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2002年のコンピュータゲーム ウィキペディアから
『Ever17 -the out of infinity-』(エバーセブンティーン ジ・アウト・オブ・インフィニティ)は、2002年8月29日にKIDよりドリームキャストとPlayStation 2で発売された恋愛アドベンチャーゲーム。内容はSFアドベンチャーであり、公式サイトでは「シナリオに仕掛けられた謎の全貌を解き明かすことがゲームの目的」という旨のゲーム紹介がある。
ジャンル | 恋愛アドベンチャーゲーム |
---|---|
対応機種 |
ドリームキャスト PlayStation 2 Windows 98/Me/2000/XP PlayStation Portable Xbox 360 |
発売元 |
KID サクセス(Premium SuperLite2000) サイバーフロント 5pb.Games(PCダウンロード版) |
発売日 |
2002年8月29日(オリジナル DC/PS2) 2003年5月26日(Premium Win) 2003年11月27日(Premium DC / PS2) 2004年10月28日(Premium SuperLite2000) 2005年6月17日(Premium Win DVD) 2009年3月12日(PSP) 2011年12月1日(Xbox 360) 2015年12月25日(PCダウンロード版) |
レイティング |
全年齢対象(Premium PS2 / SuperLite2000 / PSPを除く) CERO:C(15才以上対象)(Premium PS2 / SuperLite2000 / PSP) |
キャラクター名設定 | 不可 |
エンディング数 | 11 |
セーブファイル数 | 30+クイック30 |
セーブファイル容量 |
26ブロック(DC版2種) 60KB(PS2) 75KB(Premium PS2) 72KB(Premium SuperLite2000) |
画面サイズ | 800×600 16bit |
キャラクターボイス | 全員 |
CGモード | あり |
音楽モード | あり |
回想モード | なし |
メッセージスキップ | 全文/既読 |
オートモード | あり |
同じ時間が何度も循環するループもののゲーム『infinity』シリーズの第2作目であり、一部のファンからは最高傑作とも評されている[3]。作中に仕掛けられたトリックの巧みさで知られており、ネタバレを忌避し感動を共有しようというファン意識から、プレイ後の感想が書かれたホームページではしばしば「全員クリア後に読んでください」という注意書きがなされていた[4]。
欠点は説明に費やす描写が長すぎることとされ、次作『Remember11』でのTips機能導入につながった[5]。
このゲームの主人公(プレイヤーキャラクター)は、倉成武と記憶喪失の少年の2名。シナリオは倉成武の視点でプレイする武編と、記憶喪失の少年の視点でプレイする少年編に分かれる。武編と少年編のいずれをプレイするかについては、シナリオの序盤でプレイヤーが意識的に選択する。リメイク版では、初回プレイ時は必ず武編となり、いずれかのグッドエンドを見た後に少年編を選択可能となる。
このゲームは恋愛アドベンチャーゲームに分類され、いわゆるギャルゲーの要素をもっており、それぞれのシナリオについて攻略対象ヒロインが設定されている。武編では小町つぐみと茜ヶ崎空、少年編では田中優と松永沙羅である。
物語中にはあるトリックがあり、またこれこそが物語の最大の鍵である。その伏線は八神ココのシナリオ(ココ編)以外の4編の随所に「不可思議な現象」として提示されるが、普通に1人をクリアしただけでは謎が解けるどころか、むしろクリア前よりも謎を多く残した形で終わってしまう。他の4人のシナリオでグッドエンドを迎えることで分岐可能になるココ編にて、この仕掛けの全てが明かされ、グランドフィナーレを迎えることになる。なお、ココ編は武編、少年編とも独立しているため、条件を満たしていればどちらの視点からでも突入可能である。
舞台は2017年とされているがこれは武編だけであり、少年編の出来事は実際には2034年に起こっている。つまり両編は同じ事象を2つの視点から描いているのではなく、場所こそ同じだがまったく別々の話なのである。両編に共通して登場する人物は、何らかの理由で17年経っても容姿が変わらないか、あるいはそっくりな別人である。
また、「武編における武(主人公)」と「少年編における武」、「武編における少年」と「少年編における少年(主人公)」は、それぞれ別人である上に容姿も異なる。ギャルゲーではプレイヤーの没入度を高めるために主人公の顔を出さない、という定番の手法を逆手に取った演出であり[6]、ココ編にて主人公の少年(ホクト)が鏡で自分の顔を見て武編の少年(桑古木)とまったく異なることに愕然とする場面では、多くのプレイヤーもまた驚愕したという[7]。この場面での劇的な効果を生むために、それ以前における主人公は極力イベントCGに表示されないようになっており、劇中でも鏡が割れていて素顔に気づかないことになっている。「少年編における武(声優が明かされている)」と「武編における少年(声優が伏せられている)」を同一の声優が演じるのもミスリードのうちで、前作『Never7』のトリックを知るプレイヤーの中には「少年は武のクローンなのではないか」と思い込まされた者もいた[8]。
田中優の本名が長すぎて常に略称を名乗るのも、2人の優が別人と悟られないようにするトリックの一部である。なお「優美清春香菜」「優美清秋香菜」は制作当時に中澤工がインターネット上の名前検索サイトで発見したものであり、本作品のために考案されたわけではない[7]。
もともとは『王様のレストラン』のように限定された場所だけを舞台とし、『キューブ』のような脱出ものを作ろうという、過去作とは関連のない独立した企画だった。シナリオ担当の打越鋼太郎が深夜1時のセビリア万国博覧会会場に迷い込んだときに感じた、にぎやかなはずの場所に誰もいないという非日常的な雰囲気を盛り込むため、舞台はテーマパークに決まった。しかし陸上では脱出もたやすいため、容易には抜け出せない海中のテーマパークが考案された[9]。
プレイヤーの多様な嗜好に対応するため、熱血漢と内向的なタイプの2種類の主人公を登場させることは早くから決まっていた。その実際の演出方法に悩んでいた打越鋼太郎が誤って借りたビデオ『オーロラの彼方へ』からヒントを得て、空間ではなく時間を別々にすることを思いつき、トリックができあがった[9]。
その後『Never7』の続編として制作されることになり、前作から「クローン」「キュレイシンドローム」「ヒロインの名前は『優+季節』」「月と海」「マグロ」などの要素が移入された。
西暦2017年5月1日。様々な法律の改正や技術の発展が行われた近未来の日本。
様々な人々が祝日の予定に思いを巡らせる中で、必ず口端に登る施設があった。海洋テーマパーク、《LeMU(レミュウ)》。かつて存在したかも知れぬと夢見られる「レムリア大陸」の名を冠したその施設は、遊園地を丸ごと海の中に沈めるという斬新なテーマパークであった。海中をゴンドラで泳ぎ、視界を覆いつくすほどの魚を見上げながら散歩する。それはまさに現代によみがえった夢の大陸であった。そのLeMUに時同じくして足を運んだ、1人の青年と1人の少年がいた。珍しい観光施設を、しかしろくに楽しめないまま2人の時間は慌しく過ぎ去っていく。
突如、楽しげな歓声を切り裂くようにして耳を劈くような緊急避難警報が響き渡る。折り悪く、施設から逃げそこなった1人の青年と1人の少年。視界には誰も居らず、静まり返るテーマパークに不気味な咆哮が響き渡る。怒涛のごとく襲い掛かる鉄砲水。浸水を防ぐため自分たちごと閉じ込めようとする防水隔壁。何とか一命をとりとめ脱出経路を探すうちに、同じ境遇にある生存者たちを発見する。閉じ込められた生存者は、6人。
地上に直通した第一階層は完全浸水しており、脱出用の通路や非常階段やエレベータも通行不可能。外部への通信も全く通じず、ただ助けを待つことしか出来なくなってしまった。しかし空気も食料も幾ばくかは余裕があり、当分は生存が可能ではある。LeMUの完全圧壊予想時間は今より5日後、5月7日午前4時30分前後。
脱出の目処がまったく立たないものの、即座に自らの命が脅かされる状況でもない。焦燥と弛緩の上で不安定に揺さぶられつつも、LeMUから生きて脱出するために6人の生存者たちは協力して生き残る覚悟と連帯感を固めるのだった。
海中に宇宙ステーションのような建造物を沈めた巨大海洋テーマパーク。LeMUは全部で4つの階層に分かれており、まず浮島であり入り口でもある地上部分のインゼル・ヌル (Insel Null)。第一階層であり地上への直通部分のエルスト・ボーデン (Erst Boden)。第二階層は種々のアトラクションが存在するツヴァイトシュトック (Zweitstock)。レムリア大陸関連の展示品が並ぶ第三階層、ドリットシュトック (Drittstock) の全4階層である。この施設の主な目的は遊園地としての用途である。LeMUは施設内の気圧を海中の水圧と同じかそれ以上に保つ「飽和潜水仕様」を採用しており、この施設が水圧で潰れたりすることが絶対にないと保障している。またLeMUという名前にもあるように、この施設のモチーフは太古海中に没した人類発祥の地とも謳われる「レムリア大陸」である。海中ゴンドラや浮力エレベータなど、海の中に建造されたことを十二分に生かす構造となっており、作品世界において最も話題になっているテーマパークである。
大勢の人々で賑わっている最中、突如原因不明の緊急避難警報が発令。その数分後、浸水が発生し、地上との直通部分であるエルスト・ボーデンが完全浸水。最初の緊急避難警報の理由は不明。浸水の理由ともなった急激な気圧の減少も原因不明。地上に出るための通路は浸水したために隔壁が降りて、完全途絶。地上に向かうエレベータも全く動かずそその理由も不明。地上にいる者達の中には閉じ込められてしまった者達の知人もおり、まだ中に人がいることを知っているはずなのに一切外部からの接触が無くその理由も不明。自分たちの存在を知らせようと通信を試みるも、一切の通信手段がひとつ残らず途絶しておりこれもまた、原因不明。6人の生存者たちは、来るかも分からない救助を待つしかできることが無くなってしまう。
前作『Never7』に登場した「キュレイシンドローム」の要素を継ぐ物語の鍵。キュレイ (Curé) とはフランス語で司祭を意味する。
原作版ではレトロウイルスの一種。これによって遺伝子情報を書き換えられた感染者は、治癒力が向上し老化も停止するため、半ば不死のような存在「キュレイ種」となる。その反面紫外線には弱くなるが、赤外線視力も獲得するため暗所での活動にも困らない。
リメイク版では特にレトロウイルスという言及はなく、代わりに強固に結びつく未知の炭素原子を含むとされる。日光への脆弱性が原作版より強調されているほか、「強い意志によって肉体を変容させる」という特性が加えられた。赤外線視力はつぐみ個人が獲得した形質であり、キュレイ種共通の能力ではない。
ウイルスは体外に排出される細胞には関与しないため、生殖細胞から発生する子供はキュレイ種にはならない。ただし書き換わった遺伝子情報は受け継がれるため、つぐみの子であるホクトと沙羅は赤外線視力を有している。
キュレイウイルス自体が希少な存在であるが、つぐみは全身の遺伝子が完全に書き換わったこの世に唯一の例である。そのため彼女はライプリヒ製薬に監禁され、実験漬けの日々を送ることになったのである。
劇中、武編の終盤でTBウイルスに感染したため、つぐみが自らの体内で生成した抗体を投与した。そのため武たちはキュレイ種となり、優と少年は遺伝子が書き換わる間の5年ほど加齢した後に老化を停止するが、人工冬眠下にあった武とココは容姿の変化がない。
打越鋼太郎がピョートル・ウスペンスキーの著作『ターシャム・オルガヌム』から発案した概念。同書には「n次元の世界を認識するにはn+1次元の視点が必要」という記述がある[12]。
3次元上に存在する者は2次元的視覚しか持ちえないが、空間内を移動することで3次元自体を知覚する。人間は両目を用いることで2次元的視覚を2つ得て、擬似的に3次元を見ている(立体視)。すなわち、4次元時空を自由に移動できる存在ならば3次元的な視覚を有しているということであり、両目にもうひとつ「第3の眼」が加われば擬似的に4次元を見て時を越えた知覚が可能になるという仮説が成り立つ[13]。
劇中の「第3視点」という言葉には2種類の用法がある。ひとつは、文字通り3次元空間を俯瞰できる高次元からの視点のこと。そしてもうひとつは、そのような視点を有する高次元の存在である。この存在のことを劇中ではブリックヴィンケル (Blick Winkel, BW) と呼んでいる。BWはゲーム世界の出来事を時系列に縛られずに俯瞰できるメタフィクション的な存在であり、いわばプレイヤーそのものに近い。『Ever17』の初期案ではより直截的に「BW = プレイヤー」という表現だったが、「プレイ中に自分の顔が見えたら気持ちが萎えてしまうのではないか」という指摘があり、最終的にはプレイヤーであるとも高次元の住人であるとも取れるあいまいな表現に落ち着いている[14]。
登場人物の何人かはBWと交信し、その視点を借りることで時間を超越した知覚が可能である。ココがその代表で、しばしば不可解な発言するのは未来を知っているからである。またホクトは少年編からココ編に至るまでBWと意識を共有しており、それが原因で記憶喪失になった。BWはホクトとの融合時に初めて劇中世界に現れたわけであり、その世界の中では新たに誕生したも等しいから記憶が白紙状態なのである。そのほか武や桑古木にも第3視点能力の素質がある。原作版では優春もBWと会話しているが、リメイク版の彼女にはBWの声が聞こえなかったため、BWは古代までさかのぼって当時の能力者の力を借り、遺跡に優春向けのメッセージを残すという壮大に迂遠な方法で情報を伝えるしかなかった。
BWのメッセージを受け取った2017年の優春は、武とココがIBFに取り残されていることを知る。しかしすぐに救出に向かえば「2034年に現れたBWが武たちの状況を知り、過去に知らせに来る」という未来もなくなり、タイムパラドックスが発生する。そのため優春は、再建されたLeMUでBWに聞かされた通りの2034年の出来事を再現するため、遠大な計画を遂行することになる。
まず優春は、娘の優秋が2017年の自分と同じ行動をとるように誘導して育てた。計画の実行時期が迫るとつぐみ・沙羅・ホクト向けに「LeMUに来れば家族に会える」という情報を流して呼び寄せ、計画が開始されると桑古木は武の偽物を演じた。こうして2017年をそっくりなぞるかのように2034年の事件が起きたのである。
原作版では、2つの時代を1つだと錯覚させることで劇中世界にBWを召喚している。たとえば3次元空間の視点と2次元平面に描かれた図形を結んでも、でき上がるのは3次元の立体(錐体)であり、2次元の者には干渉できない。しかし2次元に描かれたのが直線であれば、3次元の視点と結ぶことで完成するのは「平面」であり、3次元視点はその一部として取り込まれている。同様の理屈で、高次元に位置するBWを劇中の3次元世界の一部として取り込めるように、異なる時間をひとつに重ねたかのように見せたのである[15]。
リメイク版でのBWの召喚は、BW自身がもたらしたオーバーテクノロジーによる装置で行われている。BWがホクトと同化し、劇中世界の人間としてエミュレートするために両時代を混同させる手順が必要だったとされている。
シナリオ構成にて前述のとおり本作には2人の主人公がおり、序盤に現れる選択肢でどちらの視点でプレイするか意識的に決定する。この選択肢に至るまでは2人とも台詞に音声がついているのだが、視点が確定された後は視点側の音声が再生されなくなる。
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