 | 0 |
高麗航空 | x1 204–300 x1 204-100[39][40] | 2 | 2 | 0 |
トランスアエロ航空 | 214 | 3 | 7 | 0 |
イラン航空 またはイランエアツアーズ[41] | 204 | 0 | 30 | 0 |
レッド ウィングス航空 | 204-100/204SM | 8 | 1 + 44 | 0 |
イカロ航空 | 204SM | 0 | 2(+1)[42] | 0 |
ビジネス航空 | 204–300 | 1[43] | 0 | 0 |
合計 | 40 | 100 | 12 |
墜落事故は起こしておらず、墜落による死者は出ていないが、着陸失敗による死亡事故が発生している[44]。
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