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レコードプレイヤーの製品シリーズ ウィキペディアから
Technics SL-1200シリーズ(テクニクス エスエルせんにひゃくシリーズ)は、パナソニックが製造するTechnicsブランドのレコードプレーヤーシリーズである。同ブランドの代名詞的存在であるとともにクラブDJという存在を生み出し、世界中のクラブ・ディスコ・音楽祭等のアナログDJプレイで使用されているプロ用途レコードプレイヤーのデファクトスタンダードである。
2010年に一度販売終了したが、2016年に復活している。2010年の一時販売終了までの累計販売台数は全世界で約350万台[1]。
のちに初代機と看做される製品のみならず同名を冠した後継機も製造販売されたため、当然ながら当初は(のちに初代機と看做される)単一の製品を指す名称であったが、後継機種が世代を重ね販売されるに連れ「同名を冠する製品シリーズ全般」を指す用語としても用いられるようになった。すなわちTechnics SL-1200とは、狭義には初代機自体の製品型番そのものであり、広義には初代機を筆頭とする製品シリーズ全般を指す。本項では明記しない限り、広義の「製品シリーズ全般」として記述する。
トルクの強さ(回転の安定性及びスクラッチ、手で止めるなどに向く)、堅牢(耐久)性、レコード再生後の立ちあがりの速さ(0.7秒)、±8%、±16%(±16%は、SL-1200MK5G、SL-1200GLD、およびSL-1200GAE以降の機種のみ)のピッチコントロール(ミックスにおけるリズムキープのための調整)、ストップブレーキの減速度つまり停止までの時間が調整できるなどの特徴により、世界中のクラブ・ディスコで使われているアナログレコードターンテーブル機材である。またSL-1200MK7では逆回転の機能があらたに加わった。
本シリーズは全機種フォノイコライザーアンプ非搭載なので、ミニコンポなどの「AUX IN(LINE IN)」端子に本シリーズを繋ぐ場合は市販のフォノイコライザーが別途必要(フォノイコライザーを介さず直接AUX IN端子に本シリーズを繋ぐと音が小さくなり、かつ、標準的なLPレコードの場合で、周波数1kHzの音に対して、20kHzでは19.62dB大きく、20Hzでは19.27dB小さくなる。これは、メーカーを問わず、SL-1200シリーズ以外のプレーヤーでも同じ。パナソニックもかつてフォノイコライザーを補修部品扱いで生産しておりサービスルート扱いで購入出来たが、1200シリーズ生産終了に伴い2010年を以てフォノイコライザー生産も終了)。またミニコンポ・CD&MDラジカセなどの外部入力(AUX INまたはLINE IN)端子がミニジャック(M3)や大型ジャック(M6)の場合は(フォノイコライザーに加え)市販のピンコード中継アダプター&ピンプラグ→ミニプラグ変換ケーブル、またはピンプラグ→ミニプラグ変換延長ケーブルが別途必要(本機の出力コードは全てステレオRCAピンプラグ)。
さらにカートリッジをMC型に交換した場合、カートリッジ切替スイッチ非搭載(MMカートリッジ使用プレーヤー専用)アンプにそのまま繋ぐと音が小さくなるので市販の昇圧トランスが別途必要(普及型フルオートタイプとは異なりカートリッジは全機種別売、ヘッドシェル・カートリッジ取付ネジ・軽量カートリッジ用の錘のみ付属)。さらにヘッドホン端子も全機種非搭載なので、ヘッドホンや外部アクティブスピーカーはアンプやDJミキサーを経由して接続する形となる。
パナソニックは2023年のSL-1200GR2発売時に、SL-1200シリーズをはじめとした自身のダイレクトドライブターンテーブルの世代を以下のように定義している[2]。
ダイレクトドライブターンテーブルの初期の商品群を指す。世界初のダイレクトドライブターンテーブルの実用化モデルであるSP-10や、SL-1200シリーズでは初代機であるSL-1200が該当する。
水晶発振器を搭載することで、回転速度を高精度に制御することができるようになった。SL-1200シリーズではSL-1200MK2からSL-1200MK6までの機種が該当する。また、ジャケットサイズレコードプレーヤーであるSL-10もこの世代の商品に当たる。
コアレス・ダイレクトドライブ・モーターを新たに採用することで、従来のダイレクトドライブ・モーターの課題であったコギングによる回転ムラを排除している。また、ブルーレイディスクドライブの制御技術を応用したデジタル回転制御により、高トルクで安定したモーター回転を実現している[3]。Technicsブランド復活後のSL-1200GAEからSL-1200MK7が該当する。
モーターのデジタル回転制御技術にΔΣ変調と高精度PWM生成技術を搭載し、ダイレクトドライブ・モーターの駆動信号の量子化誤差と歪を低減することで、モーターのわずかな回転ムラや微振動を抑えている。2023年12月時点ではSL-1200GR2のみが該当する。
SL-1200(SLのSはステレオ事業部、Lはプレーヤーを意味している)が最初に登場したのは1972年である。1970年代の同社ダイレクトドライブレコードプレーヤーは「SL-1XXX」という型式名で商品展開をしており(各型式名は機能により規則性があった)、当初のSL-1200はその商品群の中のひとつであった。
初代はクオーツシンセサイザーがまだ搭載されておらず、時間が経つと回転速度のブレが生じるため、ピッチコントローラーが搭載されたのはその回転速度を調節するのが目的だった[4]。その後開発者たちが初代モデルを使っているDJ達を目撃し、大きな指で小さなつまみを操作していた様子から「スライドさせたほうが、よりダイナミックなプレイができるのではないか」として、MK2からスライダータイプに変更された[4]。また初代はインシュレーターも非搭載だったためハウリングが起きやすかったが、MK2からインシュレーターに加えて筐体内部にもゴムを入れることで、下からの振動を極力ピックアップに伝えないようにした[4]。
当時の開発部長がアメリカ合衆国のクラブDJに意見聴取に赴きSL-1200の不具合箇所は無いか尋ねると「このままで良い、これ以上触って欲しくない。」と言う回答を得た[5]。このためMK2以降は主な外観や、主要装備は変わっていない。電圧の異なるヨーロッパ向けには220/240V切替が可能な「SL-1210」が発売されているが、SL-1210についてはSL-1200MK2相当のものが長期にわたって生産された[1](ただしMK5・MK5Gについては欧州モデルも存在する)。また北米向けにもMK2が販売終了まで生産されていたため、北米でMK3以降の製品は(中古品も含め)ほとんど出回っていないという[1]。
なおMK3D・MK5・MK6・MK7の各シリーズは、DJ操作性を高める目的からダストカバーにヒンジ(蝶番)が付いていない。さらに演奏中のカートリッジを照らして高級感を演出するLEDスポットライト「スタイラスイルミネーター」も搭載されている(イルミネーター横のボタンを押せばスポットライト部が上がりランプが点灯。収納する場合はライト部の先端を押し込む。MK4以前のシリーズは白熱電球、MK5のシリーズは黄色LED、MK5G・GLD・MK6シリーズは青色LED、GAE・G・GR・MK7シリーズは白色LED採用)。
MK3からMK6までのシリーズは「Technics」ロゴが描かれたターンテーブルシートと透明ビニールシートが付属されており、これらを敷いた上にレコード盤を載せるとDJプレイ時に滑らかなスリップ感が得られる(但し通常のレコード再生時にこれらシートを敷くとレコード盤が正常に回転しない場合あり)。なおDJプレイ時はテクニクス純正DJカートリッジ「EPC-U1200」を用いるよう推奨されている[要出典](DJプレイ非対応カートリッジは針先の寿命を縮めレコード盤を痛めるので「EPC-U1200」以外のカートリッジはテクニクス・パナソニック製であってもDJプレイ使用不可)。
2010年に「Technics」ブランド自体が一旦消滅したため、それに伴い販売を終了したが、2016年3月に限定モデル「SL-1200GAE」を発表して販売を再開。4月には一般向けモデルである「SL-1200G」を発表し、本格的に復活を果たした[6]。
パナソニックは1200シリーズの一員として、かつてDJミキサー(各系統スライド式音量つまみ・マイク入力・ヘッドホン出力端子付)も生産しており、そちらはPHONO端子を2系統或いは3系統搭載していた(アース端子は1系統のみでプレーヤー2台或いは3台で共用。フォノイコライザーアンプ代わりにも使えAUX IN端子にも接続可。但し本機はカートリッジ切替スイッチ非搭載で直接繋げるのはMMカートリッジ使用プレーヤーのみのため、MCカートリッジ使用プレーヤーを繋ぐ場合は市販の昇圧トランス経由でないと音が小さくなる)。
さらに同じ1200シリーズの一員として、デジタルターンテーブル(SL-DZ1200)や高級DJヘッドホン(RP-DJ700/DJ1200/DH1200)も生産していたが、本家のレコードプレーヤー生産撤退に伴い2010年を以てDJ関連機器生産も終了している。前述のDJカートリッジも生産終了しているため新品での入手は困難だが、交換用レコード針については元々ナガオカのOEM品だったため、ナガオカから相当品(GC28-1200CS)が販売されている[7]。
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