ツツジ科(ツツジか、学名:Ericaceae)は、ツツジ目に属する被子植物の1つ。

概要 ツツジ科, 分類(APG III) ...
ツツジ科
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: ツツジ目 Ericales
: ツツジ科 Ericaceae
学名
Ericaceae Juss., 1789
タイプ属
Erica L. [1]
英名
heath
heather
heather-berries
亜科
  • ドウダンツツジ亜科 Enkianthoideae
  • シャクジョウソウ亜科 Monotropoideae
  • イチゴノキ亜科 Arbutoideae
  • イワヒゲ亜科 Cassiopoideae
  • ツツジ亜科 Ericoideae
  • ジムカデ亜科 Harrimanelloideae
  • スティフェリア亜科 Stypheloideae
  • スノキ亜科 Vaccinoideae
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形態

生態

本科の植物には菌根を形成するものが多い。ドウダンツツジ亜科とシャクジョウソウ亜科以外の根は子嚢菌の一部と共生してツツジ型菌根を形成する。ドウダンツツジ亜科の根ではグロムス門の菌類と多くの陸上植物と共通のアーバスキュラー菌根が形成され、シャクジョウソウ亜科では担子菌外生菌根菌とイチヤクソウ型菌根シャクジョウソウ型菌根が形成される。 また、一部の種はアレロパシーを持ちほかの植物の生育を阻害するとされるほか、シカや放牧された家畜が後述の毒性の件もあって、本科の植物を嫌って食べないことなどからしばしば大きな群落を形成する。

イギリス北部やアイルランドでは寒冷、酸性土壌、貧栄養の荒野が広がっておりヒース(英:heath)と呼ばれる。ヒースではエリカ属などの本科の植物がしばしば優勢になり、独自の生態系を築いている。

人間との関係

象徴

ネパールではツツジ属の一種であるRhododendron arboreumを、ノルウェーではギョリュウモドキCalluna vulgaris)をそれぞれ国花としている。

食用

日本において本科の植物で最も有名な食用種はスノキ属のうちアメリカ大陸原産のブルーベリー(英:blue berry)であり、果実を食用とする。ブルーベリーには果実がよく似ている何種かが含まれる総称であり、日本では果実だけでなく樹種も指すのが一般的。同属には果実を食用にできる種が多く、近縁種でユーラシア大陸に産するセイヨウスノキ(こちらの果実はビルベリーと呼ばれる)、酸味が強く生食には向かないが加工品にされるツルコケモモVaccinium oxycoccos、近縁種も含めた総称で果実はクランベリーと呼ばれる)が含まれる。

毒・薬用

前述のように果実を食用にできる種類もあるが、本科の植物は一般に葉や花にグラヤノトキシン(英:Grayanotoxin)をはじめとする有毒物質を含み、ヒトや多くの哺乳類にとって有毒である。グラヤノトキシンの名前は日本にも分布する樹木で本科イワナンテン属Leucothoe)のハナヒリノキ(学名Leucothoe grayana)から分離されたことにちなむ。本科の植物の一つにアセビ属のアセビがあるが、漢字では「馬酔木」と書く。これはウマ(馬)がこの木を食べて酔ったように毒で苦しむところから来ているといわれる。また、ツツジも漢字で「躑躅」と書くが、行き先が定まらず足がふらつく様子を表しているとの説もあるなど、毒性については有毒成分が分離される前から世界各地で経験的に知られていた。花の蜜にも有毒成分が含まれており、直接花から蜜を吸ったり、ツツジ科植物の蜜から作られた蜂蜜で中毒した事例も報告されている。また、バラ科カナメモチ属Photinia)一部の種類の葉は「石南」と呼ばれ漢方薬等で生薬の扱いを受けるが、本科ツツジ属のシャクナゲの漢字表記が「石楠花」であることから誤ってシャクナゲの葉を煎じて飲んでしまい中毒する例がしばしばあるという。

園芸

園芸分野では特にツツジ属で盛んである。日本ではツツジ属をさらに細かくツツジサツキシャクナゲアザレアなどと分けて利用している。また、別亜科で分類的には遠縁のドウダンツツジ Enkianthus perulatusカルミア Kalmia sp.、エリカErica sp.、アセビ Pieris japonicaなどが庭園樹や盆栽としてよく親しまれている。

木材

低木の種が多いことから構造材として広く利用される種はないものの、エリカ属(Erica)のエイジュErica arborea)は難燃性であることから喫煙具の高級パイプの原料になる。また、美しい木目を利用した家具材として珍重される種もある。

分類

現在主流のAPG植物分類体系では、従来のクロンキスト体系等の分類では、イチヤクソウ科(・シャクジョウソウ科)・エパクリス科ガンコウラン科を含む4科または5科に置かれていた種を分割統合し、ツツジ科の亜科として置くことで9亜科約125属4000種ほどの大きな科である。木本草本を含め、温帯から寒帯にかけて広く分布する。次のような系統樹が推定されている。

ツツジ科

Enkianthoideae(ドウダンツツジ亜科:ドウダンツツジ属のみ)

Monotropoideae(シャクジョウソウ亜科:旧シャクジョウソウ科・イチヤクソウ科)

Arbutoideae(イチゴノキ亜科:ウラシマツツジ属など)

Cassiopoideae(イワヒゲ亜科:イワヒゲ属のみ)

Ericoideae(ツツジ亜科:旧ガンコウラン科も含む)

Harrimanelloideae(ジムカデ亜科:ジムカデ属のみ)

Stypheloideae(スティフェリア亜科=旧エパクリス科)

Vaccinoideae(スノキ亜科)

ドウダンツヅジ亜科 subfamily Enkianthoideae

次の1属だけから成る単型の亜科である。

アジアに10種程度が知られる。日本にはドウダンツツジが分布する

subfamily Pyroloideae

次の4属が知られる

かつてはイチヤクソウ科に置かれていた。世界に6種ほど、日本にはウメガサソウ(Chimaphila japonica)など2種が知られる。
  • Moneses
  • Orthilia
  • Pyrola

シャクジョウソウ亜科 subfamily Monotropoideae

次の3連15属程度が知られる。

シャクジョウソウ連 tribe Monotropeae

  • Allotropa
  • Cheilotheca
  • Hemitomes
  • Hypopitys (treated by many authors as a synonym of Monotropa)
  • Monotropa シャクジョウソウ属
  • Monotropastrum ギンリョウソウ属
  • Monotropsis
  • Pityopus
  • Pleuricospora

tribe Pterosporeae

  • Pterospora
  • Sarcodes

tribe Pyroleae

  • Chimaphila ウメガサソウ属
  • Moneses イチゲイチヤクソウ属
  • Orthilia
  • Pyrola イチヤクソウ属


イチゴノキ亜科 subfamily Arbutoideae

Xylococcus bicolor1種だけが知られる単型の属である。

イワヒゲ亜科 subfamily Cassiopoideae

次の1属だけから成る単型の亜科である。

高山や寒帯に生息する10種程度が知られる。日本にはイワヒゲが分布する

ツツジ亜科 subfamily Ericaceae

次の5連20属1800種程度が知られる最大の亜科である。旧分類におけるツツジ科の大半を含む。

tribe Bejarieae

tribe Empetreae

  • Ceratiola
  • Corema
  • Empetrum

tribe Ericeae

ギョリュウモドキ(Calluna vulgaris)一種だけが知られる単型の属である。

tribe Phyllodoceae

tribe: Rhodoreae

かつてのイソツツジ属Ledum)なども認めたが、現在は属としては支持されずツツジ属の一亜節となっている。

ジムカデ亜科 subfamily Harrimanelloideae

次の1属だけから成る単型の亜科で2種のみが知られる小さいグループである。

  • ジムカデ属 Harrimanella
ユーラシア及びアメリカに1種ずつの2種が知られる。日本にはジムカデが分布する。和名の由来は地面に沿って伸びる枝に付いた葉がムカデのように見えることからだといわれている。

subfamily Stypheloideae

tribe Archerieae

  • Archeria

tribe Cosmelieae

  • Andersonia
  • Cosmelia
  • Sprengelia

tribe Epacrideae

  • Budawangia
  • Epacris
  • Lysinema
  • Rupicola
  • Woollsia

tribe Oligarrheneae

  • Needhamiella
  • Oligarrhena

tribe Prionoteae

  • Lebetanthus
  • Prionotes

tribe Richeeae

  • Dracophyllum
  • Richea
  • Sphenotoma

tribe Styphelieae

  • Acrotriche
  • Androstoma
  • Astroloma
  • Brachyloma
  • Coleanthera
  • Conostephium
  • Croninia
  • Cyathodes
  • Cyathopsis
  • Decatoca
  • Leptecophylla
  • Leucopogon
  • Lissanthe
  • Melichrus
  • Monotoca
  • Pentachondra
  • Planocarpa
  • Styphelia
  • Trochocarpa

スノキ亜科 subfamily Vaccinoideae

ヒメシャクナゲ連 tribe Andromedeae

tribe Gaultherieae

ネジキ連 tribe Lyonieae

tribe Oxydendreae

次の1属だけから成る単型の連である。

  • Oxydendrum

スノキ連 tribe Vaccinieae

  • Agapetes
  • Anthopteropsis
  • Anthopterus
  • Calopteryx
  • Cavendishia
  • Ceratostema
  • Costera
  • Demosthenesia
  • Didonica
  • Dimorphanthera
  • Diogenesia
  • Disterigma
  • Gaylussacia
  • Gonocalyx
  • Macleania
  • Mycerinus
  • Notopora
  • Oreanthes
  • Orthaea
  • Pellegrinia
  • Plutarchia
  • Polyclita
  • Psammisia
  • Rusbya
  • Satyria
  • Semiramisia
  • Siphonandra
  • Sphyrospermum
  • Symphysia
  • Themistoclesia
  • Thibaudia
  • Utleya
  • スノキ属 Vaccinium

分類

従来は子房上位ツツジ亜科と、子房下位スノキ亜科に大きく分けられていた(現在は一部の属がさらに分けられている:上記参照)。

脚注

外部リンク

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